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貧乏貴族の臆病者
謎のヒヨコ
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「それでは、いただきま~す」
プルスはブラックベアーだった灰に頭を突っ込みバクバクと食べ始めた。
灰の量はブラックベアーの大きさとほぼ一緒で、ブラックベアーの体がそのまま灰になってしまったのではないかと思うほど多かった。それにも拘らず、一◯センチメートルにも満たないプルスは黙々と食べ進め、八分ほどで食べきってしまった。
「ふぅ~。美味しかったです~」
プルスのお腹がもとの大きさの七倍から八倍ほど膨らんでいる。
さすがに膨らみすぎじゃないか……。
「プルス、そんなに灰を食べて大丈夫なの?」
「問題ありません。すぐ消化されますから」
プルスがむくりと起き上がると、膨らんでいたお腹が、ボールの空気が抜けるようにす~と戻った。
「本当だ……」
「ですがお腹がまだ空いて仕方ないので、ここにある灰を食べてもいいですか?」
「いいよ。灰なんて沢山あっても使い道がないから」
「ありがとうございます。では、いっただっきま~す!」
プルスは灰の山に飛び込んでいき、真っ黒なヒヨコになる。
「はぐはぐはぐ……」
プルスは嘴で灰の山を突くように貪りつく。
「凄い食欲。でも、こんな雨の中で動いていたら風邪をひくから、家の中に入ろう」
「はぐはぐはぐはぐはぐはぐ……!」
プルスは僕の話を聞かず、灰を食べ進めていた。
「もう、風邪ひくってば」
僕は灰に埋もれていたので立ち上がり、プルスの方に歩こうと思った。
でも足が灰から抜けだせずに、もたついてしまい、僕はもう一度、灰に埋もれる。
「ぴよっ!」
僕が手をついた場所にプルスが丁度いて、ぺちゃんこに潰してしまった。
「だ、大丈夫。プルス?」
「…………」
プルスから聞こえていた声が途絶えてしまった。
「ど、どうしよう。プルスが死んじゃった……」
あまりにも早い別れに涙も流れない。
『ブオッ!』
「うわっ! 熱い!」
僕は潰れたプルスを両掌に載せていたのだがいきなり燃え始めた。
すると……。
「ふぅ……。死にました……。まさか初めに殺される相手が主だとは思っていませんでしたよ~」
プルスは小さな翼を広げ、毛づくろいを始めた。
「え、やっぱり死んでたんだ。でも、どうして……生き返れたの?」
「まぁ、私がヒヨコだからじゃないですかね」
プルスは僕の掌の上でお尻を振ってヒヨコ感を出している。丸っこいお尻がとても愛らしいが、なぜかイラッとする。
「訳が全く分からない返答なんだけど。プルスはどう見てもヒヨコじゃないよね?」
「私の外見的にはどう見てもヒヨコだと思うんですが?」
「外見じゃなくて色々とだよ。体の色とか、死んでも生き返ったり、頭の中に話しかけてきたり、普通のヒヨコじゃありえないよね?」
「まぁ主、そこは深く考えなくていいんじゃないですか。今は生きていることを喜びましょうよ。私がいなかったら今頃主はあのデカブツのお腹の中ですからね」
プルスは翼を広げ、自身のお腹をさする。
「そ、そうだけど……。君が誰かくらい教えてくれないの?」
「私はプルスですよ。それ以外のなにものでもありません」
「ん~~~~。君が誰かは教えてくれないんだね」
「私はプルスですから」
「それはもういいよ……」
僕はプルスを掌に包み込むようにして持ち、木の家に入って水でびちゃびちゃの体を乾燥してよく揉み込んだ木の皮で拭く。
「それにしても暗いですね」
「まぁ、家の中で焚火をすると煙が酷いし、かといってろうそくとかもない。夜は寝るだけだから」
「主は質素な暮らしをしているのですね」
