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新年になり、心が入れ替わる。暖かくなったら、旅に行こう。
後輩
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僕は学園の頃を思い出す。
「ふっ! ふっ! ふっ! ふっ! ふっ!」
僕は訓練場に毎日通い、剣を振っていた。
なんせ、食べるものが無く、お金もないので、食堂に行って学食を得られず、購買で何かを購入して食べたりできなかった。
食事時に何もすることが無かったのだ。朝食、昼食、夕食の時間は全て訓練場に来て剣を振っていた。
食べ物は朝に支給されるパンと牛乳のみ。
僕は朝にパンと牛乳を食べきったあと、水でお腹を膨らまし、剣をただただ振り続けていた。もう、僕の学園生活は剣を振り、夜に勉強した後、石を磨いていたというくらいしか覚えていない。そのため、よく倒れていた。お腹が空き過ぎて……。
「うぅ……。お腹、空いた……。はぁ、あと一年で僕も卒業なのか……。どうしよう。このままじゃ、卒業する前に僕が餓死しそうだ……」
「あ、あの……。こ、これ……」
僕が餓死寸前の時、赤髪ロングの少女がバスケット一杯に食材を入れて持って来てくれたことがあった。その少女は身長一四〇センチメートルと小柄で、騎士になれるのかと言うほど線が細かった。
「ハグハグハグ……。うぅ、美味い。ハグハグハグ……。ありがとう、お腹空き過ぎて死にそうだったんだよ!」
僕はバスケットの中に入っていた料理を食べる。
「よ、よかったです。私、そんなに一杯食べられないので、捨てちゃうのがもったいなくて……。食べてもらえて感謝しています」
「このパンとか、ケーキとか、すっごく美味しいんだけど、これ、絶対上級騎士の食事だよね? 君、上級騎士の家系なの?」
「じょ、上級と言うか……そ、その……、と、特級……」
赤髪の少女は指先を突きながら呟いた。
「ぶっ! と、特級! じゃあ、ディアさんと同じくらいってことか……」
「はい。ディア先輩は私の知り合いです。あと……、私の目標の人でもあります」
「へぇ……。それにしては、線が細いね……。ディアさんは入学当初から体格が凄く良かったから、ずっと一番を取り続けているよ。君は……一年生?」
「はい。ついこの前入学しました。入学試験は最下位でしたけど実力で入学したんです……。でも、皆から親のこねを使って入学した卑怯者って言われてて……」
赤髪の少女は下を向き、泣きそうに声を震わし、呟く。
「まぁ……特級の家系じゃ仕方ないよね。その体だと座学で頑張ったの?」
「そうです。私が王都の騎士養成学校に入るためには座学しかないと思いましたから」
「僕と同じだね。僕も、座学で何とか入学出来たんだよ。まぁ、剣の方はからっきし駄目なんだけどね」
「え……。さっきの素振り、凄かったと思うんですけど……」
「練習で出来るのは当たり前だよ。本番で出来なかったら意味がないんだ。僕、本番に凄く弱いからさ……。どれだけ練習しても本番で負けちゃうんだ。だから、僕も万年最下位なんだよ。ディアさんとは大違いさ」
「最下位……。あ、あの。私にも素振りさせてください」
「え? いいけど……。君の剣はあるの?」
「い、一応……」
少女はどこからともなく現れた騎士の男性から剣を受け取り、鞘から抜き出す。もう、既にふら付いており、どう考えても危なかった。
「ふぐぐ……。うわっ!」
「危ない!」
少女は剣を頭上に掲げ、振ろうとする。だが、剣が重く振れなかったのか、後方に倒れかけた。僕はすぐさま駆け寄り、受け止める。
「大丈夫? 剣が少し重すぎるんじゃないかな?」
「あ、ありがとうございます……。で、でも……、私の持っている剣は一番軽い剣でして」
僕は少女の持っていた剣を持ち上げる。確かに軽かった。僕の振っている剣の十/一くらいの重さしかなく、これでよろめいてしまうのかと思い、少々筋肉の量が少ないと悟った。
「君はまず筋肉量を増やすことが大切だね。しっかり食べて、運動してよく寝る。僕はしっかり食べられなかったけど、特級なら、食事は充実しているはずだよ。食べないなんてもったいない。色々言っちゃったけど、目標がディアさんなら、強くなりたいんだよね?」
