怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

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自分達の物語に決着をつける編

155-農都襲撃 ― 場外乱闘

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 私は赤い縦ロールを振り乱し不安を抱えながら急ぐ。

 私は少し前、神の使いさんいや、雨降アメフリさんに連れて行かれた謎の場所で、この世界の話を聞いている最中でした。何だか焦っている男性から「トレイルが暴れている」とだけ聞いた私は、すぐに雨降さんに元いた場所に送り返してもらった。

 アークが乗っていたゴーレムの頭の上に降り立った私は、すぐに転移書を開くと農都へと転移した。騒動が起きている場所が農都のどこなのかがわからなかったので、垂直ジャンプをして周囲を探る。すると城に見たことない半透明のドームができているのを確認しすぐに駆けつけた。

 城の庭は荒らされておりそこには何人か人がいるのを確認する。

 ――トレイルが暴れている――それだけを聞いた私は、見たことがない赤髪の人と、トレイル部隊所属のファーダが向き合っているのを見て、どちらが止めるべきか分かりませんでした。

 でも、ファーダと向き合っていた赤髪の男が急に方向を変えて走り出したその先にアリッサがいるのを見て、敵がどちらであるかとこの見たことない赤髪の男が誰なのかを理解しました。

「あなた、嫁入り前の妹の顔に何をする気なのかしら?」

 間一髪間に合った!

 私は、アリッサに放たれた拳を止められてほっと一安心しています。

 思い返してみるとかなりギリギリでしたね。アークを連れてこようと手間取っていたら間に合わなかったかもしれませんね。

 初代様は、私の腕を振り払い少し距離をとった。

 初代様は、赤い髪に野性味のあるお顔立ちで、筋肉質な体のあちこちにのが見みえる。

 服装は上半身は何も付けておらず、下半身は少し膨らみのあるゆったりしたパンツに、虎の模様の革製の腰巻きが黒い帯で雑にくくりつけられている。

「トレイルが暴れていると聞いたので、お父様たちが暴れているのかと思ってしまいましたが違いましたのね……あなたが初代様……トレイルなのですね」
「フフフ、そう言うお前は、俺の子孫だな?」

 初代様は、エンド・オブ・ブラッドを発動している私をじっくりと見ると、なぜだか楽しそうにしている。

「あなたは何故こんなことをしているのですか?」
「あー、アウゲルのやつに操られてんだ、ここで国を相手に試合をしろってな」

 試合?アウゲルが試合しろって命じたのかしら?意味がわからないわ、アウゲルってバカなのかしら?

「引いてくれる気はないということですか?」
「スペクトルというのも不便なものなんだよ」

 私が眉をひそめるのを見て初代様は続けて語る。

「なに心配するな試合だから全員ダウンさせて城を叩き壊せば終わる」
「アウゲルを痛めつけて命令を撤回させれば良いのではないのですか?」

 こういう場合は、命令を出している本体を叩けば終わると相場が決まっているのです!

「あいつなら、そこの長い黒髪の男が、魂ごと消滅させたよ」

 私は倒れているお兄様を見つめる。

 さすがお兄様ね、ラーバルが闇の原石でスルーベルを倒したのを見てお兄様なら原石いらないと思いましたけどそのとおりだったようですね。さすが私のお兄様ですわ。

 命令の撤回が不可能となると城を壊させれば終わる……たしかにそうですが……

 私は、怪我をして横たわっているラーバルやお兄様を見ると、握った拳に力が入る。

「城を壊させて終わりなんて、納得できませんわ!わたしが相手になります!」
「そう言うと思ったぜ!」

 私は覚悟を決めた。しかしこの場で戦うのは少々まずい……アリッサやラーバルに被害がおよばない所へ誘導しなくては、いけませんね。

「どうせ戦うのでしたら、周りを気にしなくて良いところに行きましょうか」
「そうだな、お前の気がそれてもつまらんからそうしよう」

 私は、思い切り踏み込み北東方向へ飛ぶと初代様も同じ様に飛び後をついてくる。農都から北東方面にちょうど騎士団とネスティエン軍が戦った平原が見えてきたので、そこに降り立った。

 すでに戦闘の跡はなく、砲撃の岩が少し残っているぐらいで、他はきれいに片付けられていた。

「この辺りでいいでしょう……」
「いい場所だ、家も畑もねぇ思う存分やれる」

 私は初代様と向かい合うと臨戦態勢を取る……はじめから全開で行きます!

