10 / 27
第10話:抗えない熱と涙目の陥落 ※
肌に触れた、その瞬間のことだった。
「んッ……!」
不意の愛撫に、ドノバンの岩のような体がビクリと大きく跳ねた。
その初々しい反応に口元を緩めながら、私の手はそこで止まらない。ごつごつとした肋骨を確かめるように這い上がり、鍛え上げられた分厚い大胸筋の膨らみへと到達する。
「……ここ、どうですか?」
私は、筋肉の鎧に守られた、その無防備な頂き――尖端の突起を、人差し指の爪先でカリリ、と弾くように引っ掻いた。
「ひゥッ……!?」
ドノバンの喉から、裏返った悲鳴が弾けた。
ハッ! と息を詰めて腰を浮かせ、狭いベッドの上で重い体をねじって刺激から遠ざけようと激しく動いた。
予想以上の反応だ。……なるほど、合点がいった。
先ほど執拗に攻めたあの首筋も、そしてこの胸の尖端も。
長年、死線と隣り合わせで磨き上げられた貴方の「気配察知」の能力。周囲の僅かな動揺さえ逃さないその鋭敏すぎる神経は、実戦では生存を分ける武器となる。だが、こうして組み敷かれ、逃げ場を失った状態では――肌に触れる指先の熱さえ、抗えない過剰な刺激として脳に叩き込まれてしまうらしい。
「へえ……すごい」
私は、ガチガチに強張って震えているドノバンの反応を、愉悦の混じった溜息と共に見下ろした。
「岩みたいに厳つい体をして、古傷だらけで……なのに、こんなところが、こんなに無防備なんですか」
「ち、違……ッ! た、ただ、驚いただけ、だ……っ!」
ドノバンは顔を真っ赤にして、必死に首を振って否定しようとする。
だが、私はその言い訳を許さない。「驚いただけ」という言葉の真偽を確かめるべく、今度は指先でその尖端をキュッと強く捻り上げ、さらに爪先を立てて、逃げる突起を追い詰めるように執拗に擦り上げた。
「あ、がッ!? 痛、や、めろ……って……ッ!」
激痛に近い鋭い刺激に、ドノバンは逃げ場のない快感に耐えかねたように、その巨躯を丸め、膝を胸元へ引き寄せるようにして私の手から逃れようと身悶えた。 屈強な大男が、私の指先一つに翻弄され、小さな子供のように身体を丸めて震えている。その無様なまでの逃避行が、私をこれ以上ないほどに煽った。
私は、逃げようとする彼の肩を強引に押し込み、耳元で低く、逃げ場を奪うように囁いた。
「……本当に、驚いているだけですか?」
「……っ、ぁ、……はぁ、はぁ……っ」
「本当に驚いただけなら、どうして爪先が触れるたびにそんなに甘い声が漏れるんですか? 拒絶しているはずの身体が、これほど熱く脈打っているんですか?」
否定しようのない生理現象を突きつけられ、ドノバンの瞳は快感と羞恥でさらに潤んでいく。
「逃がしませんよ」
私は、もがくドノバンの体を自身の体重で押さえつけ、逃げ場を完全に封じた。
そして、無防備になった彼の首筋に、吸い付くような深いキスを落とす。
「ん、ぁ……っ! そ、こ……!」
敏感な首筋から、赤くなった耳朶へ。
ジョリりとした無精髭の生えた頬へ。
そして、恐怖と快感で涙の滲んだ目元へ。
チュ、チュ、と慈しむような雨音のような口付けを、顔中に降らせていく。
「ん……っ、く……ぅ……」
ドノバンは、もう抵抗する力も残っていないようだった。
突き飛ばそうと上げていた手は、行き場を失ったように空を彷徨い、やがて力なく私の背中に回された。
押しのけない。殴り飛ばさない。
元冒険者の彼なら、本気になれば私を引き剥がすことなど容易いはずだ。
だというのに、今の彼の手には、縋りつくような弱々しい力しか込められていない。
(……嫌じゃないんだ)
私は、涙で濡れた彼の瞼に口付けた後、鼻先が触れるほどの至近距離で、とろけるような笑みを浮かべた。
「……ドノバンさん。好きです」
ダメ押しの告白。
その言葉を聞いた瞬間、私の下で極限まで張り詰めていたドノバンの体から、ふっと力が抜けていくのを肌で感じた。
私の背中に回され、縋るようにシャツを握りしめていた指先が、諦めたように、あるいは許すように、ゆっくりと緩んでいく。
