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第2話:傷だらけの指先に感じた夜
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黄昏時。
ダンジョンゲートの広場は、生還した冒険者たちの安堵の息で満ちていた。
私は、応急処置の包帯を巻いたまま、一直線に監視小屋へと歩を進めた。
アラクネとの死闘で、脇腹の装甲ごと肉を抉られた。ポーションで塞がってはいるが、失血による眩暈がする。
だが、どうしても、一秒でも早くあの男の顔が見たかった。この抗えない衝動は何だ。
監視小屋では、ドノバンが丸椅子にどっかと腰掛け、帰還者のリストをチェックしていた。
私の姿を認めると、片眉を器用に上げてみせる。
「……戻ったか若造。随分と派手にやられたみてえだな」
憎まれ口。だが、その瞳の奥には、生還者を迎える安堵の色があった。
私は小屋に入ると、その場で深く頭を下げた。銀色の髪がさらりと落ちる。
「……ドノバン、さん」
「おいおい、よせやい。頭なんぞ下げるな。周りが見てるぞ」
「あんた……いや、あなたの資料のおかげで、オーガの群れを止められました。Dランクの連中が五体満足で帰還することは不可能だったかもしれない」
素直な称賛。だが、ドノバンは「仕事をしただけだ」と素っ気なく手を振るだけだ。
私は顔を上げ、真剣な眼差しで彼を見据えた。
「ですが、資料にない『イレギュラー』がいました。……オーガの群れを追って、Aランクの『スカーレット・アラクネ』が上がってきていたのです」
「……何? アラクネだと?」
ドノバンの目つきが変わる。私は懐から、討伐の証であるアラクネの毒牙を取り出し、机に置いた。
「私が処理しました。奴がオーガを捕食しようとして、生態系を押し上げていたのが原因のようです。……あなたの予測通り、元凶は下層からの突き上げでした」
ドノバンは毒牙を手に取り、しばらく無言でそれを見つめていたが、やがて深く息を吐き、私に視線を戻した。
「……大したもんだ。あの状況で、原因まで突き止めて帰ってくるとはな。さすがはエース様だ」
「……あなたの情報があったからこそです」
そう返した時だ。ドノバンの視線が、私の脇腹あたりで止まった。
アラクネの毒牙にかすられ、応急処置だけしてあった箇所から、赤い血が滲み出していたのだ。
「おい、滲んでるぞ。ポーションだけで塞ぎきれてねえな」
「……大したことはありません。宿に戻ってから処置します」
「馬鹿野郎。毒が残ってたらどうする気だ。こっちに来い」
ドノバンは有無を言わせぬ調子で、私の腕を掴んで簡易ベッドの方へと引いた。
強引だ。私に対して、まるで手のかかる新人を扱うような態度。
だが、不思議と不快感はなかった。むしろ、その大きく温かい手に掴まれた熱が、心地よいとすら感じていた。
言われるがままにベッドに座り、私は脇腹の装甲とインナーを捲り上げた。
露わになった私の肌は、冒険者にしては白く、滑らかだ。それに対し、処置をしようと伸びてきたドノバンの手は、岩のようにゴツゴツとしていて、傷だらけだった。
「……沁みるぞ。我慢しろよ」
ドノバンが消毒液を含ませた布を押し当てる。
距離が縮まった瞬間、不意に鼻先をくすぐるものがあった。
汗や使い古した革の匂いに混じって漂う、日向に干した薬草のような、甘く優しい香り。この部屋に漂っていた安らぐような芳香の源泉が、まさか、目の前のこのむさ苦しい大男だというのか?
冷たさと、傷口の痛み。そのミスマッチな甘い匂いと、素肌に触れるドノバンの指の感触が、私の思考を白く染めていく。
硬い剣ダコが、敏感な脇腹の皮膚を擦る。
無骨な指先が、傷口の様子を見るために、私の肌の上を這う。
そのザラついた摩擦熱が、電流のように背骨を駆け上がった。
「ん……っ」
意識するよりも早く、喉の奥から甘い呼気が漏れた。自分でも驚くほど、熱を帯びた声だった。
「ん? わりぃ、力が入ったか?」
ドノバンが手を止め、心配そうに私の顔を覗き込む。その純粋な気遣いが、たまらなく恥ずかしい。
何を、私は。
「……い、いえ。問題ありません。続けてください」
私は顔を背け、必死に平静を装った。心臓が早鐘を打っている。
痛かったわけではない。あろうことか、私はこの男の無骨な指に触れられて、感じてしまったのだ。
(何を考えている、私は……!)
