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実家に向かう
走って旅に出る
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「じゃあ、オリハルコンを卸していきますね。今度帰ってきた時に報酬を受け取りに来ます」
「わかりました。ほんと、この瞬間はいつも緊張しますよ……」
僕はテリアさんにオリハルコンの鉱石を渡す。多くの別の鉱石の中に混ぜて提出した。そうしないと、貴重品すぎて盗まれる可能性があるそうだ。
「では確かに受け取りました。いつもありがとうございます。最近、オリハルコンの価格がさらに高騰しているようでギルド側も大変だそうですよ」
「そうみたいですね。錬成すると無類の強さになるとか聞いたんですけど」
「形を整えるのは容易なのに魔力を流したらどの金属よりも硬くなるそうです。鎧や武器にすると、とんでもなく強くなるそうですよ。鍛冶師の腕の見せ所だそうで、現に販売されているオリハルコンの武器が虹硬貨数十枚するそうです」
「ひえぇ……。怖い怖い。テリアさん、絶対に言ったら駄目ですよ。よくわからない人達に脅されても知らん顔ですからね」
「も、もちろんです。私はまだ死にたくありませんからね」
テリアさんは口を閉じて押し黙る。どうやら僕が発掘しているオリハルコンは相当希少な金属らしく、需要が高まっているという。そんな金属を掘り当ててしまった僕も運が悪い。お金の話しは面倒事になると相場が決まっているのだ。
「じゃあ、僕達は行きますね」
「はい。旅の道中は気をつけてくださいね」
テリアさんは手を小さく振って送り出してくれた。ルパも大きく手を振ってわかれる。
「よし、今回の旅の目的は東の方向にあるプルウィウス領の大都市に向かうよ。そこから、飛行船に乗ってルークス王国の王都まで行く。あとは馬車で僕の実家に向かう」
「なんか、前よりも遠そうだね」
「ん~、そうだね。この街からプルウィウス領まで行くのに五〇〇キロメートル以上あるから、馬車で一四日くらい。僕達の脚なら七日で行けるんじゃないかな。全速力で行けば三日も掛からないけど、旅だからね。楽しんでいこう」
「うん! 旅、楽しむ!」
ルパは両手を握りしめて万歳をする。
「ふわぁ~。主たちが走ると、私の役割がなくなるんですよね~」
プルスは僕の頭に乗り、翼を広げてあくびをした。
「プルスは帰りに大活躍してくれるじゃないか。あと、プルスがいるから僕達は安心して旅が出来るだよ。ありがとう。プルス」
「えへへ~。そんなふうに褒められると困ります~」
プルスは僕の頭をベシベシと叩き、照れていた。そんな照れる必要もないと思うけど……。
「よし、僕達はこのまま街を出て東に向かう」
「了解!」
僕とルパは街の東門に移動し、外に出た。
「広い荒野。走りやすいから好き」
ルパはブーツをしっかりと履き、脱げないようにしている。僕も靴をしっかりと履き直し、靴連れを防ぐ。
「じゃあ、走ろうか。今日の目的地は村か街に到着すること。暗くなる前に寝る場所を確保すること。何か一つ発見すること」
「うん。頑張る」
僕とルパは準備運動をした後、共に走り始めた。少し疲れるかなというくらいの速度で走り、鍛錬も兼ねる。
「はははっ~。こんな広い所で走るの、やっぱり楽し~!」
ルパは荒野で大きな声を出しながら笑い、満面の笑みを浮かべる。以前とは打って変わってとても感情豊かな表情だ。
「ルパ、足下を見ていないと転ぶよ」
「は~い。心配しなくても大丈夫。私はちゃんとわかってるから」
ルパは角ウサギが彫ったと思われる穴に足を捕らわれることなく、跳躍し、上手くかわす。
ついでと言わんばかりに縄を使って徘徊していた角ウサギを捕まえていた。
「えへへ~。昼食を手に入れた~」
「ルパ、もう昼食の話? ほんと、食べることが好きだね」
「いいでしょ、別に。食べるの好きなんだもん」
