怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

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自分達の物語に決着をつける編

156-農都襲撃 ― 開放

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 私は全力で初代様に突撃する。

 勢いのままに右手で殴りつけるが、これはフェイント。拳を左に曲げ上半身をひねり殴る勢いを回転力に変えての回し蹴り。

 よし!まともに入ったわ!ここからつなげていくわよ!

 初代様は、これをまともにくらい水平に吹き飛ばされていく。

空歩壁くうほへき!」

 私は、地面に降りずに空中で壁を蹴り追いかける。飛ばされていく初代様を追い抜く。先回りして飛んで来る相手を真正面に捉えると、タイミングを合わせて思い切り蹴り上げる。大きく打上げたところを追いかけまた、先回りしてさらに攻撃する!

挟掌壁きょうしょうへき双掌壁そうしょうへき!」

 相手の背と私の拳に半透明の壁を発生させ思い切り両腕の拳を叩き込む!

「がぁ!」

 硬い壁で、挟み込まれた初代様は、たまらずにうめき声を上げる。落下していく相手にさらに追撃をかける!

 無駄に全力を出してしまうため封印していた格闘のテクニックを使用する。

流星脚りゅうせいきゃく!」

 本来は、地上で使うテクニックで、跳んだ後に膝をのばしたまま蹴り込む技なのだが、私は、空歩壁を足場にして落ちていく相手に向かって足を向ける。

 私の足は空中で敵を捉え地面へと叩きつけた!地面がえぐれ土埃が立ち込める。攻撃を当てた反動で勢いを失った私は近くの地面へとスッと着地する。
 
 初代様が落ちた場所には、まだ土煙が漂っていてよく見えない。どうなっているかと覗き込んだのは間違いだった。

 土煙から突然現れた手に顔面を掴まれた!

「しまっ――」

 私の顔を掴んでいる手を引き離そうと懸命にもがく。もがいている間にも逆側の手で私の腹にパンチを打ち続けている。

 うぐうう!取れない!このままダメージを受け続けるのはまずいです!どうにか抜け出さなくては!

双掌壁そうしょうへき!」

 私は両掌にだした壁で腕を挟むように攻撃する。しかしそれでも手を離させることはできなかった。

「うおらぁ!」

 連打の締めくくりとばかりに、私のみぞおち付近に肘が突き刺さり、それと同時に手を放されたことにより飛ばされ地面で何度か跳ねやっと停止する。

「うぐぐ、これでも足りないっていうの!」

 痛みをこらえながらゆっくりと立ち上がる。

 流魔血……無属性拳法……増強魔法……すべてを出し切っているが、それでも初代様のほうが上回っている。

 初代様は、悠々と歩いて近づいてくる。転生前に体験していた昔懐かしい恐怖というものを感じている。痛みと恐怖で鈍くなった体にムチを打って姿勢を正す。

「未だ流魔の血を完璧に発動しているわけではないな……これは、なにか枷をつけているのか?」

 彼は、腕組みをしながら語りかけてくる。

 かせ?

 ――『マルレちゃんの髪型の固定は、友達と共に生活するのにとても大事なものなの!これがないとお友達の命が危ないのよ』
 
 お母様の言葉が思い出される……髪型固定の祝福……

 私は、心の中で黒鎧を浄化したときのことを思い出す。

 ――清潔の祝福に魔力を送ると髪型固定の祝福の割合が縮むのを感じ縦ロールがストレートに戻り祝福の力がどんどん強くなった。――

 そうか、まだあったわ!出し切っていないものが!

 私は意識を集中し流魔血により一層魔力を送る。

 髪型固定の魔法の割合が縮んでいく……

 髪は、拘束を解かれると、うねった縦ロールから風に揺られるほどサラサラなストレートヘアーに変化してゆく。

 そして流魔血がかつてないほどの胎動を始めるのを感じ取る!

「おお?枷が解けたか?」
「うあああああああああああ!」

 体の感覚がおかしくなる!心臓を中心に、まるで肉体がなくなるかのような感触が始まりその感覚は、手先足先へと広がりついには全身に行き渡る。

 ――マルレの体に変化が起こる!体は、血の生産を放棄し赤い霧が引いていく……そのかわり体からは、見たことない青い物がゆらゆらと漂い始めた。そして、トレイルの体にある入れ墨のような謎の紋様と似たデザインの紋様が額に浮き出ていた。

