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第7章〜ねずみの音楽隊〜
第6話
しおりを挟むお父さんの歌が終わると、次はモモちゃんがみんなの前に出た。
「次は私が歌うわね。“夕焼け小焼けまた明日”という歌、いきます。……真っ赤なお空に 雲が行く……♪」
モモちゃんはおとうさんの伴奏に合わせながら、赤く燃える夕焼け空に向かって歌い始めた。ぼくはそれに合わせてビンをやさしく叩いてみた。キーンと、透き通るような音が響く。夕日のやさしい光のような、温かな音だ。
ゆったりとした空間が出来上がった。本当にみんなが、夕焼けに吸い込まれそうな光景だ。
「はい、拍手ー! 上手だったよー、モモ姉ちゃん!」
「ありがとう。みんなで音を出すと楽しいわね」
モモちゃんは、ペコリとお辞儀をした。
それからは、みんなで思いつくまま夢中になって、いろんな楽器を作っては奏でた。缶に砂を入れて振ってみたり、竹筒に穴を開けて吹いてみたり、輪ゴムで弦を作って弾いてみたり。
大きなドラム缶と小さな鍋のフタや空き缶を組み合わせて、手作りドラムセットを作ってみたら……。
「わ! 楽しーい!」
「凄い、チップくん。もう叩き方が分かったんだね」
チップくんは、周りの音と合わせながら見事に叩きこなしていた。ぼくよりもドラムの才能、あるんじゃないだろうか……。
日が暮れるまで、ぼくらは歌って、奏でて、踊った。
“DOUBLEMOON”のスタジオ練習やライブより、こっちの方がずっと楽しいとさえ思えた。
「ふう、楽しかったね。喉カラカラだよ。音楽ってやっぱりいいもんだなあ。さーあさ、お風呂だお風呂だ!」
「楽しかったー! おとうさんの歌、また聴かせてね。あ! 持ってきたこのガラクタは、暗くなる前に、元の場所に戻してこよう。行くよ、ナッちゃん、マサシ兄ちゃんも!」
「ねえー、待ってえー!」
ただのガラクタの山を、こんなに素敵な楽器に変えてしまうねずみの子供たちの発想力に、ぼくは感心した。この世界に来る前のぼくは、ただ同じような日々に退屈していたけれど、ねずみの子供たちのようにちょっと発想や視点を変えるだけで、楽しさに満ちた面白おかしい毎日に変えることだって出来るのかもしれない。
日は暮れて、空が青紫色に染まっていく。白く光るお星様が2つ、3つ。肌寒い風が頬をなでる。
早く帰って、あったかいお風呂に入ろう。
「ただいま! お風呂もう沸いたー?」
「沸いたよ。今夜は少し冷えるから早く入ろう!」
着替えを持ってお風呂場へ向かう時、ふと台所を見ると。
おじいさんは、また探し物をしている。
さすがにちょっと心配なので、お風呂を上がってから探すのを手伝うことにした。「何か大事なこと」って言っていたから、やっぱり気になってしまう。
湯船に浸かって夜空を眺めていると、チップくんが話しかけてきた。
「ねえ、マサシ兄ちゃん」
「どしたの? チップくん」
「マサシ兄ちゃん、ほんとに音楽が好きなんだね。さっき、ほんとに楽しそうにしてたもん」
「……やっぱり分かる? ふふ。音楽家になって……音楽で世界を変えるのが……ぼくの夢なんだ」
「素敵な夢だね! 絶対、音楽家になれるよ!」
ぼくは今まで、自分の夢を誰かに話すことはなかった。「君みたいな陰気な人には無理だろ」とか、「夢ばかり描いてないで地に足をつけて生きなさい」とか、そんなふうに否定されるのが怖かったから。
けれど、夢は口に出した方がいいっていうし、応援してくれる人にはやっぱりちゃんと話した方がいいのかも知れない。
チップくんたちは、純粋に応援してくれるのが分かってたから、思わず話してしまった。
「ありがとうね。チップくんは何か夢、あるの?」
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