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出発
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いつの間にか寝ていたのだろう。閉じた瞼に光が注いだ。
直人がゆっくり覚醒すると、体に痛みが走った。硬い畳みで寝ていたせいで、背中が痛い。
「いてて」
「あ、起きました?」
直人が体を起こすと、目の前にボブヘアーの女がいた。
「え?誰?」
「ごめんなさい。ハサミ借りちゃいました」
「ああ!あんたか⁈髪切ったのか⁈腰まであったのにもったいないな」
「あいつの好みが、ロングヘアで強制的に伸ばしてたの。短いとすごく楽だね!長いと乾かすのに時間かかって、疲れるし、飽きちゃうのよ」
そう言い、女は顔を左右に振り、髪の軽さを実感していた。
「このウェアもあいつの好みなの。俺を家で迎えるなら、色気のあるものを着て待てって」
「家にほとんど帰らないのに、とんだエロジジイだな」
「ね!本っ当!気持ち悪いやつでしょ!」
「そんなに嫌なら、早く離婚しろよ」
「したくても、訳あってできないの」
女は深く思い詰めた顔をした。
「まぁ、家は出たけど、これからどうするんだ?」
「実家に戻る」
「へぇ、実家はどこなの?」
「北海道」
「北海道かぁ。遠いなぁ。ここからだと、新幹線か飛行機でいく感じか」
「新幹線や飛行機は使わない。できるだけ、あいつにバレないように逃げたいから」
「…車でいいなら、北海道まで送って行こうか?」
直人は恥ずかしさを隠す為、頭をかきながらボソリと言った。
「え?」
「俺、今無職だから。時間はあるからさ」
「いいの⁈」
「うん」
女は、目を輝かせながら直人を見た。
「ありがとう!」
女は嬉しさのあまり、直人に抱きついた。 勢いがつき、そのまま倒れ込んだ。
「いてて。そういえば、あんたの名前は?」
女は、直人に覆い被さったまま答えた。
「私は、橘……旧姓、佐藤千代」
「俺は、工藤直人」
直人はゆっくり体を起こした。冷静な振りをしていたが、内心心臓がバクバクしていた。久しぶりに女性とキスができる距離だったので、焦りと嬉しさのあまり脇から汗が吹き出た。
「車で行くとなると、青森からフェリーに乗る事になるよな。そしたら、どこかで車中泊になるな。一応、毛布位は持ってくか。そしたら、早速準備するか」
冷蔵庫は空っぽの為、二人はコーヒーを飲み、直人は身支度を始めた。リュックに、必要な着替えと携帯、財布を詰め込んだ。千代に直人の軽自動車に毛布を詰め込んでもらう。火の元を確認し、二人はアパートを出た。
「直人さん。北海道行く前に行きたい所があるの。こんな格好では行かれないし」
千代は恥ずかしそうに、自分が身につけている服を見た。
「そうだな」
道すがら、二人はATMに寄った後、ファッションセンターに寄った。
千代は、財布、斜め掛けバッグ、靴、靴下、デニム、ロンT、下着、キャップ、次々とカゴに品物を入れていく。
「直人さん、どっちがいいと思う?」
千代は、ピンクのロンTと白のロンTを体の前に持って、合わせていた。
「俺に聞く?女の子って何が好きか分かんないよ。好きな色選んだら?」
「直人さんは彼女いないの?」
「いたらこんなことしてないわ。いた時はあったけど」
「ふふ。デートってこんな感じなのかな?彼氏とか作った事ないまま、籍入れちゃったから。デートとか分からないんだよね。外から見たら、カップルに見えるかな?」
「千代…さんは、何歳なの?」
直人は初めて千代を下の名前で呼んだ。気恥ずかしくて、ぎこちなかった。
「…何歳に見えます?」
「にじゅう、4.5?」
「ふふ。直人さんは何歳?」
「俺は、29だけど」
「ふふ。若く見られて嬉しい。私は27だよ」
「年近いな。27には見えないけど」
会計後、千代は品物を持って、トイレに入った。数分待っていると、お待たせと千代が出て来た。
深く被ったキャップに、パーカー、デニムとカジュアルスタイルで出て来た。
「やっと、気持ち悪い服から解放されたわ。楽ちん、楽ちん」
千代の衣装チェンジが終わった所で、早速北海道に向かう事にした。
