2 / 15
2 男の中の男な彼女
しおりを挟む
だがしかし。
現実(?)は、そう甘くなかった。
「お許しを……」
と、ひれ伏す男たちの、なんと情けないことか。
せっかく寄りどころを選んで攫って来たというのに、ことに及ぶには、ほど遠い。萎縮しまくってキスどころか、逆に反撃すらもない。
それよりはよっぽど、身の回りの世話をさせようと連れて来た女の子たちの方が、肝が座っている。
おかげで念願の脱☆処女も叶わないままである。
「魔王様、トミーはダメですね、あいつ。言い訳ばっかりで全然、私たちのことも手伝わないし」
と、女の子たちは辛辣だ。
女性陣は数日もしたら魔宮に慣れたようで、まだ侍女部屋と王の間と執務室の往復でしかないが、パタパタとよく動き、部屋を綺麗にしてくれる。腕に覚えのある数人は、台所も覗いているようだ。
魔宮に女性陣を連れてきたのは、荒れた町に独身女性や未亡人を放置して起こりうる人災から、彼女たちを守りたかったからだ。
逆に男手は、町の再建に欠かせないので、初夜が叶わないと翌朝には町に返している。その後に町でどんな噂になっているのか知らないが、どんな男を呼んでも反応が変わらないので、推して知るべし、である。
「化粧が濃いのかなぁ」
「魔王様たる威厳は必要です。それを乗り越えて寄り添ってくれる男性こそが、魔王様には相応しいと思います」
微笑んでくれる侍女ちゃんに癒やされる今日この頃。
私の愚痴に優しく寄り添ってくれる侍女をこそ抱いてやりたい。なんで男に転生しなかったんだよ。てか、この際、ユリもアリかなぁ?
それまで魔宮を手入れしてくれていたのは、パヤパたちスライム亜種だった。力仕事はゴーレムに来てもらっているし、適材適所、色々な魔物が出入りしている。
なら、なぜ人間も仕事に取り入れたのかというと、先の侵略が原因だ。町を襲ってインフレが起こり仕事にあぶれた人間たちに、どうにか生活を保証せざるを得なくなったのだ。
町の再建と治世に雇用を生ませて採算を取ろうとしたが治まりきらず、その余波が魔宮に来ている。
「そんなメンドクサイことしなくても、皆殺しにすりゃ良かったのに」
などという意見もあった。
さすが魔物である。っていうか魔物的には、そっちが正しい。奪って、殺す。お手軽だ。
「侍女がいれば雑用が押し付けられて、時間ができる。現にパヤパが魔宮を掃除してくれなくとも綺麗なままであり、その間に別の仕事ができる」
「魔王様もさぼれる、と」
「人聞きが悪いな! 私には別の、やらねばならぬことがあるのだ」
「それはそれは」
とスライム亜種は、ふよんと跳ねる。肩を竦めたかに見えた。
しかし、その言葉が実を帯び、魔王様は本当に忙しくなってしまったのである。
「魔王様、今日も勇者を名乗る一行が乗り込んで来ました!」
と報告が上がるたびに王の間に出向き彼らを出迎え、ひと勝負しなければならなくなったのである。出向く前にはメイクも必要だし、いざ戦ってみたら案外強かったりもして、一日仕事になるケースも珍しくない。
「今日、昼休みがなかった……」
と、ヘトヘトになりながらベッドに倒れ込む。会社なら完全にブラックだ。あ、魔界だけに黒いのか。
などと自ツッコミするも笑えない。うつ伏せのまま化粧も落とさず寝てしまいそうである。
「魔王様、お夜食は召し上がりますか?」
「いや、いい。ありがとう」
心配してくれる侍女リリカに、ゆるく手を振る。
金髪、碧眼。桜色の小さな唇に白い肌、細い首、腰、華奢な脚。連れてきた女性陣の中でも、ピカイチ可愛い少女である。
すると、リリカが「すみません」と謝るではないか。
「何が? お前のせいじゃない」
生前の持ち前の男前を発揮して、つい微笑んでしまう。聖飢魔IIメイクのままだが。
すると彼女が洗面器を用意しながら、
「実は……」
などと言い出した。
「私、王女なんです」
「……はい?」
たまたま連れてきた町娘がたまたま王女とは、これいかに。
「王宮に渦巻く陰謀から身を隠して、ついでに一人でも生きていけるようにって、家事全般たたき込まれながら育ったんです。でも私がさらわれたと知った国王が、国中にお触れを出したと、つい先日聞きました」
「って、誰から、そんな、」
と呟いてから思いついて、嗚呼とため息が漏れてしまった。
連日とまでは言わないが、自分が征服した町から男を連れてきて、夜伽をさせようとしていたではないか。彼らの食事と寝場所を世話するよう、リリカたちに命じたのだ。情報源は、そこからだ。
「それで最近、勇者様ご一行の来訪が多いのかぁ」
顔を拭いながら、再び深くベッドに沈みこむ。もう起きれない。今日は寝る。
現実(?)は、そう甘くなかった。
