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新年になり、心が入れ替わる。暖かくなったら、旅に行こう。
王族
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「えっと……、リリルは僕の卒業を泣いて悲しんでくれた赤髪の少女と同一人物なの?」
僕は自分の知っている少女の話をリリルにした。
「はい、そうです。学園の訓練場で剣すら真面に振れなかったのは……ひ弱な頃の私です」
「え……。ちょ、ちょっと待って……。お腹が空き過ぎて倒れそうな僕に差し入れを持って来てくれた赤髪の子……。あの子がリリルなの?」
「は、はい! そうです。成人になるまで自分の家の名前を言ってはいけないと言われていたので、言えませんでしたけど……私の本名はリリル・ルークス・アートと言います」
「ルークス……。って、王族……」
「まぁ、遠い親戚みたいなものですけど……」
リリルは後頭部に手を当て、ぼそぼそと呟いた。
「ひぇ……。ぼ、僕……王族の少女に剣を教えてたのか……。片腹痛い……」
「いえいえ! 今の私がいるのは全部ニクス先輩のおかげなんです。剣術も鍛錬方法もずっとニクス先輩を真似して努力してきました。その結果、王都の騎士養成学校で首席を取れました。もう、昔の私を馬鹿にしていたクラスメイトを見返してやりましたよ!」
「そうなんだ……。よかった……。僕の剣がリリルに悪影響を及ぼしてなくて……。でも、普通の剣じゃなくて大剣に変えたんだね」
「えっと……私は剣の方が好きなんですけど、父上から自分の武器を使えと言われまして……。我アート家は代々大剣を引き継いでいく騎士の家系なので断れず……」
「なるほど……。でも、大剣を使ってAランク冒険者と互角に戦えていたのはすごいじゃないか。さすが王都の騎士養成学校の首席卒業者だね。ディアさんといっしょじゃん」
「きょ、今日の試合、見ていたんですか……。じゃ、じゃぁ……、最後の場面も……」
リリルは顔を赤らめ、胸を隠す。たわわに実った胸は破壊力抜群で恥じらうリリルの表情と合わさり何とも言えない厭らしさを放っている。
「あ、そうだ。私、王都の近衛騎士団に入団出来ました。ディアさん直属の隊に配属されて、一緒に戦っています。私、ディアさんから聞きました。ニクス先輩は騎士団に入らなかったと……。私、近衛騎士団に入団出来るって言われた時、舞い上がってたんですけど、ニクス先輩はいなかったのでなんか拍子抜けしちゃって……、気の緩んでいる仕事をしていたら、ディアさんに怒られて……こんな僻地に飛ばされました」
「そ、そうなんだ。ごめんね……、卒業式の時にちゃんと言えなくて……。僕、自分がどこの騎士団にも入団出来ず、自宅警備員になるなんて恥ずかしくて言えなくて……」
「え、えぇ……。ニクスさん、自宅警備員をしていたんですか。でも、ディアさんは冒険者をしているって言っていたんですけど……」
「今はね……。リリルが学園で努力している時、僕は家で剣を振っていた。石を磨いては剣を振る。そんな毎日を送っていたらさ、父親に家を追い出されちゃって……。ごめん、尊敬していた先輩像を壊しちゃって」
「そんな……。気にしてませんと言ったら嘘になりますけど……、ニクス先輩ともう一度会えて凄く嬉しいです。勝ち星を見せられなかったのは残念ですけど、私の成長した姿を見てもらえてよかった……。ささ、いっぱい食べてください。今日は私が驕ります!」
「いやいや。王族におごらせるなんて、驕鎌しい行為は取れないよ。あと、ルパは沢山食べるからお金は馬鹿にならないし……」
「ルパちゃん……。そうだそうだ。ごめんね、さっき話かけてくれたのに、私の話ばっかりで。えっと、何か聞きたい話でも合ったの?」
リリルはルパの方を向き、話しをする。
「え、えっと……。そ、その……。戦い……カッコよかったです……。わ、私……、ニクスを倒したいから……強く成りたくて……、戦っていた相手……について、き、き、たかった」
ルパは声がどもり、何度もつっかえて喋っていた。だが、聞き取れない訳ではなく、リリルもしっかりと聞き取っていた。
「ルパちゃんはニクス先輩とどういう関係なの?」
「と、友達……」
「なるほど、友達か……。友達を倒したいと言う状況がよくわからないけど……」