「ここには僕しかいないんだよ。明日、遠くの街に出発しようって矢先にあの巨大なブラックベアーが現れたんだ」
「それはとんだ災難でしたね。ですが、そのお陰で私達は契約できたわけですから私としては万々歳です」
「契約……。あの『ヒヨコの加護』のこと?」
「はい、そうです。主が私の前で火属性魔法を使っていた時から感づいていましたが、やはり同調していました。ここまで重なり合うのは凄いですよ」
プルスは翼をバタバタと動かす。
「何が凄いかよく分からないけど。もしかして、プルスは召喚獣の類なの?」
「そうですね……。召喚獣と言われればそうかもしれませんが、私はもう一段階上ですね」
「え……。召喚獣にまだ上があったの。知らなかった」
「私は召喚神獣だと思います」
「だと思いますって……。あいまいだね」
「私の本来の姿は神々しいはずなんですが、なぜかヒヨコの姿になってまして」
「プルスは元々ヒヨコじゃないの?」
「多分……」
プルスは少し潰れ、アイスのように溶ける。
「多分って……」
「まだ生まれたばかりなんですから、そんなの知りませんよ!」
プルスは小さな翼をはためかせて飛び跳ねた。
「逆切れされても、僕が困るよ」
「まぁ、このままでも今は十分生きていけるので大丈夫ですね。では、主、末永くよろしくお願いします」
プルスは床に座り、頭を下げてきた。
「こ、こちらこそ。よろしくお願いします」
僕も頭をさげる。
――いったい何なんだ……このヒヨコ。召喚神獣ってなんだ?
「それじゃあ、今日はもう遅いからさっさと寝ようか」
「そうですね。私は主に抱かれて寝たいです。手で優しく包んでくださいね」
プルスは左右に揺られ、
「言い方が紛らわしいよ……」
僕はプルスを掌にあげて、乾燥した草を敷いた僕特製の敷布団に向う。
疲れたのでそのまま寝転がり、プルスを胸の上に置いた。
プルスはどろ~と蕩けたように潰れて眠る。
どこかスライムを彷彿とさせる眠り方で可愛らしい。
プルスはブラックベアーだった灰に頭を突っ込みバクバクと食べ始めた。
灰の量はブラックベアーの大きさとほぼ一緒で、ブラックベアーの体がそのまま灰になってしまったのではないかと思うほど多かった。それにも拘らず、一◯センチメートルにも満たないプルスは黙々と食べ進め、八分ほどで食べきってしまった。
「ふぅ~。美味しかったです~」
プルスのお腹がもとの大きさの七倍から八倍ほど膨らんでいる。
さすがに膨らみすぎじゃないか……。
「プルス、そんなに灰を食べて大丈夫なの?」
「問題ありません。すぐ消化されますから」
プルスがむくりと起き上がると、膨らんでいたお腹が、ボールの空気が抜けるようにす~と戻った。
「本当だ……」
「ですがお腹がまだ空いて仕方ないので、ここにある灰を食べてもいいですか?」
「いいよ。灰なんて沢山あっても使い道がないから」
「ありがとうございます。では、いっただっきま~す!」
プルスは灰の山に飛び込んでいき、真っ黒なヒヨコになる。
「はぐはぐはぐ……」
プルスは嘴で灰の山を突くように貪りつく。
「凄い食欲。でも、こんな雨の中で動いていたら風邪をひくから、家の中に入ろう」
「はぐはぐはぐはぐはぐはぐ……!」
プルスは僕の話を聞かず、灰を食べ進めていた。
「もう、風邪ひくってば」
僕は灰に埋もれていたので立ち上がり、プルスの方に歩こうと思った。
でも足が灰から抜けだせずに、もたついてしまい、僕はもう一度、灰に埋もれる。
「ぴよっ!」
僕が手をついた場所にプルスが丁度いて、ぺちゃんこに潰してしまった。
「だ、大丈夫。プルス?」
「…………」
プルスから聞こえていた声が途絶えてしまった。
「ど、どうしよう。プルスが死んじゃった……」
あまりにも早い別れに涙も流れない。
