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第1章
再開(ルトロヴァイユ)
しおりを挟む「昨日の化け物はなんだったんだ…」
鶏鳴が朝を告げる都会より少し離れた宿屋で目覚めたロディ。いつもの朝の朝食前のルーティンとして寝癖を直しに外の井戸へと向かう。昨日の夜の街路時に出会った化け物と少女の事が気になりモヤモヤしている。
「もう一回、同じ場所に。情報収集からか?それにしても今日も寒いな~。」
朝食を済ませた後、昨日受けたバイト先へ向かいながら考える。しかしやはり朝のヨーロッパは冷える。いくら重ね着をしたところで自分の特異体質と相まって更に冷え込む。昔から暑がり寒がりというかなにか感覚が敏感であり夏場でも長袖を着ている。
「なー、やっぱり何か知らないか?」
「知るわけないだろう~。化け物も見たことないし、そんな女の子も見たことない」
「そうかー、やっぱり夢なのかなー。」
朝に抱いていた疑問が晴れず、しまいにはバイト仲間にまで聞いている。しかし誰も何も見たこと聞いたこともないとなるとやはり、昨日の場所に行ってみるかと項垂れている。
「項垂れている暇があったら、注文された料理を運べー!!」
長いバイトの一日が終わり帰るロディ。今日一日中バイト仲間やお客さんにも聞いてはみたものの普通の堤灯持ちの事ならわかる。しかし導き手の記され祈祷服を着た人物は見たことがないという。帰り道、足が無数の手に遭遇した場所へと赴く。そこから自分が逃げた道を追うように歩き進んでいく。交差点の右、行き止まりがあった場所。
「確かあの子は反対の方向へ走っていったよな…」
昨日の記憶を追うようにあの女の子が走り出していた方向へ足を進めていく。自分と年齢は離れていなかったように思う。
しばらくして歩いている途中、化け物と出会ったときの悍ましい感覚が背筋を襲う。
「どこからだ?またあの化け物か?」
周囲を見渡すロディ。しかし見当たらず、その感覚は次第に離れていく。またこの機会を逃すと朝のモヤモヤが消えないことを思って追いかけてみる。
「どこだ~?ちちちっ!」
猫を呼ぶように周りを見ながら呼んでいると壁にぶつかったのか勢いよく転ぶ。壁にしては柔らかく弾力性がある。はたして何に当たったのか確認すると、昨日出会った女の子がこちらを見て立っていた。
「…」
何も言わずにこちらを見下げている。君のことを探していたと言おうとした時、背中に寒気が生じる。この感覚は忘れもしない。あの化け物が近くにいてこちらの様子を伺っている。
「あなたもあの子たちの事が分かるの?」
「分かるのっていうか、感じるというか。とにかく危ないものというのは分かる。」
「危ないもの?違うあの子たちは遊んでほしいだけ。危なくない。」
とにかく危ないもの。そう表現したことが気に障ったのか、少し彼女の言葉に怒りを感じる。沈黙が少し訪れるが彼女は続けてこう言う。
「まだ死んだことに気づいていない。気づこうとしていない。」
「(気づいていない?)どういうことだよ?」
「あの霊は死んだ人の魂に未練が残り、気づいてもらおうと肥大化したもの」
なんとあの化け物は死んだ人の魂。未練の塊だというではないか。そして無数の手もこちらに近づいてくる。ゆっくり、ゆっくりと。
「よしよし、寂しかったね。もう大丈夫だよ、安心してお眠り。プリエ。」
そう唱えると彼女お手にしていた堤灯付き錫杖に纏わりつくよう大人しくなる。あの背筋に感じた冷たい感覚も次第にはれていく。安心し呆然とするロディ。後に決まり文句のようにこう伝える。
「おまえ、何者だよっ。」
彼女はどう自分たちの事を伝えやすいかを考えてこう告げる
「迷い、未練のある魂をあるべき場所。帰るべき場所へと誘う者 ファロティエ」
夜明けとともに堤灯についていた魂が青白く霧散し消えていく。今朝のモヤモヤと共に。
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