混乱する思考をごまかすように、私はあえて口を開いた。
「……手慣れていますね。家族の怪我も、そうやって見ているのですか?」
ドノバンは手元から視線を外さず、自嘲気味に鼻を鳴らした。
「家族なんぞいねえよ。俺は独りもんだ」
「……独り?」
「ああ。……図体はデカいし、顔はこれだ。女子供には悲鳴を上げられるのがオチだ。それに、現役時代は仕事にかかりきりでな。気づけばもう五十だ。今さらだよ」
そう言って笑う目尻には、深い皺が刻まれていた。それは、彼が一人で積み重ねてきた年月の重みだ。
誰にも愛されず、ただ誰かを守るためだけに生きてきた男。
その事実に触れた瞬間、私の胸の奥底から、沸き立つような歓喜が込み上げてきた。
(独り、か……)
誰も、この男の価値に気づいていない。
この傷の美しさも、無骨な手の温かさも、不器用な優しさも。
すべて、手つかずのままここにある。
(……待て。なぜ私が喜ぶ?)
即座に、自分の感情にブレーキをかける。
この男が独身だろうが何だろうが、私には関係のないことだ。
それなのに、なぜこんなにも胸が躍る? まるで、ずっと探していた宝の在り処を知った時のような、この高揚感は何だ。
「……終わったぞ。今日は酒は飲むなよ」
「ああ……ありがとうございます」
インナーを下ろすが、肌にはまだ、ドノバンの指の熱が残っている。
それだけではない。至近距離で嗅いだあの不思議な甘い香りが、私の鼻腔の奥にこびりついて離れない。
その熱と香りが、私の理性をじわじわと溶かしていくのを感じながら、私は立ち上がった。
「……なぜ引退されたんですか? それだけの分析力に、鍛え抜かれた体……まだ現役で通用しそうですが」
思わず口をついて出た問いに、ドノバンはふっと困ったように苦笑した。
「俺は。もう若くねえ。……それに、守る側の方が性に合ってるんでな」
枯れたような、けれど大人の色気を孕んだその笑みに、私は完全に視線を奪われた。
(私は、この人のことを何も知らない)
たかが監視員の過去など、知ってどうする。
無意味だ、時間の無駄だ――そう理性は冷静に指摘しているのに、私の胸の奥は、彼のことをもっと知りたいとばかりに、甘く、切なくざわめいていた。
私は確信していた。明日も、明後日も、自分はきっと理由をつけてここに来るだろう。この、傷だらけで、不器用で、どうしようもなく私の心を惹きつける男に会うために。
夕闇の中、私の瞳は、獲物を見つけた肉食獣のように、怪しく、熱く、輝き始めていた。
ダンジョンゲートの広場は、生還した冒険者たちの安堵の息で満ちていた。
私は、応急処置の包帯を巻いたまま、一直線に監視小屋へと歩を進めた。
アラクネとの死闘で、脇腹の装甲ごと肉を抉られた。ポーションで塞がってはいるが、失血による眩暈がする。
だが、どうしても、一秒でも早くあの男の顔が見たかった。この抗えない衝動は何だ。
監視小屋では、ドノバンが丸椅子にどっかと腰掛け、帰還者のリストをチェックしていた。
私の姿を認めると、片眉を器用に上げてみせる。
「……戻ったか若造。随分と派手にやられたみてえだな」
憎まれ口。だが、その瞳の奥には、生還者を迎える安堵の色があった。
私は小屋に入ると、その場で深く頭を下げた。銀色の髪がさらりと落ちる。
「……ドノバン、さん」
「おいおい、よせやい。頭なんぞ下げるな。周りが見てるぞ」
「あんた……いや、あなたの資料のおかげで、オーガの群れを止められました。Dランクの連中が五体満足で帰還することは不可能だったかもしれない」
素直な称賛。だが、ドノバンは「仕事をしただけだ」と素っ気なく手を振るだけだ。
私は顔を上げ、真剣な眼差しで彼を見据えた。
「ですが、資料にない『イレギュラー』がいました。……オーガの群れを追って、Aランクの『スカーレット・アラクネ』が上がってきていたのです」
「……何? アラクネだと?」
ドノバンの目つきが変わる。私は懐から、討伐の証であるアラクネの毒牙を取り出し、机に置いた。
「私が処理しました。奴がオーガを捕食しようとして、生態系を押し上げていたのが原因のようです。……あなたの予測通り、元凶は下層からの突き上げでした」
ドノバンは毒牙を手に取り、しばらく無言でそれを見つめていたが、やがて深く息を吐き、私に視線を戻した。
「……大したもんだ。あの状況で、原因まで突き止めて帰ってくるとはな。さすがはエース様だ」
「……あなたの情報があったからこそです」
そう返した時だ。ドノバンの視線が、私の脇腹あたりで止まった。
アラクネの毒牙にかすられ、応急処置だけしてあった箇所から、赤い血が滲み出していたのだ。
「おい、滲んでるぞ。ポーションだけで塞ぎきれてねえな」
「……大したことはありません。宿に戻ってから処置します」
「馬鹿野郎。毒が残ってたらどうする気だ。こっちに来い」
ドノバンは有無を言わせぬ調子で、私の腕を掴んで簡易ベッドの方へと引いた。
強引だ。私に対して、まるで手のかかる新人を扱うような態度。
だが、不思議と不快感はなかった。むしろ、その大きく温かい手に掴まれた熱が、心地よいとすら感じていた。
言われるがままにベッドに座り、私は脇腹の装甲とインナーを捲り上げた。
露わになった私の肌は、冒険者にしては白く、滑らかだ。それに対し、処置をしようと伸びてきたドノバンの手は、岩のようにゴツゴツとしていて、傷だらけだった。
「……沁みるぞ。我慢しろよ」
ドノバンが消毒液を含ませた布を押し当てる。
距離が縮まった瞬間、不意に鼻先をくすぐるものがあった。
汗や使い古した革の匂いに混じって漂う、日向に干した薬草のような、甘く優しい香り。この部屋に漂っていた安らぐような芳香の源泉が、まさか、目の前のこのむさ苦しい大男だというのか?
