転生して魔王になったので男漁り始めました。

加上鈴子

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1 めっちゃ地味クソ魔王です

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 元は、しがない会社員。
 お局にいびられ後輩からは嘲笑われ、そうされても仕方がないほど仕事もできず……というテンプレは、ない☆
 お局に相当する姉さんはいたけど、私の失敗をかばって一緒に部長に怒られてくれるような女神だ。後輩ちゃんだって、先輩と慕ってくれて可愛いことこの上ない。
 友達が失恋したら夜中でも会いに行き、夜景を見せながら缶コーヒーおごって慰める男前である。
「あんたが男なら良かったのに」
 と言われ続けた三十年。
 なんの因果か事故って転生、そんなおとぎ話が実在するなんてカケラも信じちゃいなかったのに、世は吾輩のもの魔王様である。こりゃもう、さぞかし猛々しい男になったのだろうと思いきや……。

 ……なぜか、女魔王なのである。

「魔王様! また書類を溜め込んで!」
 と叱られると、前世がよみがえる。
 そう。
 仕事は、できない方でした。
「だって一気に片付ける方が楽じゃん?」
「お言葉通りにさばいて下さってたら納得いたします。が、80枚溜め込んで10枚しか処理できないのでは、仕事は積み上がっていく一方です!」
 ごもっとも。
 だって出来ると思ってたんだも~ん……と口の中でだけゴニョゴニョ反論したが、面と向かっては言えない。自分が悪いって分かってるから。
「分かってましたから、簡単な案件については代わりに決裁を出してあります! しかし、こちらには目を通して下さい。場合によっては出張もありえます」
 手早く書類を分けてくれる、緑色のゼリー玉に針金みたいな手が生えている生き物。しかし、これがまた優秀なのである。
 積み上がっていた書類は、みるみる低くなった。
「も~、最初からそう言ってよ、パヤパったら脅かすんだから」
「魔・王・様!!」
 スライム亜種のパヤパは、ふよんと跳ねた。持つべきは優秀な部下だ。前の会社でも姐さんと後輩ちゃんには、ずいぶん助けられたものだった……。
 だが男運はなかった。
 この世界に来て魔王になって周囲を見渡せば、人間体なのは私だけ。
 惜しむらくは死ぬ前に、イッパツぐらいヤっときたかったなぁ。
 と、またもや前世に思いを馳せたせいか。
 この時の私は冴えていた。
「……人間界に進出?」
 稟議書に、人間界を襲って物資を調達したい旨が書かれていたのだ。なるほど出張もあり得るってのは、こういう話か。

「ふはははは物資と男を貢げ!」
 久しぶりに観た人間らしい営みの町並み、そして人間。
 人間は傷つけないように、建物だけをド派手に破壊して周る。壊すって、ストレス発散するよね!

 仕事については、ちゃっちゃと魔法でやっつけちゃうチート能力がない代わりに、優秀な部下には恵まれて、どうにか第1ステージクリアというところか。っていうか転生してまで仕事の山に悩まされるとか思わなかった。
 普通は転生って、もっとこう、華やかなモンじゃないのか。剣と魔法が入り乱れ、熱い闘いが繰り広げられるRPGの世界!
 などと思っていたので、人間界進出の件にはワクワクした。
 生まれた瞬間から成人な自分がマトモな人間だとは思えないが、完全に人間体な辺りも対処に困る。いっそ角とか牙とか欲しい。翼もアリです。でも生えてない。
 強いていえば身体は良い。おっぱい大きめ。Dとかある。多分。
 でも鏡の中からは、前世の私そのまんまですか? みたいな冴えない顔が、私を覗き込んでくる。栗色の髪、真っ黒な瞳。
 だが、そこは前世の記憶が威力を発揮するところだ。
 黒いマントを翻してボンテージ衣装ですごむ顔には、聖飢魔IIの閣下に引けを取らないメイクを施した。
 地味めな顔はメイク映えするのだ。

 襲った町は、悪徳商人が町民を締め上げて貯め込んでいるところだった。
 ちゃんとリサーチして町を厳選して調べ上げて、根回しした上で稟議書を回してきて、決裁が下りた瞬間に、総攻撃! 仕事できる部下は素晴らしい!
 魔王たる筋力や瞬発力はあって、現場作業には向いていた。ちなみに魔法も攻撃系なら行けるっぽい。良かった、お役に立ちました。魔宮に帰ったら魔法の鍛錬しないとなぁ。
 瓦礫の中で町民たちがすっかり縮み上がり、ひれ伏している。それでも視線が、ボンテージで強調されている胸を捉えているのは、見逃さなかった。私は商人の畏怖しながらも劣情を隠しきれていない視線に、むしろ安堵した。
 こっちの世界に、前世の価値観が通じて良かった。
 おっぱい万歳。
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