私の中の4人の令嬢

ぽんぽんぽん

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密談

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影を

という声に、マクシミリアンは、
(令嬢に必要ない。女生徒に)
と、背中に指示を漏らす。

御意

というつぶやきを確認して、彼は王宮仕様の馬車に乗り込んだ。

「ご苦労だったね」
「いえ。
あなたが学長とお会いしている間に、自由に動かさせていただきましたよ」

走り出した馬車は、密室。
秘密の会合には最適である。

向かい側の男性は、マクシミリアンに紙束を渡す。
ざ、っと目を通して、マクシミリアンは吐息を漏らした。

「弟は、王冠をあきらめたのかな」
「とんでもない。継ぐ気まんまんですよ……くくっ」

男性は、失礼、と失笑を詫びた。

「アレクシス殿下は、学業より大切なものを見つけた様ですね。
いわく
『これからの施政者は、平民の思想も取り入れた、懐の広い人格が必要だ。
学園は、その社会の縮図である!
私は、この学園で見識を深め、人脈を作るのだ。
貴族社会だけでは築けないものを見つけるんだ』
だそうです」

「よく回る口だ」
「あなたの弟が語ったのですよ?」
「で」

ばさ!と紙束を脇に置いて、王子は吐息を漏らす。
「その挙句が、いちゃいちゃか」
「ジュンアイ、だそうで」
「なるほど」
まったく感情のうごかないやりとりの後、沈黙が続いた。


「エレノアの見舞いもせずに、あいつは今後も公爵家がついてくれると思うのかね」
「思っていらっしゃるんでしょう。
令嬢が目を覚まし、つつがなければ、婚約を続ける。
もし、妃にふさわしくない病をもてば」
「円満に解消か……」

それを待っているということか。
エレノアにとっては、どちらが良いか、わからないけれど。

エレノアは、王家の傍系である公爵家の一人娘。
王家の縁者ということで、マクシミリアンやアレクシスとは、幼馴染である。
つややかな黒髪とルビーの瞳の令嬢ということで、
マクシミリアンの妹のようだと言われていた。
賢く麗しく、強い瞳の気丈な少女は、
マクシミリアン同様、繁栄の祖である女王のえにしを感じさせた。
だから、
アレクシスを王太子に、と画策する者にとって、
彼女を婚約者に据えたことで、
マクシミリアンとアレクシスは、精力的に互角となった。

(私としては、あなたになっていただきたいですね)
(エレノアがいるなら、私でなくても、国としては安泰だろう)

そんな風に、のらりくらりとしていた第一王子。

「迷惑な話でしょう。外遊を狙っていた貴方にとって」
「まったく。
 父のためにも、勢力の均衡を保つことが王家の利と、我慢しているのにね」

エレノアが、無事王太子妃になれば、自分は臣下におりて、外交を担うつもりでいたのだ。
国のために。

「ココ・セントラル。
彼女のことをもう少し教えてほしい」

マクシミリアンは、少し回れ、と小さく指示を出すと、馬車はゆっくりと進路を変えた。

長くなるかな?

第一王子に向き合ったヴォルフ・サウスウッドは、脚を組みなおした。


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