勇者太郎の冒険【小説版】

ヨシダ

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~第三章~

第14話 パーティーを組もう!

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太郎が勇者としてやっていこうと決めてから数日。
勇者アカデミーでは相変わらず役に立つのか立たないのかわからない授業が行われていた。さて今日はいつもとは少し違う話をしているようである。

「お前らァ!いよいよ今日からパーティーを組むで!覚悟はいいかァ!」

網走先生の大きな声が教室に響く。

「と、その前に勇者イサモノ、お前パーティーってわかるか?」

突然の問いかけに戸惑う太郎。

「えっ?お誕生日会とかですか?」

「お前アホの国のアホ王子やな」

太郎は王子の称号を手に入れた。

「パーティーっちゅうのは勇者をリーダーにしたグループの事や」

「ああ、あのRPGとかの」

勇者アカデミーには勇者以外にも沢山の職業を選択した生徒がいる。例えば太郎の幼なじみ、安倍の職業は僧侶だし、卒業生である太郎の母は元・女戦士だ。
そして勇者アカデミーではそんな様々な職業の生徒達と、RPGのようにパーティーを組む規則があるのである。

「お前らは各パーティーのリーダーとして活動するんや。仲間にしたい奴は他のクラスから引っ張ってくるとええ。欲しい人材には片っ端から声を掛けてスカウトあるのみ!」

成程、めぼしい人材を自らスカウトしていくとは、なかなか大変そう&地味な作業である。

「もちろんカリスマ性のある勇者の元には向こうから仲間が集まってくるかもしれんし、人望のない勇者は仲間が一人も集まらないかもしれない……。どんなパーティーになるかはお前ら次第って事やな」

そう言われると、どちらかと言えば引っ込み思案でリーダーシップのない太郎は気が重くなるのであった。果たして自分みたいな勇者について来てくれる仲間は居るのだろうか?

そんな不安を抱く太郎に、一枚の用紙が配られた。紙には番号が振ってある。

「勇者クラスには全部で60人の生徒がいるから、60組のパーティーができる。今配った番号は自分のパーティーのナンバーだからしっかり覚えておくんやで!」

どうやらこの紙にはパーティーのナンバーが書かれているらしい。確かに学校で班を作る時も一班、二班と番号を振るし、この方が管理しやすいのかもしれない。
太郎はおもむろに手元の紙を見た。

『42』

(42番……。しに……死に……)

細かい事を気にする太郎にとって、この数字は破滅的である。

(仲間集めかあ……。しかもリーダーって、学級委員すらやった事ないのに)

不安で溜息が止まらない太郎だったが、とりあえず仲間を探しに他の教室へと向かうのだった。

さて、太郎が来たのは僧侶クラス。教室内にはすでにたくさんの勇者たちがスカウトに来ていた。
騒がしい教室の中、太郎は大きな声で安倍に呼びかけた。

「おーい安倍―!ぱっつんー!おかっぱー!ちびまる子ちゃーん!」

「誰がちびまる子ちゃんだって?」

屈辱的な呼びかけにすぐさま安倍は駆けつけた。そして怒りの鉄拳を一発お見舞いしてくれた。
安倍にどつかれつつも、馴染みの顔を見られてほっとしている太郎である。

「あのさ、安倍。俺の仲間になって欲しいんだけど」

「えっ?」

いきなりのスカウトに安倍は少々驚き気味である。

「俺が?いいの?」

太郎はまるで初恋の相手に告白する女子中学生のようなモジモジした態度で、安倍を口説き落とす。

「うん……。昔からの友達だし……ダメかな?」

「いや……。いいよ、別に」

「えっほんと?」

若干薄気味悪い雰囲気だが、微笑ましく照れ笑いする二人は、無事にパーティーを組む事となった。
こうして僧侶・安倍を仲間にした太郎は、見事42番パーティーを結成した!
なお二人の心の声はこうである。

(ま、太郎の奴ボケてるし面倒な事は全部押し付けちゃえばいいや)

(知り合い安倍しかいないからなー。他人よりマシだし仲良くしとこ)

一見和やかだが内心ドロドロとした思惑が渦巻いている。

「にしても太郎、随分やる気になったじゃん。あんなに勇者嫌がってたのにさ」

「うん、色々考えたけど、勇者も結構いいかな―って」

色々考えたのではなくおだてられて調子に乗っただけである。

二人は食堂へと移動した。
勇者アカデミーの食堂は大勢の生徒を受け入れるだけあってとても広く、食事以外にミーティングなどで利用する生徒も多い。
太郎と安倍は食堂の大きなテーブルを囲み話し合いを始めた。

「で、仲間について話したいんだけどさ、先生に貰った資料を見て考えたんだ」

太郎が差し出した資料には勇者アカデミーの職業一覧が書かれている。

「やっぱり戦士がいと思う!強そうだし!」

「うん、いいんじゃない」(どうでも)

ハッキリ言って安倍は無関心である。

「でもさー、スカウトするって……。俺口下手だしどうしよう」

「じゃあ気になる人にそっと手紙を手渡しすればいいんじゃない?」

「やめてよどこぞの政治家じゃあるまいし」

「とにかく決まったならさっさとスカウトしに行こうぜ!」

そう言うと安倍は強引に太郎の腕を引っ張った。

「ちょ、ちょっと待ってよ!まだ心の準備が!」

「早くしないといい人材とられちゃうだろ~?」

能天気な安倍は緊張する太郎の気持ちなどまったく考えず、戦士クラスまで連れて行くのだった。

【つづく】
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