その微かな、けれど決定的な変化。
それを感じ取った私は、確信した。
――もう、彼に私を拒絶する意思は残っていない。
内心、ドノバンも気づいているに違いない。
私に抱きしめられ、求められることを、拒絶しきれない自分がいることに。
親子ほども年下の男からの求愛。
その熱量と、真っ直ぐすぎる情熱に、彼の枯れかけていた心が、どうしようもなく絆されているのだ。
抵抗する気がないという、微かな諦めと戸惑い。
それを肌で感じ取った瞬間、私の心は、歓喜に打ち震えた。
勝利の予感が、背骨を駆け抜ける。
私は、ドノバンの耳元に、もう一度唇を寄せた。今度は、吐息を吹きかけるように、ねっとりと。
「……あんたが嫌がらないなら、嬉しい」
私は、素肌に這わせていた手を使い、邪魔な寝間着の裾を一気に胸元まで捲り上げた。
月光の下、無防備に晒される分厚い胴体。
無数に刻まれた戦士の勲章と、それを包み込む雄々しい筋肉。その「獲物」の全貌をようやく視界に収めた瞬間、私の内側で、理性がギリリと音を立てて軋んだ。
私はそこに顔を埋め、脇腹から肋に沿って、熱い舌を這わせた。
「ぁ……ッ!?」
ザラリとした舌の感触に、ドノバンが身を震わせる。
私は構わず、古傷の凹凸を舌先でなぞりながら、ゆっくりと上へ――先ほど指で弄ったばかりの、敏感な胸の頂きへと這い上がった。
舌に伝わる肌の熱さと、硬く引き締まった筋肉が拒絶するように脈打つ感触。そのすべてが、私の空腹をさらに激しく駆り立てる。
そこで私は、あえて顔を埋めるのをやめ、上目遣いにドノバンの顔を見上げた。
自らの指先一つ、舌先一つで、この誇り高き男がどれほど無様に乱されているのか。その事実を、この目に克明に焼き付けておきたかったのだ。
「……っ、お前……」
ドノバンと視線が絡む。
私は彼に見せつけるように、目の前にある赤く充血した突起へ、ねっとりと舌先を伸ばした。
吸い付くのではない。
尖った先端を、チロチロ、と小刻みに舌先で弾き、転がし、慈しむように愛でる。
「……ドノバンさん。ここ、気持ちいいんでしょう?」
私の問いかけに、ドノバンはカッと顔を赤くし、逃げるように首を振った。
「……ち、が……う……ッ」
「何が違うんです? こんなに震えているのに。……まだ、認めないつもりですか」
岩のような胸板の上で、私の柔らかな舌先が踊るたび、ドノバンの呼吸が目に見えて乱れていく。その落差が、たまらなく愛おしかった。
「んン……ッ! あッ……!」
自分の胸が舌で弄ばれる光景を特等席で見せられ、ドノバンの理性が悲鳴を上げる。
彼は耐えきれないというように太い腕を持ち上げた。その腕で顔を覆い、この恥ずかしい現実から逃げ出そうとしたのだ。
だが、その逃避を許すほど、私は寛容ではない。
「隠さないでください」
「ッ、やめろ……見、るな……!」
私はドノバンの手首を素早く掴み取ると、強引に枕元へと押し付け、縫い留めた。
逃げ場を失い、潤んだ瞳で泳ぐドノバン。
無骨な監視員としての面影をかなぐり捨て、ただの「感じている男」に成り果てた彼の姿。その圧倒的な無防備さに煽られ、私の舌使いはさらに容赦のないものへと変わる。
「強情ですね。……なら、これでも『違う』と言い張りますか?」
チロチロと弾くだけだった舌を、今度は蛇のようにねっとりと絡みつかせ、先端を口内に深く含み込んだ。
ジュル、チュプ……。
静寂な部屋に、わざとらしいほど湿った水音を響かせて、強く吸い上げる。
私の口腔を充たすのは、男の体温と、あの甘い薬草の匂い。
この男のすべてを、今、自分だけが独占している。その背徳的な事実が、私の脊髄を痺れさせた。
「ひぁッ!? んあ、あ……ッ!」
視覚と触覚、に加え、自身の胸が貪られる卑猥な「音」までもを聞かされ、ドノバンはもはや声を殺すことすらできない。岩のような体がガタガタと震え、首筋の血管が浮き上がり、全身を硬く強張らせた。
「んぅ……ッ、やめ、音、が……ッ!」
「音、ですか? ……貴方の身体が、こんなに淫らな音を立てて私を欲しがっているのが、そんなに恥ずかしいんですか」
