怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

文字の大きさ
93 / 159
邪竜物語に首を突っ込む編

093-邪竜の手先

しおりを挟む
 レンさんに連れられて私は兵士の詰め所のような場所に連れてこられた。アリッサは外で待つように言われて私だけが壁に地図がある会議室のような部屋に案内された。レンさんは椅子に座り腕組みして指でトントンと腕を叩いている。とてもお怒りの様子……

「さて詳しく聞こうか……なぜ、いたずらたぬきの生息地を吹き飛ばしたのだ?」

 なんとか上手くごまかす手はないかしら……

「君が嘘や誤魔化しが非常に不得意だということ知っている……正直に話したほうが良いぞ?」
 
 あれこれ考えていたのを察したようでレンさんに釘を差される。

 あ……そうですね、演劇裁判のような黒歴史をまた作る事態は避けなくてはいけませんね。

「ええとまずは何から話せばいいのでしょうか……」
「ふむ……なぜあの場所にいたのだ?」
「毛皮を20枚集めるためにいました」

 レンさんは私に一つ一つ質問をしてきた。なぜ毛皮を?なぜ魔術師ギルドに?といった具合で聞かれていき最終的になぜ地面がえぐれるようなことになったかと聞かれた。

「格闘のテクニックの[正拳突き]を使ったのですわ」
「あの初級のテクニックで?」
「はい、あのテクニックは全力で攻撃するもののようでして……無理やり押さえつけてなんとか力を抑えこみましたけど抑えきれずあのようなことに」
「……確かにテクニックは己の力以上の威力が出るものに間違いはない」

 レンさんはうーんと唸ったまましばらく考え込む。やっぱり威力がおかしいですわよね、一般基準だとあのようなことにはならないでしょうから……私がまともに戦うところを見たのは勇者のアロイーンさんと先日の黒鎧との戦闘の場にいたアリッサたちだけですからね。

「よし……事故だったと皆が納得するようにマルレの実力を見せてもらいたい」
「え?そんな事でよろしいなら……でもどうやって実力を見せたらよろしいのかしら?」
「うむ、実はな音がしてすぐにマルレたちのもとに駆けつけられたのには訳があるのだ」

 私がやらかしてすぐにレンさんたちが現れたのには訳があったようです。それは、邪竜が復活してから定期的にあらわれる”邪竜の手先”と呼ばれている妖魔を待ち構えていたからということでした。そういえばレンさんの今の服装は盗賊退治のときに着ていた黒を貴重とした戦闘服ですね……ん?似たような服を最近どこかで見たような?まあいいわ、邪竜の手先かたしかゲームでは……

 邪竜の手先……ワールドクエストが最終段階になると起こる定期襲撃イベントで街を襲う大蛇だ。

 ジャオンには全プレイヤー共有のワールドクエストというものがある。プレイヤー全員で勧めていく超大型イベントで邪竜の復活に始まり邪竜を弱体化するアイテム獲得やプレイヤー強化イベント(イベント前はスキル限界値がLv8合計値がLv50だった)そして今はその最終段階だ。

 最終段階は3のイベントが同時に起こっていた。

 1つ目は生産職プレイヤーに向けた物資寄付イベント
 このイベントは薬や増強効果のある料理に武器防具、ありとあらゆる生産品の寄付を募りその質と量に応じたポイントで順位を競うものだ。

 2つ目のイベントは一般戦闘職に向けた襲撃イベント
 このイベントは街に定期的にやってくる中ボスの妖魔の”邪竜の手先”を倒して貢献ポイント稼ぎ順位を競うものだ。

 3つ目のイベントは戦闘トッププレイヤー向けの邪竜討伐イベント
 このイベントは早いものがちで1PTずつ挑戦できるイベントだ。邪竜が討伐されるまで予約が常にいっぱいだった。しかし邪竜は攻略不可能と言われるほど強くトッププレイヤーたちを返り討ちにしていった。しかし時が経ち”生産品の寄付”や”邪竜の手先の討伐数”が増えるごとに邪竜は弱体化して行くイベントだった。

 そして遂に邪竜はある5人編成のPTに討伐され第一ワールドイベントは終了を迎えた。その5人の名前は街に建てられた英雄の碑に刻まれた。

 うん……ゲームだとたしかこんな感じだったわね。寄付イベで生産品が市場から消え去ってボロボロの装備のうえに薬なしで邪竜の手先と戦ったのを思い出したわ。

「ではこれから来る邪竜の手先とかいう妖魔との戦いに参加すればよろしいのですね?」
「そういうことだ。マルレの強さが知れれば皆も事故ということに納得するだろう」

 話がまとまったと思ったその時だった。

 カンカンカン!カンカンカン!

 と鐘の音が鳴り響いた。

「ちょうど来たようだ!ゆくぞマルレ!」
「はい!レンさん!」

 私はレンさんの後を追いかける。外で待っていたアリッサに「なんか敵が街に迫っているからそれと戦って実力を証明すれば事故で処理してくれるって!だからアリッサもついてきて」と言って後を追ってこさせる。いつもならアリッサを置き去りにするほどのスピードだが、今日はちゃっかり狛犬の上に乗って余裕で付いてきている。ドヤ顔がうっとうしい……転生者バレする前のおしとやかなアリッサを返してほしいと思った。

 しばらく走り畑を抜けて街の外まで行くと金属と金属がぶつかりあう様な音や気合を入れる男たちの声が聞こえてきた。

 森のなかに入るとそこには巨大な蛇がシャー!と周りにいる兵士たちを威嚇しているところだった。

 鱗は黒と赤で毒々しい色と模様をしている。威嚇するたびに口からは紫の毒と思われるものが滴り落ちている。体の太さは成人男性の背よりも高くまるで電車が暴れているような迫力がある。

 一人称視点で見ると怖い!産まれて初めて見る巨大生物に一瞬足が止まった。

 ミノタウロスのような縦にでかいだけの大きさと違って視界いっぱいに広がる大きさなので迫力が段違いですわ!

「ガオゴウレンだ!私が前に出る!皆のものは下がれ!」

 スピードを落とした私とは反対にレンさんはぐんとスピードを上げた。手から炎を吹き出しながら兵士の間を通り抜け大蛇へと単身突撃していった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...