怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

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邪竜物語に首を突っ込む編

109-霊峰タカオの主

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 私はエードの森に行き[激流飛壁]を試し打ちした。結論から言うとあれです……アニメやゲームなどの格闘家が武術を極めた末に格闘無視して手のひらからビームを出す感じの技だった。カクドウセイさんもきっと子供の頃に真似したんでしょうね……それを実現したみたい。正直楽しかった!あの技には夢が詰まっているわね!いつか全力で打ってみたいわ!

 私はアリッサから電報を貰ってからだいぶ時間が経ってしまったので急いで待ち合わせ場所の転移門広場へ向かうと、ぼーっとしているアリッサの格好は酷いものだった。白いローブの膝の部分と背中は泥で汚れ髪の毛もボサボサになっていた。

「うわ!どうしたのよそれ!」

 私は慌ててアリッサのローブに手を当て清潔の祝福で綺麗にしていく。

「天狗じゃ!天狗の仕業じゃ!」
「え?ちょっと落ち着いて?アリッサ?」
「ゴメン一回言ってみたかっただけだよ」
「で?何があったのよ」

 アリッサの髪を手櫛で整えながら何があったのかを聞いてみた。

「召喚魔法の奥義書を取りにエードの北にある霊峰タカオに行ったらさぁ……」

 アリッサは疲れた様子で語りだした。召喚魔法の奥義書は奥義の被召喚者と[霊峰タカオ]の頂上で戦い、認められなければいけないという試験でその道中でそいつらは現れたらしい。

「でね~「奥義伝授なら我らを突破していくが良い!」とか言って20人ぐらいでブワーッと襲いかかってきたのよ!それで勝てないとすぐに判断して焦って坂を駆け下りたら見事に転んで泥だらけってわけ……」
「で?アリッサをドロだらけにしたやつは何なのよ?」
「天狗じゃ!天狗の仕業じゃ!」

 ああ、それ気に入ったのね……奥義試験つまんないとか言ってたアリッサにはちょうどよかったんじゃないかしら?

「それで烏天狗からすてんぐにボコボコにされた帰ってきたのね」
「あー!やっぱり知ってたでしょ!天狗っていって烏天狗が最初に出るわけないもんね!」
「ふふふっ、ソロ召喚プレイヤー殺しクエって有名だったのよ」
「うう……で?手伝ってくれるよね?」

 私は「もちろん」と返事してPTを組み二人で霊峰タカオへと進んだ。

<PT「アシハラ姉妹」が結成されました>

 霊峰タカオは天狗たちと天狗に弟子入りした山伏たちの集まる場所だ。その頂点に居る御方に力を示して召喚に応じてもらえるようにするのが今回の目的だ。エードの森を北方面に抜けると[霊峰タカオ]の麓に到着すると私が想定してなかった景色が広がっていた。大勢の参拝客にお茶屋に土産物屋……完全に観光地だった。

「どうなってるのこれ!」
「マルレそっちは参拝客用の登山口だよ奥義試験はこっち」

 アリッサが示した方は鬱蒼とした森へと続く登山口だった。入り口には山伏の服装をした男がいて先を進むアリッサに話しかけた。

「再挑戦か?連れは一人で良いのか?」
「ええ!最強の助っ人を連れてきたわ!」
「ふむ……まあ、よかろう通ってよし!」

 険しい道とは言えないような登山道をしばらく登っていくと開けた丘のような場所へ出た。そこは見晴らしが良い原っぱになっていた。そこへ踏み込んだ途端バサバサと羽ばたく音が聞こえてきた。

 空を埋め尽くさんばかりに現れたのは烏天狗からすてんぐだった。山伏の服装に緑色の肌で顔は人間に鳥のクチバシをつけたような感じだった。背中には烏のように黒い翼がありバサバサと忙しく羽ばたいている。彼らは空中で停止し見下ろしたまま話しかけてきた。

「また来たのか!」
「次は負けないから!」
「威勢がいいな!先程の逃げ惑う姿は傑作であったぞ!」

 あぁん?なんですって?

