怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

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自分達の物語に決着をつける編

131-やっぱり焼きましょう

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「交渉は私がすることになりました。よろしくお願いします」

 今回の主役はニーニャさんです。彼女が領主の娘として交渉役に付き私達はその護衛という形での行動になるようです。

「とりあえず、停戦、又は終戦交渉の使者ということなので街道沿いに進み前線基地と思われる小さな小屋が並ぶ地域に向かいます。それでは出発いたしましょう」

 貴族が愛用するような2頭立ての4輪箱型馬車へ乗り込み街道沿いにエプロストリング領へと向かう。御者台には馬を扱えるアロイーンとリーシャーが座り後ろにはニーニャさんとアリッサと私が乗り込んだ。

 本当に5人だけで行くのね、一人ぐらいロッドヴァルデ領の成人を連れて行ったほうが良いような気がするんですけど……もしかしてロットヴァルデ卿はまともに交渉する気がないのかしらね?

 うーん不自然なことが起こるとなると……何かの誘導ルートに乗ったのかしら? 外道丸さんの話していたレイクランドの3つ目の物語で勇者関連の行動を思い出してみる。[魔法使いが勇者の幼馴染を殺す][勇者が真実を知る][勇者が聖女を殺す][勇者自害]うん、どれも起きないでしょうね……

 するとクロービで酒呑童子や金太郎それに300年前に沈んでから未だ帰ってきてない浦島太郎がいたみたいに別の物語が食い込んできているのかもしれないわね……でも勇者関連の物語なんて無数にありそうだから何が起こるか予想もつかないわね。

 考えても無駄そうなので考えるのをやめた。

 街道は馬車がすれ違えるほど幅が広く規格の揃った石畳で整備されている。きっと歴代の王族の誰かが作ったものでしょうね。いま乗っている馬車は冒険者や軍人が乗るのとは違いきっちりとサスペンションが効いてるので石畳の継ぎ目で跳ねることもないし座席のクッション性も抜群なのでとても快適です。

「やっぱりアロイーンには私が付いていなきゃね~」
「そうだねリーシャーがいれば俺の力は何倍にもなるよ」
「もう!アロイーンったら!」

 いえ訂正します。馬車内の小窓から聞こえてくるバカップルの会話がなければすごく快適です。

「あの二人……戦争地域で……やっぱり焼きましょう……」
「あら!ハルカさん!私もそう思っていたところですわ気が合いますわね」
「ちょっと二人共落ち着いて!?」

 急に物騒なことを言い出すアリッサとニーニャさん。二人をなだめつつ小窓から外の二人に向かって「イチャつくのをやめないと燃やされるぞ」と言って黙らせ開いていた小窓をきっちりと締めました。

 変な沈黙が続いたのでニーニャさんの話を聞くことにした。

「あのドラゴン型の炎魔法は素晴らしかったですね。魔法の授業は2年生からなのに何処で教わったのですか?」

 ニーニャさんはまだ魔法学園の1年生で魔法の実技がないのに強力な魔法が使えることを不思議に思ったので聞いてみることにした。

「実は今年から1年生も魔力量測定と適正属性判定それにノチド式魔法の基礎を受けることになりました」
「そんな変化があったのですか」
「そうなんだ、アリッサとマルレに聞いていたのと変わっているようですね」

 アリッサが私の脇をツンとつついた後さり気なく情報源を特定させる言葉を入れてくれた。

 よくご存知ですねとか言われたら無駄に焦ってボロが出るところでしたわ!危なかった!
 
「ええ、王族のアーク様の固有魔法の発見が遅れたので少しでも早くする方針になったようです」

 そういえばアークは、一人だけなかなか見つからなくて困ってたわね。結局友人などの友好的な人と魔力を混ぜると超強力になるというよくわからない能力だったのですよね。

「それで私は炎を強者の姿に似せると威力がすごく強くなることを発見したのです」
「それで最強の生物と言われるドラゴンだったのですね」

 そうよねドラゴン+属性系の名前の魔法ってかなり多いよね魔法あるあるなのかしら?

「フフッ私もはじめはそうだと思ったのですがドラゴンの威力は2番めでしたの!もっと強くなる形があったのですよ!お見せする機会が来るまで楽しみにしていてくださいね!」

ニーニャちゃんはなんだかとても嬉しそう、やっぱり強くなるのって楽しいですよね。

「それはぜひ見てみたいですね」

 どんな魔法か見てみたいですね!いまから楽しみだわ!あっ、でもこれから交渉に行くんでした……

「しかし戦闘にならないのが一番ですけどね」
「そうでしたね。交渉がうまくいくと良いですね」
 
 ゆっくりと馬車が止まった。不思議に思い外を見ると日が落ちてきていたようであたりは暗くなり始めていた。

 時間的に野営の準備にでも入るのかしらね?

 ノックの後に馬車の小窓が開かれるとアロイーンさんの声が聞こえてきた。

「境界線手前のコテージに到着しました」
「そうですか、では宿泊の準備をいたしましょう」

 どうやら野営ではなくコテージがあるらしい。馬車を降りたニーニャさんの後に続いて外へと出るとそこには丸太を板材に加工せず横に倒して積み重ね壁を作っているログハウスが3件ほど建っていた。

「先に賊が居ないか調べて来ますので少し待っててください」

 そう言ってアロイーンさんはコテージを調べに行った。その様子をボケーッと見てるとリーシャーさんが近寄ってきた。

「アロイーンは気配を探るのがすごい上手いんですよ!」

 そういえば森の迷宮で一緒に戦った時にそんなこと言ってたわね。

「はい出ました!彼氏自慢!いい加減にしないと燃やしますわよ!」
「え~そんなつもりじゃなかったんだけど、そう感じちゃったんならごめんね~」

 うーん……この二人は基本的に仲が悪いのね……魔王と戦ったときは私が忘れられるぐらい仲良かったのに、今はおでこがくっつくんじゃないかってぐらいの距離で睨み合ってる。

 アリッサがすっとそばに寄ってきて小声で話す。

(やっぱりこいつ一度焼きましょう!師匠としてひん曲がった根性をたたき直してやる!)
(ちょっと!師匠なんて言ったら正体がバレますわ!)

 冗談だとわかってるけど[魔法使いが勇者の幼馴染を殺す]が実現しそうで怖い!お願いだからやめて!

「誰もいませんでしたよ!中に入りましょう」

 アロイーんさんが戻ってきたことによりなんとかその場は収まり皆でコテージに入り宿泊の準備を始めた。
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