羞恥に耐えかねたドノバンが、私の拘束を振りほどき、肩を両手で押し返そうとした。
だが、その抵抗は驚くほどに弱々しい。
「はな、せ……ッ! これ以上は……!」
「離しませんよ。……こんなに愛らしい声を出しながら私を誘うのがいけないんです」
私を押し返そうとする彼の掌さえ、今の私には愛撫を求めているようにしか見えなかった。
抵抗すればするほど、貴方は私という毒に深く沈んでいく。
私は押し返されるどころか逆に体重をかけ、割り込ませていた私の膝を動かした。
狙うのは、彼の股間。
ズボンの下ですでに熱を持ち、硬く育ちつつある部分に、グリグリと膝頭を押し当て、擦り上げる。
「あぐッ……!?」
下半身への不意打ちに、ドノバンの腕から力が抜ける。
その隙を見逃さず、私は唾液で濡れて尖った胸の先を、爪先でカリリ、と意地悪く引っ掻いた。
「あぁッ!!」
上下からの波状攻撃。
ドノバンの体から抵抗の意志が霧散し、ガクガクとシーツの上で痙攣する。
私はその耳元で、勝ち誇ったように囁いた。
「すごい反応だ。……体は気持ちよさそうですよ」
必死に否定しようとしているが、私の膝が擦れるたびに、甘い吐息が漏れ出てしまう。
私は、涙で潤んだ瞳で私を見上げているドノバンを覗き込み、追い打ちをかけるように問いかけた。
「どこまで触れたら、あんたは嫌がりますか? ……全部、試してもいいですか?」
ドノバンは、真っ赤な顔を背け、固く目を瞑った。
葛藤しているのがわかる。
俺はいい歳のオヤジだぞ。相手は男でここは職場だぞ。
そんな理性の声が聞こえてくるようだ。
だが、肌が感じる熱い快感が、彼の中でせめぎ合い、理性を溶かしていく。
その迷いを断ち切るように、私は逃げるように閉じられたその瞼に、懇願するような口付けを落とした。
「ドノバンさん……こっちを見てください」
甘く、蕩けるような己の声。
普段の冷静な冒険者としての声音ではない。恋に焦がれ、愛を乞う、ただの男の声だ。
私の両手は、彼のゴツゴツとした頬を包み込み、強引に、けれど壊れ物を扱うように優しく、自分の方へと向かせた。
「っ……」
ドノバンが観念したように、うっすらと目を開ける。
その瞳に映る私は、きっと酷く必死で、なりふり構わない顔をしているだろう。
「私、おかしいんです。あんたのせいで、あんたの匂いのせいで、もう自分が自分じゃないみたいだ」
私の指先が、彼の無精髭の生えた顎を這い、震える唇の端を愛おしげになぞる。
そして、そのまま彼の手を取り、私の胸――早鐘を打つ心臓の上へと導き、強く押し当てた。
「分かりますか? あんたに触れているだけで、こんなに煩いんだ」
「セル、ウィン……お前……」
「遊びじゃありません。一時の迷いでもない。……あんたじゃなきゃ、駄目なんだ」
至近距離で見つめ合う。
私の瞳に宿る、暗く重い執着と、それ以上に切実な熱情。
ギルドのエースと呼ばれる私が、地位もプライドもかなぐり捨てて、傷だらけの中年男にすがっている。
私は、溢れる感情を抑えきれず、ドノバンの背中に腕を回すと、その分厚い体を軋むほど強く抱きすくめた。
心臓の音が伝わるほどの密着。逃がさないという意思表示。
その事実を前に、ドノバンの瞳から拒絶の光が揺らぎ、最後の防壁が崩れ去っていくのを私は見逃さなかった。
「お願いです。拒まないで。……私を、受け入れてください」
私の瞳に見つめられ、私の体温に包まれる中、ドノバンの瞳から拒絶の色が消え失せるのを私は確認した。
胸を押し返そうとしていた腕からも、完全に力が抜けている。
もはや彼に「NO」と言う気力など残されていないのは、明白だった。
ドノバンの唇が、数秒間震えた。
やがて、絞り出すような、諦めたような、それでいてどこか甘えるような声が、夜の静寂に落ちた。
「…………好きに、してくれ」
それは、敗北宣言であり、同時に、私への招待状だった。
その一言で、私の中の獣の鎖は、完全に断ち切られた。
「んッ……!」
不意の愛撫に、ドノバンの岩のような体がビクリと大きく跳ねた。