「なぁ、気になってたんだけど。何で橘と結婚する事になったんだ?かなり歳の差があると思うけど」
「まぁ、政略結婚みたいな感じよ」
「千代さん家、お金持ちなの?」
「一般家庭だよ。それに…父子家庭だったけど、家に父親がいなくて、おばあちゃんに育てられたの」
「実家にお婆さんはいるのか?」
千代は首を横に振った。
「去年、病気で亡くなったの」
直人は気まずくなり、話題を変えた。
「千代さんが家にいない事が分かったら、橘、探し回るんじゃないか?千代さんの実家にも行ってたりするかもよ」
「可能性はあると思う」
「見つかったら、また、あの家に連れ戻されるんじゃないか?」
「その時は死のうと思う」
直人は思わず急ブレーキを踏み、千代の体が前に屈んだ。
直人はハザードを焚き、車を路肩に寄せた。
「死ぬって…」
「本気よ。もし、奇跡的に見つからなかったら、おばあちゃんの形見を持って、山奥でひっそりと暮らそうと思うの」
「そうゆうの、警察とか弁護士とかに相談した方がいいんじゃない?」
千代は首を横に振った。
「多分、信じてもらえないし。これが世の中に広まったら、大変な事になる」
「大変?」
直人は疑問を抱いた。確かに、橘が妻にしている監禁は異常な行為だと思う。
しかし、監禁行為が世の中に広がって、大惨事になるとは思えない。
橘自体、大物の人間ではない。せいぜい、全国放送され、地域の奴らに叩かれる程度だと思うが。
「でも、死ぬのはダメだ」
「直人さんは気にしないで。北海道まで送ってほしいって言ったのは私だから。直人さんに迷惑がかかるなら、ここで降ろしてもいいよ」
「いや、北海道まで送るよ。ここまで来て降ろすなんて事しないよ」
「ありがとう。ごめんね」
千代は悲しげに少し俯いた。
アパートを出発し、3時間経過した。二人は近くの公園に寄り、休憩を取る事にした。
道中、千代はずっと喋っていたので、直人は運転に飽きなかった。
2年もまともに会話してないと、こんなにも饒舌なのだろうか。
「あー、ケツが痛い」
二人が背伸びをていると、後ろから女性の声がした。
「すみません!今、元彼に付き纏われてて、彼氏の振りしてもらえませんか?」
「えっ?彼氏の振り?」
直人は少し離れた所にある木々に、ひっそりと隠れる男の姿を見つけた。
「少しだけでいいんです!お願いします」
女性は直人の手を握った。
「ごめん。千代さん。すぐ戻るから」
「彼女さん。ごめんなさい。彼氏さん、借りますね」
「あ、うん。私は大丈夫」
千代は動揺していたが、どうしたらいいか分からず、了承する事しかできなかった。
女性は直人の左腕に抱きつくように歩いた。
「急にごめんなさい。散歩してたら、誰かに見られてる気がして。振り向いたら、元彼が付けてきて」
「あの、警察に相談しました?」
「はい。何度も相談したのですが、自宅周辺のパトロールしかしてくれなくて」
女性は涙ぐんだ。茶髪の長い髪に、垂れ目でおっとりとした雰囲気の女性。八方美人そうな彼女は、モラハラ男や陰湿なストーカー男に付き纏われそうなタイプだな、と直人は心の中で思った。
五分程歩いただろうか?直人は千代が気になった。空耳だろうか、なぜか千代の声が聞こえた。
「直人さーん!助けて下さい!」
振り向くと、千代は男に追いかけられていた。それも、木の影で見た女性のストーカー男だ。
「ちっ、あの野郎。ヘマしやがって」
女性から想像もしない言葉が聞こえた。
「焼田!女を押さえろ!」
筋骨隆々な男が千代を追いかけながら叫ぶ。
女性は向かってきた千代の左腕を掴んだ。その腕を背中に回しながら、千代は地べたに押さえつけられた。
「ぐっ!」
「千代さん!あんた、一体!」
女は、千代を無理矢理起こし、千代の首にナイフを添えた。
「焼田。よくやったぞ」
女は男の前に立ちはだかった。女は直人を睨みつけ、醜い形相をしていた。あの、可愛らしい顔は何処へ行ったのか。
「よくやった?ふざけるな。当初の作戦とは全然違うだろ。私がこいつから男を引き離し、お前がこいつを捉えるはずだったろう?ヘマして、こいつと鬼ごっこかよ。ほんっと使えない男」
「てめぇ。女だからって調子乗んなよ」
