怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

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自分達の物語に決着をつける編

138-炎と水でできた私

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 檻の中には少しやつれた金髪碧眼の美男子が囚われていました。アリッサは「弱ったイケメンもぐっとくるものがあるね」とよくわからないことを口走っている。

 そんなアリッサの言葉なんて耳に入っていないようで、青年とニーニャちゃんは会話を続ける。

「秘密結社では原則仮面着用の匿名でしたのでわかりませんでしたが……副会長あなたはエプロストリング家の方でしたのね」
「そうです私は、レイシーズ・エプロストリングこの家の嫡男です」
「そうでしたのね……私はニーニャ・ロットヴァルデ……ですわ……」

 鉄格子を挟んで自己紹介し合う二人、初対面ですが初対面ではない不思議な関係だったようですね。それにしても仮面着用で匿名の秘密結社とか怪しすぎるんですけど!

「ん?会長どうかしたのかい?」
「……いえ!今はいろいろ考えている場合じゃありませんわね!早くここからでましょう!」

 互いの素性を知ったことで、ニーニャちゃんにはなにか思うところがあるようですが、たしかにそんなことより脱出が先決ですね。

「助けに来てくれたのはありがたいのだが、魔封じの床に魔鋼の柵だ、術者を連れてこないとこれは簡単には破れない……君に無茶はしてほしくない……私のことはいいから逃げてくれ……」

 おやぁ?もしかして……これって!アレかしら!

「魔封じの床に魔鋼の柵……フフフ!問題ありませんわ!お願いします!」

 やはり私の出番のようね!

「はい、離れてくださいね危ないですわよ」

 まるで珍獣でも発見したかのように驚いているレイシーズさんに手をひらひらと振って、後ろへ下がれと仕草で伝えると魔鋼の柵を両手で掴み左右に押し広げた。

「会長の言ったとおりだ……凄い……ありがとうございます!」
「お礼は無事脱出してからにしてちょうだい」
「副会長あなたも歴史の目撃者ですわ!」

 あああ、やっぱり怪しい団体は私関連みたいですね。どうでもいいけど早く出ないと追手が来ますわよ。

「狙いはスルーベル様ではない!侵入者は地下だ!行け行け!」

 遠くから敵の指揮官らしき人物の声が聞こえてきた。

「遅かったようね……アリッサ転移門って通り抜け制限できる?」
「無理だよ誰でも通れる」

 やっぱり無理でしたか、では誰かが止めないといけませんわね!

 私は敵が来る廊下の方に少し移動して振り返えると言ってみたいと思ってた台詞を発した。

「ここは私に任せて先へ行ってちょうだい!大丈夫!必ず……必ずもどりますわ……」

 くうう!これ一度言ってみたかったのよね!私いま最高に輝いている!

「いえマルレリンド様!それはいけませんわ!ここはこの私とレイシーズ様の魔法が最適です!」

 え?ニーニャちゃん達の魔法?

「はい、私と会長の魔法は自動制御なのでここに残して時間稼ぎするのに最適です!」

 えーあーーーー……あの炎のドラゴンみたいなやつかしら?アレって確かに召喚精霊と似たように意思があるみたいでしたね……確かに最適ね……[ここは任せて先に行け]は失敗だわ……

「炎よ!最強を型どれ!フレイム・オブ・ベネボレンス!」
「水よ!最強を型どれ!ウォーター・オブ・ベネボレンス!」

 ニーニャちゃんとレイシーズさんの呼びかけに応じるように爆発的に発生した炎と水がどんどん収束し何かの形を作ろうとしている。

 炎と水それぞれの奔流が収まるとそこには、ある者を形どった姿の水と炎がたたずんでいた。

 オーケーオーケー……[ドラゴンの威力は2番めでしたの!もっと強くなる形があった]っと聞いたときからなんとなくこうなるのではないかと薄々感じてましたけど、まさか2つも来るとは……

 あれは完全に炎と水でできた私ですわね……

 赤と青の私が私より前に出ると階段に向かって拳を構えている。

「プククッ!てっ転移門出すね!そっちは任せるよ~」

 私は半笑いのアリッサをジトーっと見つめる。すると笑うのを止めてスッと目を反らし転移門を召喚した。転移門が召喚されると同時に階段から敵がなだれ込んで来る。

「逃げ場はない!確実に仕留めろ!」
「「攻撃開始!」」

 追い詰めたつもりの黒鎧たちに命令を受けた炎と水が襲いかかる。 

 黒鎧を殴り倒す炎と水……槍を受けてもその体はほとんどダメージが無いようで次々に黒鎧を殴り倒していく。私は魔法で再現されても物理一辺倒なのね……

 ボーッとそんな事を考えていたら、「マルレリンド様!早く」と呼びかけられニーニャちゃんに腕を引かれて転移門をくぐった。

 くぐった先はリーシャーさんとアロイーンさんがいるのが見え確保を頼んだ場所に戻ってきたのだと実感する。転移門を振り返ると門から向こう側が見え黒と赤と青が殴り合いの乱戦を繰り広げていた。

 全員が通ったのを確認したアリッサは転移門を消した。二人の魔法のおかげで怪我一つなく脱出に成功した。

「えっと……ありがとうございました助かりましたわ」

 いろいろ言いたいこともありますがここはぐっと引っ込めて、お礼を言っておいた。二人は恐縮しながらも喜んでいるようでした。

「わーマルレ見てあれ!ラーバルとファーダくんが別次元の戦いしてて面白いわよ」

 そういえば、残ったみんなはグールと戦っていたのでしたね。どんな様子でしょうかね。

 アロイーンさんとリーシャーさんは戦いに参加せずボーッと遠くを見つめている。その目線の先を見るとファーダとラーバルが戦っていた。

 ファーダは両手に短剣を持ち赤い霧を吹き出しながら前宙やバク宙に壁蹴りから時には壁走りまで駆使してばったばったとグールを斬り倒している。

 一方ラーバルは……


 空を飛んでいた。


 私は目をこすってもう一度ラーバルを見る……見間違いではないですね……空を飛んでいるわ……

 鎧の背中についた筒からは常に暴風がでているようで常に腰のマントがはためいている。空高く飛び上がると急降下し地面すれすれを飛行しながらグールを何体も斬り倒し再び上空へ舞い上がった……

 何あれ!私あんなの作ってない!魔石に溜まった魔力で一瞬だけ暴風を発して急加速するだけのはずです!

 私に気がついたラーバルが空から手を振り声をかけてきた。

「マルレ!これは凄いぞ!魔石を通さず直に魔力を送ると加速を飛び越して空を飛べるぞ!」

 あーそうか魔道具ということで、魔石にこだわっていましたが総魔力の低い魔石より人が直に発動機構に魔力を流したほうが数倍の威力と持続が可能なのですね……

 これは完全に想定外でしたわ、自分が魔法を使えないと気が付けないこともあるのね……完全にオーバースペックのような気がするけど大丈夫かしら……

「お嬢!なんてもの作ってるんですか!ラーバルさん俺より早いっすよ!」

 確かにファーダのフルバーストより早いわね……

「すっごーい!ファーダより、ずっとはやい!!」

 バルトレイス家の当主選考に影響を与えるような装備を作ってしまった私は、考えるのを止め適当に返事をしておいた。
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