その初々しい反応に口元を緩めながら、私の手はそこで止まらない。ごつごつとした肋骨を確かめるように這い上がり、鍛え上げられた分厚い大胸筋の膨らみへと到達する。
「……ここ、どうですか?」
私は、筋肉の鎧に守られた、その無防備な頂き――尖端の突起を、人差し指の爪先でカリリ、と弾くように引っ掻いた。
「ひゥッ……!?」
ドノバンの喉から、裏返った悲鳴が弾けた。
ハッ! と息を詰めて腰を浮かせ、狭いベッドの上で重い体をねじって刺激から遠ざけようと激しく動いた。
予想以上の反応だ。……なるほど、合点がいった。
先ほど執拗に攻めたあの首筋も、そしてこの胸の尖端も。
長年、死線と隣り合わせで磨き上げられた貴方の「気配察知」の能力。周囲の僅かな動揺さえ逃さないその鋭敏すぎる神経は、実戦では生存を分ける武器となる。だが、こうして組み敷かれ、逃げ場を失った状態では――肌に触れる指先の熱さえ、抗えない過剰な刺激として脳に叩き込まれてしまうらしい。
「へえ……すごい」
私は、ガチガチに強張って震えているドノバンの反応を、愉悦の混じった溜息と共に見下ろした。
「岩みたいに厳つい体をして、古傷だらけで……なのに、こんなところが、こんなに無防備なんですか」
「ち、違……ッ! た、ただ、驚いただけ、だ……っ!」
ドノバンは顔を真っ赤にして、必死に首を振って否定しようとする。
だが、私はその言い訳を許さない。「驚いただけ」という言葉の真偽を確かめるべく、今度は指先でその尖端をキュッと強く捻り上げ、さらに爪先を立てて、逃げる突起を追い詰めるように執拗に擦り上げた。
「あ、がッ!? 痛、や、めろ……って……ッ!」
激痛に近い鋭い刺激に、ドノバンは逃げ場のない快感に耐えかねたように、その巨躯を丸め、膝を胸元へ引き寄せるようにして私の手から逃れようと身悶えた。 屈強な大男が、私の指先一つに翻弄され、小さな子供のように身体を丸めて震えている。その無様なまでの逃避行が、私をこれ以上ないほどに煽った。
私は、逃げようとする彼の肩を強引に押し込み、耳元で低く、逃げ場を奪うように囁いた。
「……本当に、驚いているだけですか?」
「……っ、ぁ、……はぁ、はぁ……っ」
「本当に驚いただけなら、どうして爪先が触れるたびにそんなに甘い声が漏れるんですか? 拒絶しているはずの身体が、これほど熱く脈打っているんですか?」
否定しようのない生理現象を突きつけられ、ドノバンの瞳は快感と羞恥でさらに潤んでいく。
「逃がしませんよ」
私は、もがくドノバンの体を自身の体重で押さえつけ、逃げ場を完全に封じた。
そして、無防備になった彼の首筋に、吸い付くような深いキスを落とす。
「ん、ぁ……っ! そ、こ……!」
敏感な首筋から、赤くなった耳朶へ。
ジョリりとした無精髭の生えた頬へ。
そして、恐怖と快感で涙の滲んだ目元へ。
チュ、チュ、と慈しむような雨音のような口付けを、顔中に降らせていく。
「ん……っ、く……ぅ……」
ドノバンは、もう抵抗する力も残っていないようだった。
突き飛ばそうと上げていた手は、行き場を失ったように空を彷徨い、やがて力なく私の背中に回された。
押しのけない。殴り飛ばさない。
元冒険者の彼なら、本気になれば私を引き剥がすことなど容易いはずだ。
だというのに、今の彼の手には、縋りつくような弱々しい力しか込められていない。
(……嫌じゃないんだ)
私は、涙で濡れた彼の瞼に口付けた後、鼻先が触れるほどの至近距離で、とろけるような笑みを浮かべた。
「……ドノバンさん。好きです」
ダメ押しの告白。
その言葉を聞いた瞬間、私の下で極限まで張り詰めていたドノバンの体から、ふっと力が抜けていくのを肌で感じた。
私の背中に回され、縋るようにシャツを握りしめていた指先が、諦めたように、あるいは許すように、ゆっくりと緩んでいく。
その微かな、けれど決定的な変化。
それを感じ取った私は、確信した。
――もう、彼に私を拒絶する意思は残っていない。
内心、ドノバンも気づいているに違いない。