「口だけの男がうるせぇよ。手柄をあげてやるって啖呵切ってたくせに」
「あぁ?誰が口だけだって?」
「てな訳で、こいつを連れて行く。一歩でも動いたら…分かるよな」
焼田は千代の首元に当てたナイフをチラつかせた。
焼田が後ろに下がろうと動き出すと、焼田の後ろにいた男の手元が動いた。ポケットからキラリと鋭利な物が見えた。
直人の全身に悪寒が走った。嫌な予感が一瞬にして脳裏に過った。
「危ない!!!」
直人は咄嗟に、3人に向かってタックルした。
みんなまとまって、後ろに転んだ。
「千代!車に向かって走れ!」
千代は立ち上がり、急いで車に向かった。
直人の左頬に、男のストレートが入った。
「ぐぁぁ!」
直人は衝撃で倒れ込んだ。
男は直人に馬乗りになった。
「てめぇ、邪魔してくれるなよ。焼田を殺せるチャンスだったのに」
直人は地面に生えていた雑草を掴み、男の顔めがけて投げつけた。
「ぐぁぁぁぁぁ!!!」
土が男の目潰しとなり、男は悶えた。
その隙に直人は男から逃げた。放心状態の焼田を横目に一目散に走った。
焼田は携帯を取り出し、ある人に電話をかけた。
「ごめんなさい。逃しました」
車の前に千代が立っていた。
「千代さん!乗って!」
車に乗り込み、アクセルを全開にして、公園からぶっ飛んだ。
「だぁぁぁ!なんなんだ!あいつら!」
「と、とにかく。人通りがある所に行きましょう!」
「だぁぁ!そして、ここは一体どこなんだよ!」
「私も分かりません!」
土地勘もない場所で、あんな戦慄な状況に遭い、二人はパニックを起こしていた。
とにかく、あの公園から離れなければ。あの公園から遠くに、人目がある所に。とにかく、とにかく逃げなければ!
直人は、案内標識を頼りに、開けた街を目指した。しばらく走ると、ドラックストアや自動車販売店など店舗が連なる風景が広がった。二人はコンビニに停まり、頭の中を整理する事にした。出入り口の前に車を停め、とにかく人の目がある状況にした。
「とりあえず、何か飲もうか。何飲みたい?」
「わ、私も行きます。一人じゃ怖いので」
「そうだな」
二人は一緒にコンビニに入る事にした。
コンビニに入った瞬間、コーヒーの芳しい香りと揚げ物の油の匂いが混ざり合い、漂っていた。
「なんだか、お腹空いてきましたね」
「朝もコーヒーだけで済ませて、何も食べてなかったもんな。ついでに、お昼も買うか」
直人が弁当を選んでいると、千代はデザートコーナーや、お菓子コーナー、レジ横のスナックコーナーやら目移りが激しい。
「食べたいの入れてっていいよ」
「いいんですか⁈」
千代は、あれもこれもと両手に収まらない位の商品を抱えた。
「ごめんなさい。私が支払いしますので」
千代は、都合悪そうな顔で直人からカゴを引き取り、レジに並んだ。
「こんなに食い切れる?」
「一日では食べられないですけど。美味しそうだったので。あの家にいてから、こうゆうお菓子とか、なかなか食べられなかったので」
直人は車を端に寄せ、遅めの昼食を取る事にした。
「お菓子もダメだったの?」
「食事はいつもテイクアウトの物を食べてたの。玄関の前に収納箱があって、決まった時間に宅配の人が届けてくれるの。メニューは和食のローテーション。すぐ飽きたよ」
「何でテイクアウト?自分で作れないのか?」
「自分で作れば栄養が偏るから、テイクアウトの物をちゃんと食べろって」
「普通逆だろ。そりゃ、すぐ飽きるし、ストレス溜まるな」
「そう!ストレス溜まるから、お菓子とか食べたいって言ったら。血液数値が乱れたら、食わせてやるって」
「血液数値って、検診か何かやってたの?」
「あ…えっと。橘の知り合いの医者がたまに診察してたの。…その人、たまにだけど、こっそりお菓子をくれたんだ」
「へぇ。随分過保護だな。橘は一体何がしたいんだ?」
「さぁ?あれ?直人さん、顔腫れてる?」
千代は直人の顔をまじまじと見た。
「さっきの男に殴られて。全然大丈夫だよ。殴られた事すっかり忘れてたから」
直人は恥ずかしくなって千代から離れた。
「冷やした方がいいですよ!氷買ってきますよ!」
「全然大丈夫だから!そういえば!あいつら一体なんなんだ?千代さんを狙ってたけど。千代さん、何か思い当たる?」
