経験値として生きていく~やられるだけの異世界バトル~

誇高悠登

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四章 ハクハ領の救出作戦

41話 信じる者は喰われる

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 仲間同士の『経験値争奪戦』は、翌日も開催された。
 参加している騎士たちは、昨日よりも目に見えて減っていた。
 いや、これ、俺と絶対関係ない所で殺し合ってるだろと、不毛な殺し合いやめろよと言いたくはなるが、頂点に立つシンリがそれを望んでいるので、どうしようもない。
 俺にとっては人数が少ない方が有利だし。

 そんな訳で、本日も俺は殺気溢れる騎士ナイトたちとの鬼ごっこを行っていた。

「ま、鬼ごっこにもなってないけどな」

 このゲームが始まる前、昨夜の騎士が一枚の地図を俺に渡してくれたのだ。ここで待っていれば安全だと。
 しかし、その場所は城の中。

 本当に安全なのかと疑問に思うが、開始して一時間見つかっていないのだから、騎士たちの言う通りか。

 三人が俺に与えてくれたのは、騎士達に与えられている小さな一室。三人一部屋で暮らしているとのことだったが、正直、一人でも狭かった。

 ただ、二段のベッドが置かれているだけ。入って直ぐに圧迫するように両脇に並べられたベット。しかも二段目は天井スレスレ。頭を起こしただけでぶつかってしまう高さだ。
 そんな狭い部屋で騎士たちは夜を過ごしているのか。

 俺が客人として迎え入れられていると言うのは、あながち嘘ではないのかも知れない。

「ま、部屋の広さはともかく、確かにここに隠れるのはナイスな案だね」

 騎士たちは俺を追うために全員が外に出ているのだ。
昨日は城に近づくのは危険だと思っていたが、そうか、中途半端だったから駄目だったんだ。更に内部・・・・に潜り込めば見つかる危険性は下がる。

「昨日までは、どこに騎士たちの宿場があるなんて知らなかったからな、仕方ないけどな」

 俺がここに隠れている間、三人が他の騎士たちを誘導して城から追い出してくれると言っていた。
 あいつら、マジで俺を殺してレベルを上げたいんだな。
 まあ、こんな場所で毎日暮らしていたら、そりゃ、抜け出したいか。彼らの気持ちが少しだけ分かった。

「……すまない。待たせてしまったかな?」

 隠れてから凡そ一時間程度。
 思っていたよりも早い時間で三人組の一人――リーダー格の男がやってきた。
 いや、顔を鎧で隠しているので、もしかしたら違う人間かも知れないけど、俺にとってはどうでもいいことだ。
 この後、池井さんに会えるかが重要だ。

「いや、全然。俺も今来た所だよ?」

 待たせてしまったかと聞かれた俺は、反射的に答える。

「……最初からここに隠れていなかったのか?」

「まあ、隠れていたけど」

 俺は、「デートか!」みたいな反応を期待したのだけれど、どうやらこの世界には、お約束の展開はないのかも知れない。
 こんな時に異世界人が居ればなー。
 土通さんなら確実に反応してくれるはずだ。

「今来た所? あなたは、私と同じ時間にこの場所に来たと言うことなの? それは私に対する侮辱ね」 

 そう言って家に向かって引き返すはずだ。
 うむ。こう考えると、ミワさんもSっぽいけど、土通さんも中々だな。
 もっとも、ミワさんは女王様。土通さんは暴君といった感じだけれど。

 そんなことを思いながら、池井さんがいるであろう場所まで案内を受ける。
 なんと、リーダー格の男は、堂々と歩けるように鎧一式まで準備してくれていたようだ。感謝しかない。 まさか、こんな風に城内を歩けるとは。
 いやー、楽だ。

「もうすぐ、着きますよ」

 案内されたのは城の地下。
 階段を下りるたびに明るさは失われ、蝋燭の炎が俺達の影を怪しく揺らめかせる。
 こんな場所に、職場の天使を閉じ込めているのか。

 地下にもいくつか部屋があるようだ。
 左右に分かれた扉。なんだろうな……『部屋』というよりは、ドラマとかで見る刑務所に近い感じがする。
 暗い雰囲気が操作せるのだろうか?
 これ、扉じゃなくて鉄格子だったら、完全に犯罪者が閉じ込められてる場所だよね?

