怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

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自分達の物語に決着をつける編

119-帰還

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 私が冒険者をしていた頃によく通っていた西の門から王都に入ることになった。外壁が傷ついてたりもしないので外から見る限り王都は変わりないように見える。変わらない景色に安心するけどなにか物足りないような気がする……何が足りないのかはよくわからない。

 門に近づくと二人の衛兵が見えたが顔見知りの人ではなくなっていた。

 ここに来ていろいろと考えが巡るが実際に確認しないことには何も始まらないので、アリッサに目線で合図をして門へと向かった。

 二人組の衛兵さんが私達に声をかけてくる。

「ようこそ王都へ!」
「おい!王都じゃないだろ!しっかりしろ」

 どうやら片方は新人のようですね。ただの人事異かしら?それとも……

「は!申し訳ないッス!ようこそ……あれ?なんでしたっけ?」
農都のうとだよの・う・と!」
「そうそれッス!ようこそ農都のうとへ」

 農都?なんですかそれは?王都ではなくなった……すなわち王がいなくなったってことかしら?

「ほら!続き!」
「あっええと……農都へは、どのようなご用件でしょうか!」

 えーと、えーっと私達は外国から来た冒険者!そのように振る舞わなくてはいけませんね!

「私達は旅の冒険者だ、仕事にありつくためにこの都市へときたのだ」

 うん!多分こんな喋り方がそれぽいでしょう!口調はこんな感じでいいわね。

「冒険者ですね、ようこそ!現在騎士団の方がいないので魔物退治は大歓迎ッス!」
「珍しい鎧ですねどこからいらしたのですか?」

 騎士団がいない?一つ情報が入るたびに不安になるけど、それよりもきちんと受け答えしなくてはいけませんね。設定をきちんと思い出しながら答える。

「私達はクロービからきた剣士と魔法使いだ」
「クロービですか!クロービの武具って始めて見たッスよ!」
「クロービですか珍しいですね、ようこそレイクランドへ!」
「ギルドはこのまま道沿いに真っすぐ行ったところにあるからすぐに登録するといいッス。」

 どうやら人手が足りていないので冒険者は大歓迎のようですんなりと中にはいれそうです。

「これはご丁寧にありがとう」
「ありがとう」
 
 私達は衛兵さんにお礼を言って門を通り抜ける。私は冒険者のふりで手一杯だったので農都とは何なのか聞きそびれてしまった。しかし下手に聞かなくてよかったのかもしれない。アリッサも何も言ってこないしきっとまだ様子見したほうが良いってことかしら?

 少し歩き街道に入った途端に今までとの違いがすぐにわかった。

 見渡す限りの人!人!人!道は溢れんばかりの市民でごった返していて、まるで祭りでもやっているような人の多さです!

「すごい人だね~」
「何でしょうか以前の3倍は人がいますわね」
「東京を思い出すね……」

 アリッサも人が多いと思ったようで困惑している。最悪の予想であった暗い雰囲気など一切なくむしろ前より活気にあふれている。

「と、とにかく身分証になるギルドカードのためにギルドに登録しましょうか……」
「うん……わけがわからないけど、とりあえずそうしよう」

 私達は前世の日本で鍛えられたぶつからずに人混みを縫う能力をフルに使って誰ともぶつからずに冒険者ギルドへとたどり着いた。

 ギルドの扉を開けるとそこには変わらない景色が広がっていた。

 私と腕相撲で勝負をした筋肉隆々のスキンヘッドの男が入り口から一番近いテーブルに陣取り、ナンパ短剣男は給仕人の女性と楽しそうにおしゃべりをしている。

 カウンターに座って一人で飲んでいるフードマントの男はたしか元魔術師団で敵対派だったはず。彼がここにいるってことは少なくともここは魔術師団に占領されていないということがわかった。最悪の想定が現実にならなかっとことにホッとした。

「お?強そうな新人が来たな!」
「後ろのは女の子っすかね?オレっちと一杯どうっすか?」

 ああ!懐かしいです!私がここに始めてきたときも声をかけてきたのはこの二人でしたね!