「…全然知らない。でも、もしかしたら、橘が送り込んだのかもしれない」
「橘が⁈」
「私を連れ戻す為に。怪しい連中を使ったのかも」
「あんな輩を使うって事は、ヤクザとも一枚噛んでるのか?それに、橘にとって、千代さんは何かメリットがある存在なのか?」
千代は深刻そうに、深く重い表情をしていた。
「千代さん。あの家で株とか投資とかやってた?」
「ううん。全然。家では、一日中テレビや読書、軽い運動しかしてないよ」
「じゃあ、何のために連れ戻しにきたんだ?しかも、監禁までしていて」
「きっと、世間に汚れた物を見せたくなかったんだよ。昔の男だからね」
「だからって、輩を使う程の事か?」
考えれば、考える程答えが見つからない。世間一般の夫婦とは違う事はよく分かったが。嫁を連れ戻すだけで、こんなにも人を使わなければならないのか?独身の直人には分からなかった。
「夜はどうしますか?」
「徹夜で運転するのはきついな。泊まるとしたら、人目がある所がいいかもしれないな。流石に人目がある所では襲ったりしないだろう」
「そうですね」
二人は昼食を済ませた後、車中泊でき、かつ、人が集まる所を探した。
夕方、車中泊率が高い道の駅に移動した。
店舗が閉店していても、駐車場が埋まる程混雑していた。
「これ位混んでたら、あんなやつらも流石に襲って来ないだろ」
二人は夕食を車中で済ませた。そして、千代が急に質問をしてきた。
「直人さん、タバコ吸った事あります?」
「昔、試しに吸ったけど、合わなかったからやめたよ。何?吸う人?」
「ううん。吸った事ないから、吸ってみたいなぁと思って」
千代はデニムのポケットから、タバコとライターを取り出した。二人は車から降り、車の後方に回った。
「どうやって吸うんだろ?」
千代はタバコを1本取り出したが、首を傾げた。
「貸して」
直人は千代からタバコを受け取り、そのタバコを千代の口に咥えさせた。そして、タバコに火を付けた。
「軽く吸ってみて」
千代はタバコを通して空気を吸った。
「うえっ!!ゴホッ!ゴホッ!」
千代はタバコを口から離し、咽返した。
「大丈夫か⁈」
「くっさ!!悪かまりする!何これ⁈こんなの吸って美味しいとか意味分かんない!!ゴホッ!ゴホッ!」
千代の咳は止まらず、涙目になっていた。
「もう、やめときな。体に良くない」
「無理!無理!もうやめる!」
千代はタバコの火を地面に擦り付けて消した。千代は咳き込みながら車に戻った。
「タバコは諦めよ。直人さん、お酒は飲むよね?」
「まぁ、飲むけど」
「何飲む?やっぱり、ビール?」
千代は直人にビールを差し出した。
直人は唾を飲み込んだ。
「うー。飲みたいけど、あいつらがいつ襲ってくるか分からないし」
「そうだね。じゃあ、半分こしようか。先に飲んで」
「いや、飲んだら運転できないし」
「少しなら大丈夫でしょ」
千代が缶のプルタブを引っ張ると、炭酸が抜ける気持ちの良い音を立てた。
「はい」
「じゃあ、頂きます」
直人は喉を鳴らしながらビールを飲んだ。半分残そうと思っていたが、ぬるくても、あまりの旨さに2/3も飲んでしまった。
「ごめん。3日ぶりのビールがうまくて、ほとんど残ってない」
「あはは。じゃあ、全部飲んじゃて。私こっち飲むよ」
千代は袋からチューハイを取り出した。
「はい、乾杯!」
二人は初めて乾杯をした。千代はチューハイを口にすると、苦虫を噛んだような顔をした。
「にっが!チューハイって苦いの?」
「千代さん、酒飲まないの?」
「初めて飲んだ」
「嘘だろ!!」
「あっ…お酒弱いから普段は飲まないの。おばあちゃんの甘酒で酔っちゃう位だから」
「かなり弱いんだな。もう、なくなったよ」
直人は空のビールの缶を横に振った。
「早すぎ」
千代はちびちびとチューハイを飲んだ。
結局、千代は350mlのチューハイを半分残し、夢の国に落ちた。
直人は残りのチューハイを飲み干した。
寝息を立てる千代に毛布をかけ、直人も横になった。
直人は車内の天井を見上げ、ふと考えた。誰かと寝るなんて久しぶりだなと。
元カノがいたのは5年前位。この状況、5年ぶりだ!
