私の中の4人の令嬢

ぽんぽんぽん

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リアとエリゼ

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しく

しくしくしく……

誰かが泣いている。

ごめんなさい
ごめん、なさい

(ここ、は)

目覚めると、暗闇。
ぼんやりとした光に浮き上がる椅子に座る少女

白い寝着の裾が闇に沈み込んでいる。
銀のうねるような豊かな髪をたらし、
よく言えばふくよか、悪く言えばぱつぱつに太った少女は、
分厚い掌に顔をうずめて、泣いていた。

ごめんなさい、わたくしのせいで

えっと。

(ここは、あの世、かな?)

ごめんなさい……

お話、できるんだろうか。

{あの、サウスウッド様)
 ごめんなさい
(私たち)
ごめんなさい

……会話に、ならない。

えぐえぐえずく彼女に、そっと近づく。
あ、わたしも真っ白の寝間着だ。

……イーストエンドさま
(私たち、何があったんでしょうか。その、ご存じなことございますか)

彼女は少し顔を上げる。

至近距離で初めて見る侯爵令嬢は、


太っている。
瞳はたぶん、サファイヤのようなお色なんだろうけど。
なにせ、うずもれている。頬肉に。
鼻も、うずもれている。頬肉に。
唇はちんまりと、うずもれている。その他の肉に。

それゆえに、表情が読みづらいのだ。ただですら、淑女なのだし、無表情が多い方だったと覚えている。

(サウスウッド侯爵令嬢さま。
ここは、どこでございますか。
わたしたちは、どうして)

「わたくしの、中です。わたくしの、心の中です……ごめんなさい」

ん……?
令嬢の、中?

「その……階段から落下したとき、わたくし、貴女をなんとか支えようとしましたの。
でも、うまくできなくて、わたくしも」

あ。
そうだった。

落ちたのは、私だけじゃなかったわ。
たしか、
背中に何かがぶつかって、足元が危うくなって、
手すりをつかもうとして。

「貴女がわたくしの手をつかんだので、引き上げようとして、わたくしも」
……え。
じゃあ。

(ご、ごめんなさい!)
「わたくしの力不足で、本当に…うう!」

わ、私!侯爵令嬢を巻き添えにしたってわけ?
何てこと何てこと!
被害者ですよ貴女、サウスウッドさまっ!
なのに。
令嬢は椅子から崩れ落ち、再びしくしくと泣き始めた。
不思議なことに床は見えない。
私の足元も。

「わたくしのせいで!貴女はわたくしの中に、と、とりこまれて」
(は)
「わたくしの身体に、貴女の魂は、乗り移られましたの!
御身を捨てて、いいえ!」

わああ!と号泣しながらも、令嬢はおっしゃった。

「死んで、死んでしまわれたのよ!
だから!だから!
どうか、わたくしの身体を使ってくださいまし!
わたくしはここで、引きこもりますから!
わたくしになって、生きてくださいまし!」










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