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二十八話
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「お前達、何しに来たんだ。避難していろ」
ゲンナイ先生はシトラ学園長の前に立ち、魔人に剣を向けている。
「でも、シトラ学園長が大怪我しています」
「生徒会長と風紀院長も、早く治療しないとっ」
フレイとライトは攻撃を受けて気絶しているパッシュさんとハンスさんのもとに駆け寄って抱えた。
オーガと相打ちになる程度の実力しかないゲンナイ先生では、あの魔人に勝てないとわかっていた。
シトラ学園長を連れて逃げてくれれば、私が魔人と会話する余地があったのだけれど、頭に血が上っているのか冷静さを掻いている。
「ゲンナイ……、お前じゃ、あいつに勝てん……、生徒を連れて逃げるんだ」
シトラ学園長は額から真っ赤な血を流し、剣先を魔人に向けているゲンナイ先生の足首を弱々しく掴んだ。
「生憎、俺は元近衛騎士なんでね。主を守るって使命が魂にまで刻まれちまっている。それに惚れてる女を見捨てたら、男がすたるだろ」
ゲンナイ先生は逃げる素振りを見せず、魔人の気を引かせるためか、自ら攻撃に出る。
心底面倒臭そうな顔の魔人はゲンナイ先生の鋭い剣を何食わぬ顔で回避し、小さな魔法陣を展開して風の矢を腕や腹、脚に狙い撃つ。最初っから頭を狙わず、簡単に殺そうとしない。
「糞ったれ……、ほんと年は取りたくないもんだな」
ゲンナイ先生の体はフレイとライトがパッシュさんとハンスさんを連れ出す間にボロボロになっていた。
腕と脚、腹に数センチメートルの風穴があいており、血が石畳の上にしたたり落ちている。
「こんな雑魚たちに、ザウエルが負けるわけないっす。でも、確かにここにザウエルの反応がある。おかしいっすね」
魔人は顎に手を当て、顔をしかめた。
「あんたら『黒羽の悪魔』ってやつを知っているっすか?」
「『黒羽の悪魔』だって? こんな所にSランク冒険者がいるわけねえだろ。まあ、バカみたいに強い奴は知っているが、そいつは冒険者じゃない。ただの生徒だ……」
ゲンナイ先生は片膝をつき、息が絶え絶えの中、小さく笑っていた。背後でシトラ学園長も口をつぐんでいる。
彼女は私の存在を知っているはずだった。加えて、私が魔人と遭遇した件もルドラさんから聞かされているはずだ。
「ほんと、そんなダサい名前の冒険者は知らないね。この学園にいるのはバカな男どもばかりさ」
シトラ学園長は内臓に大きなダメージを受けたのか口から血を流す。重症にも拘らず立ち上がる。そのままゲンナイ先生のもとによぼよぼと歩いていく。
「知らない者に用はない。さっさと消え失るっす」
魔人が手の平を身動きが取れないゲンナイ先生とシトラ学園長に向けた。小さな手の平の前に魔法陣が展開し、パッシュさんとハンスさんを吹っ飛ばした風属性魔法が放たれる。
「おっらぁあ」
「はぁああっ」
フレイとライトが飛び出し、風の砲弾をぶった切りながら鋭い視線を魔人に向けていた。
「な……、お前達、何で戻って来たんだ」
「俺はもう逃げないって決めたんですよ。あんな惨めな思い、二度としたくありません」
「ぼくは絶対に強くなるって決めたんです。逃げるなんて選択肢は最初からありません」
フレイとライトは互いに真っ直ぐ魔人を見つめていた。
パッシュさんやハンスさん、シトラ学園長、ゲンナイ先生を返り討ちにしている魔人相手に二人が立ち向かったところで焼石に水。このままじゃ、怪我人が増えるばかり。
――た、助けないと。助けないと、皆が殺されかねない。なんで体が動かないの。
私は両肩を抱くように縮こまり、その場で固まっていた。私が戦わなくとも、ほかのだれかが助けてくれるはずだ。当時の師匠のような者が。でも、来なかったら私以外の村人のように死ぬかもしれない。
