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第2部〜ネズミたちの住む理想郷編〜
第26話〜ニンゲンがネズミの世界に来る理由〜
しおりを挟む「ここネズミの世界にはの、時々ニンゲンさんがやって来るんじゃ。時々といっても、マサシくんが来る以前にニンゲンさんが来たのは、わしが幼い時じゃから、そう頻繁ではないんじゃがの」
「ふむふむ? どーいう理由でニンゲンがここに来るんだ?」
ネズミのじいちゃんは、しんみりとした顔で語り始めた。
「ニンゲンさんの社会は、色々と大変な事が多いそうじゃ。そんな世界で生きる気力を失いかけたニンゲンさんが、太陽の神様の力によって、ここネズミの世界へ呼ばれる。そして14日間はニンゲンさんの世界に帰れなくなるんじゃ」
「太陽のカミサマだと……?」
「ネズミの社会は、誰しもが自然と調和しながら、幸せに暮らせる社会なんじゃ。マサシくんも大変な思いをしながら暮らしていたようじゃが……わしらと14日間生活して、すっかり元気を取り戻したんじゃ」
何だか難しくてよく分かんねえが、ニンゲンも大変ニャンだな。
ネズミのじいちゃんの言う通り、ネズミたちの世界は妙に居心地がイイ。ネズミたちは確かに、みんな楽しそうに過ごしてた。暗い顔してたニャンバラのネコどもとは、真反対だ。
そんなネズミたちの世界に、カミサマの力でマサシの奴が呼ばれた、だって……?
色々とブッ飛びすぎてて、ちょっとついていけねえ。
頭を抱えてると、ルナがシレッとした顔でネズミのじいちゃんに尋ねた。
「マサシさんは、さっき帰って行きましたよね。って事は、今日が14日目ということですか。帰り際に泣いてたみたいですけど、もしかしてマサシさんは一度ニンゲンさんの世界に帰ると……、もうネズミさんの世界には来られなくなる……とかですか?」
ネズミのじいちゃんが、ちょっと悲しそうな顔して上を向いた。
「ああ、ルナくん、まさしくその通りじゃ。ニンゲンさんがネズミの世界にいられる時間……14日間を過ぎて、この世界に居続ける事はできない。この世界で元気を取り戻し、大切な事を学んだ後は、元の世界へ帰って、再び現実と向き合う事になるんじゃ」
「どうやって帰ったんだ? またカミサマとやらの力か?」
「ああ。14日目の夕方に、元のニンゲンさんの世界へと帰る道が、太陽の神様の力によって現れるそうなんじゃ。マサシくんも、きっと無事に帰って行ったはずじゃよ」
カミサマだか何だか知らねえが、いきなり知らねえネズミの世界にワープさせられて元の世界へ帰れなくなって、ネズミたちと仲良くなったと思えば今度は無理矢理元の世界へ帰されるニャンて……迷惑な話だよなあ。
……じゃあ、“ワームホール”とやらでここに来たボクらは、いったい何なんだ?
「じゃあもしかして僕らも……14日間しかここにいられないって事ですか?」
ルナがちょうど、ボクが思った事を尋ねてくれた。
ネズミのじいちゃんは首を傾げた。この事については、知らねえのか。
「ゴマくんたちも、別世界のネコさんじゃな。ネコさんがネズミと同じ背丈になって来たというのは、初めてじゃ。一体、どうやってここまで?」
とりあえず、じいちゃんの質問に答えておくか。
「何か、ニャンバラとかいう地底世界の、プレアデスってネコに騙されて、ボクらの世界とこのネズミの世界をつなぐ変なトンネルをくぐって来ちまったんだよ。で、そのプレアデスとはぐれっちまって、元の世界に帰れなくなっちまったんだ」
「……僕らの他に、プレアデスというネコさんが、ネズミさんの世界に来ているはずなんです。キジトラ模様で、僕らと同じように、服着て言葉を話すネコさんです」
ルナがほっぺたについた魚のカケラをぬぐいながら言うと、今度はネズミの父ちゃんが話に加わった。
「そのプレアデスくんの案内がなければ、元の世界に帰れないのかい?」
「おうよ。全く迷惑な話だぜ。そんでよ、ボクらはお前らネズミたちに絶対に見つかっちゃダメだ、とか言われてよ」
「そう、ずっと隠れながら、野宿生活だったんだよね。それで、近くの洞窟にいるミランダさんっていう精霊さん? と知り合って、そこに居候させてもらってるんだ」
ネズミたちは、みんな目を丸くした。そして「ミランダさん?」と口にして、互いに見合ってる。ネズミたちも、ミランダの事は知らねえのか。
そもそも何で、ネズミたちに見つかっちゃいけなかったんだ?
ネズミたちが暮らしてる様子を撮りてえんなら、ネズミに話しかけて、ちゃんと許しをもらえばいいだろうによ。何で、あんなにコソコソする必要があったんだ。ヘッタクソな出来のネズミのかぶり物ニャんか着せられてよ。
「あー、でもまあ、この世界に来なきゃ、こんなうまいメシ食えなかったしな。ボク、ここに住んでイイか?」
「こら、兄ちゃん。もう十分でしょ。……僕らはそろそろミランダさんの所へ戻ります。ありがとう。ごちそうさまでした」
チッ、もう行くのかよ。あのジメジメした洞窟よりも、ここで母ちゃんたちを待ってる方がイイのに……。
ルナが席を立った時だった。
チップが嬉しそうな顔で、ネズミのじいちゃんに尋ねた。
「そっか。じゃあ、マサシ兄ちゃんと同じように……、いいよね? おじいちゃん」
ん? 何がイイんだ?
ネズミのじいちゃんがニッコリ笑って頷くと、チップは先回りしてボクらの前に立った。
「ねえね、ゴマくん、ルナくんたちが元の世界に帰れるまで……。うちで、僕たちと一緒に生活しない?」
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