夢十夜

自転車

　家の前に見慣れぬ自転車があった。

　近所で工事をしているのでとりあえず置いていったのかと思ったが、そのままだと邪魔になるので家の中に入れておいた。

　翌日家の中に自転車があるのを見て思い出し、持ち主が分かるようなものが無いかと見ていくと、前籠の中に入っていた紙に見えるか見えないか分からないくらい薄い文字で

　「取りに行くのでしばらくお願いします」

　とだけ書いてあるが、住所も連絡先も書いていない。

　これでは連絡のつけようがないので困惑したが、振り向いてみるとどこから入ってきたのか一人の少女がいて

　「すみません、取りに来ました」

　邪魔になるだけなのでほっとしていたが、外を窺うと外に怪しげな人影が行き来している。

　「すぐ帰るのはやめた方が良さそうですね」

　外を行き来しているのが誰なのか分からないが、とにかく怪しげに見えた。

　何をしているのか、家の前を何度も行き来しているようだ。

　かなり待ったが、相変わらずいなくなる様子が無い。

　少女も不安そうな表情を浮かべている。