「キアスが戻ってくるまでの時間稼ぎでもできれば御の字」
「うん。きっとキアスくんなら魔人にだって負けない」
フレイとライトはゲンナイ先生に止められても、一切立ち止まらず攻撃に出る。私の指導で得た体力と粘り強さを発揮し、魔人を翻弄していた。
だが、所詮Dランククラスの生徒。魔人が明らかに手を抜いていても攻撃が一度も当たらない。それでも両者は魔人の攻撃を受けながら何度も立ち上がる。
そのため、戦っている魔人からしたら食事中に纏わりついてくるハエくらい鬱陶しくて仕方がないだろう。
「あぁ、ほんと邪魔っす。『土人形』」
魔人は崩れた園舎や地面の土砂を利用し、ゴーレムを数十体作り出した。フレイとライトへの攻撃かと思ったが、建物内に侵入していくため、ザウエルを探すための魔法だと察する。
ただ、多くの生徒たちが悲鳴を上げた。襲われているようだ。
フレイとライトの体力も無限ではないため、魔人が本気を出し、空を飛び始めれば手も足も出ず、風の矢を大量に放たれ体に小さな風穴を何個も作り大怪我して地面に倒れ伏す。
「くっそぉ……」
「うぐぅ、ぼくたちだけじゃ……、時間も稼げないのか」
「雑魚が何匹集まろうと雑魚なのは変わらない。殺す価値もないし、雑魚は大物を釣るいい餌になるっす。でも、二人もいらないか」
魔人はライトの頭に足を乗せる。フレイやゲンナイ先生、シトラ学園長も声を荒らげているが、聞く耳を持たない。
「その足をどけろ」
私はライトが殺されそうになった瞬間、いつの間にか、物陰から飛び出していた。
「あぁ? ぐふっ」
私は振り返った魔人の顔を蹴り飛ばし、崩れた園舎に直撃させる。
軽々蹴り飛ばされた魔人の体は園舎に衝突。巨大な建物に蜘蛛の巣状のひび割れが一瞬で走る。
「み、ミニスカート」
「ぱ、パンティー」
フレイとライトは石畳に倒れ込んだ状態で、私を見上げるような視線を向けてきた。
冒険者服を換装している時間がなく、スカートの中身をはっきりと見られてしまった。もう、男と言い張るのは厳しい。きっと、この学園に私の居場所はなくなるだろう。
――動けてよかった。やっぱり、私以外、誰も助けに来なかった。今、彼らを助けられるのは、私しかいなかったんだ。
「いたいっすね。おれの顔をいきなり蹴りつけてきやがって。お前は誰っすか?」
魔人は瓦礫の中から出て来て、血唾を吐き捨てながら私に話しかけてきた。
「私はキアス・リーブン」
「……キアス・リーブン。へえ、おれを蹴り飛ばす力、全身から溢れ出す魔力、魔王様を思わせる強者の雰囲気。そうっすか、お前が。『黒羽の悪魔』」
「さあ、それはどうかな。御想像にお任せするよ」
私はフレイとライト、ゲンナイ先生、シトラ学園長に回復魔法を軽く駆けて止血。また、無茶しないよう体が動かせないくらいの疲労は残しておいた。
「おれの名前はカプリエル。ザウエルはどこだ。お前なら知っているっすよね」
「安心して、すぐに会えるよ」
「お前、まさかザウエルを……。許さんっ」
カプリエルは学園の瓦礫と地面の土砂を利用し、巨大なゴーレムを錬成。私目掛けて突っ込ませてくる。加えて、本人は翼で空を飛び、空中に何十枚もの魔法陣を展開すると風の矢を土砂降りの雨と同じくらい発射してきた。
「『転移魔法陣』」
空中に広がった魔方陣に風の矢は降り注ぐ。だが、その下にいる私たちのもとに矢は貫通してこなかった。
私は『異空間』から羽根ペンを一本取り出し、体内で練り上げた魔力を注ぎ込む。真っ白な羽根ペンは天使の羽のように輝きを増していき、薄暗い雨雲の下で眩い光を放つ。
前方からゴリラを思わせる一〇メートル近いゴーレムが巨大な拳を握りしめて振りかざしてきた。
「『加速(アクセル)』」
