私の中の4人の令嬢

ぽんぽんぽん

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マクシミリアン第一王子

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マクシミリアン・ソネ・アシュフォード
昨年、学園を卒業し、父王の指示により、内務省に入省。
内務大臣のもとで、内政を学んでいる。
黒髪に紅玉の瞳は、
曾祖母の先々代女王の遺伝とみなされ、
アシュフォード繁栄をもたらした女王の再来を期待されている。

「い、い、いたみいりましゅ、あ!の!は、い」
噛み噛みのリア=エリゼのさまに、クスクスと小さく笑う彼は、
「そんなに緊張しないで。
 学長に用があって、久しぶりに学園にきたら、
 カフェテラスに、ルーカスの妹君がいらしたんで、一度お見舞いを、と思っただけですよ。
 ルーカスがいたら、絶対君と会えないからね。
 千載一遇、ってことで。
 ごめんね。驚かせて」

「い、いいえ!
 恐縮です。もったいないお言葉、ありがとうございます」

あわあわしつつも、リアは淑女の礼をとる。
マーヤはすでに、頭を下げたまま、屍のように動けなくなっていた。

こういう反応に慣れているのか、王子は、
「ここのカヌレも絶品ですよ。
 では、是非、お目見えできる機会を作りましょう」
と、最後まで柔らかな笑顔を崩さず、踵を返した。



「び、びっくりしました」
「わたくしも」

(礼は、あれでよかったかしら。
 あ!私、名乗りを上げなかったわ!)
《……よろしかったのではないかと思いますわ。
王子から、名乗られませんでしたし。非公式にお会いしたのだと、おっしゃってましたし⦆

心内エリゼは、嵐が過ぎ去ったとばかりに、棺からよいこらしょ!と出てきた。
そして、こうたいですわー、と、
プティングを再び食べ始める。
 だ、だから、甘いものは、もう~


そこへ、鐘の音。

「あ!もう、こんな時刻!
私、お昼に教授にお会いする約束があります」

「まあ、
残念ですわ。マーヤ様
また、ご一緒にお話しさせていただけますか?」

もっちもちの指が組まれ、つぶらな小さい目がマーヤを見つめる。

「も、も、もちろん!です!」

(そうね。マーヤ。あなたって、やわらかいもこもこしたものが好きだったものね)

「まあ!うれしいです!
 またの機会に!」
「は、はい。ごきげんよう、え、エリゼ、さまっ♡」
「ごきげんよう、おねえさまっ」
マーヤは、ふらふらと学び舎に戻っていった。



(エリゼ様は、結構、策士なのね)
《……なんのことですの?
あ、マーヤお姉さまは、リア様のお友達でしたね
……お二人の仲を裂いてしまいましたの?⦆

(いや!そういう嫉妬ではなくて!
 割と小難しいんですよ、マーヤって。
 それを、いともやすやすと懐に入ってしまって⦆

んー、とエリゼ様は、埋もれてない首をひねる。

《それは、リア様が罪を暴こうとおいこんだからでは?
 懺悔し告白してしまわれて、それをわたくしやリア様が受け止めたから、
 彼女が苦しみから解放されたのですね。
 だから、わたくしが親しくしたいと思ったお願いを
 受け入れてくださったのでしょう⦆

そう饒舌に語る令嬢。
やはり、只者じゃないんじゃ……
愚鈍な太っちょ令嬢、だなんて、
この方、絶対、ネコかぶってるわ……

子豚ちゃんが猫の着ぐるみ……

《あ!今、へんな想像なさいましたね⦆
(なんでわかるんですかぁ。ぷ、くすくす)
《もう!よろしくてよ!
わたくし、カヌレも注文しますわ⦆

ひやああああ!か、かんべんしてぇぇぇ

という声は、幸せそうにスプーンをもつエリゼの脳内しか、響かなかった。

 
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