性教育(学校編)

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ある公立小学校で

職員会議

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 某所にある公立小学校。

 教師全員が集合し、始まる10分以上前から既に騒然としている。政府が性教育義務化を各学校に任せるという発表をしたことから、この学校でも急遽緊急職員会議が開かれることになったのである。

 ガラガラガラッ、部屋の戸が開いて、校長が入ってきた。白髪の方が多くなった定年間近の背の高い校長。

 「初めに言います。全ての親を納得させるなんて不可能です。どんな批判を浴びても、「校長の許可を得ています」と言い逃れしていただいて結構です。私が全責任を取ります。その上で今から各学年ごとにやることを決めてください。ただ、クラスごとに矛盾が出ては困りますので、学年内でやることは統一してください。それだけお願いします」

 「それでは現場への丸投げではありませんか。校長はどういう考えをお持ちなんですか」

 「そういう質問は当然出てくると思いまして、各学年ごとに草案をお持ちしました。これをそのまま使うも良し、アレンジするも良し、無視するのも良しです。後は学年ごとに相談してください。どんなやり方に決まったとしても、私はそれを尊重します。それでは、各学年ごとに始めてください」

 校長が草案の印刷された紙を配っていく。それを見る教師の目が険しくなった。

 「これを本当に実行するの?」

 「保護者から苦情が殺到するぞ」

 「校長は必ずこの通りにしろとは言っていない」

 「だったら代替案はあるのか?」

 皆黙り込む。万が一自分の発案が採用されたりしたら、「発案者」ということで攻撃されるのは目に見えている。誰も貧乏くじは引きたくないのは当然である。

 「仕方がない、校長の案をそのまま使うか。校長は「全責任を取る」と言っているし」

 保護者から苦情が来たら、「校長の指導に従っただけです」と逃げることができる。人間とは責任を取りたがらない弱い生き物なのである。

 短時間で各学年の指導方針が決まった。ほとんどは校長の案がそのまま採用され、一部アレンジをした学年も趣旨は変更はされなかった。

 ただ、校長が配った草案はあくまでも性教育に入るきっかけのようなもので、それ以降どういうことを教えていくのかは各学年の教師たちが自分たちで作っていかなければならない。今日の段階では誰一人としてとてもそこまでは考える余裕などなかった。

 そして、第一回の授業は、新学期の行事が一通り終わった「或る日」に決まったのである。
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