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仲間が増えた生活
黒竜
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「スグル、ぎゃんぎゃん騒ぐな。見っともない」
「す、すみません。副団長」
スグルさんは姿勢を正し、びしっと立つ。
副団長と言っているからして、騎士団のお偉いさんだ。
以前、ブレーブ街の大地震が起こったさいに副団長の動きが騎士とは思えなかったが、彼が神獣を手にしていたなんて……。
スグルさんは布を取り、お湯に浸かる。
彼に大きな黒竜は見えておらず、副団長と共に入っているだけとしか認識していない。
――プルス、黒竜の能力ってなに?
「黒竜は右手と左手に持っている宝玉の力を使い、神通力を使用します」
――神通力? どんな力なの。
「天と地を一瞬で移動したり、物の大きさや天候を操れます」
――ええ、なんか本当に神みたいな強さなんだね。
「はい。ですが、黒竜が使用できる攻撃技は水属性のみです。私の炎は水をも蒸発させますから、神通力にさえ気を付ければ主でも戦えます」
――その神通力がやばいんだってば……。
「そんなに気を張らなくてもいい。神の力とて何もかもが便利に働くとは限らん。わしらは一度死んだら生き返らんのだ。力が強大すぎる故に自滅しかねない。今、使用すれば多くもの者が巻き添えを食う。この男はそこまで馬鹿ではあるまいよ」
「コクヨ、ペラペラと喋るな。敵だろうが」
「案ずるな、主よ。神獣の手口は皆知っている。赤鳥の能力は超再生。片方を殺しても死にはしない。赤鳥を殺してからもう一方の者を五秒以内に殺さなければ倒せない敵だ。火属性魔法しか使えないが、わしらよりも早く空を飛ぶ。光の速さでな」
「なるほど……。逃げられたら五秒などあっという間か。厄介な相手だ」
「えっと、副団長。さっきから何をブツブツ言っているんですか?」
「気にするな。詮索しすぎるのはお前の悪い癖だぞ」
「す、すみません。気になるとつい……」
スグルさんはペコペコと頭を下げ、副団長に媚びを売っている。なかなかここまで媚びを売れる方も珍しいだろう。
「水鉄砲(ウォーターショット)」
副団長が指先をふとった男性の方に向け、詠唱を放つ。すると指先から水の弾が飛び出し、眉間に向かう。僕は右手で水の弾を握り、蒸発させた。
「ほう……、今の速度を反射神経のみでとらえるか。ますます厄介だな」
副団長は立ち上がり、竜のような下半身を見せながら風呂を上がる。スグルさんは額に静脈を浮かべながら、副団長の後を追った。
「副団長……。人を殺すのに躊躇が無かった。あんな人が騎士団の上に立ったら絶対に駄目だ」
「ではな赤鳥よ。お主らと本気で戦える時を楽しみにしている。うひょー、姉ちゃんのパイパイでけー」
黒竜は女湯の方を覗き、尻尾を振っていた。
「プルス……」
「どうやら、副団長は変態のようですね。黒竜の方にも色濃く反映されています」
「とりあえず、燃やしておく?」
「こちらから攻撃したら、戦う意志があると見られます。そうなれば、多くの犠牲者が生まれるでしょう」
「そうか……。とりあえず、威圧しておこうか」
僕はルパとミアの体を見られているかもしれないと思い、黒竜を威圧する。すると、黒竜は萎縮し、小さな蛇のようになった。空中を漂い、副団長のもとへと移動する。
「主、なかなかいい威圧でしたよ。ただ、周りの者も一緒に威圧されたせいで気絶しています。あまり殺気を漏らすと、人の本能が死んだふりをしてしまうので、ほどほどにしておきましょう」
「ごめん、ちょっとイライラしてたから……」
僕はお風呂に入り、鬱憤を晴らす。水面でちゃぷちゃぷと水浴びをするプルスを見ると、あの巨大な黒竜と同じ存在とは思えない。