「まあ、僕とルパには色々あって……。今、一緒に旅をしているんだ。あと、僕に勝ったら何でも言うことを聞いてあげると約束しているんだよ。あんまりいうとあれだけど、ルパが死にたがっていたから、僕を倒してからにして、と言ってあるんだ。まぁ、最近は死にたく無くなったみたいだけどね」
僕はルパの手を握りながら言うと、ルパはプイっとそっぽを向いてしまった。
「ニクス先輩とルパちゃんは何で手を握っているんですか? 仲良しですね」
「こうしていないと、ルパは人と喋れないんだよ。昔、色々あったんだ……」
「そ、そうなんですか。あまり聞かない方がいいですね……」
リリルはいったん考え、戦いを思い出していた。頭が良いので、戦いの状況を色々思い描いているのかもしれない。
「ルパちゃんはどんな戦い方をするの?」
「リリルさんの……戦った相手と同じ感じ……。だから、私の力にしたいって思った……」
「なるほどなるほど。良い! 良いよ! ルパちゃん! その向上心、私大好き!」
リリルはいきなり立ち上がり、大きな声で話した。そのせいでルパは驚いてしまい、僕に抱き着いて震えている。
「あ、ご、ごめんなさい……。体が大きくなるにつれて声と態度も大きくなってしまって。父上の性格に似て来たと母様にも言われる始末……」
リリルは椅子に座り直し、身を縮めた。
「はは……。ルパ、リリルは悪い人じゃないよ。だから、安心して。怖くない怖くない」
「こ、子供扱いするな……。スゥ……はぁ……。スゥ……はぁ……」
ルパは深呼吸をして、気持ちを落ち着かせていた。
「り、リリルさん。初めましてルパと言います。見ての通り獣族です。ニクスのところで養ってもらっている不束者です」
「ありがとう、ルパちゃん。私はリリル・ルークス・アート。王都の近衛騎士団、ディア隊に所属している上級騎士だよ。よろしくね」
リリルはルパに手を差し伸ばす。ルパはリリルの手を握り、少し微笑んだ。
「よし! ルパちゃんの質問はあとで解決するとして、自己紹介も終わったし、早速食べましょう! 私、こう見えても結構お金は持っているんです。父上からの仕送りはずっと溜めてましたし、仕事の報酬も使い道が無いのでたまる一方です。なので、こういうところで使わないともったいないので、ジャンジャン食べてください!」
「うわぁ~い。いっぱい、食べる~!」
僕は自分の知っている少女の話をリリルにした。
「はい、そうです。学園の訓練場で剣すら真面に振れなかったのは……ひ弱な頃の私です」
「え……。ちょ、ちょっと待って……。お腹が空き過ぎて倒れそうな僕に差し入れを持って来てくれた赤髪の子……。あの子がリリルなの?」
「は、はい! そうです。成人になるまで自分の家の名前を言ってはいけないと言われていたので、言えませんでしたけど……私の本名はリリル・ルークス・アートと言います」
「ルークス……。って、王族……」
「まぁ、遠い親戚みたいなものですけど……」
リリルは後頭部に手を当て、ぼそぼそと呟いた。
「ひぇ……。ぼ、僕……王族の少女に剣を教えてたのか……。片腹痛い……」
「いえいえ! 今の私がいるのは全部ニクス先輩のおかげなんです。剣術も鍛錬方法もずっとニクス先輩を真似して努力してきました。その結果、王都の騎士養成学校で首席を取れました。もう、昔の私を馬鹿にしていたクラスメイトを見返してやりましたよ!」
「そうなんだ……。よかった……。僕の剣がリリルに悪影響を及ぼしてなくて……。でも、普通の剣じゃなくて大剣に変えたんだね」
「えっと……私は剣の方が好きなんですけど、父上から自分の武器を使えと言われまして……。我アート家は代々大剣を引き継いでいく騎士の家系なので断れず……」
「なるほど……。でも、大剣を使ってAランク冒険者と互角に戦えていたのはすごいじゃないか。さすが王都の騎士養成学校の首席卒業者だね。ディアさんといっしょじゃん」
「きょ、今日の試合、見ていたんですか……。じゃ、じゃぁ……、最後の場面も……」
リリルは顔を赤らめ、胸を隠す。たわわに実った胸は破壊力抜群で恥じらうリリルの表情と合わさり何とも言えない厭らしさを放っている。
「あ、そうだ。私、王都の近衛騎士団に入団出来ました。ディアさん直属の隊に配属されて、一緒に戦っています。私、ディアさんから聞きました。ニクス先輩は騎士団に入らなかったと……。私、近衛騎士団に入団出来るって言われた時、舞い上がってたんですけど、ニクス先輩はいなかったのでなんか拍子抜けしちゃって……、気の緩んでいる仕事をしていたら、ディアさんに怒られて……こんな僻地に飛ばされました」