「お許しを……」
と、ひれ伏す男たちの、なんと情けないことか。
せっかく寄りどころを選んで攫って来たというのに、ことに及ぶには、ほど遠い。萎縮しまくってキスどころか、逆に反撃すらもない。
それよりはよっぽど、身の回りの世話をさせようと連れて来た女の子たちの方が、肝が座っている。
おかげで念願の脱☆処女も叶わないままである。
「魔王様、トミーはダメですね、あいつ。言い訳ばっかりで全然、私たちのことも手伝わないし」
と、女の子たちは辛辣だ。
女性陣は数日もしたら魔宮に慣れたようで、まだ侍女部屋と王の間と執務室の往復でしかないが、パタパタとよく動き、部屋を綺麗にしてくれる。腕に覚えのある数人は、台所も覗いているようだ。
魔宮に女性陣を連れてきたのは、荒れた町に独身女性や未亡人を放置して起こりうる人災から、彼女たちを守りたかったからだ。
逆に男手は、町の再建に欠かせないので、初夜が叶わないと翌朝には町に返している。その後に町でどんな噂になっているのか知らないが、どんな男を呼んでも反応が変わらないので、推して知るべし、である。
「化粧が濃いのかなぁ」
「魔王様たる威厳は必要です。それを乗り越えて寄り添ってくれる男性こそが、魔王様には相応しいと思います」
微笑んでくれる侍女ちゃんに癒やされる今日この頃。
私の愚痴に優しく寄り添ってくれる侍女をこそ抱いてやりたい。なんで男に転生しなかったんだよ。てか、この際、ユリもアリかなぁ?
それまで魔宮を手入れしてくれていたのは、パヤパたちスライム亜種だった。力仕事はゴーレムに来てもらっているし、適材適所、色々な魔物が出入りしている。
なら、なぜ人間も仕事に取り入れたのかというと、先の侵略が原因だ。町を襲ってインフレが起こり仕事にあぶれた人間たちに、どうにか生活を保証せざるを得なくなったのだ。
町の再建と治世に雇用を生ませて採算を取ろうとしたが治まりきらず、その余波が魔宮に来ている。
「そんなメンドクサイことしなくても、皆殺しにすりゃ良かったのに」
などという意見もあった。
さすが魔物である。っていうか魔物的には、そっちが正しい。奪って、殺す。お手軽だ。
「侍女がいれば雑用が押し付けられて、時間ができる。現にパヤパが魔宮を掃除してくれなくとも綺麗なままであり、その間に別の仕事ができる」
「魔王様もさぼれる、と」
「人聞きが悪いな! 私には別の、やらねばならぬことがあるのだ」
「それはそれは」
とスライム亜種は、ふよんと跳ねる。肩を竦めたかに見えた。
しかし、その言葉が実を帯び、魔王様は本当に忙しくなってしまったのである。
「魔王様、今日も勇者を名乗る一行が乗り込んで来ました!」
と報告が上がるたびに王の間に出向き彼らを出迎え、ひと勝負しなければならなくなったのである。出向く前にはメイクも必要だし、いざ戦ってみたら案外強かったりもして、一日仕事になるケースも珍しくない。
「今日、昼休みがなかった……」
と、ヘトヘトになりながらベッドに倒れ込む。会社なら完全にブラックだ。あ、魔界だけに黒いのか。
などと自ツッコミするも笑えない。うつ伏せのまま化粧も落とさず寝てしまいそうである。
「魔王様、お夜食は召し上がりますか?」
「いや、いい。ありがとう」
心配してくれる侍女リリカに、ゆるく手を振る。
金髪、碧眼。桜色の小さな唇に白い肌、細い首、腰、華奢な脚。連れてきた女性陣の中でも、ピカイチ可愛い少女である。
すると、リリカが「すみません」と謝るではないか。
「何が? お前のせいじゃない」
生前の持ち前の男前を発揮して、つい微笑んでしまう。聖飢魔IIメイクのままだが。
すると彼女が洗面器を用意しながら、
「実は……」
などと言い出した。
「私、王女なんです」
「……はい?」
たまたま連れてきた町娘がたまたま王女とは、これいかに。
「王宮に渦巻く陰謀から身を隠して、ついでに一人でも生きていけるようにって、家事全般たたき込まれながら育ったんです。でも私がさらわれたと知った国王が、国中にお触れを出したと、つい先日聞きました」
「って、誰から、そんな、」
と呟いてから思いついて、嗚呼とため息が漏れてしまった。
連日とまでは言わないが、自分が征服した町から男を連れてきて、夜伽をさせようとしていたではないか。彼らの食事と寝場所を世話するよう、リリカたちに命じたのだ。情報源は、そこからだ。
「それで最近、勇者様ご一行の来訪が多いのかぁ」
顔を拭いながら、再び深くベッドに沈みこむ。もう起きれない。今日は寝る。
0
あなたにおすすめの小説
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる