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一章 経験値として生きてます
プロローグ 経験値タンクとしてのお仕事
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あ、こいつ俺を殺す気だな。
前に立つ白髪の男の眼を見て思った。
狂気に満ちた瞳が俺に向けられていた。いや、満ちているなんてものじゃない、狂気が溢れかえっていた。
右眼の下に刻印された、黒い一本の入れ墨が、更にそう感じさせるのかもしれない。
着物と軍服を合わせた、時代の最新鋭を行くようなファッション(むしろ、日常じゃ絶対見ないようなデザイン)に袖を通す男。
だが、この状況で特筆すべきはファッションセンスではない。
両手に握られている二本の小刀である。
刀は「何か」を切るためにある。
そして、この状況。
「何か」とは当然、殺意を向けられている俺だろうな。
こんな状況下でも冷静に分析する自分が頼もしいぜ。実際には冷静じゃないんだけど。ただ、怖くて口数が多くなっているだけだ。
そのせいで子供の頃は酷い目にあったものだぜ。
だが、成長して大人になった俺は口先だけじゃない。
多少筋トレもしてるし、最近はジムにも通っていたんだ。どうせ死ぬのであれば、抵抗の一つでもしてみようかと手を突き出す。
が、ああ、そうだった。両手両足は絶賛拘束中だった。
見事なまでに俺を殺すことしか頭にない状況。
男は楽しそうに俺に顔を近づけると――ザクリと俺の両脚の太ももを突き刺した。あまりの激痛に悲鳴を上げる。
足に力が入らずに、崩れ落ちる。
痛みに叫んだ俺の首は自然と床へと傾く。
痛みで霞む視界には、脚から流れる止めどない血液によって、大きな血だまりを作っていた。いくら、大理石のような石質とは言え、掃除するのは大変だろう。
なんて、殺された後のことを考えている俺に気付いたのか、髪を掴んで顔を引き上げる。
そして首元に刀を突きつけた。
刺そうと思えばさせるだろうに、止めを刺さない男。
爪を剥がし、指を指し、頬に傷を作っていく。
人で遊ぶのが好きなのかよ。
もうやめてくれ、早く殺せ、と小さな声で言葉を綴るが、男は体を弄る手を緩めない。
じわじわと意識が薄れていく。
その中で思い出すのは最後に楽しい時間だった。
仲間たちと山の中でキャンプして、BBQなんてリア充ちっくなイベントに初めて参加して、ちょっと、俺、イケてるんじゃないの?
なんて勘違いしていたはずなのに。
まさか、その勘違いがイケなかったなんてことはないだろ。
これまでの人生、運動駄目、勉学駄目、才能駄目。
全て赤点で生きてきた俺に取って初めてのご褒美だったんだ。
少しくらい勘違いさせてくれてもいいじゃないか。
俺を誘ってくれた5人の顔を思い出す。
社会に出て、俺を光に引き連れてくれた二人の先輩。
そして、三人の同僚たち。
まさか、社会に出てからが俺のスタートだとは思わなかった。
ああ、学生時代、苦痛に耐えながらも引き籠らないで良かったと、唯一、過去の自分を褒めたくらいなのに――。
そんな俺の思いを突き破るかのように、腹部に刀が突き出された。
ガッと胃の中に溜まる血液が吐き出される。
完全に死に向かって意識が消えゆく意識の中――男の声が聞こえた。
「経験値を――ありがとう」
その言葉を最後に、俺の魂は体から抜けていくのだった。
前に立つ白髪の男の眼を見て思った。
狂気に満ちた瞳が俺に向けられていた。いや、満ちているなんてものじゃない、狂気が溢れかえっていた。
右眼の下に刻印された、黒い一本の入れ墨が、更にそう感じさせるのかもしれない。
着物と軍服を合わせた、時代の最新鋭を行くようなファッション(むしろ、日常じゃ絶対見ないようなデザイン)に袖を通す男。
だが、この状況で特筆すべきはファッションセンスではない。
両手に握られている二本の小刀である。
刀は「何か」を切るためにある。
そして、この状況。
「何か」とは当然、殺意を向けられている俺だろうな。
こんな状況下でも冷静に分析する自分が頼もしいぜ。実際には冷静じゃないんだけど。ただ、怖くて口数が多くなっているだけだ。
そのせいで子供の頃は酷い目にあったものだぜ。
だが、成長して大人になった俺は口先だけじゃない。
多少筋トレもしてるし、最近はジムにも通っていたんだ。どうせ死ぬのであれば、抵抗の一つでもしてみようかと手を突き出す。
が、ああ、そうだった。両手両足は絶賛拘束中だった。
見事なまでに俺を殺すことしか頭にない状況。
男は楽しそうに俺に顔を近づけると――ザクリと俺の両脚の太ももを突き刺した。あまりの激痛に悲鳴を上げる。
足に力が入らずに、崩れ落ちる。
痛みに叫んだ俺の首は自然と床へと傾く。
痛みで霞む視界には、脚から流れる止めどない血液によって、大きな血だまりを作っていた。いくら、大理石のような石質とは言え、掃除するのは大変だろう。
なんて、殺された後のことを考えている俺に気付いたのか、髪を掴んで顔を引き上げる。
そして首元に刀を突きつけた。
刺そうと思えばさせるだろうに、止めを刺さない男。
爪を剥がし、指を指し、頬に傷を作っていく。
人で遊ぶのが好きなのかよ。
もうやめてくれ、早く殺せ、と小さな声で言葉を綴るが、男は体を弄る手を緩めない。
じわじわと意識が薄れていく。
その中で思い出すのは最後に楽しい時間だった。
仲間たちと山の中でキャンプして、BBQなんてリア充ちっくなイベントに初めて参加して、ちょっと、俺、イケてるんじゃないの?
なんて勘違いしていたはずなのに。
まさか、その勘違いがイケなかったなんてことはないだろ。
これまでの人生、運動駄目、勉学駄目、才能駄目。
全て赤点で生きてきた俺に取って初めてのご褒美だったんだ。
少しくらい勘違いさせてくれてもいいじゃないか。
俺を誘ってくれた5人の顔を思い出す。
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そして、三人の同僚たち。
まさか、社会に出てからが俺のスタートだとは思わなかった。
ああ、学生時代、苦痛に耐えながらも引き籠らないで良かったと、唯一、過去の自分を褒めたくらいなのに――。
そんな俺の思いを突き破るかのように、腹部に刀が突き出された。
ガッと胃の中に溜まる血液が吐き出される。
完全に死に向かって意識が消えゆく意識の中――男の声が聞こえた。
「経験値を――ありがとう」
その言葉を最後に、俺の魂は体から抜けていくのだった。
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