私に抱きしめられ、求められることを、拒絶しきれない自分がいることに。
親子ほども年下の男からの求愛。
その熱量と、真っ直ぐすぎる情熱に、彼の枯れかけていた心が、どうしようもなく絆されているのだ。
抵抗する気がないという、微かな諦めと戸惑い。
それを肌で感じ取った瞬間、私の心は、歓喜に打ち震えた。
勝利の予感が、背骨を駆け抜ける。
私は、ドノバンの耳元に、もう一度唇を寄せた。今度は、吐息を吹きかけるように、ねっとりと。
「……あんたが嫌がらないなら、嬉しい」
私は、素肌に這わせていた手を使い、邪魔な寝間着の裾を一気に胸元まで捲り上げた。
月光の下、無防備に晒される分厚い胴体。
無数に刻まれた戦士の勲章と、それを包み込む雄々しい筋肉。その「獲物」の全貌をようやく視界に収めた瞬間、私の内側で、理性がギリリと音を立てて軋んだ。
私はそこに顔を埋め、脇腹から肋に沿って、熱い舌を這わせた。
「ぁ……ッ!?」
ザラリとした舌の感触に、ドノバンが身を震わせる。
私は構わず、古傷の凹凸を舌先でなぞりながら、ゆっくりと上へ――先ほど指で弄ったばかりの、敏感な胸の頂きへと這い上がった。
舌に伝わる肌の熱さと、硬く引き締まった筋肉が拒絶するように脈打つ感触。そのすべてが、私の空腹をさらに激しく駆り立てる。
そこで私は、あえて顔を埋めるのをやめ、上目遣いにドノバンの顔を見上げた。
自らの指先一つ、舌先一つで、この誇り高き男がどれほど無様に乱されているのか。その事実を、この目に克明に焼き付けておきたかったのだ。
「……っ、お前……」
ドノバンと視線が絡む。
私は彼に見せつけるように、目の前にある赤く充血した突起へ、ねっとりと舌先を伸ばした。
吸い付くのではない。
尖った先端を、チロチロ、と小刻みに舌先で弾き、転がし、慈しむように愛でる。
「……ドノバンさん。ここ、気持ちいいんでしょう?」
私の問いかけに、ドノバンはカッと顔を赤くし、逃げるように首を振った。
「……ち、が……う……ッ」
「何が違うんです? こんなに震えているのに。……まだ、認めないつもりですか」
岩のような胸板の上で、私の柔らかな舌先が踊るたび、ドノバンの呼吸が目に見えて乱れていく。その落差が、たまらなく愛おしかった。
「んン……ッ! あッ……!」
自分の胸が舌で弄ばれる光景を特等席で見せられ、ドノバンの理性が悲鳴を上げる。
彼は耐えきれないというように太い腕を持ち上げた。その腕で顔を覆い、この恥ずかしい現実から逃げ出そうとしたのだ。
だが、その逃避を許すほど、私は寛容ではない。
「隠さないでください」
「ッ、やめろ……見、るな……!」
私はドノバンの手首を素早く掴み取ると、強引に枕元へと押し付け、縫い留めた。
逃げ場を失い、潤んだ瞳で泳ぐドノバン。
無骨な監視員としての面影をかなぐり捨て、ただの「感じている男」に成り果てた彼の姿。その圧倒的な無防備さに煽られ、私の舌使いはさらに容赦のないものへと変わる。
「強情ですね。……なら、これでも『違う』と言い張りますか?」
チロチロと弾くだけだった舌を、今度は蛇のようにねっとりと絡みつかせ、先端を口内に深く含み込んだ。
ジュル、チュプ……。
静寂な部屋に、わざとらしいほど湿った水音を響かせて、強く吸い上げる。
私の口腔を充たすのは、男の体温と、あの甘い薬草の匂い。
この男のすべてを、今、自分だけが独占している。その背徳的な事実が、私の脊髄を痺れさせた。
「ひぁッ!? んあ、あ……ッ!」
視覚と触覚、に加え、自身の胸が貪られる卑猥な「音」までもを聞かされ、ドノバンはもはや声を殺すことすらできない。岩のような体がガタガタと震え、首筋の血管が浮き上がり、全身を硬く強張らせた。
「んぅ……ッ、やめ、音、が……ッ!」
「音、ですか? ……貴方の身体が、こんなに淫らな音を立てて私を欲しがっているのが、そんなに恥ずかしいんですか」
羞恥に耐えかねたドノバンが、私の拘束を振りほどき、肩を両手で押し返そうとした。
だが、その抵抗は驚くほどに弱々しい。
「はな、せ……ッ! これ以上は……!」
