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3 選ばれし者、多すぎだろ
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翌朝。
あれは悪い夢だったんじゃねと思いながら目覚めたが、どうやら現実である。
天蓋つきのベッド。古びてはいるが丁寧に掃除された部屋は、前世の私のアパートじゃない。格子戸の向こうに観える景色は、つる薔薇の張り巡らされた、鬱蒼とした森。森の中には、魔物たちが棲んでいる。
森を抜ければ人間の国がある。
人間界進出のために魔界を人間界とリンクさせたのが間違いだった。関所は作ったんだけど、あんまり効果がない。
今朝も洗面器を持って来てくれたリリカに、
「ねぇ」
と昨夜の話を確認すると。
「本当です」
まっすぐな、キラキラした瞳で頷かれるではないか。
「っていうか、ちょっと待って。なんかリリカ、喜んでない?」
「だって」
と、はにかんだ笑みを見せる。くそ可愛いな。
「しょぼい辺境の町で身を潜めているしかなかった私が、お父様の役に立っているんです。魔王を倒せば賞金が出るし王女と結婚できるというので、国民が湧いています。おかげで王様強奪を目論んでいた男爵一派も勇者採用に奔走せざるを得なくなったし」
「複雑な気持ちになるわね」
苦笑するしかない。こっちは死傷者が出ないように配慮してるってのに、向こうはヤる気満々だ。
「人が集まるので雇用も増えて、町が活気づいてます。魔王様が攻め入って来られた時は驚きましたが、宣戦布告もあったので皆、避難できましたし。魔王様なら負けないでしょうし」
分かってくれてる子がいたら、お母さん頑張れるわー。
たとえ乗せられてるんだとしても、こういう躍らされ方は嫌いじゃない。私は顔を洗って、口元がニヤけるのを隠した。
疲れて、男を呼び寄せる暇じゃなくなったけど、充実しているのを感じる。
ジョギング10km、筋トレ一式。
魔法の鍛錬は先生を呼び寄せた。魔物たるもの、息をするように魔法が使えて当たり前なんだろうけど、私の場合は前世の記憶が邪魔をして、うまく使えない。
それに「息をするように」といったって、呼吸にしても良し悪しがあるのだ。筋肉の鍛え方ひとつにしても、きちんと学べば身体は変わる。
「近頃、鍛錬に関しては真面目になりましたね」
パヤパが傍らで飛び跳ねている。喜んでいるようだ。
一通りメニューをこなしてシャワーを浴びて、庭でお茶をしながら書類に目を通す。下手に侵略なぞしたせいで案件が増えたけど、これはこれで読むだけなら楽しい。決断したり、実行するのは大変だ。
「王女様ねぇ……」
小さく呟いて、お茶を飲む。
心地よい風が吹いてくる。良い季節だ。
さて、どうしたものか。
リリカは、魔宮を気に入っている。ここにいる方が国の役に立っていると思っているようだ。実際、今はそうなっている。
「大変です!」
衛兵をさせているゴーレムが、ドシドシと飛び込んでくる。
またか? と思ったら、やっぱりだった。
「また勇者を名乗る一行が、森に侵入しました!」
「ご苦労なこと」
リリカがここにいる限り。そして私が負けない限り、勇者の到来はなくならない。とはいえ負ける訳には行かない。魔物たちの棲む森を占拠される訳には行かない。
ゴーレムに指示するのは、「迎え撃て」ではなく「逃げろ」だ。
「無駄死には必要ない! 相手は軍隊じゃない」
たかが数人だ。
「私が出る」
言いながら立ち上がり、メイクと着替えのため自室に戻る。
これで午後のお仕事サボれたわ~と思ったのは、ここだけの内緒だ。
あれは悪い夢だったんじゃねと思いながら目覚めたが、どうやら現実である。
天蓋つきのベッド。古びてはいるが丁寧に掃除された部屋は、前世の私のアパートじゃない。格子戸の向こうに観える景色は、つる薔薇の張り巡らされた、鬱蒼とした森。森の中には、魔物たちが棲んでいる。
森を抜ければ人間の国がある。
人間界進出のために魔界を人間界とリンクさせたのが間違いだった。関所は作ったんだけど、あんまり効果がない。
今朝も洗面器を持って来てくれたリリカに、
「ねぇ」
と昨夜の話を確認すると。
「本当です」
まっすぐな、キラキラした瞳で頷かれるではないか。
「っていうか、ちょっと待って。なんかリリカ、喜んでない?」
「だって」
と、はにかんだ笑みを見せる。くそ可愛いな。
「しょぼい辺境の町で身を潜めているしかなかった私が、お父様の役に立っているんです。魔王を倒せば賞金が出るし王女と結婚できるというので、国民が湧いています。おかげで王様強奪を目論んでいた男爵一派も勇者採用に奔走せざるを得なくなったし」
「複雑な気持ちになるわね」
苦笑するしかない。こっちは死傷者が出ないように配慮してるってのに、向こうはヤる気満々だ。
「人が集まるので雇用も増えて、町が活気づいてます。魔王様が攻め入って来られた時は驚きましたが、宣戦布告もあったので皆、避難できましたし。魔王様なら負けないでしょうし」
分かってくれてる子がいたら、お母さん頑張れるわー。
たとえ乗せられてるんだとしても、こういう躍らされ方は嫌いじゃない。私は顔を洗って、口元がニヤけるのを隠した。
疲れて、男を呼び寄せる暇じゃなくなったけど、充実しているのを感じる。
ジョギング10km、筋トレ一式。
魔法の鍛錬は先生を呼び寄せた。魔物たるもの、息をするように魔法が使えて当たり前なんだろうけど、私の場合は前世の記憶が邪魔をして、うまく使えない。
それに「息をするように」といったって、呼吸にしても良し悪しがあるのだ。筋肉の鍛え方ひとつにしても、きちんと学べば身体は変わる。
「近頃、鍛錬に関しては真面目になりましたね」
パヤパが傍らで飛び跳ねている。喜んでいるようだ。
一通りメニューをこなしてシャワーを浴びて、庭でお茶をしながら書類に目を通す。下手に侵略なぞしたせいで案件が増えたけど、これはこれで読むだけなら楽しい。決断したり、実行するのは大変だ。
「王女様ねぇ……」
小さく呟いて、お茶を飲む。
心地よい風が吹いてくる。良い季節だ。
さて、どうしたものか。
リリカは、魔宮を気に入っている。ここにいる方が国の役に立っていると思っているようだ。実際、今はそうなっている。
「大変です!」
衛兵をさせているゴーレムが、ドシドシと飛び込んでくる。
またか? と思ったら、やっぱりだった。
「また勇者を名乗る一行が、森に侵入しました!」
「ご苦労なこと」
リリカがここにいる限り。そして私が負けない限り、勇者の到来はなくならない。とはいえ負ける訳には行かない。魔物たちの棲む森を占拠される訳には行かない。
ゴーレムに指示するのは、「迎え撃て」ではなく「逃げろ」だ。
「無駄死には必要ない! 相手は軍隊じゃない」
たかが数人だ。
「私が出る」
言いながら立ち上がり、メイクと着替えのため自室に戻る。
これで午後のお仕事サボれたわ~と思ったのは、ここだけの内緒だ。
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