「もー!さっきは多勢に無勢だったけど今度は二人だもの!」

 アリッサがおちょくられたのを見てイラッとした。烏天狗たちを見回し戦闘時の[空歩壁]の練習にちょうどいいと感じたので試してみることにした。

「アリッサためしてみたい技があるので殺っちゃっていいわよね?」
「いいけど今の言い方って殺す方のやっちゃうだよね?」
「ええ!あの調子に乗った鳥人間を地に叩き落としてやりますわ!エンド・オブ・ブラッド!」

 私が赤い霧を吹き出させるとアリッサは全力ダッシュで離れて防護壁を張った。

「行きますよ!カラスども![脚壁]」

 まず飛び上がった勢いでアリッサをバカにした奴の腹に一発撃ち込んだ白目を向いて地へと落ちていくのを見届けると落下しながら次の獲物へと視線を移す。目が合った烏天狗は六角形の棒を取り出し構えた。

「[空歩壁]!」

 空中に足場を出しそれを蹴り加速する。空中で体勢を変え足を伸ばしたまま蹴りを入れる。蹴りは防御した棒をへし折り見事に顎を捕らえた。

 [空歩壁]を使った空中戦闘は実に楽しかった。後半は突進からの殴りや蹴りばかりではなく、わざと横を通り過ぎた後に両手を組んで叩きつけるダブルスレッジハンマーと言う技をして地面に叩きつけたりする余裕すら出てきた。最後の一人を無駄に前宙カカト落としで仕留めると地面へと降りた。

「空中戦楽しかったわ!」

 障壁を解いたアリッサが近寄ってねぎらってくれるのかと思ったら……

「うわ~ついに空飛び始めた……そのうち手からビーム出すんじゃないでしょうね……」

 ごめんね、アリッサ……もう出るのよ……

「そっ、そんなことより、早く頂上まで行きましょう?」
「そうだね~早く山の主に会いに行こう!」

 私達は気絶している烏天狗たちをきれいに並べて寝かせた後に頂上へ向かって山を登り始めた。

 前世では山登りなんて疲れて吐き気がするだけで面白くないと思っていたのだが全く疲れないとなると結構いいものだと思う。きっと体力さえあれば楽しめたんだろうなとおもった。息があがってゆっくり登るアリッサを待ちながら景色を堪能する鬱蒼とした森の先にはエードの街が小さく見えた。

「いい景色ね……」
「ぜぇぜぇ……そんなの見る余裕ない……」
「アリッサ……なんで気力回復使わないの?」
「あーーー!そうだよね!前世の山登りは辛いものって記憶が思考を邪魔した!」
「ふふふ、珍しく抜けてるわね」
「う~、なんかこの山に来てからいいところ無しだわ![大気力回復]!」

 元気を取り戻したアリッサと一緒にハイペースでに山道を登りたどり着いた長い石階段を登り切るとついに頂上へ着いた。

「アリッサ先に言っておくわね……ここからは一人よ召喚でどうにかしなさい」
「そうなんだ~多勢に無勢じゃなきゃどうにかなるよ!任せておいて!」

 石畳が敷かれた広場に踏み入れる。四隅には篝火が焚かれていて中央の奥には太鼓を持った烏天狗たちが見えた。

迦楼羅カルラ様!降臨!」

 ドンドンドンドンドンドンと太鼓の音が胸に響くなか、天空より眩しい光の柱が降りてきた。太鼓の音に途中から横笛の音色が交じる。

 光の柱が消え去るとそこには修学旅行で行く予定だった三十三間堂のパンフレットに載っていた迦楼羅象かるらぞうそのものの姿をした人物?いや神様がいました。

 烏天狗たちと同じクチバシの付いた顔で背中には金色の翼がありその後ろには炎が灯った法輪ほうりんと呼ばれる車輪がふわふわと浮かんでいる。体には古墳時代の意匠の鎧に包まれていて、そして体に纏った羽衣は、まるで重さがないかのように揺らめいていた。

「邪竜に挑みし人の子よ!我にその力を示せ!」

 迦楼羅様は刀身が炎で出来た剣を抜きゆったりと構えた。

 うわー!すごくカッコイイ!カルラ様を呼び出せるなんていいな!アリッサいいな~!

「え?……私……神様とガチで戦うの?」

 私はコクリとうなずいた。

 アリッサの顔色が悪くなったような気がした。
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