怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

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古霊の尖兵編

066-私を連れて行って!

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 うさぎ亭のベッドで目が覚めると冒険者としての日常が戻って来たのを実感する。起きたらまず顔を洗う。清潔の祝福で一切汚れはついてないが気分的な問題で朝は顔を洗う。タオルで拭き終わった鏡に映る顔をじっと見る。私は化粧をしない……化粧した自分の顔を見ると違和感を感じてしまい清潔の祝福が発動してしまい綺麗さっぱり消えてしまうのです。

 洗顔を終えると宿の手伝いで井戸まで水を汲みに行く。私が行方不明の間も部屋を無償でキープしてくれていた。客が少なかったからねと笑っていたけど私がいた頃は満室になることも多かったためきっと稼ぎそこねた事もあっただろうに……ですから水汲みはせめてものお礼です。

 普段は持ち運ばない腰の高さより大きい空の水瓶を抱えて井戸へと向かう。井戸の周りでは近所のご婦人たちが長話をしています。

「おや!久しぶりだねぇあんた!」
「お久しぶりです」
「ほらこれ見なよ!あんたがいない間に水汲みがすごい楽になったのよ!」

 御婦人が嬉しそうに井戸の中央に設置された魔道具を指さしている。

 井戸の中央には太めの筒が縦に伸びておりその中腹からは筒が飛び出ている前世で見た井戸用の手押しポンプのような形だが肝心の手で動かす部分がない。

「これは一体なんですの?」
「私がやって見せてあげるわ」

 そう言って御婦人が筒の最上部に手を置くとガシュ ガシュと音を立て始める。すると手前に伸びた筒の先から水が溢れてきてまるで水道のようだ。

「ほら水がどんどん出てくるのよ!」
「へぇ~すごいですわね水の魔石ですか?」

 水の魔石で水を生み出しているのかな?しかしそれでは井戸に置く意味もないですし……水流を操っているのかしら?

「フフフ!そう思うでしょ!でも違うのよ!これは無属性魔力で水を汲み上げてるの!」
「え!?無属性!?」

 無属性魔力といえば誰でも放つことができる属性変換前の純粋魔力だが有効な使いみちがなく水に反応させて魔力量を図るぐらいしかできないのです。魔法が一切使えない私でも使える外部に干渉できる魔力なので学生の頃に魔道具科にいた私はその無属性で動く魔道具を研究をしていたのだ。

「誰でも使えて便利ですわね」
「そうなのよほんと助かっちゃう」
「学生さんが実用化試験だって設置してくれたのよ」

 学生?王都で学生といえば王立魔法学園よね?もしかして後輩かな?ガオゴウレンさんの情報収集のついでに見学でもしてみようかしら?

「ほら!あんたも使ってみなさいよ」

 そう促されて持ってきた水瓶を設置して魔道具の上に手を置き無属性の魔力を流してみる。すると音を立てながら水がどんどん出てくる。これは便利だ今まで毎回つるべを落として水を汲んでいたが、それに比べて数倍の速度で水瓶が水で満たされていく。

「すごい!本当に便利だわ!」

 水瓶を満たすとそれを抱きかかえて持ち上げる「相変わらず力持ちねぇ」と怪力にもすっかりなれた御婦人たちに見送られて宿へと戻る。

 宿の裏口から厨房に入りいつも水瓶が置いてある場所にもどしてそのまま食堂に出た。
「ただいま戻りました」
「おかえりマルレさんお客さん来てるよ」

 お客?一体誰でしょう食堂を見回すと栗色の髪に白ローブ姿の人物がいた私の親友のアリッサだ。

「マルレおはよ~」
「あら?アリッサどうしたの?」
「どうしたのじゃないよガオゴウレンさん探すんでしょ?」
「ええ、そのつもりですが……まさか?」
「もちろん私もクロービに行くよ!」

 この子は何を言ってるんでしょうか?アリッサは卒業後は魔術師団に入り異例の速度で出世して隊長を任されるほどらしいので自由が効くような状況ではないはずなのですが……

「魔術師団の仕事はどうしたのですか?」
「辞めた!」
「は?やめ……た?」
「うん 長期休暇申請したらダメだっていうからさ~永久に休みにしちゃった♪」
「休みにしちゃった♪じゃないわよ!あなた何やってるのよ!」

 私の前世の世界でも問題になっていたすぐやめてしまう新入社員……それが目の前にいますわ……

「そんな理由で定職を手放すなんて!」
「冒険者のマルレが言っても説得力ないよ、それに定職にこだわるのは前世を引きずり過ぎ!回復魔法があればいつでもどこでもお金稼げるし」
「ぐぐ……たしかにそうですが……」
「それに魔術師団は私に合わないのよ、助け守る騎士団と違って完全に軍隊だし基本平和だからやることと言ったら出世のための足の引っ張り合いぐらいだからね」
「そんなに酷いの?」
「魔力と爵位を基準にした選民意識バリバリの組織よ」
「そんなところでしたの……」

 どこをとっても平和だと思ってたこの国……その平和のしわ寄せが全部魔術師団に行ってしまったのかしら……

「というわけで私も今日から冒険者!だから」

 なんだか嫌な予感がしますわ。

「私を連れて行って!」

 やはりそうなりますよね……遅かれ早かれこうなる気はしていました……同じ転生者で3年間寝食をともにした親友ですからね。

「お説教したいところですが……それよりも嬉しい気持ちが勝ってしまっているわ」
「じゃあ!」
「もちろん良いですわよ!これからよろしくね!」
「やった~ありがとうマルレ~大好き~」

 そう言って抱きついてくるアリッサはなんだか懐かしくとても気分が良かった。
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