「エンド・オブ・ブラッド・フルバースト!!!」
血滅魔流ちめつ まりゅう!」

 両者の体から勢いよく赤い霧が吹き出る。

 戦いは、拳をぶつけ合うことから始まった!

 轟音と衝撃が辺りを襲う。草の生えた地面はめくれ上がり、遠くに見える森からは、鳥が羽ばたき逃げ出してゆく。

 ぶつかりあった拳にかつてない衝撃を感じる……

 うぐ……流石に硬いわね!私は今までで一番硬いものを殴ったかもしれません。

 やはり、身体能力では初代様のほうが上ですか……

「いいぞ!やはり戦いはこのレベルでないと面白くない!」

 その言葉と同時に放たれた、こめかみを狙った上段蹴りを回避する……

「私もそう思いますわ!脚壁!挟脚壁!」

 相手の問いに答えながら脚壁で思い切り踏み込み挟脚壁で吹き飛ぶのを阻止する。

 片足を上げた体制を取り、その上げた足で相手の腹に全力で横蹴りを放った。

 私の攻撃は先程と違い周囲に衝撃が散ること無くすべてダメージとして体内に留めさせる。

「うごぉっ」

 前かがみになる相手を見て、ダメージを与えられたことに少し安心する。

「流石に効いたようですね」
「フフフ、やはり、スペクトルになったのは正解だったな!まともに戦えるのは何時ぶりだろうか!」

 ラーバルも惹かれていたように強者との戦いは、それほど面白いようです。私はその感覚がよく分かりませんでしたが、今は、実力が近いものとの戦闘に血が騒いでいる。

 この感覚に病み付きになるのも、理解できますね。

 再び戦闘が再開される。トレイルの攻撃が私を捉えれば、私は吹き飛び地面をえぐる。私の攻撃が決まれば相手は、その場で悶える。

 流魔血を極めた両者の戦いは、奇妙なものです。防御など意味をなさないので、どちらも攻撃を優先して防御を取らないのです。

 避けられないと判断した攻撃は、人体の急所だろうが構わずそこで受け止める。

 そんな応酬ですが、攻撃を食らう数は、圧倒的に私のほうが多い。ですが、私は、吹き飛ぶことで地面がクッションになり思ったよりダメージは少ない。

 私の幾度目かの攻撃が命中しよろけながら数歩下がると、初代様は、少し息が切れているようだ。

「はぁはぁ……その壁を出す技厄介だな……」
「この技は、カクドウセイさんが残した技なのですよ!」

 驚かせるために彼も知っているであろう名前を出す。すると初代様は、腰に虎の毛皮を止めている黒い帯を手に取る。

「セイか、懐かしいな、この帯はセイを殴り倒した時に強者の証としてもらったものだよ」
「やはり、カクドウセイが赤鬼と呼んでいたのはあなただったのですね」
「ああ、たしかに奴はそう言ってたな、それにしても面白い!俺の子孫がセイの技で立ち向かってくる!さぁ!続きをやろうか!」

 私は、少し危機感を覚える。同じぐらいダメージを負っているはずなのにまだまだ初代様は余裕そうだ。

 私は、さらに実力を技術で埋めることにする。

「鬼人化、魔力の泉、体力の泉」

 私の手のひらから御札のようなものが3枚飛び出ると、私の体に染み込むようにして入っていく……

 増強魔法の効果で、力が、素早さが、体表面の硬度が、動体視力が、跳ね上がる!さらには、魔力と体力がじわじわと回復を始める。

「まだ何かあるのか、ますます楽しみだ!」
「ええ!先程とは別と思ったほうが良いですわよ!」

 脚壁を思い切り蹴り超加速をして、初代様に突撃していく!

 第2ラウンドの始まりです!
 
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