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少女嗜好

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 昔の日本人男性に「少女嗜好」が高かったのは事実であろう。40年くらい前にはアイドルといえば中学生、高校生世代であり、20代ともなれば芸能界引退か女優などへの転身が一般的だった。21歳で結婚、引退した山口百恵などはその典型的な例である。「女子大生ブーム」「女子高生ブーム」などというものもあり、負の遺産である「援助交際」やブルセラショップなどはその典型例である。卒業後も女子高生(に見える)の方が男性に好まれるというので普段着ているなどという話まであった。

 若い女性が好まれるというのは徳川幕府の「大奥」の「御褥御免」に遡るのではないかと勝手に思っている。「畳と女房は新しいほうがいい」なんて諺が存在するのも、若い女性の方が子供ができやすいからで、根源は同じである。
 当時のテレビ番組のインタビューを見ても、「20歳以上はおばさんで、アイドルとは思わない」なんてことを言う男が多かった。男性本人は明らかに30代以上に見えたが。

 かつてのアイドルが「設定されたもの」であったことをご存知の方はもう40代以上だろうか。今で言う「バーチャルアイドル」に近く、所属事務所やスポンサーで作り上げられたプロフィールで、年齢を誤魔化すなどごく当たり前、トイレにも行かなければ彼氏彼女もいない等当然のことだった。いることが発覚したり結婚したりしたらそれは引退を覚悟しなければならなかった。

 結婚して以降も「アイドル」を続けたパイオニアとしては間違いなく松田聖子が挙げられるだろう。彼女の場合はその後も結婚、離婚を繰り返してもアイドルの座を降りなかった。

 宮沢りえ、菅野美穂からガラッと変わったが、かつては例外はあるものの、ほとんどの場合女優でヌードシーンに出演したりヌードグラビアを出すのは無名か人気が落ち目で話題作りの場合に限られた。花田兄弟の母として知られる藤田紀子が貴ノ花と結婚する前女優をやっていてヌードシーンも演じていたことは知られているが、主役級などではなく、大部屋女優の一人にすぎなかったらしい。離婚後女優に復帰したらしいが、サスペンスドラマで恨まれて殺害される悪徳女社長役で一度見たきりで、他に女優活動をしたところを見たことが無い。常盤貴子みたいに無名時代にヌードシーンを演じて売れてから「完全封印」してしまった例まである。

 昔はごく一部の例外を除き、中高年女性芸能人のヌード写真やヌードシーンなど存在しなかった。1980年に高峰三枝子が「フルムーンパス」のCMで上原謙と温泉に浸かるシーンが放送されただけで大騒ぎになったくらいである。別項にも書いたが、30代以上は「おばさん」扱いにされていた時代が長かった。当時はローティーン少女のヌード写真集がごく普通に売られていた時代でもあり、完全に「賞味期限切れ」扱いだったのだろう。

 グラビアアイドルにしろ、ヌードモデルにしろ、かつては結構ふくよかな子が多かった。河合奈保子、榊原郁恵、宮崎美子、麻田奈美など。山口百恵みたいに痩せてガリガリの子も時々雑誌のグラビアを飾ってはいるが、あくまで「副業」の範疇だったはず。河合奈保子や榊原郁恵は歌手活動もしてはいたけど、専門のグラビアアイドルなどいない時代で、グラビアも本業だった。同じように水着姿で週刊誌のグラビアやテレビに出ていた柏原芳恵などとは頻度が全く違った。
 
 今では少しふくよかなだけでデブ扱いされる。ガリガリにやせ細ったグラビアアイドルというのがいつから出始めたのかはっきりは分からないが、小倉優子などはその典型だったような気がする。若い人は知らないかもしれないが、彼女は16歳ごろには水着姿で深夜番組などによく出ていた。もちろん録画だったはず。かわいい顔だけど、何とも貧相なカラダだと思ったもの。彼女は決して「副業」ではなく、当時はグラビアを主な仕事にしていたのは明らか。

 今はグラビアアイドルといっても、有名どころはほとんど女優を兼任しており、かつてのようにアイドル歌手を兼任しているというのはそれほど多くないように思う。壇蜜はグラビアが本業、橋本マナミは女優が本業だそうだが、実際には両者とも同じような仕事をやっている。秋元康プロデュースの各グループのメンバーもグラビアアイドルを兼任している者は結構いるようだが、メンバーが多すぎてごく一部しか知られていないのが実態だろう。

 今では30代のグラビアアイドルなど珍しくはない。10数年前、当時30代後半だったほしのあきが「最年長グラビアアイドル」を自称していたが、今では40代くらいでグラビアアイドルをやっているものなどごくざらにいる。バブル期の頃、当時でも30代だった樋口可南子が(社会公認の)ヘアヌード写真集を出したのがきっかけになったのではないかと推察している。それまでゲテモノ扱いに近かった30代女性のヌードがこれによって「価値あるもの」と認められるようになったからである。その後は40代以上の女性芸能人が水着写真やヌード写真を出すのも珍しくなくなった。昔からの固定ファンはいたわけで、そういうファンは名前も知らないような若い女性アイドルより歓迎するのは当然のことである。プロフィールから消し去っている人が多いようだ。ブームに乗っかって撮影してしまい、後悔している人も少なからずいるのだろう。中には某女優のように出版直後に大騒ぎして発禁にしてしまった例もあるが、素人ではあるまいし、大騒ぎするくらいなら初めからやらなければいいものを。一冊出版するだけで高額の費用が掛かるそうで、出版社や写真家は大損したことだろう。

 かつて当時18歳(撮影時は17歳)の宮沢りえのヌード写真が全国紙を一面全面に載って、大騒ぎになったことがあったが、その20年以上後には当時アラフォーだった草刈民代のヌード写真が同じように一面全面を飾った。「美しい女は裸も美しい」というキャッチコピーだったと記憶している。

 昔はグラビアをやっていたり、ましてやアダルトビデオに出演している女性は「頭が弱い」と見做されることが多かった。昔でも宮崎美子のようにインテリもいたのだが、多くは碌に高校の授業も出ないで芸能活動していることが多かったのでその印象が強かったのだろう。
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