冷たさと、傷口の痛み。そのミスマッチな甘い匂いと、素肌に触れるドノバンの指の感触が、私の思考を白く染めていく。
硬い剣ダコが、敏感な脇腹の皮膚を擦る。
無骨な指先が、傷口の様子を見るために、私の肌の上を這う。
そのザラついた摩擦熱が、電流のように背骨を駆け上がった。
「ん……っ」
意識するよりも早く、喉の奥から甘い呼気が漏れた。自分でも驚くほど、熱を帯びた声だった。
「ん? わりぃ、力が入ったか?」
ドノバンが手を止め、心配そうに私の顔を覗き込む。その純粋な気遣いが、たまらなく恥ずかしい。
何を、私は。
「……い、いえ。問題ありません。続けてください」
私は顔を背け、必死に平静を装った。心臓が早鐘を打っている。
痛かったわけではない。あろうことか、私はこの男の無骨な指に触れられて、感じてしまったのだ。
(何を考えている、私は……!)
混乱する思考をごまかすように、私はあえて口を開いた。
「……手慣れていますね。家族の怪我も、そうやって見ているのですか?」
ドノバンは手元から視線を外さず、自嘲気味に鼻を鳴らした。
「家族なんぞいねえよ。俺は独りもんだ」
「……独り?」
「ああ。……図体はデカいし、顔はこれだ。女子供には悲鳴を上げられるのがオチだ。それに、現役時代は仕事にかかりきりでな。気づけばもう五十だ。今さらだよ」
そう言って笑う目尻には、深い皺が刻まれていた。それは、彼が一人で積み重ねてきた年月の重みだ。
誰にも愛されず、ただ誰かを守るためだけに生きてきた男。
その事実に触れた瞬間、私の胸の奥底から、沸き立つような歓喜が込み上げてきた。
(独り、か……)
誰も、この男の価値に気づいていない。
この傷の美しさも、無骨な手の温かさも、不器用な優しさも。
すべて、手つかずのままここにある。
(……待て。なぜ私が喜ぶ?)
即座に、自分の感情にブレーキをかける。
この男が独身だろうが何だろうが、私には関係のないことだ。
それなのに、なぜこんなにも胸が躍る? まるで、ずっと探していた宝の在り処を知った時のような、この高揚感は何だ。
「……終わったぞ。今日は酒は飲むなよ」
「ああ……ありがとうございます」
インナーを下ろすが、肌にはまだ、ドノバンの指の熱が残っている。
それだけではない。至近距離で嗅いだあの不思議な甘い香りが、私の鼻腔の奥にこびりついて離れない。
その熱と香りが、私の理性をじわじわと溶かしていくのを感じながら、私は立ち上がった。
「……なぜ引退されたんですか? それだけの分析力に、鍛え抜かれた体……まだ現役で通用しそうですが」
思わず口をついて出た問いに、ドノバンはふっと困ったように苦笑した。
「俺は。もう若くねえ。……それに、守る側の方が性に合ってるんでな」
枯れたような、けれど大人の色気を孕んだその笑みに、私は完全に視線を奪われた。
(私は、この人のことを何も知らない)
たかが監視員の過去など、知ってどうする。
無意味だ、時間の無駄だ――そう理性は冷静に指摘しているのに、私の胸の奥は、彼のことをもっと知りたいとばかりに、甘く、切なくざわめいていた。
私は確信していた。明日も、明後日も、自分はきっと理由をつけてここに来るだろう。この、傷だらけで、不器用で、どうしようもなく私の心を惹きつける男に会うために。
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