直人は横目で千代を見た。
大きな寝息を吐き、酒の匂いがしていた。
初対面の訳アリ人妻。何もする気が起きなかった。
「はぁ。寝よ」
直人は複雑な気持ちで眠りに入った。期待はしていない。しかし、久しぶりに女性と一緒にいたので、気持ちが舞い上がっていた。
感情の上がり、下りが激しくて、気持ちがついていけてなかった。
直人がゆっくり覚醒すると、体に痛みが走った。硬い畳みで寝ていたせいで、背中が痛い。
「いてて」
「あ、起きました?」
直人が体を起こすと、目の前にボブヘアーの女がいた。
「え?誰?」
「ごめんなさい。ハサミ借りちゃいました」
「ああ!あんたか⁈髪切ったのか⁈腰まであったのにもったいないな」
「あいつの好みが、ロングヘアで強制的に伸ばしてたの。短いとすごく楽だね!長いと乾かすのに時間かかって、疲れるし、飽きちゃうのよ」
そう言い、女は顔を左右に振り、髪の軽さを実感していた。
「このウェアもあいつの好みなの。俺を家で迎えるなら、色気のあるものを着て待てって」
「家にほとんど帰らないのに、とんだエロジジイだな」
「ね!本っ当!気持ち悪いやつでしょ!」
「そんなに嫌なら、早く離婚しろよ」
「したくても、訳あってできないの」
女は深く思い詰めた顔をした。
「まぁ、家は出たけど、これからどうするんだ?」
「実家に戻る」
「へぇ、実家はどこなの?」
「北海道」
「北海道かぁ。遠いなぁ。ここからだと、新幹線か飛行機でいく感じか」
「新幹線や飛行機は使わない。できるだけ、あいつにバレないように逃げたいから」
「…車でいいなら、北海道まで送って行こうか?」
直人は恥ずかしさを隠す為、頭をかきながらボソリと言った。
「え?」
「俺、今無職だから。時間はあるからさ」
「いいの⁈」
「うん」
女は、目を輝かせながら直人を見た。
「ありがとう!」
女は嬉しさのあまり、直人に抱きついた。 勢いがつき、そのまま倒れ込んだ。
「いてて。そういえば、あんたの名前は?」
女は、直人に覆い被さったまま答えた。
「私は、橘……旧姓、佐藤千代」
「俺は、工藤直人」
直人はゆっくり体を起こした。冷静な振りをしていたが、内心心臓がバクバクしていた。久しぶりに女性とキスができる距離だったので、焦りと嬉しさのあまり脇から汗が吹き出た。
「車で行くとなると、青森からフェリーに乗る事になるよな。そしたら、どこかで車中泊になるな。一応、毛布位は持ってくか。そしたら、早速準備するか」
冷蔵庫は空っぽの為、二人はコーヒーを飲み、直人は身支度を始めた。リュックに、必要な着替えと携帯、財布を詰め込んだ。千代に直人の軽自動車に毛布を詰め込んでもらう。火の元を確認し、二人はアパートを出た。
「直人さん。北海道行く前に行きたい所があるの。こんな格好では行かれないし」
千代は恥ずかしそうに、自分が身につけている服を見た。
「そうだな」
道すがら、二人はATMに寄った後、ファッションセンターに寄った。
千代は、財布、斜め掛けバッグ、靴、靴下、デニム、ロンT、下着、キャップ、次々とカゴに品物を入れていく。
「直人さん、どっちがいいと思う?」
千代は、ピンクのロンTと白のロンTを体の前に持って、合わせていた。
「俺に聞く?女の子って何が好きか分かんないよ。好きな色選んだら?」
「直人さんは彼女いないの?」
「いたらこんなことしてないわ。いた時はあったけど」
「ふふ。デートってこんな感じなのかな?彼氏とか作った事ないまま、籍入れちゃったから。デートとか分からないんだよね。外から見たら、カップルに見えるかな?」
「千代…さんは、何歳なの?」
直人は初めて千代を下の名前で呼んだ。気恥ずかしくて、ぎこちなかった。
「…何歳に見えます?」
「にじゅう、4.5?」
「ふふ。直人さんは何歳?」
「俺は、29だけど」
「ふふ。若く見られて嬉しい。私は27だよ」
「年近いな。27には見えないけど」
会計後、千代は品物を持って、トイレに入った。数分待っていると、お待たせと千代が出て来た。
深く被ったキャップに、パーカー、デニムとカジュアルスタイルで出て来た。
「やっと、気持ち悪い服から解放されたわ。楽ちん、楽ちん」
千代の衣装チェンジが終わった所で、早速北海道に向かう事にした。
「なぁ、気になってたんだけど。何で橘と結婚する事になったんだ?かなり歳の差があると思うけど」