「離しませんよ。……こんなに愛らしい声を出しながら私を誘うのがいけないんです」
私を押し返そうとする彼の掌さえ、今の私には愛撫を求めているようにしか見えなかった。
抵抗すればするほど、貴方は私という毒に深く沈んでいく。
私は押し返されるどころか逆に体重をかけ、割り込ませていた私の膝を動かした。
狙うのは、彼の股間。
ズボンの下ですでに熱を持ち、硬く育ちつつある部分に、グリグリと膝頭を押し当て、擦り上げる。
「あぐッ……!?」
下半身への不意打ちに、ドノバンの腕から力が抜ける。
その隙を見逃さず、私は唾液で濡れて尖った胸の先を、爪先でカリリ、と意地悪く引っ掻いた。
「あぁッ!!」
上下からの波状攻撃。
ドノバンの体から抵抗の意志が霧散し、ガクガクとシーツの上で痙攣する。
私はその耳元で、勝ち誇ったように囁いた。
「すごい反応だ。……体は気持ちよさそうですよ」
必死に否定しようとしているが、私の膝が擦れるたびに、甘い吐息が漏れ出てしまう。
私は、涙で潤んだ瞳で私を見上げているドノバンを覗き込み、追い打ちをかけるように問いかけた。
「どこまで触れたら、あんたは嫌がりますか? ……全部、試してもいいですか?」
ドノバンは、真っ赤な顔を背け、固く目を瞑った。
葛藤しているのがわかる。
俺はいい歳のオヤジだぞ。相手は男でここは職場だぞ。
そんな理性の声が聞こえてくるようだ。
だが、肌が感じる熱い快感が、彼の中でせめぎ合い、理性を溶かしていく。
その迷いを断ち切るように、私は逃げるように閉じられたその瞼に、懇願するような口付けを落とした。
「ドノバンさん……こっちを見てください」
甘く、蕩けるような己の声。
普段の冷静な冒険者としての声音ではない。恋に焦がれ、愛を乞う、ただの男の声だ。
私の両手は、彼のゴツゴツとした頬を包み込み、強引に、けれど壊れ物を扱うように優しく、自分の方へと向かせた。
「っ……」
ドノバンが観念したように、うっすらと目を開ける。
その瞳に映る私は、きっと酷く必死で、なりふり構わない顔をしているだろう。
「私、おかしいんです。あんたのせいで、あんたの匂いのせいで、もう自分が自分じゃないみたいだ」
私の指先が、彼の無精髭の生えた顎を這い、震える唇の端を愛おしげになぞる。
そして、そのまま彼の手を取り、私の胸――早鐘を打つ心臓の上へと導き、強く押し当てた。
「分かりますか? あんたに触れているだけで、こんなに煩いんだ」
「セル、ウィン……お前……」
「遊びじゃありません。一時の迷いでもない。……あんたじゃなきゃ、駄目なんだ」
至近距離で見つめ合う。
私の瞳に宿る、暗く重い執着と、それ以上に切実な熱情。
ギルドのエースと呼ばれる私が、地位もプライドもかなぐり捨てて、傷だらけの中年男にすがっている。
私は、溢れる感情を抑えきれず、ドノバンの背中に腕を回すと、その分厚い体を軋むほど強く抱きすくめた。
心臓の音が伝わるほどの密着。逃がさないという意思表示。
その事実を前に、ドノバンの瞳から拒絶の光が揺らぎ、最後の防壁が崩れ去っていくのを私は見逃さなかった。
「お願いです。拒まないで。……私を、受け入れてください」
私の瞳に見つめられ、私の体温に包まれる中、ドノバンの瞳から拒絶の色が消え失せるのを私は確認した。
胸を押し返そうとしていた腕からも、完全に力が抜けている。
もはや彼に「NO」と言う気力など残されていないのは、明白だった。
ドノバンの唇が、数秒間震えた。
やがて、絞り出すような、諦めたような、それでいてどこか甘えるような声が、夜の静寂に落ちた。
「…………好きに、してくれ」
それは、敗北宣言であり、同時に、私への招待状だった。
その一言で、私の中の獣の鎖は、完全に断ち切られた。
あなたにおすすめの小説
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
おっさん騎士はお疲れ魔法使いを癒やしたい
丸井まー(旧:まー)
BL
真夏の一人短編祭り第一弾!
