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AV女優という職業

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 アダルトビデオ女優(AV女優、セクシー―女優とも呼ぶ)という「職業」から誰もが思いつくのは、

 「男優と絡んだり、時に本番行為をやったりする作品に出演する、特に演技を学んだわけでもない素人同然の女性」

 を想像することがほとんどではないかと思う。価値観は人それぞれだろうけど、違法なものではないにもかかわらず、多くの人に蔑まれている「影の職業」であることは否めないだろう。職業に貴賎は無いなどといわれているが、「誰に対しても自信を持って誇れる職業」だと思っている人はやっている本人を含めて極めて少ないのが現状である。

 しかし、アダルトビデオ女優の「仕事」はこれだけではない。写真家の作品モデル、男性週刊誌のヌードグラビア、セックス記事の挿入写真や「実験」写真、美術用ヌードポーズ写真、素人写真家対象のヌードモデル、仕込みの「素人女性」など極めて多岐にわたる。はっきり言ってしまえば、裸になる仕事すべてを一手に引き受けていると言っても過言ではない。

 かつては普通の女優が無名時代に裸になったり、普通の作品にも出演するポルノ女優が担っていた「仕事」も今やアダルトビデオ女優の仕事に含まれる。裸になる作品などに出演すると、有名になった時に「お宝映像」などということで引っ張り出されてイメージ悪化に繋がったり、重要ん収入源であるCM出演に影響したりしかねないから忌避する傾向にある。同じような理由で、週刊誌や写真集のヌードもかつてのヘアヌード全盛期とは打って変わってアイドルや一般の女優が務めることはほぼ無くなった。今これらをやっているのはほとんどがアダルトビデオ女優なのである。

 もちろん、日本人女性の1/220が一度は携わっているということなのだから(諸説ある)全てのアダルトビデオ女優に当て嵌まるというわけではないだろう。しかし、録画機器が普及したそもそものきっかけはこういう映像を見ることを目的にした男性だったというのは否定できない。ポルノ映画館やストリップ劇場に入るのはそれなりに勇気がいるものだが、個人的に見るなら誰の遠慮も無いからである。彼女たちは日本の文化すら変えたのである。これは決して大げさではない。
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