「ハハハハハ!思ったとおりだ!やはり額に角紋様が出ている!」

 私の変化を見た初代様は、嬉しそうにしている。

 自分の額を触ってみるが触った感じでは何も分かりませんでした。

「角紋様?なんですかそれは?」
「ほら、俺にも出ているだろう」

 初代様は、そう言って自分の体にある流れる炎とも角ともとれるような模様を指し示した。

 あれが私の額に?私が不思議に思いおでこを何度もこすっていると、初代様は角紋様について話し始めた。

「角紋様ってのは、流魔血を極めたものにあらわれる紋様だ!つまりたった今、お前はやっと俺と同じステージに立ったってことだ!」

 初代様は、そう言うと赤い霧を引っ込め私と同じ青い物を纏い始めた。

 私は、手を握ったり開いたりしてみる。そして体にまとっている青いものをよく観察する。

 あっ、これ魔力だわ……今度は、血の代わりに魔力が吹き出してるのね……私は、魔力変換器官を自力で操作したことにより魔力を実感し、魔力の扱い方やできることが感覚で理解できる……

 私は、思わずニヤリと笑った。

「ハハハ!お前も同じ土俵で戦えるのが楽しいか!俺も楽しいぜ!」
「フフフ……違いますわ、私は魔力の扱いが全て理解できました。あなたが、あふれる魔力を利用できないのと違い私はこれを有効利用できます!すなわち同じステージではなく上を行くことができるということです!」
「何だと!?」

 私はあふれる魔力を利用する。魔力の扱い方を理解したため今までとは違い、増強魔法や属性拳法の型を破りノチド式のように自由に魔法を構築する!

 増強魔法……魔力割合変更、時間1割、射程1、威力8……

 効果時間は一瞬そして飛ばせる範囲は極小だが威力が凄まじい増強札を生み出せる。

「はぁあああああ!」

 私は、体から漏れた魔力を何枚もの札に変換していく!瞬速と剛力の札を何枚も私の周囲に漂わせる。

「いきますよ!初代様!」
「長生きはするものだ!楽しくてたまらない!早くやろうぜ!」

 私は、攻撃を開始する。

瞬速脚壁しゅんそくきゃくへき!」

 脚壁を使うと同時に瞬速の札を一枚使用する。
 
 地面を蹴ると、初代様へと肉薄する!ありえないほど上昇した速さに、反応しきれていないようなので、遠慮なく攻撃を叩き込む。

剛力ごうりき挟掌壁きょうしょうへき!」

 また札と技を同時使用する。私の攻撃は、鉄壁のはずの初代様の肉体をへこませるほどの威力まで高まった。

「ガハッ!」

 今までと比較にならないほど顔を歪める初代様……つまりは、初めて初代様の防御力を貫き魔力ではなく、肉体へのダメージに到達したのです。

剛力ごうりき挟壁きょうへき烈襲脚れっしゅうきゃく!」

 今度は、増強の[剛力]、無属性拳法の[挟脚壁]、格闘の[烈襲脚]を同時使用する。容赦のない蹴りの連打が撃ち込まれる。ひと蹴りするたびに致命的なダメージを与えている。

 蹴りを止めると、初代様はその場で崩れ落ちた。

 決着は近い……初代様に流れる魔力がどんどん弱まっていくのを感じる。

「ぐうう……魔法や技なんて弱いやつの足掻きだと思っていたが、違ったのか……強者が使えば更に上のステージへ……流魔血が許す魔法があるとは……俺も調査不足だったぜ……」

 そう言いながらなんとか立ち上がった初代様を見てある疑問が湧いてくる。スペクトルは、致死量のダメージを受けるとどうなるのか……このまま倒してしまってもいいのか……

「へへへ……俺が命の心配をされるとはな、これもまた初めての経験か……安心しな!スペクトルはな訓練などで死亡しても毎日朝日と共に蘇るのだ……」

 戸惑っている私の心を読んだように、スペクトルが不滅であると教えてくれた。私は覚悟を決める。

「では、最後に一言……またやりましょうね」
「ああ……わかった」

 私は、考えうる最高の技で最後を飾ることにする。

隔壁乱舞かくへきらんぶ!」

 初代様を6枚の半透明の壁が取り囲む。そして私が使用できる攻撃系の格闘のテクニックを剛力と同時使用で叩き込んでいく。

 正拳突き、旋風脚、発勁、流星脚、爆裂拳、烈襲脚

 すべての技を打ち込み終えると隔壁乱舞を解除した。

 今まで叩き込んだ攻撃が一挙に初代様へと襲いかかる。極限まで強化された肉体から放たれた攻撃は、存在そのものを否定するかのように破壊し尽くした。

 パァン!と何かが破裂したような音と共に辺りに魔力の残滓が飛び散る。

 スペクトルとしての肉体であった魔力が平原にキラキラと降り注いでいる。それは地面に落ちると、星へと帰るように地面に吸い込まれていった。

 ストレートヘアになった私の髪が風に揺られている。
 
 ついに私は、初代様を倒したのです。

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