もふもふにゃんこ ゴマくんの冒険記

戸田 猫丸

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第2部〜ネズミたちの住む理想郷編〜

第21話〜マサシ、帰る〜

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 マサシは、ニャニやらデカい荷物を背負っている。これからどっか旅にでも行くんだろうか。
 続いて、ゾロゾロとネズミどもが出てきやがった。全部で9匹だ。服装とかから察すると多分、大人のネズミが4匹、ガキのネズミが5匹だ。キョーダイなんだろう。
 街でマサシと一緒に歩いてた……誰だっけ。あ、思い出した。食いしん坊のオスネズミのトムと、小っこいメスネズミのナッちゃんもいるぞ。あいつら、5匹キョーダイだったんだな。
 ナッちゃんが目をウルウルさせながら両手で、マサシの手を握っている。

「マサシお兄ちゃん、いっぱいいっぱい、ありがとう。マサシお兄ちゃん、だーい好き! あたしがあげた木の実、大事にしてよね」
「ありがとう。ナッちゃん、【チップ】くんと仲良くするんだぞー。けんかしちゃダメだよ? サネカズラの実、大事にするね。ほら、おいで」

 様子がおかしい。
 ネズミどもはみんな、ニャンだか悲しそうな顔をしてる。
 続いて青いキャップをかぶったオスネズミのガキが、マサシに話しかけた。

「マサシ兄ちゃん……。ずっと元気でね……」
「チップくん! そんな顔しないでよ。ずっと一緒だって言ってたじゃん!」

 背の高さからして、青いキャップをかぶったチップって奴は、キョーダイの3番目だ。ナッちゃんがその下の4番目。トムは長男だな。
 あとの2匹は――トムの下の2番目がピンク色のエプロンを着けたメスネズミ。そしてナッちゃんよりさらにチビッ子の、末っ子のオスネズミだ。
 その後ろにいる大人の4匹は、じいちゃん、ばあちゃん、父ちゃん、母ちゃんだろう。
 
「うん、うん! ありがとう! これからも一緒だからね! ……あ、マサシ兄ちゃん、大変だ! 日が暮れちゃう!」
「うん……、じゃあチップくん、そろそろ行くね」

 チップと話し終わったマサシが、ボクらの方に体を向けた。
 ボクらは素早く、岩陰に身を隠す。

「やだあ、マサシお兄ちゃん、行っちゃやだー! やだあ!! えーん……! ずっと、ここにいてよー!!」
「ナッちゃーん、大丈夫だよ! ほら、お母さんもチップくんも言ってたじゃん! ぼくらは同じ家族だって!」

 ナッちゃんは、ニャニをそんなに泣いてんだよ。一体、どうしちまったんだよ?
 首を傾げてると、ルナが小声で言ってきた。

「ひょっとしてマサシさん、ニンゲンの世界へ帰っちゃうんじゃない? もう会えなくなるから、悲しくて泣いてるんじゃないかなあ?」
「あん? そもそもアイツ、ニンゲンなのか? それに帰るっつったって、どうやって?」

 あ! マサシの奴、森の方へ行っちまう!

「バイバーイ! マサシくん、元気でねー!」
「ありがとーう! みんなもずっと元気でねー!」

 おい待てって、どこ行くんだよ! ボクはテメエの正体が知りてえんだよ!

「呼び止めるぞルナ!」
「ダメ!!」
「うおあ!? 痛ってえ!!」

 ルナに思いっきり尻尾を引っ張られ、派手に転んじまった。しかも、そのまんま岩陰の方へ引きずりやがる。おいコラやめろ! めちゃくちゃ痛え!
 痛みに耐えながら顔を上げると、マサシは森の方へ歩いて行き、9匹のネズミは、木の家の前でマサシに向かって手を振っている。
 こっちに気付かれはしなかったようだ。

「マサシ兄ちゃーん! ずっと、友達だからねー!!」

 チップが大声で叫ぶ。目からは、涙がボロボロとこぼれていた。
 
「もちろんだよ! チップくんとは、ずっと友達だよー!!」

 マサシが振り向いて、叫び返した。マサシも泣いてやがる。
 マサシもボクらと同じで、ニャンか理由があってネズミの世界に来てたんだろうか。そんで、この世界に居続ける訳にはいかねえ――みてえな事ニャのか?
 マサシがフツーのニンゲンだとして、どこから来たかとか、どうやってネズミサイズになったとか、どうやって帰るかとか、ニャンにしても謎だらけだ。

 考えてる間に、マサシは森の方へ行っちまっていた。マサシは最後にネズミどもの方を振り向いてニコッと笑った後、森の中へと姿を消しちまった。

「あーあ、行っちまいやがった」
「だね……。ネズミさんたちみんな泣いてるね」
「……これ、話しかけに行く空気じゃねえよな」
「うん。僕らもミランダさんのとこへ帰ろっか」
「いや待て、ルナ」

 やっぱりボクはネズミどもと……友達になりてえ!
 立ち上がったルナが、めんどくさそうな顔で振り向いた。構わずボクは言う。

「やっぱ、ネズミどもに話しかけに行こう。アイツら、きっとイイ奴らだ! 行くぞルナ!」
「え、ちょっと! 兄ちゃんー!」

 木の家の中へ入っていく9匹のネズミたちの方へ、ボクらは突っ走る。
 ドアの外でチップが、しんみりとした顔でもう一度森の方へ振り向いた。もう姿が見えなくなったマサシを、最後に見送るつもりニャンだろう。その瞬間をボクは逃さなかった。

「ニャアアアーー!!」

 ボクは、思いっきり叫んだ。
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