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貧乏貴族の臆病者
うざいヒヨコ
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僕は体ごと灰の山に叩きつけられるようにして落ちてしまい、僕の体も角ウサギの肉みたく灰になってしまうと思った。でも、ブラックベアーに食い殺されるよりはマシかと思っていたがいつまで経っても灰にならない。
僕の視界にはブラックベアーが僕の引き千切った腕を美味しそうに食べている。その間、僕の体は炎炎の中に捕らわれていおり、あまりにも熱いがなぜか灰にならない。
僕は全く理解できなかった。そんな時、頭の中に可愛らしい声が聞こえてきた。
「あ~聞こえますか……ぴよ」
「ぴよ?」
「聞こえているみたいですねぴよ」
「えっと……。誰ですか」
「私が誰かを答えている時間がないので早速質問するぴよ」
「し、質問?」
「主。ここで私と一緒に『焼き鳥になりますか』それとも『不死鳥になりますか』ぴよ」
「はい?」
「時間がありません。早く決めてください。ぴよ」
「わ、訳が分からないけど。僕はまだ死にたくない!」
僕は炎の中で謎の声に生を叫んだ。
「分かりました。では、私の力を貸しましょう。ぴよ」
「くっ! な、なんだ!」
僕の周りに纏わっていた炎が一気に燃えがる。
「ニクス・フレイズは『ヒヨコの加護』を入手しました。加護の効果:『超再生』を発動します。ぴよ」
「超再生? い、いったい何が起こっているんだ……」
僕の頭は全く理解が追い付かない。
僕は食いちぎられた右腕を見ていたら、体に纏っている炎とはまた違う炎が傷口から出てきて腕の形になった。その後、腕を纏っていた炎が消えると、いつの間にか腕が元に戻っていた。
「な、何で。僕の腕が元に戻った……」
「超再生の効果ぴよ。私とここまで相性がいい人間に出会えるなんて、私は幸福だぴよ」
「な、何を言って……」
「あんまり、おしゃべりしている時間はないぴよ。さっさと目の前の黒い奴を倒すぴよ」
「で、でも……武器がないよ。あの家に入れば他の武器があるけど」
「今は必要ないぴよ。あんなデカブツ、炎で焼けばいちころぴよ」
「いや、ブラックベアーには魔法耐性を持っているから、真面な魔法じゃ絶対に倒せない。いかんせん、頭を半分破壊させているのに倒せていないんだ。僕なんかの魔法じゃとても……」
「主、右手の平をあのデカブツに見せるぴよ」
「え……」
「速くするぴよ」
「は、はい」
僕は右手の平をブラックベアーに向けた。
ブラックベアーは僕の腕を食べきり、僕の方に向ってくる。奴は炎にすら臆さないらしい。――何て肝の座った魔物なんだ。
「それにしても……。『ヒヨコの加護』ってなんか弱そうな名前だね。さっきの超再生は凄いけど……」
「主、助けてもらっておいて失礼ぴよ」
「ご、ごめんなさい……」
「ヒヨコだって、燃えれば『火の鳥(フェニックス)』になるんですよ。ぴよ」
「確かに一理ある。燃えたら何でも火の鳥だね」
『グオオオオオオオオオ!!』
ブラックベアーは僕に狙いを定め、突進してきた。
「くっ! 来たよ!」
「主、『スタフティ・フェニックス』と唱えるぴよ!」
「す、スタフティ・フェニックス!」
『ブオッ!』
僕が何かの詠唱を言い放つと、右手の平から燃え盛る火の鳥が発射された。
『グオオオオオオオオオ!!』
僕の放った火の鳥は、見事ブラックベアーに直撃し、炎で包み込んだ。ブラックベアーは藻掻き苦しむことなく、一瞬にして灰になった。
「う、嘘だ……。な、何で。ブラックベアーは魔法耐性を持っているはずなのに。僕の出した炎を受けたら、一瞬で灰になった……」
「主、さすがぴよ! 私とここまで相性がいいと逆に怖いぴよ!」
僕は未だに現状が理解できず、灰の山にへたり込んだ。いつの間にか僕を包んでいた炎も消え、雨が僕を打ち付けている。頭に何か乗っていると感じ、僕は頭を少し前に動かすと、何かが僕の掌に落ちた。
「痛っ! もう、いきなり落とさないでほしいぴよ~。はぁ~。やっと生まれることができたぴよ~」
「え……。ひ、ヒヨコ……」
僕の手に平の上にはヒヨコがいた。ただ、普通のヒヨコではない。普通のヒヨコなら、こんな血塗られたような真っ赤な色をしていないはずだ。
「主、血塗られたって言い方は酷いぴよ。この色はれっきとした炎の色ぴよ」
ヒヨコは僕の方を向き、翼を広げる。
「な、僕の思考を読めるの……」
「なんせ、相性が最高だから、喋らなくても言葉が通じるぴよ」
「相性……。ヒヨコの加護のこと?」
「そうぴよ。『ヒヨコの加護』の効果『念話』ぴよ。私と主の心を繋ぐ、愛の印ぴよ」
