怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

文字の大きさ
122 / 159
自分達の物語に決着をつける編

122-お怒りモード

しおりを挟む
「はーい!この人は気絶してるだけだからトレイルの皆さんはさっさと集まりなさい!剣は絶対抜かないでくださいね!隣の戦闘民族が襲いかかりますから!」

 まったくひどい言われようね、でもめんどくさくなって自然と殴り倒す方向に持っていくのは私の悪い癖というよりドレストレイルの血のせいかもしれませんね。

「ほんとぉ?」

 ファーダのお父さんであるディータが恐る恐る近づいてきた。

「はい本当です!」
「殺気を飛ばしたり剣を抜いたらわからないがな」

 敵意はないからあなた達もわかっていますわよね?という気持ちでちょっと牽制しておく。

「黙ってろ……」
「ひゃい!」

 ドスの利いた声でボソリと言われ思わず声が上ずってしまいましたわ……どこからそんな声出したのよ。

 ディータさんがファーダの首元に指を当てて脈を確認している。

「うん、ファーダは気絶してるだけだね、コイツが負けたんじゃ俺たちが束になっても無理だ」

 ファーダはトレイルでは敵地への潜入を任されるほどの実力者ですものね。

「争うのは得策じゃないとわかっていただけたので、次は誤解をときましょうか?」

 アリッサがどうにか丸く収めるために話をしだした。その話の内容はこうだ。

 カクドウセイが初代様とあったという伝記からトレイルという個人の名前を知り、クロービではレイクランドの黒い衣装で音もなく動く人々のことを[トレイルのしのび]他の忍と呼び分けるために通常はトレイルと呼んでいると説明した。

 嘘と本当を適度に混ぜた見事な言い訳でした。クロービには忍がいなかったけど……ん?居ないよね?いたのかしら?あ!忍術スキル有ったわ!今度クロービに行ったときにでも探してみましょう!

「うーん、初代様と敵対して唯一生き残ったって言われてる白い服の青年の事かも……殴り倒した後、動けるようになるまでいろいろな話をしたらしく「ビビリだけど良いやつだった」と評価したって何かで読んだおぼえがあるな」
「きっとそれがカクドウ様です。私達の誤解は解けましたか?」
「うん、敵対しても良いことなさそうだしわかったよ」

 アリッサはニコニコしながら対応していたが私にはわかる。あれは表面上だけでものすごい怒っていると……

「では!あなた方の問題点を挙げさせてもらいます!」

 あっあっあっ!

「だいたいね!初対面が尾行から始まり挙句の果てに大人数で殺気をぶつけるとはどういう教育を受けているのですか!!!そりゃ逃げるか戦闘になるに決まってるでしょ!それに!そこで転がってるバカにも話をしてもらうと言いながら剣を抜くなと、きつーく!言っておいてください!」

「は……はいぃ……すいません」

 アリッサに圧倒されるディータさん……私のちょいミスがとんでもないことに!いえアリッサの言ったとうり向こう側にも非があるわけで……あれ?今ここにいるのってドレストレイルの関係者だけだわ……

 ここにいるメンツの顔を見回す。私も含めて戦闘能力は高いけど、どこかポンコツな3人が揃っている……

 これは起こるべくして起きた悲劇でした……トレイルはアリッサに完全敗北してしまったのでした。

「とりあえず今日はもう夜遅いので続きは明日!朝一で代表者は宿屋うさぎ亭に来るように!それでは解散!」

 私は戦闘の熱気もヒエヒエになりトボトボと帰路についた。

 アリッサはまだ怒っているみたいで無言なのが怖い……機嫌を取る方法をぐるぐると考えているがいまいち良い案が浮かばないまま宿屋うさぎ亭へ到着した。

「ほら!さっさと宿をとってきなさい!」

 まだお怒りモードのアリッサに言われてすぐに、うさぎ亭に入り部屋を二部屋取りに行った。女将さんと娘のペトラちゃんに久しぶりに会ったけど久しぶりというわけにも行かず普通に接する。

