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天真爛漫な新人 (明神 公人)
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僕は現在、車を運転していた。
助手席には継之介、そして後部座席の中央には春馬 莉子ちゃんが座っている。
この車は僕の所有車だ。
最新のハイブリットカーは、どこかスポーツカーのようでもある。そのデザインが受けたのか世間では一番売れている車種だ。
車に詳しくない僕は一番売れているからという理由でこの車を買った。
それは――既に〈悪魔〉に殺されてしまった〈並行世界〉の僕も同じだった。
世界が違っても変わらない部分もあるということか。
後部座席から身を乗り出した春馬 莉子ちゃんが大袈裟な声で継之介と言葉を交わす。車内は二人の興奮した声で満ちていた。
「ええー!! 継之介さんたちって〈並行世界〉から来たんですか!? それって異世界ってことですか!?」
「ああ、そうだ。ま、〈並行世界〉って言っても、全く別の世界じゃないんだけどね」
「え、ええ!? それって逆にどういうことなんですか! 凄い気になりますよ!!」
二人が盛上っている話の内容は、僕達が〈並行世界〉から来たということだった。
なんでも、引き籠っていた時に、異世界を舞台としたアニメや漫画を好んで呼んでいたらしい。現実から逃避しなければ、彼女の心は崩れてしまったのだろう。
僕達が過ごしていた世界に興味を示す春馬 莉子ちゃん。
彼女は、完全には異世界と言えない僕達の世界を知りたっていた。子犬のように目を輝かせて継之介に視線を送る。
だが、視線を受けた継之介は窓を開けて顔を背けて僕に助けを求めた。
「えっと……。俺達の世界と〈並行世界〉はどうなってるんだっけか? 公人?」
「何度も説明していると思うけど?」
「あー、俺は興味ないことは全く覚えられないんだわ」
「分かります! 私も興味ないことには脳の容量を使えないんですよ! 私のメモリーは最新型なので、セキリティはしっかりしてますからね!」
「さ、流石、女子高生。今どきの言葉だぜ」
いや、春馬 莉子ちゃんの言葉は全く今どきでもないのだが、継之介にはそう聞こえたみたいだ。ようするに嫌いなものは覚える気がないと言ってるだけなのに。
僕はバックミラー越しに胸を張って得意げに鼻を鳴らす莉子ちゃんを見る。
そして、小さな溜息と共に『世界』について説明をする。
「簡単に言えば〈悪魔〉が現れたことで、世界が分岐したんだよ。僕たちが暮らしていた〈悪魔〉がいないルートをA。この世界はルートBだ」
本来ならば分岐した世界は混じることはない。
独立した世界となって時を進めていくはずだったのだが、その境界を越えて人間を呼び出す力を持った〈神〉によって僕達は呼び出された。
なぜ、わざわざ〈並行世界〉から僕達を呼び寄せたのか、その理由は分からないが、ここでこうして暮らしていることは事実だ。
春馬 莉子ちゃんは僕の言葉から〈悪魔〉の力によって呼び出されたことに気付いたのか、「えっ? じゃあ、〈並行世界〉を超えることのできる〈悪魔〉がいるってことですか!?」と目を見開いた。
そんなに驚くことじゃないと思うけど……。
まあ、確かに世界を超えると考えれば――その力は凄まじい。
「ああ。少なくとも僕はそう思っているよ」
そう答えながらも、僕と継之介の表情は曇っていく。
『世界』について話をすると、どうしても嫌なことを思い出す。
初めて〈並行世界〉に来たときのことを。
この世界に連れて来られた人間が次々と〈悪魔〉に殺されていく。
頭を握りつぶされ、首を切られ、四肢を削がれて、胸を抉られる。僕達の前には血の海と死体の山が築かれていった。
理不尽な死の中で、僕と継之介は生き残った。
〈神〉が用意した『ファーストゲーム』をクリアして。