ルパはナイフを取り出し、走りながら血抜きをする。ほんと器用になっちゃって。
内臓を綺麗に取り出し、腐るのを防ぐ。
縄で後ろ足を縛り、腰に掛けた。狩人そのものだなと思いながら、成長したルパを嬉しく思い、温かい目で見守った。
一時間ほど走ると村が見えて来た。どうも様子がおかしい。
「ギャギャ~! ギャギャギャ~!」
「ゴブリン? 数匹の群れかな?」
「ニクス、村人が襲われてるよ。どうする?」
「どうするも何も、二人で村人たちを助けるよ」
「了解!」
僕とルパは加速し、村に押し入る。
男性たちが数名倒れており、子どもやお年寄り、女性の者達が震えながら隠れている。村の広さは一軒家が五〇軒くらいの小ささだ。そのため、冒険者ギルドはなく、冒険者達もいない。
ゴブリンの数は少なく、見たところ五体しかいない。
「ニクス、村全体にゴブリンが一〇体いる。家の中に五体隠れてる」
「わかった。じゃあ、ルパは隠れているゴブリン達を倒して。僕は目に見えているゴブリン達を倒す」
「うん」
ルパは家の扉を蹴破り、ゴブリンに攻撃される前に首を短剣で切る。彼女は眼で見なくても耳や鼻である程度の位置を予測できるため、ゴブリンのようなにおいが強い魔物は暗闇の中だろうと見失わない。
「じゃあ、プルスは倒れている男性たちを治療して。僕は残りのゴブリンを倒す」
「了解です」
プルスは僕の頭から飛び立ち、小さな翼をはためかせてフワフワと落ちる。地面に倒れている男性たちのもとに跳ねていき。燃やしていった。
「ギャギャギャ!」
村の中央付近で集まっているゴブリン達のもとに、僕は走る。女性や子供を囲い、食べようとしていたようだ。
僕は地面を強く蹴って跳躍し、村の女性と子供たちの前に降り立つ。
「大丈夫ですか?」
「だ、誰……ですか」
小さな子共を抱いている女性が泣きながら聞いてくる。
「えっと……、冒険者です。一応……」
僕は何の職にも就いていないが、冒険者と名乗るようにしている。無職というよりも安心感があるだろう。別に嘘をついている訳ではない。ギルドカードは持っているのだ。ただ、冒険者の仕事をしていないだけである。
「わかりました。ほんと、この瞬間はいつも緊張しますよ……」
僕はテリアさんにオリハルコンの鉱石を渡す。多くの別の鉱石の中に混ぜて提出した。そうしないと、貴重品すぎて盗まれる可能性があるそうだ。
「では確かに受け取りました。いつもありがとうございます。最近、オリハルコンの価格がさらに高騰しているようでギルド側も大変だそうですよ」
「そうみたいですね。錬成すると無類の強さになるとか聞いたんですけど」
「形を整えるのは容易なのに魔力を流したらどの金属よりも硬くなるそうです。鎧や武器にすると、とんでもなく強くなるそうですよ。鍛冶師の腕の見せ所だそうで、現に販売されているオリハルコンの武器が虹硬貨数十枚するそうです」
「ひえぇ……。怖い怖い。テリアさん、絶対に言ったら駄目ですよ。よくわからない人達に脅されても知らん顔ですからね」
「も、もちろんです。私はまだ死にたくありませんからね」
テリアさんは口を閉じて押し黙る。どうやら僕が発掘しているオリハルコンは相当希少な金属らしく、需要が高まっているという。そんな金属を掘り当ててしまった僕も運が悪い。お金の話しは面倒事になると相場が決まっているのだ。
「じゃあ、僕達は行きますね」
「はい。旅の道中は気をつけてくださいね」
テリアさんは手を小さく振って送り出してくれた。ルパも大きく手を振ってわかれる。
「よし、今回の旅の目的は東の方向にあるプルウィウス領の大都市に向かうよ。そこから、飛行船に乗ってルークス王国の王都まで行く。あとは馬車で僕の実家に向かう」
「なんか、前よりも遠そうだね」
「ん~、そうだね。この街からプルウィウス領まで行くのに五〇〇キロメートル以上あるから、馬車で一四日くらい。僕達の脚なら七日で行けるんじゃないかな。全速力で行けば三日も掛からないけど、旅だからね。楽しんでいこう」