スケベのリハビリです。
騎士をしているディオルドには、数年気になっている魔法使いの男がいる。
とある夜。いつでも疲れた顔をしている魔法使いと偶然遭遇し、ディオルドは勇気を出して騎士団寮の自室へと魔法使いシャリオンを誘った。
疲れている魔法使い✕おっさん騎士。
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
執着男に勤務先を特定された上に、なんなら後輩として入社して来られちゃった
パイ生地製作委員会
BL
【登場人物】
陰原 月夜(カゲハラ ツキヤ):受け
社会人として気丈に頑張っているが、恋愛面に関しては後ろ暗い過去を持つ。晴陽とは過去に高校で出会い、恋に落ちて付き合っていた。しかし、晴陽からの度重なる縛り付けが苦しくなり、大学入学を機に逃げ、遠距離を理由に自然消滅で晴陽と別れた。
太陽 晴陽(タイヨウ ハルヒ):攻め
明るく元気な性格で、周囲からの人気が高い。しかしその実、月夜との関係を大切にするあまり、執着してしまう面もある。大学卒業後、月夜と同じ会社に入社した。
【あらすじ】
晴陽と月夜は、高校時代に出会い、互いに深い愛情を育んだ。しかし、海が大学進学のため遠くに引っ越すことになり、二人の間には別れが訪れた。遠距離恋愛は困難を伴い、やがて二人は別れることを決断した。
それから数年後、月夜は大学を卒業し、有名企業に就職した。ある日、偶然の再会があった。晴陽が新入社員として月夜の勤務先を訪れ、再び二人の心は交わる。時間が経ち、お互いが成長し変わったことを認識しながらも、彼らの愛は再燃する。しかし、遠距離恋愛の過去の痛みが未だに彼らの心に影を落としていた。
更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です
X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl
制作秘話ブログ: https://piedough.fanbox.cc/
メッセージもらえると泣いて喜びます:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
異世界転移された傾国顔が、アラ還宰相の幼妻になって溺愛されるまでの話
ふき
BL
異世界に転移したカナトは、成り行きでアラ還の宰相ヴァルターと結婚することになる。
戸惑いながら迎えた初夜。衝動のキス、触れあう体温――そして翌朝から距離が遠ざかった。
「じゃあ、なんでキスなんてしたんだよ」
これは、若さを理由に逃げようとするアラ還宰相を、青年が逃がさない話。
ヴァルター×カナト
※サブCPで一部、近親関係を想起させる描写があります。
魔法学校の城に囚われている想い人♡を救い出して結婚したい天才有能美形魔術師(強火執着)の話
ぱふぇ
BL
名門魔法学校を首席で卒業し、若くして国家機関のエースに上り詰めた天才魔術師パドリグ・ウインズロー(26歳)。顔よし、頭脳よし、キャリアよし! さぞかしおモテになるんでしょう? ええ、モテますとも。でも問題がある。十年越しの想い人に、いまだに振り向いてもらえないのだ。そんな片思い相手は学生時代の恩師・ハウベオル先生(48歳屈強男性)。無愛想で不器用、そしてある事情から、魔法学校の城から一歩も出られない身の上。先生を外の世界に連れ出すまで、全力求婚は止まらない!
26歳魔術師(元生徒)×48歳魔術師(元教師)