ゲームをクリアし、悪夢は終わったと安堵した僕達に〈悪魔〉は言った。
『お前たちは〈プレイヤー〉として選ばれた』
そして、四国に人々が囚われていることを知った。
ならば、そのゲームは受けるしかないと継之介は迷うことなく挑戦を受け――今に至る。
重い空気が流れる車内。
空気の変化を察したところまでは良いが、その空気を読むことはなく、変わらず明るいままに春馬 莉子ちゃんが言った。
「あれ? なんかお二人共、暗くないですか? ひょっとして私、聞いちゃいけないこと聞いちゃいましたかねー? ごめんなさい。私、いっつもこうなんですよね!!」
いや。
彼女はなにも悪くない。
勝手に過去に引きずられた僕たちが悪いのだ。
それは分かってはいるが、どこか楽しそうに謝る春馬 莉子ちゃんに少しだけ苛立ってしまう。若さ故の表情だろうと、感情的になる自分を反省する。
「いや、別になんでもないよ」
「その通りだ。莉子ちゃんはなにも悪くない」
継之介は春馬 莉子ちゃんに苛立ったりはしないだろう。
怒るとしたら、『ファーストゲーム』で人々を助けられなかった自分にだ。そこが僕と継之介の違いだ。
継之介は僕を「天才」だとか「優秀」だと言うが――そんなことはない。
僕は至って普通の人間だ。
僕からすれば継之介の方が――超人に思える。それは、〈並行世界〉に来てから、更にそう感じるようになっていた。
僕達の言葉に春馬 莉子ちゃんは、胸に手を当てて気持ちのいい笑みを浮かべた。
「そっかー。良かった。てっきり、この世界に来たときに、何かあったのかと思っちゃいましたよー。〈悪魔〉とのゲームに巻き込まれたとか!」
決して遠くはない春馬 莉子ちゃんの予想に、錆びた機械のような音を立てる継之介。
動揺が隠せないようだった。
春馬 莉子ちゃんは意外な所で鋭いらしい。
「はっは。ま、世界を越えてるから色々あるさ。それより――目的地に着くぜ?」
継之介が答えながら指差した。
それは僕達が目指していた場所――『烏頭総合高等学校』だった。
木々に囲われた新築の建造物は、アンバランスで異様な存在感を放っていた。
助手席には継之介、そして後部座席の中央には春馬 莉子ちゃんが座っている。
この車は僕の所有車だ。
最新のハイブリットカーは、どこかスポーツカーのようでもある。そのデザインが受けたのか世間では一番売れている車種だ。
車に詳しくない僕は一番売れているからという理由でこの車を買った。
それは――既に〈悪魔〉に殺されてしまった〈並行世界〉の僕も同じだった。
世界が違っても変わらない部分もあるということか。
後部座席から身を乗り出した春馬 莉子ちゃんが大袈裟な声で継之介と言葉を交わす。車内は二人の興奮した声で満ちていた。
「ええー!! 継之介さんたちって〈並行世界〉から来たんですか!? それって異世界ってことですか!?」
「ああ、そうだ。ま、〈並行世界〉って言っても、全く別の世界じゃないんだけどね」
「え、ええ!? それって逆にどういうことなんですか! 凄い気になりますよ!!」
二人が盛上っている話の内容は、僕達が〈並行世界〉から来たということだった。
なんでも、引き籠っていた時に、異世界を舞台としたアニメや漫画を好んで呼んでいたらしい。現実から逃避しなければ、彼女の心は崩れてしまったのだろう。
僕達が過ごしていた世界に興味を示す春馬 莉子ちゃん。
彼女は、完全には異世界と言えない僕達の世界を知りたっていた。子犬のように目を輝かせて継之介に視線を送る。
だが、視線を受けた継之介は窓を開けて顔を背けて僕に助けを求めた。
「えっと……。俺達の世界と〈並行世界〉はどうなってるんだっけか? 公人?」
「何度も説明していると思うけど?」
「あー、俺は興味ないことは全く覚えられないんだわ」
「分かります! 私も興味ないことには脳の容量を使えないんですよ! 私のメモリーは最新型なので、セキリティはしっかりしてますからね!」
