怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

文字の大きさ
48 / 159
勇者物語に首を突っ込む編

048-隠蔽工作

しおりを挟む
 今私は王都よりだいぶ西にある町のビートムの宿にいます。慣れない場所で眠ったせいかなんだかスッキリしない。目をこすりながら朝食をいただいていると、他の宿泊客の話し声が聞こえる。

「今日も森の迷宮に行くのか?」
「もちろんだよ!今日こそ最深部にたどり着き守護者を倒して聖剣を引き抜き勇者になるんだ!」
「おまえ勇者ってガラでもないだろ……絶対抜けないだろ」
「試してみなきゃわからんだろ!」

守護者……聖剣?

 頭の中を整理する。森の迷宮は私が昨日行ったところに間違いない……守護者……聖剣……嫌な予感しかしない!これは面倒なことになったのでは?頭の中の前世の記憶を引っ張り出す。

 勇者といえば人民の期待を背負い強敵に少数で挑む勇敢な若者……こう思うと大変立派な人だけど私がおもうところは違う。ろくな支援を受けられず少数で強敵を倒せと放り出される可愛そうな人だ。

 確実に面倒事を頼まれるに決まっている!さっさと返してきましょ!

 残りの朝食を急いで食べ街を出る。地図を確認して方向を定めて飛んで行き森の迷宮の剣を拾った広場に戻ってきた。

「誰もいませんわね……今のうちに……」

 私はリュックから牛男を引っ張り出し戦闘の痕跡がある辺りに転がしておいた。後はこれね……綺麗なグレーのクレイモアを引っ張り出し刺さっていた岩に戻す。

 無理やり引き抜いたからか、穴が大きくなっていてグラグラ動くので仕方がなく別の場所に突き刺してグラグラしない事を確認する。あの振り心地……もったいない……でも仕方がないわ……早くこの場から離れないと……

 今回は方向を覚えていたのでビートムの方へ飛び森の迷宮を抜けた。これで一安心ね!さて森に来たついでに狩りにでも行きましょ!

 魔物の気配を探りながら森を探索する。なにかネバっとしたものが足にかかりその直後ガサガサと樹木の枝を揺らす音と共にネバネバの主が現れた。

 足を広げたら2mほどありそうな大きな蜘蛛だ。茶色く太い8本の脚には体毛がびっしり生えていて複眼をこちらに向け鋭い牙の付いたアゴをギチギチと鳴らしている。

「イヤー!気持ち悪い!」

 嫌だ絶対触りたくない!何アレ!でも武器もないどうしましょう……あたりを見回すと足元に拳ほどの大きさの石を見つける。これだ!石を拾い上げ蜘蛛の頭に向って思い切り投げつける。

 豪腕から放たれた石は見事に蜘蛛の頭部に命中し軽々と貫き木の幹にめり込みやっと止まる。

「ふぅ……これ持ち帰りたくないわ……でも……お金は必要よね……」

 リュクの口を開き触らないように注意しながらリュックに魔力を流して吸い込む。触らないで済みました、このリュックがなかったらと思うとゾッとしますね。

 とりあえず午前の狩りはこれぐらいでいいかな?町へ帰りましょう。リュックから蜘蛛を早く出したいので、帰り道を急ぐ。町につくとさっそく[解体屋]に蜘蛛を持ち込み査定をお願いした。「お?ハラは傷ついてないな?こいつの糸は良い織物ができるんだ!」解体屋のおじさんがそう言って120ラドで買い取ってくれました。

 ギルドでお金を受けると受付嬢さんから「おめでとうございますランクがEに上がりました」と嬉しい報告を受けました。ニコニコ顔でギルドを出ると純白に金の飾り細工が施された見事な鎧姿の男性とアリッサのローブとどことなく似たローブを着ている女性が私の前に立ちはだかりました。戦士と回復術士のコンビかな?

「ほら!リーシャーこの人だよ!」
「またその話?アロイーンってほんとバカ!」

仲良さそうですね~この鎧の人がアロイーンでローブの人がリーシャーって名前なのね。

「赤い髪でミノタウロス倒して、死体をリュックに入れて、聖剣を抜いて振り回した後に聖剣を持ったまま空を飛んでいった人!」
「こんな貴族の令嬢みたいな子があのミノタウロスと戦えるわけ無いでしょ?それに森の迷宮の上空では魔法は妨害されて使えないんだから飛べるわけ無いでしょ!」
「いやでもホントに見たんだって!」
「あなたもこのバカに何か言ってやってよ!」

 うわぁああ!最初から最後までガッツリ見られてる!

「そっそうですわ!私はまだ駆け出しの冒険者で先ほどEランクに上がったばかりなのですよ!」
「え?本当にあなた冒険者なの?」
「ほら!剣も持ってるじゃんアレでミノタウロスの首を切り落とそうとして剣が折れたの見たんだよ!」

 そっそんなところまで!まずいわ!物的証拠がここに!

「女の子がバスタードソードを折れるほど振り回せるわけないじゃない!」
「見せてもらえばわかるだろ!ほら物的証拠だよ!」
「ごめんなさいね、このバカいい出したら聞かないの……見せてもらえば納得すると思うから……お願い!」

 うん!見せられるわけ無いですわ!逃げましょう!一歩後ろへと下がる。

「あ!まて!」

 鎧男は手を伸ばし腕をつかもうとしてきた!腕を掴まれそうになり危険と判断した無意識が鎧男の手を捻り上げて足払いをして制圧してしまった。

「あっしまった……」
「えええ!?」
「ほら!ほら!スゲー強いって言ったじゃん!」

 押さえつけられながら鎧男が喚いている。

「ヒトチガイデス!ソレデハサヨウナラ!」

 手を離して逃げようと試みます。

「待って!待ってください!アロイーンが言ってたことは本当なの…‥ですか?」
「だから本当だって」

 うわーローブの子が急に敬語になってるし……これはもう観念したほうが……いや!剣と牛男は戻してきたのだから大丈夫!自分の目で聖剣が岩に刺さっているのを確認させればいいのよ!

「私は聖剣なんてもってないし牛男の死体も持っていません。もう一度森の迷宮の岩に聖剣があるかご自分の目で確かめてみたらいいじゃないですか!」

 考え込む鎧男……お願い諦めて!

「そうだ!君にも来てもらえばいいんだ!」
「何言ってるのアロイーン正気なの?」

 何がどうなったらその結論に……断る理由……えーっと理由……そうだ!

「私は迷宮には行けませんわ!」
「何故です!?」
「武器を持っていませんもの!」
「え?バスタードソード見えてるけど……もしかして本当に折れてるの?」

 私のバカあああああ!私はふと記憶が蘇った。[お嬢は嘘に向いていないです]たしかにファーダの言ったとおりだ……

「え?あ……その……」

 バレてしまっては仕方がない……いや!剣が折れている事実は断る理由としてはまだ生きている!私は「ご覧のとおりです」と鞘から折れたバスタードソードを見せもう一度、同行することをハッキリとお断りした。

「剣なら買ってあげるから!一緒に来てよ!」
「え?本当ですの?」
「アロイーンが出すなら私は構わないわ」
 
 剣がもらえる?ほしい!また3週間素手で狩りするのはいやだし……いったいどうしたらいいの!

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...