「そ、そうなんだ。ごめんね……、卒業式の時にちゃんと言えなくて……。僕、自分がどこの騎士団にも入団出来ず、自宅警備員になるなんて恥ずかしくて言えなくて……」
「え、えぇ……。ニクスさん、自宅警備員をしていたんですか。でも、ディアさんは冒険者をしているって言っていたんですけど……」
「今はね……。リリルが学園で努力している時、僕は家で剣を振っていた。石を磨いては剣を振る。そんな毎日を送っていたらさ、父親に家を追い出されちゃって……。ごめん、尊敬していた先輩像を壊しちゃって」
「そんな……。気にしてませんと言ったら嘘になりますけど……、ニクス先輩ともう一度会えて凄く嬉しいです。勝ち星を見せられなかったのは残念ですけど、私の成長した姿を見てもらえてよかった……。ささ、いっぱい食べてください。今日は私が驕ります!」
「いやいや。王族におごらせるなんて、驕鎌しい行為は取れないよ。あと、ルパは沢山食べるからお金は馬鹿にならないし……」
「ルパちゃん……。そうだそうだ。ごめんね、さっき話かけてくれたのに、私の話ばっかりで。えっと、何か聞きたい話でも合ったの?」
リリルはルパの方を向き、話しをする。
「え、えっと……。そ、その……。戦い……カッコよかったです……。わ、私……、ニクスを倒したいから……強く成りたくて……、戦っていた相手……について、き、き、たかった」
ルパは声がどもり、何度もつっかえて喋っていた。だが、聞き取れない訳ではなく、リリルもしっかりと聞き取っていた。
「ルパちゃんはニクス先輩とどういう関係なの?」
「と、友達……」
「なるほど、友達か……。友達を倒したいと言う状況がよくわからないけど……」
「まあ、僕とルパには色々あって……。今、一緒に旅をしているんだ。あと、僕に勝ったら何でも言うことを聞いてあげると約束しているんだよ。あんまりいうとあれだけど、ルパが死にたがっていたから、僕を倒してからにして、と言ってあるんだ。まぁ、最近は死にたく無くなったみたいだけどね」
僕はルパの手を握りながら言うと、ルパはプイっとそっぽを向いてしまった。
「ニクス先輩とルパちゃんは何で手を握っているんですか? 仲良しですね」
「こうしていないと、ルパは人と喋れないんだよ。昔、色々あったんだ……」
「そ、そうなんですか。あまり聞かない方がいいですね……」
リリルはいったん考え、戦いを思い出していた。頭が良いので、戦いの状況を色々思い描いているのかもしれない。
「ルパちゃんはどんな戦い方をするの?」
「リリルさんの……戦った相手と同じ感じ……。だから、私の力にしたいって思った……」
「なるほどなるほど。良い! 良いよ! ルパちゃん! その向上心、私大好き!」
リリルはいきなり立ち上がり、大きな声で話した。そのせいでルパは驚いてしまい、僕に抱き着いて震えている。
「あ、ご、ごめんなさい……。体が大きくなるにつれて声と態度も大きくなってしまって。父上の性格に似て来たと母様にも言われる始末……」
リリルは椅子に座り直し、身を縮めた。
「はは……。ルパ、リリルは悪い人じゃないよ。だから、安心して。怖くない怖くない」
「こ、子供扱いするな……。スゥ……はぁ……。スゥ……はぁ……」
ルパは深呼吸をして、気持ちを落ち着かせていた。
「り、リリルさん。初めましてルパと言います。見ての通り獣族です。ニクスのところで養ってもらっている不束者です」
「ありがとう、ルパちゃん。私はリリル・ルークス・アート。王都の近衛騎士団、ディア隊に所属している上級騎士だよ。よろしくね」
リリルはルパに手を差し伸ばす。ルパはリリルの手を握り、少し微笑んだ。
「よし! ルパちゃんの質問はあとで解決するとして、自己紹介も終わったし、早速食べましょう! 私、こう見えても結構お金は持っているんです。父上からの仕送りはずっと溜めてましたし、仕事の報酬も使い道が無いのでたまる一方です。なので、こういうところで使わないともったいないので、ジャンジャン食べてください!」
「うわぁ~い。いっぱい、食べる~!」
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