怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

文字の大きさ
17 / 159
王立魔法学園編2年生

017-力の真実

しおりを挟む
 救護室でお父様と二人きりになった私は自分の力について聞く姿勢を整えた。

「覚悟は、できましたわ、どうぞ教えてください」
「うむ……。ドレストレイル一族では、膨大な魔力量なのに、魔法がまったく使えない者が生まれることがある。その者は必ずある特性とくせいを持っている」

 やはり身体強化しんたいきょうかとは別物なのですね。

「それが[流魔血りゅうまけつ]だ」

 それが謎の力の正体ですか。

「ドレストレイル一族だけに現れる力……。建国に携わった先祖が始祖だ」

 疎い歴史について思い出す。建国……。王族であるセイントレイト、騎士であるバルトレイス、そして書物では、ほとんど触れられていないドレストレイル。この3領主がまとまり国を作ったのが初めだったはず。

「この特性とくせいは、血液の代わりに膨大な魔力を流す。」

 この体を脈打つものは血ではなかったのですか……。驚いても、思い切り走っても常に鼓動が一定なのはそのせいでしょうか?

「体を動かす事に必要な物は細胞で直接魔力によって作られる。そして、老廃物は清潔の祝福によってその場で分解される。効果は実感していると思うが、魔力切れになるまでの[無限の持久力]が一つ目だ」

 清潔の祝福と[流魔血りゅうまけつ]の複合効果が、いくら走っても疲れない理由……。

「筋肉を魔力で強化している。身体強化しんたいきょうか特性とくせいと同じ[力の増加]これが二つ目だ」

 速さと強さの理由……。

「さらに細胞の結びつきを魔力で柔軟に固定することで、得られる[頑強な防御力]が三つ目」

 まったく怪我けがをしたことがない理由……。

「そしてこれらは魔力を送る量を調節できる。簡単に言うと今マルレが感じている力は、力を入れていない自然の状態ということだ。魔力消費量が生産量をこえたとき、初めて疲れを感じるだろう。」

 これが……力を抜いた状態?

「そこでだ……。学園で[流魔血りゅうまけつ]を魔法として扱ってもらう。魔法実技の授業でマルレには[流魔血りゅうまけつ]のコントロールを覚えてもらう」

 コントロール……一体誰がどうやって……?

「お父様が教えてくれるのでしょうか?」
「いや、私は未だ忙しい、そこでファーダに任せたい」
「え? あのふざけた使用人のチビファーダ?」

 いつかの記憶が頭の中に浮かぶ……。

 両手にカエルをもって私の後ろに突然現れて追い回されたこと。習ったばかりの礼儀作法を披露したときに、「似合わねぇ」といって笑い転げたこと。

 使用人にあるまじ行為をする人物だった。

「ああ、彼は遠縁だが珍しく[流魔血りゅうまけつ]を持っていた。だから使用人として引き取った。私の下で訓練しコントロールをマスターしている。学園に入り指導するにはうってつけだ。転入手続きも済ませてある」

 遠縁? それも同じ力を持ってるですって? 初めて聞きましたわ……って転入?

「おい! ファーダ出て来い」
「はい旦那様」

 声が聞こえた方を見るとそこに一人の少年が現れていた。銀色のきれいな髪が頭の後ろで結われている。キリッとした目つきに空のように青い瞳の少年が現れていた。

 間違いないドレストレイル家で働いていた同い年のふざけた使用人がいました。しかし一年ぶりに見る彼は少し背が伸びて私と同じぐらいになっていた。もうチビファーダとは呼べないかも?

「うわ! ああああなた一体どこからでてきたの!?」
「何言ってるの? ずっといましたよ?」
「へ? いや……。いなかった……わよね?」

 お父様に目線を送り確認する。

「気配を消していたからな、探していないやつには見えないぞ?」

 気配を消してたから見えない? そんな事があるの? いや無いでしょ!

「とにかくコイツをおまえのクラスにねじ込んだ。魔法実技の時間でコイツに訓練してもらえ」
「そっそんな! もっとマシな人がいるでしょう!」
「ごめんなマルレ、他の者には重要な仕事があるのだ」
「それはコイツが一番役立たず、ってことでよろしいのですか?」
 
 黙って聞いていたファーダは、あまりの扱いの悪さに口を挟む。

「旦那様もお嬢もコイツ、コイツってひどくない!? それに役立たずって!」
「「妥当」」

 きれいに、お父様とハモった。反論できないファーダは「うぐぐ」といって黙った。

「マルレそういうわけだ、これからは修練しゅうれんに励むように」
「分かりました。やるだけやってみますわ」
「それでは、私は帰る。ファーダあとは頼んだぞ」
「分かりました旦那様」

 そう言い残すとポンコツ使用人をおいてお父様は帰ってしまいました。そして入れ替わりに入ってきた友人たちがファーダを見るなり問い詰めた。

「誰だコイツは?」

 さっそくコイツ呼ばわりですか、さすがアークは見る目がありますね!

「誰ですか?」

 天使のようなアリッサまで、ゴミを見るような目で見てます!

「いつの間に室内に……。敵ですか?」

 見事な敵認定! さすがラーバル!

「はじめまして! お嬢のご学友の皆さん。お嬢の訓練のために、皆様と同じクラスに転入してきたファーダです。よろしくおねがいします。」

 私は三人に特性とくせいではなく特殊とくしゅな魔法だと説明した。そして、魔法の使い方を覚えるために魔法実技の授業時間でファーダから訓練を受けることになったと説明した。

「そういうことか、アーク・セイントレイトだ。よろしく」
「アリッサ・エトワンスです。よろしくね~」
「ラーバル・バルトレイスだ。よろしく頼む」
「アーク殿下、アリッサ様、ラーバル様ですねよろしくお願いします」

 みんなのあいさつが終わると私は授業がどうなったのか気になった。

「授業は、どうなったのですか?」
「うちのクラスは休みになった。今ノチド先生が学園長にこってり絞られているところだ」
「あら……。それは悪いことをいたしましたわ」

 予想外に平気でしたから、少しかわいそうですね……。それに夢の中で再確認した幸せでむしろ好調なぐらいですわ。

「あんなデリカシーのない人は、怒られればいいんですよ!」
「そうだな、こちらはだいぶ肝を冷やした。報いは受けてもらいましょう」

 アリッサとラーバルは厳しいですわね……。今度ノチド先生に会ったら嫌みの一つでも言って差し上げたほうがよろしいかしら?

「さて、ここでは何だしラウンジでお茶でもしようか?」

 アークの提案にみんなが賛成して、2階のラウンジへと向かった。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...