夢十夜

従妹

　私は自転車に乗って数日間かけ五階建ての建物に到着した。

　「いらっしゃい。よく来てくれたわね」

　私は一人の女性に迎えられた。財前直見そっくりの姿をしている。

　彼女は私の従妹で、町工場に嫁入りしている。ここは工場と住まいが一体になった建物で、上層階が住居になっている。従業員は20人ほど。

　明日は休みで、地元で山菜採り大会が行われるらしい。私もこの家族と工場の一人として参加することになった。

　翌日。

　地元の原野で大会が開催された。私は普段から山菜採りには慣れている。素人とは年季が違う。

　私の「功績」もあって、優勝した。

　様子が何だかおかしい。どうも私と従妹があまりに親しくしているので、夫や従業員が仲を疑い始めたらしい。

　従業員が私の悪口を言うのも聞いてしまった。

　なんだか面倒なことになったようだ。こんなところからはさっさと出て行くに限る。

　従妹に切り出した。

　「出て行くわ」

　従業員や家族の冷たい視線を感じながら、私は自転車に跨った。