「は、はい。私、強くなりたいんです。ディア先輩みたく、カッコイイ女騎士になりたいんです。一人で鍛錬しようとしていたら、先に、あなたがいて……」
「あなた……。あぁ、僕の名前はニクス・ガリーナ。初級騎士の家系だよ」
「ニクス先輩……。え、えっと。私はリ……」
少女が声をあげようとした時、騎士が口を押えた。
「お嬢様。初級騎士の家系にわざわざ名乗る必要はありません」
「ご、ごめんなさい……。私の家、ちょっと厳しくて……」
少女は頭を下げてきた。まぁ、特級だから仕方ないか。別に関りもあまりないだろうし。
「名前は分からないけど、君が少しでも強くなれるよう、僕も協力するよ」
「あ、ありがとうございます。ニクス先輩!」
少女は頭を深く下げた。
少女と出会って一年後……。
「うぅ……。ニクス先輩……。行かないでくださいぃ……」
卒業式の日、赤髪の少女は大号泣していた。
「そんなこと言われてもな……。僕は三年生だし、君は一年生だから、仕方ないよ。でも、君は一年前よりも成長してる。加えて君にはあと二年もある。努力し続ければきっとディアさんみたいになれるよ」
「私、ニクス先輩がいなかったら、学校を止めていたかもしれません……。でも、先輩がいたから……。うぐぅう……。ずみません。涙が止まらなくて……」
「別にいいよ。君が学校を止めずにいられたのは君の努力が着実に成果が出ている証拠だ。僕はもう君に会えないかもしれないけど、応援しているよ。学校で君を馬鹿にしているみんなを逆に馬鹿に出来るくらい強くなってね」
「うぅ……はいぃ……」
「じゃあ、僕は兄さんが迎えに来ているから、もう行くね」
「あ、あの! ニクス先輩はどこの騎士団に配属されたんですか! 教えてください!」
「え、えっと……、その……、『王都の近く(実家)』かな……」
「はわわ……。わ、わかりました! 私も近衛騎士団に絶対に入れるように頑張ります!」
「ん?」
ここで僕と赤髪の少女との思い出が消えている。
僕の記憶では、赤髪の少女はすごく小柄で、子供のような体型だったと思うのだけど。目の前にいるリリルはどう考えても赤の他人としか思えない……。なんせ、僕よりも大柄で胸まで大きいのだ。
「ふっ! ふっ! ふっ! ふっ! ふっ!」
僕は訓練場に毎日通い、剣を振っていた。
なんせ、食べるものが無く、お金もないので、食堂に行って学食を得られず、購買で何かを購入して食べたりできなかった。
食事時に何もすることが無かったのだ。朝食、昼食、夕食の時間は全て訓練場に来て剣を振っていた。
食べ物は朝に支給されるパンと牛乳のみ。
僕は朝にパンと牛乳を食べきったあと、水でお腹を膨らまし、剣をただただ振り続けていた。もう、僕の学園生活は剣を振り、夜に勉強した後、石を磨いていたというくらいしか覚えていない。そのため、よく倒れていた。お腹が空き過ぎて……。
「うぅ……。お腹、空いた……。はぁ、あと一年で僕も卒業なのか……。どうしよう。このままじゃ、卒業する前に僕が餓死しそうだ……」
「あ、あの……。こ、これ……」
僕が餓死寸前の時、赤髪ロングの少女がバスケット一杯に食材を入れて持って来てくれたことがあった。その少女は身長一四〇センチメートルと小柄で、騎士になれるのかと言うほど線が細かった。
「ハグハグハグ……。うぅ、美味い。ハグハグハグ……。ありがとう、お腹空き過ぎて死にそうだったんだよ!」
僕はバスケットの中に入っていた料理を食べる。
「よ、よかったです。私、そんなに一杯食べられないので、捨てちゃうのがもったいなくて……。食べてもらえて感謝しています」
「このパンとか、ケーキとか、すっごく美味しいんだけど、これ、絶対上級騎士の食事だよね? 君、上級騎士の家系なの?」
「じょ、上級と言うか……そ、その……、と、特級……」
赤髪の少女は指先を突きながら呟いた。
「ぶっ! と、特級! じゃあ、ディアさんと同じくらいってことか……」
「はい。ディア先輩は私の知り合いです。あと……、私の目標の人でもあります」
「へぇ……。それにしては、線が細いね……。ディアさんは入学当初から体格が凄く良かったから、ずっと一番を取り続けているよ。君は……一年生?」
