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鶏を買ったら……知り合いが増えた。

夜に熟睡できない

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 寝始めて数時間経った頃、僕は尿意を催して起きてしまった。

「ん……、トイレに行きたくなってしまった……」

 隣をふと見てみると綺麗な銀髪の少女がいた。

「…………」

「え、何でいるの?」

 ルパが僕の横で寝ている。加えて、昨日の悲しそうな顔ではなく微笑ましい表情でだ。

 僕は起こすのも可哀そうだと思い、そっと立ち上がって外に出ようとする。

「はっ!」

「っつ!」

 僕が起きたのと同時にルパも起きて、攻撃をいきなり加えてきた。

「る、ルパ、どうしたの。色々聞きたいけど、まずはその剣を下して」

 ルパは僕の首元に剣の先端を当てていた。一朝一夕でここまで剣を使いこなせるとは思えない。誰かに教わっていたか、鍛錬を積んでいないとその剣さばきは寝起きからの一筋ではなかった。

「ニクス、何で起きた……」

「おしっこ、に行きたかったから」

「…………」

 ルパの顔は少し赤面しており、僕がなぜ起きたのか知ったとたんに剣を下げた。剣を鞘にしまい、再び横になる。

「何だったんだ……」

 僕は外で尿意を解消した後、家の中に戻ってくる。

 ルパはまだ寝ており、僕の場所は残っていた。

 僕はルパの隣に再度寝転ぶ。

「ねぇ、何で戻ってきたの?」

「別に……。理由はない」

「森の中じゃ、寝れなかった?」

「…………」

 ルパは黙った。

 いきなり環境の変化が加われば、簡単には寝付けない。たとえ昔は森の中で生活していたとしても、八年も離れていたら環境に慣れるまでは熟睡できないだろう。

「まぁ、僕はいつでも歓迎するから。好きなだけ寝ていくといいよ」

「ニクスは一人でよく寝れる?」

「え? まぁ、寝れるかな」

「私はよく寝れない。寝ている間に何が起こるかわからないから……、熟睡できない」

「だから戻ってきたの?」

「ニクスは人間だけど、食べ物をくれた。私を殺すなら、とっくに殺してる。だから、殺す気がないのだと思った。奴隷の仲間もいない、同種族もいない、そうなったら私には一緒に寝る相手がいない。森の中に同類はいなかった。なら、ここで寝るしかない」

「そうなんだ。何が起こるかわからないのが怖いんだね。僕も怖がりだから理解できるよ。でも、二人でこうやってしていれば、怖くない」

 僕はルパの震える手を握る。またもや物凄い力で傷つけられると身構えていたが、今回は傷付けられなかった。

「…………。手洗ったの」

「もちろん。それにしても、ルパの手、こんな小さかったんだね」

 ルパの手はカエデの葉と同じくらい小さかった。

「ニクスの手は……無駄に大きい」

「無駄じゃないよ。ルパの手を包んで温められるでしょ」

 僕はルパの手を片手で優しく包む。

「…………、気持ち悪い」

「はは……、確かに。僕の性格に合ってないね」

「でも、感謝はしておく」

「何で?」

「感謝しておかないと、できなくなるから……」

 僕はルパの背中を見ているのだが、ルパは過去に何かあったのかすすり泣きをしていた。

「じゃあ、僕も感謝しておかないと。ルパ、色々話してくれてありがとう。お話しできてうれしいよ」

「ニクス、変な人間。私、ずっと嫌われようとしてるのに、全然離れて行かない」

「嫌われようとしてたんだ。でも残念だったね。僕はどんな辛いことでも、目的を達成するためには努力を惜しまないんだよ。僕はルパと親友になりたい。そうなるまで、嫌いになんかならない」