僕達はお風呂を堪能した後、体を洗い、風呂場を出た。脱衣所で服を着て垂れ幕を潜り、男湯を出る。何分くらい待っていたかな。二〇分くらいあとにルパとミアが戻ってきた。
「ふぅー、いいお湯だったー。ニクス、みてみて私の肌。ぷるぷるモチモチでしょ」
ルパは僕に近づき、両手を持ち、頬を触らせてくる。確かに柔らかい。しっとりとしており、さわり心地が良かった。
「ニクスさん、私の方も触ってください」
ミアはルパと同じように頬を触らせてくる。とても柔らかく、心地いい。今、唇で吸いついたら凄く気持ちよさそうな肌触りだ。
「二人共、今まで以上に綺麗になったね。温泉の効果かな?」
「えへへー、綺麗なんて、そんなことないよー。ニクスに言われるとすっごく不愉快」
ルパは頬に手を置き、尻尾を振りながら毒を吐く。
「も、もう、綺麗なんて言い過ぎです。ほんと、ニクスさんは相手を褒めるのが上手ですね」
ミアは尻尾を振り、微笑む。どちらも愛らしい動きで抱きしめたくなった。
「じゃあ、お腹もすいた頃だし、昼食にしようか」
「はーい!」
ルパとミアは手を大きく上げ、お腹を摩りながら笑みを浮かべる。お腹が空いて仕方ないようだ。お腹いっぱい美味しい品を食せば、気分がさらによくなってくれる
食事処に来ると、前の方で浴衣を着た女性が躍っており、全ての座席が低い。ローテーブルが何台も置かれており、椅子は無く、座布団が敷かれていた。何とも風流な場所だった。
開いている四人用のローテーブルに移動し、座布団に座る。
僕とルパは胡坐。ミアは正座をしており、品書きを見る。一食金貨一枚で統一されており、肉尽くしや魚尽くし、山菜尽くしなど、名前からして美味しそうな品ばかり。ルパとミアは迷わず肉尽くし、僕は魚尽くしにしてプルスは麦飯の特盛を頼む。
店員さんに品書きの料理をお願いした。すると、水とお絞りを持って来てくれた。水は無料らしい。この水が本当に美味しくて暖かい部屋で乾いた体に沁み込んでくる。
周りを見渡してみると子供連れの方や昼間からお酒を飲んでいる方、女性を両脇に添え、料理を楽しんでいる方など、様々だった。
「す、すみません。副団長」
スグルさんは姿勢を正し、びしっと立つ。
副団長と言っているからして、騎士団のお偉いさんだ。
以前、ブレーブ街の大地震が起こったさいに副団長の動きが騎士とは思えなかったが、彼が神獣を手にしていたなんて……。
スグルさんは布を取り、お湯に浸かる。
彼に大きな黒竜は見えておらず、副団長と共に入っているだけとしか認識していない。
――プルス、黒竜の能力ってなに?
「黒竜は右手と左手に持っている宝玉の力を使い、神通力を使用します」
――神通力? どんな力なの。
「天と地を一瞬で移動したり、物の大きさや天候を操れます」
――ええ、なんか本当に神みたいな強さなんだね。
「はい。ですが、黒竜が使用できる攻撃技は水属性のみです。私の炎は水をも蒸発させますから、神通力にさえ気を付ければ主でも戦えます」
――その神通力がやばいんだってば……。
「そんなに気を張らなくてもいい。神の力とて何もかもが便利に働くとは限らん。わしらは一度死んだら生き返らんのだ。力が強大すぎる故に自滅しかねない。今、使用すれば多くもの者が巻き添えを食う。この男はそこまで馬鹿ではあるまいよ」
「コクヨ、ペラペラと喋るな。敵だろうが」
「案ずるな、主よ。神獣の手口は皆知っている。赤鳥の能力は超再生。片方を殺しても死にはしない。赤鳥を殺してからもう一方の者を五秒以内に殺さなければ倒せない敵だ。火属性魔法しか使えないが、わしらよりも早く空を飛ぶ。光の速さでな」
「なるほど……。逃げられたら五秒などあっという間か。厄介な相手だ」
「えっと、副団長。さっきから何をブツブツ言っているんですか?」
「気にするな。詮索しすぎるのはお前の悪い癖だぞ」
「す、すみません。気になるとつい……」
スグルさんはペコペコと頭を下げ、副団長に媚びを売っている。なかなかここまで媚びを売れる方も珍しいだろう。
