怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

文字の大きさ
70 / 159
古霊の尖兵編

070-古霊の蠢き

しおりを挟む
 時は戻りマルレたちが王都に帰還した頃。

ーーーーーーーーーー

 どこともわからぬ暗い石造りの部屋にはポツンと玉座が置いてある。その玉座は数百年前に流行った宝石と金の闇鍋とでもいったほうがふさわしいゴテゴテとした趣味の悪いデザインだ。その玉座には青髪青目で顔の作りは美しいが内面からにじみ出る醜悪さが表情へと現れていてとても美しいとは言えない人物がふんぞり返って座っていた。

「ターダ……2度目の失敗だな……」

 その言葉を投げかけられたのは玉座に向って跪く全身を黒い鎧に包んだ男だ。頭の先から爪先まですべて鎧で覆われており一切肌が見えることはない。

「申し訳ありません!アウゲル様!次こそは!」
「アーク・セイントレイトを操りトレイルを暴走させるのに失敗したときもそう言っていたな?」
「申し訳ありません!トレイルの子孫が毎日のように近づき浄化されてしまい……」

 アウゲルと呼ばれた玉座の男は不機嫌そうにしながら立ち上がり話の途中でターダと呼ばれた黒鎧の男を蹴り飛ばした。蹴飛ばされたターダは仰向けに倒れたあと上半身だけをおこした。

「言い訳は聞かぬ!2度目は、私が奴らから奪った力を貸し与えたにもかかわらずまた失敗……」
「ぐぅぅ……申し訳ありません……スペクトル化させたミノタウロスが思った以上に戦力にならなく……魔王の魂も何者かに連れ去られていて……」

 アウゲルは見苦しい言い訳を止めるためもう一度蹴りを入れてうつ伏せに倒した後ターダの頭を踏みつける。

「言い訳は聞かぬと言ったはずだ!」
「ぐあああ……っ申し訳あり、ま、せん……」

 踏みつけた足をグリグリと動かしながら叱咤は続く。

「貴様は頭が悪い画策などせず自ら動き王都を落とせ!」
「うぐぐ……了解しました……」

 脚をどけ玉座に戻りターダが黒い霧となり霧散して消えるのを見届けると玉座の肘掛けをコンコンと指で二度叩く。

 すると短髪の緑髪で角張った顎に鋭い目つきで銀色に輝く鎧を身にまとった男が現れた。

「お呼びですか、真王アウゲル様……」
「呼び出してすまないスルーベル、あの使えない部下に直接攻撃を命じた」
「そうですか了解しました奴に見合った数の魔物を送っておきます」
「理解が早くて助かる、それでお前に任せた仕事はどうだ?」
「小さな問題が一つありましたが滞りなく進んでおります」
「どんな小さな問題でも報告せよ」
「はっ!隊長クラスの魔術師が一人離脱しましたが光属性なので大した問題にはならぬかと……」
「ふむ……たしかに小さな問題だな、よろしいそのまま続けろ」
「了解いたしました」
「下がって良いぞ」
「はっ!偉大なる王に真の地位を!」

 銀鎧のスルーベルとよばれた男は敬礼をしながらそう言い残すと白い光の粒となりどこかへ消えていった。

 真王アウゲルと呼ばれた玉座の男は青い髪をかきあげるとフッーとため息を付き一人愚痴をこぼした。

「スルーベルのように優秀な部下ばかりだと私も楽をできるのだがな……」

ーーーーーーーーーー

 そして、ラーバルが飲食街で部下と遭遇し、マルレがガオゴウレンの船を探し回っている頃。

ーーーーーーーーーー

「スルーベル様に頂いた魔物はこれだけか……」

 転移の間に用意された魔物の質と数はとても王都を落とせるようなものではない。2度の失敗により完全に信頼を失ったようだ。

 一度目は、私の術で第二王子のアークの心を蝕み操りドレストレイルの娘を殺害させる手はずだった。予想外にドレストレイルの娘が第二王子に近づき心を蝕むどころか毎日浄化される始末……結婚前の男女がみだりに近づいてはならないという貴族の決まりごとは一体どうなっているんだ……送り込んだ協力者もトトリア・リウスの悪意を膨らませず役に立たなかった所詮は子供だ……

 2度目はアウゲル様の力を借りてミノタウロスをスペクトル化したがドレストレイルの娘が死体を近くに置いたため肉体と魂が引き合いゾンビ化して弱体化して、まったく役に立たなかった。その後魔王の魂も探したが闇の痕跡が残っているだけで魂はどこかに連れ去られていた。

 何をやっても邪魔が入る……やはり直接出向くしか無い……最後にできることを直感し覚悟を決めた。

「上手くいけば相打ちと言ったところか……」

 ターダは武器棚から短槍を2本手に取り強く握りしめる。スペクトル化失敗の成れの果てである元人間の魔物を引き連れて王都へと転移した。

 日が落ちはじめて辺りがオレンジ色に染まった食料品市場の広場に人の形をした人でないものを引き連れた黒い鎧の男は両手にもった2本の短槍を構え魔物に命令を下す。

「手当りしだい殺せ!」

 その声に反応して元人間だった魔物は四つん這いになって走り住民へと襲いかかる。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...