詠唱と共に魔法陣を展開し、手に持っていた羽根ペンを勢いよく投げ込む。
魔力過多になっている羽根ペンが魔法陣を通過すると、魔法が発動し、羽根ペンの速度が上がる。
加速した先に通過した魔法陣と同じ魔法陣が展開してあり、何枚も通過していく。
初速の二倍、四倍、八倍、一六倍と増えていき、音速を優に超えた羽根ペンの先端がゴーレムの拳に衝突。拳を粉砕した後、胸部を貫通し、速度が変わらないままカプリエルの腹に突き刺さる。貫通はしない。
「み、見掛け倒しもいいところっすね」
「『拘束』」
羽根ペンと私は魔力で繋がっており、鎖の形に変えると可視化できるようになる。
私の右手とカプリエルの腹に刺さっている羽根ペンが鎖で繋がっており、カプリエルの体に纏わりついていく。
翼にも魔力の鎖が纏わりつき、機能しなくなっていた。だが、魔法で浮いている影響か、落ちてこない。
「よっこいしょっ」
釣り竿で魚を釣るように鎖を勢いよく引っ張り、大きく振りかぶった後に地面に振り下ろす。
先端についたカプリエルを、鞭の先のように音速を超えた勢いで地面に叩きつけた。
石畳が何十枚も浮かびあがるほどの衝突で、普通の人間なら死んでいてもおかしくない。だが相手は魔人だ。人間よりもずっと頑丈に出来ている。
「う、動けないっす。ち、力が入らない……」
カプリエルは正座しすぎて脚が痺れているような情けない恰好で、身動きが取れなくなっていた。魔力を吸い取りながら拘束しているため、今のカプリエルが魔法を使うのは不可能だ。
私はカプリエルに近づき、突き出されたお尻の近くで垂れている尻尾を掴む。
「んぁっ。お、おまえ、何をする気っすか。殺すなら、さっさとやれ。捕まえて拷問したところで情報は一切吐かないっす。なんなら、この場で舌を……」
カプリエルは、舌を噛み千切ろうとした。
「殺しはしないよ。『形態変化』」
私はカプリエルが舌を噛み切る前に、体を羽根ペンの形にしてしまう。人族の国に攻め込んできた魔族を捌くのは魔族領の法律だ。
そうなると案外軽い罰になってしまう。
ゲンナイ先生はシトラ学園長の前に立ち、魔人に剣を向けている。
「でも、シトラ学園長が大怪我しています」
「生徒会長と風紀院長も、早く治療しないとっ」
フレイとライトは攻撃を受けて気絶しているパッシュさんとハンスさんのもとに駆け寄って抱えた。
オーガと相打ちになる程度の実力しかないゲンナイ先生では、あの魔人に勝てないとわかっていた。
シトラ学園長を連れて逃げてくれれば、私が魔人と会話する余地があったのだけれど、頭に血が上っているのか冷静さを掻いている。
「ゲンナイ……、お前じゃ、あいつに勝てん……、生徒を連れて逃げるんだ」
シトラ学園長は額から真っ赤な血を流し、剣先を魔人に向けているゲンナイ先生の足首を弱々しく掴んだ。
「生憎、俺は元近衛騎士なんでね。主を守るって使命が魂にまで刻まれちまっている。それに惚れてる女を見捨てたら、男がすたるだろ」
ゲンナイ先生は逃げる素振りを見せず、魔人の気を引かせるためか、自ら攻撃に出る。
心底面倒臭そうな顔の魔人はゲンナイ先生の鋭い剣を何食わぬ顔で回避し、小さな魔法陣を展開して風の矢を腕や腹、脚に狙い撃つ。最初っから頭を狙わず、簡単に殺そうとしない。
「糞ったれ……、ほんと年は取りたくないもんだな」
ゲンナイ先生の体はフレイとライトがパッシュさんとハンスさんを連れ出す間にボロボロになっていた。
腕と脚、腹に数センチメートルの風穴があいており、血が石畳の上にしたたり落ちている。
「こんな雑魚たちに、ザウエルが負けるわけないっす。でも、確かにここにザウエルの反応がある。おかしいっすね」
魔人は顎に手を当て、顔をしかめた。
「あんたら『黒羽の悪魔』ってやつを知っているっすか?」
