怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

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邪竜物語に首を突っ込む編

114-九頭竜

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 絶命したオロチの背中を歩き、笑顔でこちらに戻ってきた外道丸さんの手には切っ先が折れた天羽々斬あめのはばきりが握られていた。やはりあの私が嫌いな音は剣が折れる音だった。

「折れてしまったのですか?」
「ああ!いいんだよ!もうすぐ始まるからよく見てろ」

 外道丸さんはそう言って折れた剣を天に掲げた。するとオロチから漏れ出た光が剣に集まりその姿を変化させていく。刀身は大きく幅広くなり柄は2本で構成された独特な形へと変わった刃の色はオレンジ色とも黄色ともつかないきれいな色をしている。これはヒヒイロカネの色だ。

天叢雲あまのむらくものつるぎだ。別名、草薙剣くさなぎのつるぎとも言う」
「うわ~すごい!これボスドロップってやつ!?」
「そうだ!ジャオン最強の剣だ!なんと!絶対に壊れない効果付きだぜ!」
「なにそれ!超ほしい!」
「は?だめだよ!天羽々斬あめのはばきり手に入れたのは俺だし!」
「え~!むう仕方ないね……コロシテデモウバイトル」
「やめて!冗談に聞こえないからやめて!?」

(アリッサ嬢……マルレの話し方がおかしくなっているがあれは?)
(そうですね、おかしいわ……)
(お嬢様装甲が剥がれたあれがお姉ちゃんの素なんですよ)

 外道丸さんと話していたらすっかり口調が前世帰りしてしまいましたわ!

「失礼しました少々取り乱しました」
「とにかくこれは渡せないからな」
「わかってるわよちょっとした冗談よ」
「さて俺は疲れたから寝る!」

 そう言うと外道丸さんは酒を一口飲み酔拳のテクニックの[爆睡回復]を使用し大の字で地面に転がり眠り始めた。

「あら寝てしまいましたわ」
「終わったし別に構わんだろう、私達も少し休もう」
「そうですね私も疲れました」
「んじゃ一発回復いっときますか!クロービの体力回復魔法を解析してノチド方式の魔法で再現できたのですよ!」

 アリッサが全員に向けて「広がれ光よ傷を癒やし老廃物を除去せよ!」と唱えると朝日が差し込んだような黄金の輝きが辺りを漂い皆の体力と気力を回復した。

「すごいわね!さすがアリッサ!」
「ふふふ!そのうち私の前から死を消してみせますよ!」

 なんかアリッサがヤバイ方向にいってる気がしなくもないけど気にしないようにして、私からは皆に[魔力の泉]を掛けておいた。

「さてこれからどうしまし……」

 グギャアアアアアアアアアアアアア!どこからともなく咆哮が聞こえた!

 音の出処を探ろうと周囲を見回したときでした。オロチのたてがみだと思っていた金色の部分が鎌首をもたげ9本目の首として立ち上がった!

 あっと思ったときにはもう遅かった。オロチの前で大の字になって眠りこけている外道丸さんが新たに現れた金色の首に丸呑みにされた。

「外道丸さん!」

 外道丸さんを飲み込んだオロチは倒したはずの首の傷がふさがりが次々に復活していく。そして全ての首が復活すると張り付いていた石や泥が剥がれ落ち9本目の首と同じ様な金色へと変化していった。そして中央の九本目の頭が語り始めた。

「よもやこの九頭龍くずりゅうがここまで追い詰められるとはなぁ……さて!戦いの再開と行こうか!もう酒は効かぬぞ!どうする人間共よ?」

 こんな……こんなのゲームと違う!オロチで終わってるはず……いえもうゲームの話なんてどうでもいい!

「出しなさいよ……外道丸さんを吐き出しなさいよ!」

 私は、湧き上がる怒りが抑えきれなくなり自然とフルバースト状態へと移行していた。

「レンさん!サキさん!私の後ろへ!光の障壁!」
「わかった!」「はい!」

 脚壁を使うのを忘れて地面を蹴ると地面が割れ暴風が吹き荒れる。すぐに九頭龍の首の根本に取り付くと胴体に足をかけ首を掴み思い切り引き抜いた。

 グギャァアアアア!引き抜かれた首の断末魔が響く。首の付け根からドバドバと出血し九頭龍の足元には血溜まりが広がっていく。

 私の力に耐えきれずちぎれた首を武器のように振り回しほかの頭を叩き潰していく。頭と頭が激しくぶつかる。振り回す度に血や鱗や肉片が飛び散り九頭龍の吐く炎で辺りは燃え盛り戦場はどんどん悲惨なことになっていく。

 武器としてだめになった首を捨ててもう一本を引き抜く。不快な叫び声と私に降りかかる返り血を無視してまた頭と頭をぶつけていく。

 全ての首を叩き潰すと九頭龍の胴体は膝を折り倒れた。

「私が……私が油断しなければ……」

 それ以上は言葉にならなかった。体から力が抜け手と膝を地面に付き頭の中を後悔の念が駆け巡る。

 あのとき手を緩めず粉々になるまで攻撃しておくべきだった。

 ここはゲームじゃないって散々言っていたのに……

 寝るなと叩き起こせばよかった。

 せめて場所を移動しておけば良かった……

 リーシャーさんを失いそうになったアロイーンさんに偉そうなこと言っておいて、このザマ……私ってダメね……私は調子に乗っていたと自覚し始めた。どうせ私に勝てるものはいない!手の届く範囲なら必ず守れる……そう奢っていた。

「お姉ちゃん!まだそいつ動いてる!」

 アリッサの声で私は立ち上がりもう一度九頭龍に向き合う!

今度は必ず塵ひとつのこさず消し飛ばしてやる!