「愛の印って……。それより君は、だれ?」
「改めて自己紹介するぴよ。初めまして主様。私にはまだ名前がないので付けてくださいぴよ」
赤いヒヨコは一礼してお願いしてきた。
「変わった自己紹介だね。何一つ分からなかったよ。名前か……じゃあ、プルスにするよ。それで、君は誰なの?」
「初めまして主様。私の名前は『プルス』と言います。ぴよ」
「いや、それは僕がつけた名前じゃないか」
「誰かと聞かれたので答えただけですが? ぴよ」
プルスは首を傾げ、こまった仕草を取る。
「ちょっとムカつくヒヨコだな……。何でここにいるの?」
「あの火山の中にいたはずなのですが、いつの間にかこの場所に移動していましたぴよ。火山の噴火でここまで吹き飛んできたみたいですね。ぴよ」
プルスは火山の方に右翼を向けた。
「えっと、プルスはあの燃え盛っていた卵なんだよね?」
「そうですぴよ。ずっと孵れなかったんですが、主のおかげで生まれることができましたぴよ。ありがとうございます。ぴよ」
「僕は何かしたっけ? 特に何もしてないと思うんだけど」
「主は私の炎に毎日いろんなものを投げ入れてくれましたよね、そのお陰で灰に埋もれることができたので、生まれることができました。……ぴよ」
「その、最後のぴよって無理やりつけてるよね?」
「そうですね。その方が、ヒヨコの雰囲気が出ると思ったんですが、ダメですか? ぴよ」
プルスは翼をパタパタと動かし、ヒヨコっぽい動きをする。
「ダメではないけど……。なんか聞きにくいというか」
「そうですか。では止めますね」
「すぐ止められるんだね……」
「とってつけた個性ですから」
「はは……」
僕は久々に誰かと会話している気がする。もう二カ月間、人の言葉を話せる生き物と会わなかった。でも、まさかヒヨコと話す日が来るとは全く思ってなかった。
「主、お腹が減ったので、あの灰を食べてもいいですか?」
プルスは僕の掌の上で一度跳ね、ブラックベアーの灰に翼を向ける。
「ヒヨコなのに灰を食べるの?」
「私は何でも食べれますが、灰を無性に食べたくなります」
「そうなんだ。でもよかったね。ここには沢山灰があるから、食べ放題だよ」
「食べ放題……。何といい響きなんでしょうか。では生まれたてほやほやの私が一番初めに食べる灰は、あのデカブツの灰にいたしましょう」
プルスは瞳を輝かせながら小さな翼をはためかせ、僕の手から飛び立つ。もちろん空は飛べず、地面を跳ねるようにして移動していた。ちょこちょこと動いて可愛らしい。
プルスは地面を数回跳ねて、灰によちよちと近寄っていった。
僕の視界にはブラックベアーが僕の引き千切った腕を美味しそうに食べている。その間、僕の体は炎炎の中に捕らわれていおり、あまりにも熱いがなぜか灰にならない。
僕は全く理解できなかった。そんな時、頭の中に可愛らしい声が聞こえてきた。
「あ~聞こえますか……ぴよ」
「ぴよ?」
「聞こえているみたいですねぴよ」
「えっと……。誰ですか」
「私が誰かを答えている時間がないので早速質問するぴよ」
「し、質問?」
「主。ここで私と一緒に『焼き鳥になりますか』それとも『不死鳥になりますか』ぴよ」
「はい?」
「時間がありません。早く決めてください。ぴよ」
「わ、訳が分からないけど。僕はまだ死にたくない!」
僕は炎の中で謎の声に生を叫んだ。
「分かりました。では、私の力を貸しましょう。ぴよ」
「くっ! な、なんだ!」
僕の周りに纏わっていた炎が一気に燃えがる。
「ニクス・フレイズは『ヒヨコの加護』を入手しました。加護の効果:『超再生』を発動します。ぴよ」
「超再生? い、いったい何が起こっているんだ……」
僕の頭は全く理解が追い付かない。
僕は食いちぎられた右腕を見ていたら、体に纏っている炎とはまた違う炎が傷口から出てきて腕の形になった。その後、腕を纏っていた炎が消えると、いつの間にか腕が元に戻っていた。
「な、何で。僕の腕が元に戻った……」
「超再生の効果ぴよ。私とここまで相性がいい人間に出会えるなんて、私は幸福だぴよ」
「な、何を言って……」
「あんまり、おしゃべりしている時間はないぴよ。さっさと目の前の黒い奴を倒すぴよ」
「で、でも……武器がないよ。あの家に入れば他の武器があるけど」
「今は必要ないぴよ。あんなデカブツ、炎で焼けばいちころぴよ」
「いや、ブラックベアーには魔法耐性を持っているから、真面な魔法じゃ絶対に倒せない。いかんせん、頭を半分破壊させているのに倒せていないんだ。僕なんかの魔法じゃとても……」
「主、右手の平をあのデカブツに見せるぴよ」
「え……」
「速くするぴよ」
「は、はい」
僕は右手の平をブラックベアーに向けた。
ブラックベアーは僕の腕を食べきり、僕の方に向ってくる。奴は炎にすら臆さないらしい。――何て肝の座った魔物なんだ。