「『黒羽の悪魔』だって? こんな所にSランク冒険者がいるわけねえだろ。まあ、バカみたいに強い奴は知っているが、そいつは冒険者じゃない。ただの生徒だ……」
ゲンナイ先生は片膝をつき、息が絶え絶えの中、小さく笑っていた。背後でシトラ学園長も口をつぐんでいる。
彼女は私の存在を知っているはずだった。加えて、私が魔人と遭遇した件もルドラさんから聞かされているはずだ。
「ほんと、そんなダサい名前の冒険者は知らないね。この学園にいるのはバカな男どもばかりさ」
シトラ学園長は内臓に大きなダメージを受けたのか口から血を流す。重症にも拘らず立ち上がる。そのままゲンナイ先生のもとによぼよぼと歩いていく。
「知らない者に用はない。さっさと消え失るっす」
魔人が手の平を身動きが取れないゲンナイ先生とシトラ学園長に向けた。小さな手の平の前に魔法陣が展開し、パッシュさんとハンスさんを吹っ飛ばした風属性魔法が放たれる。
「おっらぁあ」
「はぁああっ」
フレイとライトが飛び出し、風の砲弾をぶった切りながら鋭い視線を魔人に向けていた。
「な……、お前達、何で戻って来たんだ」
「俺はもう逃げないって決めたんですよ。あんな惨めな思い、二度としたくありません」
「ぼくは絶対に強くなるって決めたんです。逃げるなんて選択肢は最初からありません」
フレイとライトは互いに真っ直ぐ魔人を見つめていた。
パッシュさんやハンスさん、シトラ学園長、ゲンナイ先生を返り討ちにしている魔人相手に二人が立ち向かったところで焼石に水。このままじゃ、怪我人が増えるばかり。
――た、助けないと。助けないと、皆が殺されかねない。なんで体が動かないの。
私は両肩を抱くように縮こまり、その場で固まっていた。私が戦わなくとも、ほかのだれかが助けてくれるはずだ。当時の師匠のような者が。でも、来なかったら私以外の村人のように死ぬかもしれない。
「キアスが戻ってくるまでの時間稼ぎでもできれば御の字」
「うん。きっとキアスくんなら魔人にだって負けない」
フレイとライトはゲンナイ先生に止められても、一切立ち止まらず攻撃に出る。私の指導で得た体力と粘り強さを発揮し、魔人を翻弄していた。
だが、所詮Dランククラスの生徒。魔人が明らかに手を抜いていても攻撃が一度も当たらない。それでも両者は魔人の攻撃を受けながら何度も立ち上がる。
そのため、戦っている魔人からしたら食事中に纏わりついてくるハエくらい鬱陶しくて仕方がないだろう。
「あぁ、ほんと邪魔っす。『土人形』」
魔人は崩れた園舎や地面の土砂を利用し、ゴーレムを数十体作り出した。フレイとライトへの攻撃かと思ったが、建物内に侵入していくため、ザウエルを探すための魔法だと察する。
ただ、多くの生徒たちが悲鳴を上げた。襲われているようだ。
フレイとライトの体力も無限ではないため、魔人が本気を出し、空を飛び始めれば手も足も出ず、風の矢を大量に放たれ体に小さな風穴を何個も作り大怪我して地面に倒れ伏す。
「くっそぉ……」
「うぐぅ、ぼくたちだけじゃ……、時間も稼げないのか」
「雑魚が何匹集まろうと雑魚なのは変わらない。殺す価値もないし、雑魚は大物を釣るいい餌になるっす。でも、二人もいらないか」
魔人はライトの頭に足を乗せる。フレイやゲンナイ先生、シトラ学園長も声を荒らげているが、聞く耳を持たない。
「その足をどけろ」
私はライトが殺されそうになった瞬間、いつの間にか、物陰から飛び出していた。
「あぁ? ぐふっ」
私は振り返った魔人の顔を蹴り飛ばし、崩れた園舎に直撃させる。
軽々蹴り飛ばされた魔人の体は園舎に衝突。巨大な建物に蜘蛛の巣状のひび割れが一瞬で走る。
「み、ミニスカート」
「ぱ、パンティー」
フレイとライトは石畳に倒れ込んだ状態で、私を見上げるような視線を向けてきた。
冒険者服を換装している時間がなく、スカートの中身をはっきりと見られてしまった。もう、男と言い張るのは厳しい。きっと、この学園に私の居場所はなくなるだろう。