「外道丸さんの仇取らせてもらいますわ!」

 私は手の中に極小の壁を大量に作り出し溜めていく。

 九頭龍はすごいスピードで回復し潰れた頭はもとに戻り引き抜いた首は肉が盛り上がるようにして新たに生えてくる。


 私が抱えきれないほど手に集まった飛壁を九頭龍に向けて放とうとした瞬間!


 私の耳に思わぬ声が入り溜めていた飛壁が霧散した。


「勝手に殺さないでくれよな!」


 その声と同時に九頭龍の腹が切り裂かれ、大きくあいた傷口から血と共に何かが飛び出した。

「バカなトカゲだ!丸呑みじゃなくて食いちぎっておくんだったな!」

 私の前に降り立った影をよく見るとそこには天叢雲剣を携えた外道丸さんが無傷で立っていた。

「良かった……良かったよぉ……」

 私は思わず力が抜け地面にぺたんと座り込んでしまった。

「あ?なんだ?マルレ泣いてるのか?」

 外道丸さんが私の顔を覗き込んできたので慌てて目をゴシゴシとこすった。服をみる余裕ができ九頭龍の血で汚れているのを意識すると清潔の祝福が発動し綺麗になった。

「泣いてなんかいませんわ!」

 私は急に恥ずかしくなり覗き込んだ外道丸さんを軽く叩こうとしたが避けられた。追い払う目的は果たしたのでまあいいでしょう。

「あぶねー!そんなの当たったら首が取れるだろ!」

 全く大げさね……それより九頭龍をどうにかしないといけませんね。もう一度、再生途中の九頭龍をじっと見つめる。

 燃え盛る社の残骸の前に倒れている九頭龍を観察をしているとアリッサたちが駆け寄ってきて外道丸さんの無事を喜んだ。

「ふん!悪運の強いやつだ!お前を倒すのは私だからなそれまでは死んでもらっては困る」
「よかったです!本当に無事で良かったです!」
「無事だったのか~よかった~お姉ちゃんが破壊神になって終末のクロービになるところだったよ~」

 レンさんはあれかな?ツンデレ王子なのかな?いや?ツンデレ武士?

 サキさんは目尻に涙を溜めていて心から心配していたのだと思った。サキさんは外道丸さんと付き合いが短い割に彼に対して妙に優しいですわね。

 そしてアリッサ……とっても失礼だわ私は怒り狂ったからと言って無差別に攻撃するわけないじゃない!……たぶん。

「みんな!心配掛けてゴメンな!この通り無傷だ!さっさと九頭龍とやらを倒しちまおうぜ」
「そうですわね、しかしあの再生力をどうにかしないといけませんわよね?」
「そのことなんだけどさ~たぶんその剣で切ったところだけ回復してないと思う」

 アリッサはそういいながら外道丸さんの持っている天叢雲剣を指さした。

「首はすぐに生えるほど再生能力が高いのにあなたが切り裂いて出てきたところは、まだ出血してるわね」
「そう言えばそうだな……オロチの再生能力を吸収して天叢雲剣へと進化したこのつるぎ……試して見る価値はあるな」

 私は考える。やはりこの世界への転移者である外道丸さんに任せるのが良いのではないか?彼をして世界の行方を託せばよいのではないか?私の頭に一つの奥義が思い浮かんだ。

「でしたら私のとっておきを出しますので、九頭龍の始末は外道丸さんにお任せしますわ!」
「なんだかわからんがよろしく頼むよ!じゃいってくるぜ」
「レン!私達も陽動に参加するわよ」
「仕方がない行くとするか!」
「じゃ~私は障壁を貼りつつ回復魔法を飛ばし続けるよ!」

 皆はそれぞれ動き始めた。私は障壁を張ったアリッサの後ろに避難して増強魔法の奥義[信頼譲渡しんらいじょうと]を唱え始めた。

 [信頼譲渡]……増強魔法の奥義、対象者を信頼し力を与える技。使用中術者は動けなくなるかわりに、自分のステータスの半分を相手のステータスに上乗せする増強魔法の奥義。

「いきますわよ!信頼譲渡!」

 私の体から力が激流となり外道丸さんへと流れ込む。

「うぉおあああああああ!何だこりゃ!力が湧いてくる!いや!これは力の海に落ちたようだと表現するほうがいいぐらいだ!」

 私の力の半分を得た外道丸さんはすごかった。

 九頭龍に回避行動を許すことがないほどの速度で動き首を切り飛ばした。そこからは流れるようにどんどん首を切り落としていく。そのスピードは凄まじく一本目の首が切り落とされて地面に着くまでの間に全ての首を切り落としていた。

「見えなかった……」
「ええ……」

 支援にいったレンさんとサキさんはただ立ち尽くしていた。

「これで終わりだ!」
 
 外道丸さんが天叢雲剣を横薙ぎにすると斬撃は衝撃波となり九頭龍の胴体を軽々と貫くとその後ろで燃え盛る社の残骸も薙ぎ払った。

 鎮火と同時に九頭龍の胴体がズルリとずれて崩れ落ちると邪竜は光の粒子となり天へと登っていった。

「今度こそ間違いなく倒しましたわね!」
「ああ!光となって消えたしな!確実に死んでるぜ!」
「うむ!とは言え見事だった!」
「今度こそ終わったのね……」
「やった~おわった~精神的にクタクタだよも~」

 自然と輪になりみんなで喜びを分かち合った。一時はヒヤッとしたこともあったが無事に一人もか欠けることなく邪竜討伐を終えた。

「お見事でした!おめでとうございます!」

 5人の誰でもない声があたりに響いた。声の出処を探ると空から光をまといながら白いローブを着た女性が私達の前に降り立った。
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