「それにしても……。『ヒヨコの加護』ってなんか弱そうな名前だね。さっきの超再生は凄いけど……」
「主、助けてもらっておいて失礼ぴよ」
「ご、ごめんなさい……」
「ヒヨコだって、燃えれば『火の鳥(フェニックス)』になるんですよ。ぴよ」
「確かに一理ある。燃えたら何でも火の鳥だね」
『グオオオオオオオオオ!!』
ブラックベアーは僕に狙いを定め、突進してきた。
「くっ! 来たよ!」
「主、『スタフティ・フェニックス』と唱えるぴよ!」
「す、スタフティ・フェニックス!」
『ブオッ!』
僕が何かの詠唱を言い放つと、右手の平から燃え盛る火の鳥が発射された。
『グオオオオオオオオオ!!』
僕の放った火の鳥は、見事ブラックベアーに直撃し、炎で包み込んだ。ブラックベアーは藻掻き苦しむことなく、一瞬にして灰になった。
「う、嘘だ……。な、何で。ブラックベアーは魔法耐性を持っているはずなのに。僕の出した炎を受けたら、一瞬で灰になった……」
「主、さすがぴよ! 私とここまで相性がいいと逆に怖いぴよ!」
僕は未だに現状が理解できず、灰の山にへたり込んだ。いつの間にか僕を包んでいた炎も消え、雨が僕を打ち付けている。頭に何か乗っていると感じ、僕は頭を少し前に動かすと、何かが僕の掌に落ちた。
「痛っ! もう、いきなり落とさないでほしいぴよ~。はぁ~。やっと生まれることができたぴよ~」
「え……。ひ、ヒヨコ……」
僕の手に平の上にはヒヨコがいた。ただ、普通のヒヨコではない。普通のヒヨコなら、こんな血塗られたような真っ赤な色をしていないはずだ。
「主、血塗られたって言い方は酷いぴよ。この色はれっきとした炎の色ぴよ」
ヒヨコは僕の方を向き、翼を広げる。
「な、僕の思考を読めるの……」
「なんせ、相性が最高だから、喋らなくても言葉が通じるぴよ」
「相性……。ヒヨコの加護のこと?」
「そうぴよ。『ヒヨコの加護』の効果『念話』ぴよ。私と主の心を繋ぐ、愛の印ぴよ」
「愛の印って……。それより君は、だれ?」
「改めて自己紹介するぴよ。初めまして主様。私にはまだ名前がないので付けてくださいぴよ」
赤いヒヨコは一礼してお願いしてきた。
「変わった自己紹介だね。何一つ分からなかったよ。名前か……じゃあ、プルスにするよ。それで、君は誰なの?」
「初めまして主様。私の名前は『プルス』と言います。ぴよ」
「いや、それは僕がつけた名前じゃないか」
「誰かと聞かれたので答えただけですが? ぴよ」
プルスは首を傾げ、こまった仕草を取る。
「ちょっとムカつくヒヨコだな……。何でここにいるの?」
「あの火山の中にいたはずなのですが、いつの間にかこの場所に移動していましたぴよ。火山の噴火でここまで吹き飛んできたみたいですね。ぴよ」
プルスは火山の方に右翼を向けた。
「えっと、プルスはあの燃え盛っていた卵なんだよね?」
「そうですぴよ。ずっと孵れなかったんですが、主のおかげで生まれることができましたぴよ。ありがとうございます。ぴよ」
「僕は何かしたっけ? 特に何もしてないと思うんだけど」
「主は私の炎に毎日いろんなものを投げ入れてくれましたよね、そのお陰で灰に埋もれることができたので、生まれることができました。……ぴよ」
「その、最後のぴよって無理やりつけてるよね?」
「そうですね。その方が、ヒヨコの雰囲気が出ると思ったんですが、ダメですか? ぴよ」
プルスは翼をパタパタと動かし、ヒヨコっぽい動きをする。
「ダメではないけど……。なんか聞きにくいというか」
「そうですか。では止めますね」
「すぐ止められるんだね……」
「とってつけた個性ですから」
「はは……」
僕は久々に誰かと会話している気がする。もう二カ月間、人の言葉を話せる生き物と会わなかった。でも、まさかヒヨコと話す日が来るとは全く思ってなかった。
「主、お腹が減ったので、あの灰を食べてもいいですか?」
プルスは僕の掌の上で一度跳ね、ブラックベアーの灰に翼を向ける。
「ヒヨコなのに灰を食べるの?」
「私は何でも食べれますが、灰を無性に食べたくなります」
「そうなんだ。でもよかったね。ここには沢山灰があるから、食べ放題だよ」
「食べ放題……。何といい響きなんでしょうか。では生まれたてほやほやの私が一番初めに食べる灰は、あのデカブツの灰にいたしましょう」
プルスは瞳を輝かせながら小さな翼をはためかせ、僕の手から飛び立つ。もちろん空は飛べず、地面を跳ねるようにして移動していた。ちょこちょこと動いて可愛らしい。
プルスは地面を数回跳ねて、灰によちよちと近寄っていった。
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