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第3章〜優しい異世界での生活〜
第10話
しおりを挟む「じゃあ今日はお天気がいいから、外で食べようか」
「わあい、そうしようー!」
庭のテーブルの上に、栗ごはんと、たっぷり野菜が入った煮物、山ブドウや木いちごのデザートがずらりと並べられた。
少しずつ藍色に染まる空にはひとつ、ふたつ、お星さまが灯る。いつの間にかうっすら、三日月も出ていた。しっとりとした秋の夜風が、ぼくの頬をなでる。
「じゃあ手を合わせて。いただきまーす!」
「いただきまぁーす!」
炊きたての栗ごはんを、一口食べてみた。栗の甘さと温かみが、口の中に広がっていく。
「ミライくん、おいしい?」
「……うん、くりごはん、おいしい!」
おかあさんに、“あーん”してもらったミライくんも、満足そうだ。
「明日晴れたら、山芋掘りだよね。楽しみだ」
チップくんが言う。そうだ、明日は山芋掘りに行くっておかあさんが言ってたっけ。
おじいちゃんが嬉しそうに話し始める。
「そうじゃ、マサシくんには言ったかいのう。明日は山まで山芋掘りに行くんじゃが、一緒に来てくれるかのう? みんなで掘るの、楽しいぞい」
「うん、おかあさんから聞いたよ。楽しみにしてるよ」
「ほっほ! じゃあ、よろしくね。明日晴れるといいのう」
確か、昔見たねずみさんの絵本には、ねずみたちの背丈に比べると、とんでもなくでっかい山芋を掘り上げていた様子が描かれていたはずだ。それを、この目で見ることが出来るなんて。
「なんてたって、おじいちゃんは“芋掘り名人”なんだよ!」
「ほほほ、トムや。君もいつかは名人になってもらうぞい」
“おじいさんは、いもほりめいじん”というのも、絵本の最後のページに書かれていた気がする。明日はその名人の技、とくと見せてもらうことにしよう。そしてぼくもその技を、少しは教えてもらえるだろうか?
森の夜は更ける。鳥の歌声に代わって、草叢からは虫たちの演奏が始まっていた。
「ごちそうさまー!」
「美味しかったね!」
後片付けを済ませて家の中に入り、今日も居間の丸いテーブルを囲んで、みんなでお話をする。
今夜のお話は、おとうさんも一緒に行った、野山探検のこと。
「じゃあ、マサシくん、どうぞ」
「え、ぼく!? えーっと、最初に大きなきのこを見つけたんだよね。ね、チップくん」
「そうだったね! あれ、クリタケって名前だっけ、おとうさん?」
「そうそう。よく覚えてたね!」
おかあさんにおばあちゃん、モモちゃん、ミライくんは、興味深そうに話を聞いている。
「あと、大きなトカゲもいたよね。大きな落ち葉も、赤くてきれいだったよ。両腕サイズの赤トンボもいたなあ……ぼくら人間からしたら、何もかもが大きくて新鮮な感じだったよ」
「赤とんぼは気づかなかったな……。マサシくんは、色んな所をよく見てるね。そしてたくさん、栗を拾ったんだよね。それがさっき食べた栗ごはんってわけさ! みんな、味はどうだった?」
おとうさんは得意げに、みんなの方を見る。
「「おいしかったー!」」
「マサシ兄ちゃんも一緒に作ったから、いつもよりおいしかったよ!」
子供たちは口々に言う。その様子を見たおかあさんが「ふふふ」と笑った。
子供の頃、家族で出掛けたり、学校の遠足で野山に行ったことを思い出す。あの頃は、父とも母とも弟ともよく話をしていたっけ――。
ねずみさんたちと過ごす時間に比例するように、心の奥底に眠っていた思い出も、より鮮明に蘇ってきた。
次はモモちゃんとミライくんの、庭で遊んだことについてのお話だ。
「こおろぎがね、ぴょーんってね、とんでったんだよ」
「ほっほ、もうすっかり、秋なんじゃのう」
「そうそう、トムがね、こおろぎを追っかけて、川に落ちちゃったの」
「……モモ、それは言わなくていいよ~……」
「ふふ、あはは……!」
笑い声が絶えない9匹の家族。ぼくも自然と笑顔になっていた。
以前のぼくは愛想笑いばかりしていたけれど、心から楽しければ自然に笑えるもんなんだな。自然に笑える――長く忘れていた感覚だった。
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