「水鉄砲(ウォーターショット)」
副団長が指先をふとった男性の方に向け、詠唱を放つ。すると指先から水の弾が飛び出し、眉間に向かう。僕は右手で水の弾を握り、蒸発させた。
「ほう……、今の速度を反射神経のみでとらえるか。ますます厄介だな」
副団長は立ち上がり、竜のような下半身を見せながら風呂を上がる。スグルさんは額に静脈を浮かべながら、副団長の後を追った。
「副団長……。人を殺すのに躊躇が無かった。あんな人が騎士団の上に立ったら絶対に駄目だ」
「ではな赤鳥よ。お主らと本気で戦える時を楽しみにしている。うひょー、姉ちゃんのパイパイでけー」
黒竜は女湯の方を覗き、尻尾を振っていた。
「プルス……」
「どうやら、副団長は変態のようですね。黒竜の方にも色濃く反映されています」
「とりあえず、燃やしておく?」
「こちらから攻撃したら、戦う意志があると見られます。そうなれば、多くの犠牲者が生まれるでしょう」
「そうか……。とりあえず、威圧しておこうか」
僕はルパとミアの体を見られているかもしれないと思い、黒竜を威圧する。すると、黒竜は萎縮し、小さな蛇のようになった。空中を漂い、副団長のもとへと移動する。
「主、なかなかいい威圧でしたよ。ただ、周りの者も一緒に威圧されたせいで気絶しています。あまり殺気を漏らすと、人の本能が死んだふりをしてしまうので、ほどほどにしておきましょう」
「ごめん、ちょっとイライラしてたから……」
僕はお風呂に入り、鬱憤を晴らす。水面でちゃぷちゃぷと水浴びをするプルスを見ると、あの巨大な黒竜と同じ存在とは思えない。
僕達はお風呂を堪能した後、体を洗い、風呂場を出た。脱衣所で服を着て垂れ幕を潜り、男湯を出る。何分くらい待っていたかな。二〇分くらいあとにルパとミアが戻ってきた。
「ふぅー、いいお湯だったー。ニクス、みてみて私の肌。ぷるぷるモチモチでしょ」
ルパは僕に近づき、両手を持ち、頬を触らせてくる。確かに柔らかい。しっとりとしており、さわり心地が良かった。
「ニクスさん、私の方も触ってください」
ミアはルパと同じように頬を触らせてくる。とても柔らかく、心地いい。今、唇で吸いついたら凄く気持ちよさそうな肌触りだ。
「二人共、今まで以上に綺麗になったね。温泉の効果かな?」
「えへへー、綺麗なんて、そんなことないよー。ニクスに言われるとすっごく不愉快」
ルパは頬に手を置き、尻尾を振りながら毒を吐く。
「も、もう、綺麗なんて言い過ぎです。ほんと、ニクスさんは相手を褒めるのが上手ですね」
ミアは尻尾を振り、微笑む。どちらも愛らしい動きで抱きしめたくなった。
「じゃあ、お腹もすいた頃だし、昼食にしようか」
「はーい!」
ルパとミアは手を大きく上げ、お腹を摩りながら笑みを浮かべる。お腹が空いて仕方ないようだ。お腹いっぱい美味しい品を食せば、気分がさらによくなってくれる
食事処に来ると、前の方で浴衣を着た女性が躍っており、全ての座席が低い。ローテーブルが何台も置かれており、椅子は無く、座布団が敷かれていた。何とも風流な場所だった。
開いている四人用のローテーブルに移動し、座布団に座る。
僕とルパは胡坐。ミアは正座をしており、品書きを見る。一食金貨一枚で統一されており、肉尽くしや魚尽くし、山菜尽くしなど、名前からして美味しそうな品ばかり。ルパとミアは迷わず肉尽くし、僕は魚尽くしにしてプルスは麦飯の特盛を頼む。
店員さんに品書きの料理をお願いした。すると、水とお絞りを持って来てくれた。水は無料らしい。この水が本当に美味しくて暖かい部屋で乾いた体に沁み込んでくる。
周りを見渡してみると子供連れの方や昼間からお酒を飲んでいる方、女性を両脇に添え、料理を楽しんでいる方など、様々だった。
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