「まぁ、政略結婚みたいな感じよ」
「千代さん家、お金持ちなの?」
「一般家庭だよ。それに…父子家庭だったけど、家に父親がいなくて、おばあちゃんに育てられたの」
「実家にお婆さんはいるのか?」
千代は首を横に振った。
「去年、病気で亡くなったの」
直人は気まずくなり、話題を変えた。
「千代さんが家にいない事が分かったら、橘、探し回るんじゃないか?千代さんの実家にも行ってたりするかもよ」
「可能性はあると思う」
「見つかったら、また、あの家に連れ戻されるんじゃないか?」
「その時は死のうと思う」
直人は思わず急ブレーキを踏み、千代の体が前に屈んだ。
直人はハザードを焚き、車を路肩に寄せた。
「死ぬって…」
「本気よ。もし、奇跡的に見つからなかったら、おばあちゃんの形見を持って、山奥でひっそりと暮らそうと思うの」
「そうゆうの、警察とか弁護士とかに相談した方がいいんじゃない?」
千代は首を横に振った。
「多分、信じてもらえないし。これが世の中に広まったら、大変な事になる」
「大変?」
直人は疑問を抱いた。確かに、橘が妻にしている監禁は異常な行為だと思う。
しかし、監禁行為が世の中に広がって、大惨事になるとは思えない。
橘自体、大物の人間ではない。せいぜい、全国放送され、地域の奴らに叩かれる程度だと思うが。
「でも、死ぬのはダメだ」
「直人さんは気にしないで。北海道まで送ってほしいって言ったのは私だから。直人さんに迷惑がかかるなら、ここで降ろしてもいいよ」
「いや、北海道まで送るよ。ここまで来て降ろすなんて事しないよ」
「ありがとう。ごめんね」
千代は悲しげに少し俯いた。
アパートを出発し、3時間経過した。二人は近くの公園に寄り、休憩を取る事にした。
道中、千代はずっと喋っていたので、直人は運転に飽きなかった。
2年もまともに会話してないと、こんなにも饒舌なのだろうか。
「あー、ケツが痛い」
二人が背伸びをていると、後ろから女性の声がした。
「すみません!今、元彼に付き纏われてて、彼氏の振りしてもらえませんか?」
「えっ?彼氏の振り?」
直人は少し離れた所にある木々に、ひっそりと隠れる男の姿を見つけた。
「少しだけでいいんです!お願いします」
女性は直人の手を握った。
「ごめん。千代さん。すぐ戻るから」
「彼女さん。ごめんなさい。彼氏さん、借りますね」
「あ、うん。私は大丈夫」
千代は動揺していたが、どうしたらいいか分からず、了承する事しかできなかった。
女性は直人の左腕に抱きつくように歩いた。
「急にごめんなさい。散歩してたら、誰かに見られてる気がして。振り向いたら、元彼が付けてきて」
「あの、警察に相談しました?」
「はい。何度も相談したのですが、自宅周辺のパトロールしかしてくれなくて」
女性は涙ぐんだ。茶髪の長い髪に、垂れ目でおっとりとした雰囲気の女性。八方美人そうな彼女は、モラハラ男や陰湿なストーカー男に付き纏われそうなタイプだな、と直人は心の中で思った。
五分程歩いただろうか?直人は千代が気になった。空耳だろうか、なぜか千代の声が聞こえた。
「直人さーん!助けて下さい!」
振り向くと、千代は男に追いかけられていた。それも、木の影で見た女性のストーカー男だ。
「ちっ、あの野郎。ヘマしやがって」
女性から想像もしない言葉が聞こえた。
「焼田!女を押さえろ!」
筋骨隆々な男が千代を追いかけながら叫ぶ。
女性は向かってきた千代の左腕を掴んだ。その腕を背中に回しながら、千代は地べたに押さえつけられた。
「ぐっ!」
「千代さん!あんた、一体!」
女は、千代を無理矢理起こし、千代の首にナイフを添えた。
「焼田。よくやったぞ」
女は男の前に立ちはだかった。女は直人を睨みつけ、醜い形相をしていた。あの、可愛らしい顔は何処へ行ったのか。
「よくやった?ふざけるな。当初の作戦とは全然違うだろ。私がこいつから男を引き離し、お前がこいつを捉えるはずだったろう?ヘマして、こいつと鬼ごっこかよ。ほんっと使えない男」
「てめぇ。女だからって調子乗んなよ」
「口だけの男がうるせぇよ。手柄をあげてやるって啖呵切ってたくせに」
「あぁ?誰が口だけだって?」
「てな訳で、こいつを連れて行く。一歩でも動いたら…分かるよな」
