もふもふにゃんこ ゴマくんの冒険記

戸田 猫丸

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第4部〜決戦・vsライム編〜

第24話〜また、再建しましょう〜

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 戦いが終わって、ボクらは“転身”を解いた。途端に、全身が鉛のように重たくなっちまった。
 
 少し休んでからソールさんたちは、麻酔銃で眠らせたライムを牢屋に閉じ込めるために、どこかにある“仮説基地”へ向かった。
 ボクとスピカ、フォボスさんはひと足先に、焼けた草叢くさむらへと向かう。ダイモスさんは「ちょっとソールたちに用がある! すぐに戻るぜ、ふんす!」とか言って、ソールさんたちを追って行っちまった。
 
 森のような草叢くさむらがあった場所には、“地下避難施設”という名の、地下にある巨大なネズミたちの地下街へ続く入り口がある。ボクらはそこへ行って、ネズミたちに勝利の報告をするんだ。
 チップたちの喜ぶ顔が、早く見てえぜ!

「ダイモス、遅いな。何してるんだ?」
「……あ、来たで?」

 地下へ続くマンホールみたいな入り口に着いたところで、ダイモスさんが駆けてきた。その姿は見てるだけで暑苦しい。

「ふん、ふん! 遅くなって悪い。でも走り込みができてちょうど良かったぜ! ぬっふんす!」
「分かった分かった。早く行くぞ」

 クールに受け流すフォボスさんは、メガネをクイッと上げた。
 さあ、早くチップたちに会いに行かなきゃ。ボクらは地下へ続く階段を下りた。
 
 廊下の突き当たりにある扉を開けると、そこは“地下避難施設”――巨大な地下街。地下だというのに、中はまるで昼間のように明るかった。ああ、前に来た時は夜だったが、今は朝だから、外の明るさに合わせて天井が光ってるのか。高い高い天井全体が薄い水色の光を放っていて、まるで青空みてえだ。

「広場にみんないるみてえだぞ。行くか?」
「前に立ってるネズミさんが、街のおさみたいやな」

 広場では、ピシッとした服を着ている年を取ったネズミが前に立って、演説かニャニかをしている。「皆さん、信じてください。必ず“星光団”が私たちを救ってくれます」とか言っている。集まっているネズミたちは、不安そうな顔をしていた。
 もう大丈夫だ。ボクらは勝ったんだ!
 ネズミたちに報告しようと走り始めた時。

「ゴマくん!」

 後ろからボクを呼ぶ声がする。
 ソールさんたちだ。

「遅くなってすまない。ダイモスくんに渡された薬を、ライムに飲ませていたんだ」
「さあ早く、ネズミさんの所へ向かいましょう」

 薬? ああ、ライムに体を早く治してもらって、母ちゃんと話し合えるようにって考えてくれたんかニャ。
 それよりも今は、早く勝利の報告だ。
 街はボロボロに焼かれちまったが、ニャンバラのバカ野郎どもによるネズミたちの世界の侵略は、ちゃんと防ぐことができたんだ。

「……おお、おお! 星光団……! 無事でしたか……!」

 年取ったネズミが気付いて、走ってくる。ソールさんはそっと歩み寄った。

「あなたが、ネズミさん方の街のおさですか? 僕は“もふネコ戦隊・星光団”のリーダー、ソールです」
「市長の【チュータ】です。さあさ早く、こちらへ」
 
 ソールさん、母ちゃん、マーズさん、マーキュリーさん、ヴィーナスさん、ボク、スピカ、フォボスさん、ダイモスさんの順に広場に入場して、ネズミの住民たちのみんなに手を振りながら整列する。
 ソールさんはネズミの住民たちの前に立つと、キリッとした顔して口を開いた。

「ニャンバラ軍の総長、ライムを捕らえました。ニャンバラ軍の者は全て捕縛し、基地に連行しました。もう、この街を襲われる事はありません!」

 言い終わると同時に、住民から歓声が上がった。

「ばんざーい! 星光団、ばんざーい!」
「ありがとう、星光団!」

 ニャハハ、この声を聞くために、ボクらは頑張ったんだ。この最強のゴマちゃんも、大活躍したんだぜ!

「ゴマくん! みんな! おかえりー!」

 歓声の中、聞き覚えのある声が耳に入った。
 チップだ。真っ先に駆けてくる。
 ボクは列を飛び出して、チップの所へ走った。

「チップ! 勝ったんだぜ、ボクら!」
「すごいよ、ゴマくん! これでまたみんなで遊べるんだね!」
 
 9匹の家族、全員無事だ。
 ボクはチップとハイタッチをして、チップの家族の元へと走った。

「ほっほ、ありがとうの、ゴマくん」
「ええ。おかげさまで、またのんびりした暮らしができるわ」
「本当に、ありがとうね。ゴマくんと出会えて良かった」
「うふふ、早く帰っておいしいごはん食べましょ」

 ダンじいちゃん、サンディばあちゃん、父ちゃんのピーターさん、母ちゃんのマリナさん。

「これで、またおいしいもの食べに行けるね!」
「お礼にお菓子たくさん作るわ」
「ゴマくん! また探検に行くよー!」
「ゴマお兄ちゃん、かっこいー!」
「たくさんあそぼーね、ゴマにいちゃん」

 トム、モモ、チップ、ナナ、ミライ。

ニャニかあったら、この“暁闇ぎょうあんの勇者・ゴマ”に任せときニャ!」

 9匹のネズミのみんなの嬉しそうな顔が、ボクにこう思わせてくれた。“暁闇ぎょうあんの勇者・ゴマ”に、なれて良かったニャ、と――。


 ボクらは“地下避難施設”を後にして、地上に出た。後から市長チュータさんはじめネズミの住民たちが、ぞろぞろとマンホールから出てくる。
 目の前には、無残にも灰になった街が、透き通るような青空の下、広がっていた。それを見るネズミの住民たちを前にして、ボクは無力感に襲われた。

 ネズミのみんニャの笑顔は守れた。だが、ネズミたちの街“Chutopiaチュートピア2120にいいちにいぜろ”は、守れなかったんだ……。
 だが。

「また、再建しましょう!」

 市長チュータさんのその一言が、ネズミたちの大きな希望になる――。

「“Chutopiaチュートピア2120にいいちにいぜろ”、また作り直そう!」
「やるぞー! みんな、やろう!」

 拍手と歓声が、煙の上がる街の中に響き渡った。
 ネズミたちの顔はみんな、希望の光に満ちていたんだ!
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