怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

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古霊の尖兵編

069-ラーバルの休暇

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「魔王討伐支援ご苦労!たまには休暇を取れこれは命令だぞ?」

 私は騎士団宿舎の自室のベッドに寝転がりながら報告を終えた昨夜のことを思い出していた。本格的に騎士団の副長として働きだして初めの大きい仕事を終えて更にやる気に満ちていたが、ここ一ヶ月間休み無しで働いていたことを心配した騎士団長でもあるラッシュ兄様に無理やり休みを取るように言われてしまった。

「休み……鍛錬したら怒られますよね……」

 私は非常に困っていた。趣味もなにもない私は休みの日に何をしたら良いかわからない。学園にいたときは友人に誘われてお茶をしたり下級生に稽古をつけたりして時間を潰していたが卒業した今はやることがない。不規則な騎士団の休みでは友人と出かけることも出来ず、稽古に至っては仕事になってしまった。

 唯一時間が合うのは同じ騎士の仲間だが彼らは休みとなれば酒を飲み明かすだけで共に行動するのは無理だ。たとえ飲んでなかったとしても2人きりなら妙な噂が立ち大勢引き連れてもそれはそれで休暇どころではなくなる。

「どうすれば良いでしょうか……」

 私は考えた末に良いことを思いついた。

 買い物と称して王都の見回り警備をすれば良い!

「早速でかけましょう」

 いつもの癖で朝の支度のときに編んでしまった三つ編みをとき軽く櫛を通す。身だしなみ程度の軽い化粧をする。少ない普段着の中から薄黄色のワンピースを選びそして護身用の短剣を太股のベルトに仕込み鏡で自分の姿を確認する。

「よし、おかしくないね」

 準備を終えて騎士団宿舎を後にする。騎士団の敷地から出ようとすると門番がジロジロと私を見て来たので、なにか用事があるのかと尋ねると「ふっ副団長!?なんでもありませんどうぞお通りください」と慌てていた。声を聞くまでわからないほど、見た目が変わっているとは思わないのだが……気にしても仕方がないので王都の商店街へとむかった。

 特に目的もないので端から適当に商店を眺めながらゆったりと大通りを歩いていく。商魂たくましい店主たちからいろいろ声をかけられるが、興味のあった武器屋だけは何故か声をかけてこず、入りづらい雰囲気がして立ち寄ることはなかった。

 これと言ったトラブルもなく商店街を通り過ぎ飲食店街へと足を伸ばす。ここは酔っ払いなども多く一番トラブルが多い地区だ。騎士団に入りたての頃は一番のトラブルが酔っ払いなことにがっかりして自分達騎士団はいらないのではないのか?と騎士団がいるからこその平和だとのジレンマに陥ったものだ。

 もちろん上に立ち隅々まで見た今では騎士団による防犯と王族による食の安定が平和を支えているという事は理解している。それに学園を卒業した後に教えてもらったマルレの実家が率いる裏の仕事を引き受ける[トレイル]もいる。

 この国は今でも始まりの3家である、セイントレイト、バルトレイス、ドレストレイルが支えているのだなと実感する。

 そんな事を考えていたら少し嫌なことを思い出してしまった。

 私の家系は妙な家訓で当主が決まる。成人を過ぎた一族の中で一番、戦闘能力が低い者が当主になる。というか領地運営を押し付けられるのである。父の「もう引退して魔物退治がしたい」とのつぶやきに[選定の義]とよばれる総当たりの試合が行われるかもしれないと噂が出ているのだ。どうせなら私が成人を迎えていないうちにやってくれれば良かったのになと思った。

 考えても仕方がない……今すぐにでも鍛錬をしたいところだが強制休暇中なので、買い物と称した見回りを続けることにした。まだ昼前の飲食店街は人通りも少なくトラブルは起きていそうもないな、と思った途端にガヤガヤとうるさい集団が酒場から出てきた。

「きみ~綺麗だね~?これからさ~二軒目に行くんだけど君も一緒に来ない?」

 私を見るとすぐに声をかけてきたコイツラの顔には見覚えがある。それもそのはずつい先日魔王討伐に一緒にいた騎士達だ彼らも私と同じく休みをもらったのでこうして昼前から飲み歩いているのであろう……

「ね~聞いてるの~いっしょにのもうよ~」
「用事があるのでお断りします」

 私は無用なトラブルを避けるため丁寧に断る。

「え~いいじゃん少しだけだからね?」

 そう言って私の腕をつかみ無理やり連れていこうとした……彼は一線を越えてしまった。

「今すぐ手を離しなさい!」

 私はナンパ男を睨みつけて大声を上げた。

 すると後ろにいた団員たちが顔を真っ青にしてすぐに私からナンパ男を引き剥がし膝裏にに蹴りを入れて地面に跪かせた。

「馬鹿野郎!なんてことしやがる!」
「すいませんコイツ最近戦果を上げて気が大きくなってしまって……本当に申し訳ない!」

 私はこの集団のすべてが悪い人ではないことに安堵したがこれは到底見逃せる事ではない……私はナンパ男を睨みつけながら彼らを指導するときの口調で言い放った。

「その男は懲罰室行きだ!他の団員は本日は謹慎の後今日を含めた三日間の禁酒処分だ!わかったらさっさと騎士団宿舎に戻れ!」

「え?謹慎?禁酒……?あんたいったい……」

「貴様らは上官の顔も忘れたのか!!!」

 聞き覚えのある怒号でやっと今の私と鎧姿の私が一致したようですでに青い顔から更に血の気が引いて行くのがわかった。

「「「了解しました副団長殿!」」」

 今までフニャフニャに気を抜いていた彼らはビシッと姿勢を正し敬礼をすると一刻でも早くここから離れたかったらしく大急ぎで騎士団宿舎へと逃げるように去っていった。

 駆けつけようとした衛兵にもう終わったとハンドサインを送り見回り警備に戻ることにした。

 この後は何もなく日暮れまで過ごし出会ったトラブルが身内のことだけだったことに少し悲しくなりもっと厳しくするべきかと思いながら宿舎へ戻ろうとしていたその時だった。

「敵襲!食料品市場の広場に魔物が現れた!市民の方は建物内に避難してください!騎士団員は広場に集合しろ!」

 その警報を聞いた私は頼りない短剣を抜き広場へと急いだ!
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