「二部屋お願いします」
「はいよ二部屋だね!悪いけど夕食は終わっちゃったから何も出せないがそれでも良いかね?」
「構いません」

 あーあファーダのせいで夕食を食べそこねたわ。

 私達は一旦それぞれの部屋に行き荷物をおいた後に私の部屋で合流することにした。

「夕食を食べそこねたのはマルレのせいなんだからマルレの非常和食から私のぶんも出してよね」

 私達はクロービを離れて和食が恋しくなったとき用のために、日頃からおにぎりや豚汁などの和食を[非常和食]として時の流れが止まる次元リュックや次元ポーチに収納してあるのです。アリッサのポーチは容量が馬車一台ぐらいしかないけど私のリュックは倉庫2件分ぐらい収納できるので和食に限らず中華料理までたんまり詰め込んであるのです。

「中華も持ってますけど、何を食べます?今日は特別に何食べてもいいわよ」

 少しでも機嫌を直してもらうためできる限り要求に答えなくてはいけませんね……

 そしてアリッサは私の言葉を聞いてニヤッとした。

 嫌な予感しかしませんわ。

「じゃあ特上天丼ちょうだい!」

 特上天丼!スキルで増やせない貴重なエビを贅沢に3本とキス獅子唐ししとうの天ぷらまで乗った贅沢品!こっそり一人で補充したから知られていないはずなのに!?なぜ知っているの!?

 ぐぬぬ!2杯しかない虎の子の一つをここで失ってしまうのね!……仕方がありませんわ。

「うう……わかったよ」

 私は仕方なく次元リュックから特上天丼と箸を取り出しアリッサの前に配膳した。

「うわ~美味しそう!いただきます!」

 いい香りが部屋中に充満する。私はその香りをかぎながら、全面を海苔で覆われたバクダンと呼ばれている大きなおにぎりを食べることにした。私も特上天丼を食べようかと思ったけどなるべくリーズナブルなものを食べてアリッサの機嫌を損ねないようにした。

 作戦は功を奏しアリッサの機嫌はすっかりと良くなった。

「よし!じゃあ明日も私に任せてね!自然な流れで前線にいけるようにするから!」

 そう言って自室へ戻っていったアリッサを見てやっと肩の力が抜けた。使い終わった食器を清潔の祝福で洗って次元リュックへ戻しておく。今度クロービに行ったときにまたこの器に盛り付けてもらうためだ。

「ふぅ~アリッサを怒らせると大変ね……怒りに任せてビンタでもしてくれたほうがよっぽど楽だわ……」

 私は鎧を脱ぎベッドに横になるとすぐに深い眠りに落ちた。

 次の日の朝、私は面頰めんぽうの口の部分からなんとかスプーンを突っ込みシチューを食べているとディータさんが訪ねてきた。

 既に朝食を食べ終わっていたアリッサが対応することになった。彼女が既に朝食を終えていた理由は食事用に目の部分しかない狐面を用意していたからでした。

 私も目の部分だけしかない食事用の面頰めんぽうを作るぞ!と心に決めながら難易度の高い食事を続けることにした。

 やっと私が食事を終え話し合いに加わろうとするとすでに終わっていたようでディータさんが宿から出ていくところでした。

 やっぱり交渉事には参加させてもらいない運命なのかもしれませんね……でも短いやり取りでも失敗するので交渉なんて避けるに越したことないのかしら?

「話し合いの結果はどうなりましたの?」
「今後のクロービとの関係強化のため友軍として前線の手助けすることになったよ」
「え?前線へ行ってもよいのですか?」
「アロイーンとかアークとかラーバルのこと気になってたでしょ~?正体を隠したままならマルレのお父さんに止められることもないし何だかんだ有ったけど結局いいとこに落ち着いたよ~」

 上手いことまとめてくれたようでみんなの様子を見に行けることになった。アリッサは私が失敗しても結局最後は良いところに落ち着くので怒りにくいと愚痴っていた。私はアリッサの軌道修正あっての事だと思いひっそりとしっかり者の妹に感謝した。

「さて!最初は一番近い騎士団とネスティエインの戦場に行くわよ!」
「ラーバルのところですね、変わりないとよいですね」

 私達は準備を整え女将さんにお礼を言うとすぐに戦場へと出発した。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...