「うん! 旅、楽しむ!」
ルパは両手を握りしめて万歳をする。
「ふわぁ~。主たちが走ると、私の役割がなくなるんですよね~」
プルスは僕の頭に乗り、翼を広げてあくびをした。
「プルスは帰りに大活躍してくれるじゃないか。あと、プルスがいるから僕達は安心して旅が出来るだよ。ありがとう。プルス」
「えへへ~。そんなふうに褒められると困ります~」
プルスは僕の頭をベシベシと叩き、照れていた。そんな照れる必要もないと思うけど……。
「よし、僕達はこのまま街を出て東に向かう」
「了解!」
僕とルパは街の東門に移動し、外に出た。
「広い荒野。走りやすいから好き」
ルパはブーツをしっかりと履き、脱げないようにしている。僕も靴をしっかりと履き直し、靴連れを防ぐ。
「じゃあ、走ろうか。今日の目的地は村か街に到着すること。暗くなる前に寝る場所を確保すること。何か一つ発見すること」
「うん。頑張る」
僕とルパは準備運動をした後、共に走り始めた。少し疲れるかなというくらいの速度で走り、鍛錬も兼ねる。
「はははっ~。こんな広い所で走るの、やっぱり楽し~!」
ルパは荒野で大きな声を出しながら笑い、満面の笑みを浮かべる。以前とは打って変わってとても感情豊かな表情だ。
「ルパ、足下を見ていないと転ぶよ」
「は~い。心配しなくても大丈夫。私はちゃんとわかってるから」
ルパは角ウサギが彫ったと思われる穴に足を捕らわれることなく、跳躍し、上手くかわす。
ついでと言わんばかりに縄を使って徘徊していた角ウサギを捕まえていた。
「えへへ~。昼食を手に入れた~」
「ルパ、もう昼食の話? ほんと、食べることが好きだね」
「いいでしょ、別に。食べるの好きなんだもん」
ルパはナイフを取り出し、走りながら血抜きをする。ほんと器用になっちゃって。
内臓を綺麗に取り出し、腐るのを防ぐ。
縄で後ろ足を縛り、腰に掛けた。狩人そのものだなと思いながら、成長したルパを嬉しく思い、温かい目で見守った。
一時間ほど走ると村が見えて来た。どうも様子がおかしい。
「ギャギャ~! ギャギャギャ~!」
「ゴブリン? 数匹の群れかな?」
「ニクス、村人が襲われてるよ。どうする?」
「どうするも何も、二人で村人たちを助けるよ」
「了解!」
僕とルパは加速し、村に押し入る。
男性たちが数名倒れており、子どもやお年寄り、女性の者達が震えながら隠れている。村の広さは一軒家が五〇軒くらいの小ささだ。そのため、冒険者ギルドはなく、冒険者達もいない。
ゴブリンの数は少なく、見たところ五体しかいない。
「ニクス、村全体にゴブリンが一〇体いる。家の中に五体隠れてる」
「わかった。じゃあ、ルパは隠れているゴブリン達を倒して。僕は目に見えているゴブリン達を倒す」
「うん」
ルパは家の扉を蹴破り、ゴブリンに攻撃される前に首を短剣で切る。彼女は眼で見なくても耳や鼻である程度の位置を予測できるため、ゴブリンのようなにおいが強い魔物は暗闇の中だろうと見失わない。
「じゃあ、プルスは倒れている男性たちを治療して。僕は残りのゴブリンを倒す」
「了解です」
プルスは僕の頭から飛び立ち、小さな翼をはためかせてフワフワと落ちる。地面に倒れている男性たちのもとに跳ねていき。燃やしていった。
「ギャギャギャ!」
村の中央付近で集まっているゴブリン達のもとに、僕は走る。女性や子供を囲い、食べようとしていたようだ。
僕は地面を強く蹴って跳躍し、村の女性と子供たちの前に降り立つ。
「大丈夫ですか?」
「だ、誰……ですか」
小さな子共を抱いている女性が泣きながら聞いてくる。
「えっと……、冒険者です。一応……」
僕は何の職にも就いていないが、冒険者と名乗るようにしている。無職というよりも安心感があるだろう。別に嘘をついている訳ではない。ギルドカードは持っているのだ。ただ、冒険者の仕事をしていないだけである。
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