「さ、流石、女子高生。今どきの言葉だぜ」
いや、春馬 莉子ちゃんの言葉は全く今どきでもないのだが、継之介にはそう聞こえたみたいだ。ようするに嫌いなものは覚える気がないと言ってるだけなのに。
僕はバックミラー越しに胸を張って得意げに鼻を鳴らす莉子ちゃんを見る。
そして、小さな溜息と共に『世界』について説明をする。
「簡単に言えば〈悪魔〉が現れたことで、世界が分岐したんだよ。僕たちが暮らしていた〈悪魔〉がいないルートをA。この世界はルートBだ」
本来ならば分岐した世界は混じることはない。
独立した世界となって時を進めていくはずだったのだが、その境界を越えて人間を呼び出す力を持った〈神〉によって僕達は呼び出された。
なぜ、わざわざ〈並行世界〉から僕達を呼び寄せたのか、その理由は分からないが、ここでこうして暮らしていることは事実だ。
春馬 莉子ちゃんは僕の言葉から〈悪魔〉の力によって呼び出されたことに気付いたのか、「えっ? じゃあ、〈並行世界〉を超えることのできる〈悪魔〉がいるってことですか!?」と目を見開いた。
そんなに驚くことじゃないと思うけど……。
まあ、確かに世界を超えると考えれば――その力は凄まじい。
「ああ。少なくとも僕はそう思っているよ」
そう答えながらも、僕と継之介の表情は曇っていく。
『世界』について話をすると、どうしても嫌なことを思い出す。
初めて〈並行世界〉に来たときのことを。
この世界に連れて来られた人間が次々と〈悪魔〉に殺されていく。
頭を握りつぶされ、首を切られ、四肢を削がれて、胸を抉られる。僕達の前には血の海と死体の山が築かれていった。
理不尽な死の中で、僕と継之介は生き残った。
〈神〉が用意した『ファーストゲーム』をクリアして。
ゲームをクリアし、悪夢は終わったと安堵した僕達に〈悪魔〉は言った。
『お前たちは〈プレイヤー〉として選ばれた』
そして、四国に人々が囚われていることを知った。
ならば、そのゲームは受けるしかないと継之介は迷うことなく挑戦を受け――今に至る。
重い空気が流れる車内。
空気の変化を察したところまでは良いが、その空気を読むことはなく、変わらず明るいままに春馬 莉子ちゃんが言った。
「あれ? なんかお二人共、暗くないですか? ひょっとして私、聞いちゃいけないこと聞いちゃいましたかねー? ごめんなさい。私、いっつもこうなんですよね!!」
いや。
彼女はなにも悪くない。
勝手に過去に引きずられた僕たちが悪いのだ。
それは分かってはいるが、どこか楽しそうに謝る春馬 莉子ちゃんに少しだけ苛立ってしまう。若さ故の表情だろうと、感情的になる自分を反省する。
「いや、別になんでもないよ」
「その通りだ。莉子ちゃんはなにも悪くない」
継之介は春馬 莉子ちゃんに苛立ったりはしないだろう。
怒るとしたら、『ファーストゲーム』で人々を助けられなかった自分にだ。そこが僕と継之介の違いだ。
継之介は僕を「天才」だとか「優秀」だと言うが――そんなことはない。
僕は至って普通の人間だ。
僕からすれば継之介の方が――超人に思える。それは、〈並行世界〉に来てから、更にそう感じるようになっていた。
僕達の言葉に春馬 莉子ちゃんは、胸に手を当てて気持ちのいい笑みを浮かべた。
「そっかー。良かった。てっきり、この世界に来たときに、何かあったのかと思っちゃいましたよー。〈悪魔〉とのゲームに巻き込まれたとか!」
決して遠くはない春馬 莉子ちゃんの予想に、錆びた機械のような音を立てる継之介。
動揺が隠せないようだった。
春馬 莉子ちゃんは意外な所で鋭いらしい。
「はっは。ま、世界を越えてるから色々あるさ。それより――目的地に着くぜ?」
継之介が答えながら指差した。
それは僕達が目指していた場所――『烏頭総合高等学校』だった。
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