――動けてよかった。やっぱり、私以外、誰も助けに来なかった。今、彼らを助けられるのは、私しかいなかったんだ。
「いたいっすね。おれの顔をいきなり蹴りつけてきやがって。お前は誰っすか?」
魔人は瓦礫の中から出て来て、血唾を吐き捨てながら私に話しかけてきた。
「私はキアス・リーブン」
「……キアス・リーブン。へえ、おれを蹴り飛ばす力、全身から溢れ出す魔力、魔王様を思わせる強者の雰囲気。そうっすか、お前が。『黒羽の悪魔』」
「さあ、それはどうかな。御想像にお任せするよ」
私はフレイとライト、ゲンナイ先生、シトラ学園長に回復魔法を軽く駆けて止血。また、無茶しないよう体が動かせないくらいの疲労は残しておいた。
「おれの名前はカプリエル。ザウエルはどこだ。お前なら知っているっすよね」
「安心して、すぐに会えるよ」
「お前、まさかザウエルを……。許さんっ」
カプリエルは学園の瓦礫と地面の土砂を利用し、巨大なゴーレムを錬成。私目掛けて突っ込ませてくる。加えて、本人は翼で空を飛び、空中に何十枚もの魔法陣を展開すると風の矢を土砂降りの雨と同じくらい発射してきた。
「『転移魔法陣』」
空中に広がった魔方陣に風の矢は降り注ぐ。だが、その下にいる私たちのもとに矢は貫通してこなかった。
私は『異空間』から羽根ペンを一本取り出し、体内で練り上げた魔力を注ぎ込む。真っ白な羽根ペンは天使の羽のように輝きを増していき、薄暗い雨雲の下で眩い光を放つ。
前方からゴリラを思わせる一〇メートル近いゴーレムが巨大な拳を握りしめて振りかざしてきた。
「『加速(アクセル)』」
詠唱と共に魔法陣を展開し、手に持っていた羽根ペンを勢いよく投げ込む。
魔力過多になっている羽根ペンが魔法陣を通過すると、魔法が発動し、羽根ペンの速度が上がる。
加速した先に通過した魔法陣と同じ魔法陣が展開してあり、何枚も通過していく。
初速の二倍、四倍、八倍、一六倍と増えていき、音速を優に超えた羽根ペンの先端がゴーレムの拳に衝突。拳を粉砕した後、胸部を貫通し、速度が変わらないままカプリエルの腹に突き刺さる。貫通はしない。
「み、見掛け倒しもいいところっすね」
「『拘束』」
羽根ペンと私は魔力で繋がっており、鎖の形に変えると可視化できるようになる。
私の右手とカプリエルの腹に刺さっている羽根ペンが鎖で繋がっており、カプリエルの体に纏わりついていく。
翼にも魔力の鎖が纏わりつき、機能しなくなっていた。だが、魔法で浮いている影響か、落ちてこない。
「よっこいしょっ」
釣り竿で魚を釣るように鎖を勢いよく引っ張り、大きく振りかぶった後に地面に振り下ろす。
先端についたカプリエルを、鞭の先のように音速を超えた勢いで地面に叩きつけた。
石畳が何十枚も浮かびあがるほどの衝突で、普通の人間なら死んでいてもおかしくない。だが相手は魔人だ。人間よりもずっと頑丈に出来ている。
「う、動けないっす。ち、力が入らない……」
カプリエルは正座しすぎて脚が痺れているような情けない恰好で、身動きが取れなくなっていた。魔力を吸い取りながら拘束しているため、今のカプリエルが魔法を使うのは不可能だ。
私はカプリエルに近づき、突き出されたお尻の近くで垂れている尻尾を掴む。
「んぁっ。お、おまえ、何をする気っすか。殺すなら、さっさとやれ。捕まえて拷問したところで情報は一切吐かないっす。なんなら、この場で舌を……」
カプリエルは、舌を噛み千切ろうとした。
「殺しはしないよ。『形態変化』」
私はカプリエルが舌を噛み切る前に、体を羽根ペンの形にしてしまう。人族の国に攻め込んできた魔族を捌くのは魔族領の法律だ。
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