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近親相姦

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 「報道特集」に、子供の頃、小児性愛の性癖の有る元教員の父親に就寝中に下着の中に手を入れられていたという女性が顔出しで出演していた。

 実の親子ではなく、「母親の再婚相手」「母親のパートナー」に性的被害を受けたというのであれば「父親としての自制」がはたらく可能性が低いから、さらに多いはずである。内田春菊の小説にも母親のパートナーにレイプされてしかも母親は捨てられることを恐れて容認してしまうという話があるが、これは自身が実際に経験したものらしい。

 父親も顔出しではないが出演して認めていたから作り話ではなく事実だったのだろう。こういう例は少なからずあったことは間違いないだろう。私が近親相姦テーマで「母親と息子」であり「父親と娘」「きょうだい同士」を取り上げなかったのも、あまりにも生々しくなってしまうのを避けたかったからである。こういった設定にするのはテーマとしてあまりに重すぎる。女性の側は拒否することがほとんど困難だからである。それも息子が中学生や高校生ということにしてしまうと「性欲が高まった息子にレイプされた母」のようになってしまうのであえて小学生という設定にしたのである。これならば母親主体ということにすることができる。

 哺乳動物の場合、雄は狼など一部の例外を除けば子供の養育に関与することはほとんどない。「父親」ではなく、「オス」にすぎないのであって、雄は乳を与えることができないのでそうならざるを得ないのであろう。鳥類ではそんなことはないので雄が養育に関わる例は珍しくないし、タマシギのように雄だけが養育を行うというものまである。

 娘に手を出してしまう父親(もしくは兄弟)というのは、人間の雄が家庭にいるようになったことの弊害と考えられなくもない。きょうだいの場合、性的に成熟する前に親元を離れてしまうことがほとんどで、残る場合でも雌だけということが多いから、きょうだいによる性被害というのは考えにくい。言い換えると狭い場所に一緒にいるという状態が続けば親子間、きょうだい間の性的関係というのは発生してしまうものなのだそうで、動物園などではこういうことが起きないように譲渡、交換するということを頻繁に行っている。

 人間の場合、娘が性的に成熟した時点で家を出てしまうということはまずない。特に貧しい家庭では「性的に成熟した」娘が、兄弟や父親と一緒に寝ることは遥かに多いだろうから、こういうことがいつ起きてもおかしくはない。ドラマの「高校教師」(野島伸司版第一作)のヒロインも父親と性的関係があるという設定になっていた。


 
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