私の中の4人の令嬢

ぽんぽんぽん

文字の大きさ
上 下
2 / 23

エリゼの場合

しおりを挟む
ぱち。

目覚めると、目に入ったのは複数の顔。

「おお!目覚めたぞ」
「よか、よかった……」
「すぐに、奥様に!」

灰色の瞳に涙を浮かべた紳士に、見覚えがありま…

(ひ、ひえ!
宰相閣下!)

な、なぜか!
私の手を握って、その手に頬擦りしている御方は、
まぎれもなく、
サウスウッド侯爵でした!
お会いしたことないけど!
インターンの勉強で、
一方的に知ってるだけだけど!

氷の宰相。
豊かな財と非凡な頭脳、冷徹なまでの論理で、国の財力を倍にしたといわれる御方です!
閣下にとっては、私など、その辺の石ころどころか、
砂粒程度のも、の?なのに?


「よかった…よかったな。そなたを失うかと…」
冷たい掌が、いまだにわたしの手を、指を、

へ?

手?指?

(……な、に?この、ふよふよな手、は?)
白い白いふかふかの手。
ソーセージ?
っぽい、指。

え?
むくんでる私。
え?

「大階段から、転げ落ちたと聞いたときは、心臓が止まるかと。
……気を病んでおいでた奥様も、これで一安心でございますね」

ございます。
奥様?

私の母をそんな呼び方する人も
こんな上品な年配の侍女?さんも、
うちには、いない、よ?

え?

そういえば、この天井なに?
ここ、
「どこ?」

思わず、声に出してしまって、
その声にも、私は戸惑っていました。

「そなたの部屋だよ、エリゼ」

エリゼ?

エリゼエリゼエリゼ…

(エリゼ・サウスウッド侯爵令嬢~~~‼)

「エリゼッ」
「エリゼ!わたしの宝石!」

どたどたと入ってきた方々、はっ、

(サウスウッド先輩!それと、サウスウッド会長!)

「父上!エリゼの手はわたしに!」
「長兄が先!」「いいではないですか」「何を!ここはまだ譲らん」

わちゃわちゃする、銀髪軍団をぼおっとしてきた意識の中で、
私は判断した。

……ああ、どうやら、私は、
エリゼ・サウスウッド侯爵令嬢になった夢を見ているのね……

そう判じたとたんに、
すうっっと意識が落ちた。

「え、え、エリゼ?」

私は私の意識を手放して、再び眠りに落ちていた。

しおりを挟む

処理中です...