『ブオッ!』
「うわっ! 熱い!」
僕は潰れたプルスを両掌に載せていたのだがいきなり燃え始めた。
すると……。
「ふぅ……。死にました……。まさか初めに殺される相手が主だとは思っていませんでしたよ~」
プルスは小さな翼を広げ、毛づくろいを始めた。
「え、やっぱり死んでたんだ。でも、どうして……生き返れたの?」
「まぁ、私がヒヨコだからじゃないですかね」
プルスは僕の掌の上でお尻を振ってヒヨコ感を出している。丸っこいお尻がとても愛らしいが、なぜかイラッとする。
「訳が全く分からない返答なんだけど。プルスはどう見てもヒヨコじゃないよね?」
「私の外見的にはどう見てもヒヨコだと思うんですが?」
「外見じゃなくて色々とだよ。体の色とか、死んでも生き返ったり、頭の中に話しかけてきたり、普通のヒヨコじゃありえないよね?」
「まぁ主、そこは深く考えなくていいんじゃないですか。今は生きていることを喜びましょうよ。私がいなかったら今頃主はあのデカブツのお腹の中ですからね」
プルスは翼を広げ、自身のお腹をさする。
「そ、そうだけど……。君が誰かくらい教えてくれないの?」
「私はプルスですよ。それ以外のなにものでもありません」
「ん~~~~。君が誰かは教えてくれないんだね」
「私はプルスですから」
「それはもういいよ……」
僕はプルスを掌に包み込むようにして持ち、木の家に入って水でびちゃびちゃの体を乾燥してよく揉み込んだ木の皮で拭く。
「それにしても暗いですね」
「まぁ、家の中で焚火をすると煙が酷いし、かといってろうそくとかもない。夜は寝るだけだから」
「主は質素な暮らしをしているのですね」
「ここには僕しかいないんだよ。明日、遠くの街に出発しようって矢先にあの巨大なブラックベアーが現れたんだ」
「それはとんだ災難でしたね。ですが、そのお陰で私達は契約できたわけですから私としては万々歳です」
「契約……。あの『ヒヨコの加護』のこと?」
「はい、そうです。主が私の前で火属性魔法を使っていた時から感づいていましたが、やはり同調していました。ここまで重なり合うのは凄いですよ」
プルスは翼をバタバタと動かす。
「何が凄いかよく分からないけど。もしかして、プルスは召喚獣の類なの?」
「そうですね……。召喚獣と言われればそうかもしれませんが、私はもう一段階上ですね」
「え……。召喚獣にまだ上があったの。知らなかった」
「私は召喚神獣だと思います」
「だと思いますって……。あいまいだね」
「私の本来の姿は神々しいはずなんですが、なぜかヒヨコの姿になってまして」
「プルスは元々ヒヨコじゃないの?」
「多分……」
プルスは少し潰れ、アイスのように溶ける。
「多分って……」
「まだ生まれたばかりなんですから、そんなの知りませんよ!」
プルスは小さな翼をはためかせて飛び跳ねた。
「逆切れされても、僕が困るよ」
「まぁ、このままでも今は十分生きていけるので大丈夫ですね。では、主、末永くよろしくお願いします」
プルスは床に座り、頭を下げてきた。
「こ、こちらこそ。よろしくお願いします」
僕も頭をさげる。
――いったい何なんだ……このヒヨコ。召喚神獣ってなんだ?
「それじゃあ、今日はもう遅いからさっさと寝ようか」
「そうですね。私は主に抱かれて寝たいです。手で優しく包んでくださいね」
プルスは左右に揺られ、
「言い方が紛らわしいよ……」
僕はプルスを掌にあげて、乾燥した草を敷いた僕特製の敷布団に向う。
疲れたのでそのまま寝転がり、プルスを胸の上に置いた。
プルスはどろ~と蕩けたように潰れて眠る。
どこかスライムを彷彿とさせる眠り方で可愛らしい。
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