 おっと危ない!思わずお久しぶりです!と声に出しそうになったのをぐっとこらえた。

「こんにちは、クロービから着た”トモ”だ、よろしくたのむ、こっちは妹のアリ……」

 また危ない!思わずアリッサって言いそうになる。私のミスを上塗りするようにすぐにかぶせてアリッサが「”ハルカ”ですよろしく」と挨拶をしてごまかしてくれた。

 そう私達は前世の名前を名乗ることにしたのです。私はトモカだけど男っぽい名前にしようとトモと名乗るアリッサはそのままハルカと名乗った。

「へ~ハルカちゃんていうのか!」
「トモとハルカか!よろしくな新人さん!」
「オレっちが手取り足取り教えてあげるぜ?もちろん夜の講義も大歓迎だぜ?」

 アリッサがナンパ短剣男を魔力を放出しながら「捻り潰すぞ……」の一言で撃退して空気が悪くなったのでそそくさとギルド登録に移行した。

 あれは演技じゃなく本気っぽかったのでちょっと怖かった。

 顔なじみの巨乳の受付嬢さんのところに行き登録を始めた。

 ギルド登録はアリッサが考えたとおり前世のことを強く思い出しながら登録したことで見事にアシハラ・トモカとアシハラ・ハルカで登録された。私のギルドカードは一文字多くなってしまったがそこはどうにかごまかせるだろう。

 とりあえず1度ぐらい仕事をこなさないと不自然なのでどんな仕事があるのか見てみると、生活保護クエとも言える簡単な亀退治が[本日終了]の札で隠されていた。

「この本日終了というのは一体何ですか?」
「そちらは仕事を捨てて避難してきた戦闘が得意ではない方たちに優先して斡旋されているので最近はずっとそのままです。あなた達はお強そうなのでそちらは受けることができません」

 王都に入るときの違和感の正体がわかった。あれだけたくさんいたロックタートルが一匹も見当たらなかったからでした。

 そして人が多いのはどうやら避難してきた人たちのようです。やはり戦争が起こっているのかな?すぐにでも誰かに聞きたかったが目的が戦争関連だと思われても困るので自然と話題がそちらに流れるのを待つしかない。

「そうなのですか、では退治系の依頼を一つもらえるかな?」
「おふたりとも強そうですし……これなんていかがでしょうか?」

 依頼内容は腕肉が絶品でおなじみのスマッシュエイプの討伐でした。私は進められた仕事を「問題ないです」と了承しギルドカードに仕事を登録してもらうとすぐにギルドから出てそのまま西門から外に出て森へと入る。

「このあたりにスマッシュエイプが出るなんて珍しいわね」
「へ~そうなんだ」
「ええ、ロックウルフは嫌になるほどいたけどスマッシュエイプは見たことありませんでしたね」
「あ~騎士団がいないって言ってたからその影響かもね~」

 そうか複数人数で当たらないといけないような魔物は事前に騎士団が討伐していたのですね。

 森に入るとすぐに背の低い草の中を何かが疾走している。草の中から飛び出してきたのはロックウルフだ。

 背中に背負った太刀を抜きサキさんから言われた言葉を思い出す。

『あなたが剣術と言っているのは全く剣術じゃありません!両手を使う剣を片手で持ち鈍器と同じように扱ってる駄目なところしかない戦い方ですよ!』

 どうやら私が今まで剣術だと思ってたものは根本からおかしかったようです。その上に努力を重ねても成長がないのは納得だった。あまりに基本的なこと過ぎて騎士団の方々も想定外でしたのね……

 飛びかかってくる魔物を一閃する。サキさんに頂いたアドバイス通りに刃があたったときに引くことできれいに相手を切断した。

 切り口を見ると今まで私がしてきたのはではなくだったと実感した。

 初めの一匹を仕留めると他のロックウルフはすぐに逃げていった。剣術や鎧装備のスキルはないけど刀も甲冑も全く問題なく使えるようだ。

「あのさ……マルレと二人で冒険する気だったけど回復いらないから私やることないね……」
「でしたら全力じゃない攻撃魔法でも開発してみたら?ああ、リーシャーさんが使ってたスコーチャーレイとかちょうどいい感じの威力でしたよ?」

 身近な光法使いを思い浮かべるとリーシャーさんがスマッシュエイプの肩を焼いていたのを思い出し提案してみた。

「うーんあれね、想像力が全力攻撃の魔法に引っ張らて威力が自然と上がって貫通して森が燃えると思う」

 私が力が強すぎて困っているようにアリッサも魔法の威力が高すぎて困っているのね。なんだか姉妹揃って贅沢な悩みだわね。

 魔法のことだと私にはどうにもできないので「後々考えましょ」とごまかしてスマッシュエイプを探す。他のロックウルフの群れに何度か襲撃されるもすべて太刀で一閃し片付ける。

 暫く進むと樹木をガサガサ揺らしながらスマッシュエイプが現れた。白い体毛に覆われた腕は女性の胴回りより太く下半身に比べて異常に発達している。その白猿はナックルウォークでこちらに突撃してきた。

「警戒もしないで直進ですか」

 森の強者の余裕からか、スマッシュエイプは警戒もしていないのでがら空きの胴を袈裟斬りにする。肩口から入った刃は心臓を通過して腰のあたりから抜ける。

 血を吹き出しながら大きな体がズシンと倒れるとギルドカードから「討伐完了」と声が聞こえあっけなく仕事の終わりを告げた。
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