「ほんとに、変な人間……」

 ルパは寝ている間、顔を見せてくれなかったが、寝息が聞こえてきたため、ちゃんと寝れたらしい。睡眠がとれないと辛いだろうから、寝られてよかったと思う。

 翌朝。

「ん~~。よく寝た~~。おはよう、ルパってあれ、もういなくなってる。先に起きたのかな」

 僕は涎を垂らして死んだように眠っているプルスを両手で掬い取り、頭に乗せる。

 そのまま外に出て鶏たちに餌をあげた。鶏たちは朝早くから元気に動き出しており、餌を食べていく。卵はまだ産まれていないので、もう少し日が経たないと卵は食べられなさそうだ。

「ぴよ~。今日もいい天気ですね」

 プルスはぐぐ~っと伸びをして脱力する。

「そうだね。じゃあ、朝の運動がてら朝食を取りに行こうか」

「はい。今すぐ狩りに行きましょう」

 僕とプルスは草原に向った。

「はっ!」

「キュ!」

 僕達が荒野に到着すると、ルパが角ウサギと先に戦っていた。

「はっ!」

「キュッ!」

 ルパの持っている剣は角ウサギに当たらない。

 角ウサギはルパの攻撃を華麗にかわし、攻撃されたお返しに突進の一撃を加える。

「くっ!」

 ルパは身軽な体を使い、角ウサギの攻撃を回避する。だが、なぜか対人の僕の時よりも動きが悪いように見えた。

「はぁ、はぁ、はぁ……。この魔物、戦いづらい」

 ルパは息が上がるほど、攻撃を放ったが角ウサギには一度も当たらなかった。

「ルパ、その剣、ちょっと長すぎるんじゃない。もっと短い剣かナイフの方が動きやすくていいんじゃないかな」

「ニクス。いつの間に……」

 ルパは魔物との戦闘中に僕の方を向いた。

「ほら、よそ見していたら、お腹に穴があいちゃうよ」

「え……、くっ!」

 ルパは角ウサギを見失っていたことに気づき、眼で魔物の姿を探していた。

 そのため、お腹へ突進されそうになっていた。

 僕はこのままではルパのお腹に穴が開くと思い、小石を投げて角ウサギの脳天を石が弾けたように『パンッ!』と破壊する。


「ルパ、前をちゃんと見て戦わないと危ないじゃないか」

「別に助けてもらわなくても、かわせたのに」

 ルパは不貞腐れて僕から視線を逸らせた。

「回避できていなかったらどうするつもりだったの。お腹に穴が開いて死んでいたかもしれないんだよ」

「…………」
 
 ルパは黙りこくって僕と口を聴かなかった。お説教しても仕方がないので、僕は朝の狩りを行う。

 僕は剣を鞘から引き抜き、荒野に出現している角ウサギの前に飛び出した。

 角ウサギは攻撃態勢に入り、ジグザグ走行をしながら攻撃の瞬間を見計らい、僕の脳天目掛けて突進してくる。

「ふっ!」

「ギュッ!」

 僕は姿勢を低くして角ウサギの体が無防備になった瞬間、真下から一突きで角ウサギの喉元に剣を突き刺して絶命させる。

「す、すごい……。たった一撃で倒した」

「別に凄くはないよ。毎日やっていたから慣れているだけ」

 僕は角ウサギの下処理を行い、ルパに渡す。

「え? 何で」

「角ウサギが食べたかったんじゃないの?」

「べ、別にそう言う訳じゃない……。ただ、目の前に現れたから倒そうとしただけ」

「じゃあ、いらない?」

「いる……」

 ルパは僕の手から角ウサギを奪い取った。地面に転がっている頭の無い角ウサギも掴み、僕の家の方に走って行った。

「さ、僕達の角ウサギを狩ろうか」

「あの角ウサギをあげてよかったんですか」

「いいんじゃないかな。だって、嬉しそうにしてたでしょ。やっぱり角ウサギの肉が好きなんだよ」

「まぁ、私も角ウサギの肉が好きですけど、自分で捕らないで他人に与えられたものを食べるなんて、不届き者のする行いですよ」

「プルス、ブーメラン発言だよ」

「ぴよ~?」

 プルスは自分で自分のことをなじっていた。
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