 いや、俺がそう感じるだけで、ハクハに取っては普通なのかも知れない。
 階段を下りて10個めの扉で足を止めた。

「ここにセンジュ様はいらっしゃいます」

「……」

「では、どうぞ」

 開かれた扉の中に入る。部屋の中に明かりはないのか。なにか灯りはないかと、俺は振り返って騎士に光を求めようとした時、

「がっ」と、両側から俺の腕を掴まれた。

「なっ、なんだ!?」

 この時の俺は恥ずかしながらも、池井さんの悪戯か? なんて思った。
 だが、直ぐに彼女はそんなことをしない。

 なら、俺を固定するのは一体誰だ?

 暗闇に目が慣れてくると、その答えが判明した。
 昨晩、俺を訪ねてきた騎士の内、残りの二人が俺を掴んでいた。
「作戦成功だな。これで、『経験値』は俺達のモノだ!」

 ああ、そういうことね。
 俺を確実に殺すために待ち伏せしていたわけだ。
 つまり――俺は騙されたのだ。

 リーダー格の男が、手にしていたランタンから、部屋に備え付けられていた蝋燭に比を移した。無様に掴まれた俺を見て彼らは笑う。

「こうなりゃ、異世界人だろうが、俺らでも流石に殺せるだろうぜ? 」

 ハクハ領の人間だろうと、俺達みたいな異世界人はやはり、警戒すべき相手のようだった。
 もしかしたら、『経験値が多い』という能力を勘違いして警戒してくれたのかも知れない。
 けど、

「……そうかよ。残念なことを教えると、こんな手の込んだことをしなくても、俺は殺せたと思うけどね」

 俺の力は経験値が多いことと量産されている事だけだ。
 殺されるためだけにある力は、戦いでは一切使えない。だから、こんな地下にまで俺を誘い出さなくても、騎士たちの宿場で俺を殺せばそれで良かったのだ。

「俺を殺すのは別に良いさ。最初からそのつもりだったし。けどさ、約束だった池井さんは何処にいるのかな?」

 俺の質問は彼らにとっては笑いのツボだったようだ。
 五月蠅いくらいに声を揃えて下品に笑う。

「はーっ。俺達みたいな下っ端が知ってる訳ないだろ! たまたま、あんたとユウラン様が会話してるのを聞いて、利用しようとしただけだ!」

 交代でのお世話もしていないし、どこにいるかはシンリと幹部の4人だけだと笑う。
 適当な言葉に俺は見事に引っ掛かったようだ。相談していたのも、本当に出来るかと仲間内で牽制しあっていたのも、全ては俺を騙すための演技。

 なんだ、異世界にも役者はいるのかよ。

 ……心理戦と頭脳戦は得意分野とか言っておきながら、ストレートで完敗した俺だった。
 流石、平凡な頭脳だけのようだった。

 オンラインゲームの成績は、異世界では役に立たないか。まあ、現実世界でも役に立たないもんね。

「ユウラン様は考え深いからな。未知の『武器』を生み出す力。それを勝手に俺達に使わたくないようだぜ?」

「信用されてないんだね。ま、そりゃ、こんな卑劣な手を使う人間は信用できないか」

「お前……!?」

 両側を掴んでいる騎士たちの力が強くなる。
 俺の身体が宙を浮いて壁に叩きつけらた。

「がっ……!?」

「余計なこと言ってんじゃねーよ」

「……余計なことじゃ……ない。本当のことだよ……」

 痛みで呼吸が辛いが、それでも俺は挑発を止めない。どうせ殺されるのが分かっているのだ。怒らせてさっさと殺して貰うべきだ。

「お前……。調子に乗るんじゃねぇよ!」

 俺の作戦通りにリーダー格の騎士が俺に剣を振り上げる。
 うん。
 最後の最後で狙い通りだ。
 心なし、一矢報いた気分で俺は目を閉じる。もう、ハクハの人間に頼るのは止めて、次は自分で池井さんを見つけ出そう。
 こんなハイペースで殺されたら、カナツさん達は俺を心配してくれるかな?

 だが、どれだけ死を待とうとも、俺が殺されることはなかった。

「こんな非道な戦い方……間違っています!」

 俺の前に一人の騎士がいた。正面から少女を見たことは無かったが、その声、口調は記憶に新しい。カズカに逆らった彼女だ。
 確か名をトウカと言ったか。三人の騎士と倍近く年の離れた彼女は、

「私が名の元に、あなた方を粛正します!」

 三人を相手に戦いを挑む少女。
 俺の一矢はどうやら外れてしまったようだった。
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