焼田は千代の首元に当てたナイフをチラつかせた。
焼田が後ろに下がろうと動き出すと、焼田の後ろにいた男の手元が動いた。ポケットからキラリと鋭利な物が見えた。
直人の全身に悪寒が走った。嫌な予感が一瞬にして脳裏に過った。
「危ない!!!」
直人は咄嗟に、3人に向かってタックルした。
みんなまとまって、後ろに転んだ。
「千代!車に向かって走れ!」
千代は立ち上がり、急いで車に向かった。
直人の左頬に、男のストレートが入った。
「ぐぁぁ!」
直人は衝撃で倒れ込んだ。
男は直人に馬乗りになった。
「てめぇ、邪魔してくれるなよ。焼田を殺せるチャンスだったのに」
直人は地面に生えていた雑草を掴み、男の顔めがけて投げつけた。
「ぐぁぁぁぁぁ!!!」
土が男の目潰しとなり、男は悶えた。
その隙に直人は男から逃げた。放心状態の焼田を横目に一目散に走った。
焼田は携帯を取り出し、ある人に電話をかけた。
「ごめんなさい。逃しました」
車の前に千代が立っていた。
「千代さん!乗って!」
車に乗り込み、アクセルを全開にして、公園からぶっ飛んだ。
「だぁぁぁ!なんなんだ!あいつら!」
「と、とにかく。人通りがある所に行きましょう!」
「だぁぁ!そして、ここは一体どこなんだよ!」
「私も分かりません!」
土地勘もない場所で、あんな戦慄な状況に遭い、二人はパニックを起こしていた。
とにかく、あの公園から離れなければ。あの公園から遠くに、人目がある所に。とにかく、とにかく逃げなければ!
直人は、案内標識を頼りに、開けた街を目指した。しばらく走ると、ドラックストアや自動車販売店など店舗が連なる風景が広がった。二人はコンビニに停まり、頭の中を整理する事にした。出入り口の前に車を停め、とにかく人の目がある状況にした。
「とりあえず、何か飲もうか。何飲みたい?」
「わ、私も行きます。一人じゃ怖いので」
「そうだな」
二人は一緒にコンビニに入る事にした。
コンビニに入った瞬間、コーヒーの芳しい香りと揚げ物の油の匂いが混ざり合い、漂っていた。
「なんだか、お腹空いてきましたね」
「朝もコーヒーだけで済ませて、何も食べてなかったもんな。ついでに、お昼も買うか」
直人が弁当を選んでいると、千代はデザートコーナーや、お菓子コーナー、レジ横のスナックコーナーやら目移りが激しい。
「食べたいの入れてっていいよ」
「いいんですか⁈」
千代は、あれもこれもと両手に収まらない位の商品を抱えた。
「ごめんなさい。私が支払いしますので」
千代は、都合悪そうな顔で直人からカゴを引き取り、レジに並んだ。
「こんなに食い切れる?」
「一日では食べられないですけど。美味しそうだったので。あの家にいてから、こうゆうお菓子とか、なかなか食べられなかったので」
直人は車を端に寄せ、遅めの昼食を取る事にした。
「お菓子もダメだったの?」
「食事はいつもテイクアウトの物を食べてたの。玄関の前に収納箱があって、決まった時間に宅配の人が届けてくれるの。メニューは和食のローテーション。すぐ飽きたよ」
「何でテイクアウト?自分で作れないのか?」
「自分で作れば栄養が偏るから、テイクアウトの物をちゃんと食べろって」
「普通逆だろ。そりゃ、すぐ飽きるし、ストレス溜まるな」
「そう!ストレス溜まるから、お菓子とか食べたいって言ったら。血液数値が乱れたら、食わせてやるって」
「血液数値って、検診か何かやってたの?」
「あ…えっと。橘の知り合いの医者がたまに診察してたの。…その人、たまにだけど、こっそりお菓子をくれたんだ」
「へぇ。随分過保護だな。橘は一体何がしたいんだ?」
「さぁ?あれ?直人さん、顔腫れてる?」
千代は直人の顔をまじまじと見た。
「さっきの男に殴られて。全然大丈夫だよ。殴られた事すっかり忘れてたから」
直人は恥ずかしくなって千代から離れた。
「冷やした方がいいですよ!氷買ってきますよ!」
「全然大丈夫だから!そういえば!あいつら一体なんなんだ?千代さんを狙ってたけど。千代さん、何か思い当たる?」
「…全然知らない。でも、もしかしたら、橘が送り込んだのかもしれない」
「橘が⁈」
「私を連れ戻す為に。怪しい連中を使ったのかも」
「あんな輩を使うって事は、ヤクザとも一枚噛んでるのか?それに、橘にとって、千代さんは何かメリットがある存在なのか?」