「はい。ついこの前入学しました。入学試験は最下位でしたけど実力で入学したんです……。でも、皆から親のこねを使って入学した卑怯者って言われてて……」
赤髪の少女は下を向き、泣きそうに声を震わし、呟く。
「まぁ……特級の家系じゃ仕方ないよね。その体だと座学で頑張ったの?」
「そうです。私が王都の騎士養成学校に入るためには座学しかないと思いましたから」
「僕と同じだね。僕も、座学で何とか入学出来たんだよ。まぁ、剣の方はからっきし駄目なんだけどね」
「え……。さっきの素振り、凄かったと思うんですけど……」
「練習で出来るのは当たり前だよ。本番で出来なかったら意味がないんだ。僕、本番に凄く弱いからさ……。どれだけ練習しても本番で負けちゃうんだ。だから、僕も万年最下位なんだよ。ディアさんとは大違いさ」
「最下位……。あ、あの。私にも素振りさせてください」
「え? いいけど……。君の剣はあるの?」
「い、一応……」
少女はどこからともなく現れた騎士の男性から剣を受け取り、鞘から抜き出す。もう、既にふら付いており、どう考えても危なかった。
「ふぐぐ……。うわっ!」
「危ない!」
少女は剣を頭上に掲げ、振ろうとする。だが、剣が重く振れなかったのか、後方に倒れかけた。僕はすぐさま駆け寄り、受け止める。
「大丈夫? 剣が少し重すぎるんじゃないかな?」
「あ、ありがとうございます……。で、でも……、私の持っている剣は一番軽い剣でして」
僕は少女の持っていた剣を持ち上げる。確かに軽かった。僕の振っている剣の十/一くらいの重さしかなく、これでよろめいてしまうのかと思い、少々筋肉の量が少ないと悟った。
「君はまず筋肉量を増やすことが大切だね。しっかり食べて、運動してよく寝る。僕はしっかり食べられなかったけど、特級なら、食事は充実しているはずだよ。食べないなんてもったいない。色々言っちゃったけど、目標がディアさんなら、強くなりたいんだよね?」
「は、はい。私、強くなりたいんです。ディア先輩みたく、カッコイイ女騎士になりたいんです。一人で鍛錬しようとしていたら、先に、あなたがいて……」
「あなた……。あぁ、僕の名前はニクス・ガリーナ。初級騎士の家系だよ」
「ニクス先輩……。え、えっと。私はリ……」
少女が声をあげようとした時、騎士が口を押えた。
「お嬢様。初級騎士の家系にわざわざ名乗る必要はありません」
「ご、ごめんなさい……。私の家、ちょっと厳しくて……」
少女は頭を下げてきた。まぁ、特級だから仕方ないか。別に関りもあまりないだろうし。
「名前は分からないけど、君が少しでも強くなれるよう、僕も協力するよ」
「あ、ありがとうございます。ニクス先輩!」
少女は頭を深く下げた。
少女と出会って一年後……。
「うぅ……。ニクス先輩……。行かないでくださいぃ……」
卒業式の日、赤髪の少女は大号泣していた。
「そんなこと言われてもな……。僕は三年生だし、君は一年生だから、仕方ないよ。でも、君は一年前よりも成長してる。加えて君にはあと二年もある。努力し続ければきっとディアさんみたいになれるよ」
「私、ニクス先輩がいなかったら、学校を止めていたかもしれません……。でも、先輩がいたから……。うぐぅう……。ずみません。涙が止まらなくて……」
「別にいいよ。君が学校を止めずにいられたのは君の努力が着実に成果が出ている証拠だ。僕はもう君に会えないかもしれないけど、応援しているよ。学校で君を馬鹿にしているみんなを逆に馬鹿に出来るくらい強くなってね」
「うぅ……はいぃ……」
「じゃあ、僕は兄さんが迎えに来ているから、もう行くね」
「あ、あの! ニクス先輩はどこの騎士団に配属されたんですか! 教えてください!」
「え、えっと……、その……、『王都の近く(実家)』かな……」
「はわわ……。わ、わかりました! 私も近衛騎士団に絶対に入れるように頑張ります!」
「ん?」
ここで僕と赤髪の少女との思い出が消えている。
僕の記憶では、赤髪の少女はすごく小柄で、子供のような体型だったと思うのだけど。目の前にいるリリルはどう考えても赤の他人としか思えない……。なんせ、僕よりも大柄で胸まで大きいのだ。
応援ありがとうございます!
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