性教育（学校編）

序章

義務化

　日本は性教育において諸外国に遅れていると言われるようになり、日本政府は性教育を小学校2年から導入することを決定した。

　しかし、その内容をどうするかについては、多くの考えがある上、批判を浴びて支持者が減ることを恐れた政治家たちにより、「各校の判断に委ねる」ことに決定。つまりは、

　「文部科学省や厚生労働省では細かい指導はできないから、地域の実情に合わせて学校ごとに教師たちの責任において勝手にやってくれ」ということだった。政治家お得意の責任逃れの「丸投げ」である。導入は翌年の1学期からと決まった。決定したのは前年度の秋である。しかし、面倒くさいことはなるべく手を付けたくない日本人の性格から、「早めに対策を取る」学校や教師はほとんどなかった。公立であれば新年度も今いるところに居続けられるかもわからない。

　新年度が近づくと、各小学校では「どういう風に進めるか」大混乱が起きる。校長の独断で決めるところ、現場の教師に丸投げするところ、養護教諭に任せるところなど様々。公立学校のように様々な価値観の親を持つ子がいるわけでなく、しがらみにとらわれることのない一部の私立小学校の中には独自の考えで性教育を模索するところも出てきた。「納得がいくご両親だけお子さんを任せてください」というわけである。そしてある公立小学校で重大な決定がなされようとしている一方、別の私立小学校では学校説明会が開かれようとしていた。既に募集概要は決まっていたが、発表前だったため急遽性教育についての項目が追加された。小学校から高校までの一貫校だが、募集するのは小学一年生だけで、全学年が全て揃うのは9年後という気の長い話である。