千代は深刻そうに、深く重い表情をしていた。
「千代さん。あの家で株とか投資とかやってた?」
「ううん。全然。家では、一日中テレビや読書、軽い運動しかしてないよ」
「じゃあ、何のために連れ戻しにきたんだ?しかも、監禁までしていて」
「きっと、世間に汚れた物を見せたくなかったんだよ。昔の男だからね」
「だからって、輩を使う程の事か?」
考えれば、考える程答えが見つからない。世間一般の夫婦とは違う事はよく分かったが。嫁を連れ戻すだけで、こんなにも人を使わなければならないのか?独身の直人には分からなかった。
「夜はどうしますか?」
「徹夜で運転するのはきついな。泊まるとしたら、人目がある所がいいかもしれないな。流石に人目がある所では襲ったりしないだろう」
「そうですね」
二人は昼食を済ませた後、車中泊でき、かつ、人が集まる所を探した。
夕方、車中泊率が高い道の駅に移動した。
店舗が閉店していても、駐車場が埋まる程混雑していた。
「これ位混んでたら、あんなやつらも流石に襲って来ないだろ」
二人は夕食を車中で済ませた。そして、千代が急に質問をしてきた。
「直人さん、タバコ吸った事あります?」
「昔、試しに吸ったけど、合わなかったからやめたよ。何?吸う人?」
「ううん。吸った事ないから、吸ってみたいなぁと思って」
千代はデニムのポケットから、タバコとライターを取り出した。二人は車から降り、車の後方に回った。
「どうやって吸うんだろ?」
千代はタバコを1本取り出したが、首を傾げた。
「貸して」
直人は千代からタバコを受け取り、そのタバコを千代の口に咥えさせた。そして、タバコに火を付けた。
「軽く吸ってみて」
千代はタバコを通して空気を吸った。
「うえっ!!ゴホッ!ゴホッ!」
千代はタバコを口から離し、咽返した。
「大丈夫か⁈」
「くっさ!!悪かまりする!何これ⁈こんなの吸って美味しいとか意味分かんない!!ゴホッ!ゴホッ!」
千代の咳は止まらず、涙目になっていた。
「もう、やめときな。体に良くない」
「無理!無理!もうやめる!」
千代はタバコの火を地面に擦り付けて消した。千代は咳き込みながら車に戻った。
「タバコは諦めよ。直人さん、お酒は飲むよね?」
「まぁ、飲むけど」
「何飲む?やっぱり、ビール?」
千代は直人にビールを差し出した。
直人は唾を飲み込んだ。
「うー。飲みたいけど、あいつらがいつ襲ってくるか分からないし」
「そうだね。じゃあ、半分こしようか。先に飲んで」
「いや、飲んだら運転できないし」
「少しなら大丈夫でしょ」
千代が缶のプルタブを引っ張ると、炭酸が抜ける気持ちの良い音を立てた。
「はい」
「じゃあ、頂きます」
直人は喉を鳴らしながらビールを飲んだ。半分残そうと思っていたが、ぬるくても、あまりの旨さに2/3も飲んでしまった。
「ごめん。3日ぶりのビールがうまくて、ほとんど残ってない」
「あはは。じゃあ、全部飲んじゃて。私こっち飲むよ」
千代は袋からチューハイを取り出した。
「はい、乾杯!」
二人は初めて乾杯をした。千代はチューハイを口にすると、苦虫を噛んだような顔をした。
「にっが!チューハイって苦いの?」
「千代さん、酒飲まないの?」
「初めて飲んだ」
「嘘だろ!!」
「あっ…お酒弱いから普段は飲まないの。おばあちゃんの甘酒で酔っちゃう位だから」
「かなり弱いんだな。もう、なくなったよ」
直人は空のビールの缶を横に振った。
「早すぎ」
千代はちびちびとチューハイを飲んだ。
結局、千代は350mlのチューハイを半分残し、夢の国に落ちた。
直人は残りのチューハイを飲み干した。
寝息を立てる千代に毛布をかけ、直人も横になった。
直人は車内の天井を見上げ、ふと考えた。誰かと寝るなんて久しぶりだなと。
元カノがいたのは5年前位。この状況、5年ぶりだ!
直人は横目で千代を見た。
大きな寝息を吐き、酒の匂いがしていた。
初対面の訳アリ人妻。何もする気が起きなかった。
「はぁ。寝よ」
直人は複雑な気持ちで眠りに入った。期待はしていない。しかし、久しぶりに女性と一緒にいたので、気持ちが舞い上がっていた。
感情の上がり、下りが激しくて、気持ちがついていけてなかった。
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