30 / 38
列島 第四島 墓地島
第28話 多四肢体
しおりを挟む
翌日二人は、墓地の前で待ち合わせをしていた。リアーロが少し先についたが、時間に正確な二人は、ほぼ同時に墓の前に揃った。
「お? ムンナに武器を買ってやったのか?」
リアーロは、ムンナのカゴの横についているものを見た。それは、ロングポールアジッターの槍脚を加工した見事な武器がだった。
「昨日素材を振り回してましたからね。だから、きちんとした武器を買ってあげたのです」
ポラはペットに新しいおもちゃを与えたように話す。その横で、うなずこうとしてお辞儀をしたムンナはとても嬉しそうだった。
「テンテンデッカーが武器を使うなんて珍しいな。こいつは少し変わったやつなのかもしれないな」
リアーロは、いままでテンテンデッカーが武器を使ったところを見たことなかったので、そう思ったようだ。
しかし実際は、自分の主人が自分の戦力を上回った場合は武器を使うのだ。いままで商人と共に街道沿いでしか行動をともにしていなかったため、他のテンテンデッカーは、素手で十分という判断であった。
墓地前で合流した二人は、軽くスケルトンを蹴散らしながらどんどん奥へと進む。
しばらく進むと入り口と同じような鉄柵の扉が現れ、そこを越えるとスケルトンは襲ってこなくなり元の場所へと帰っていった。
そんなスケルトン達の背を見送りながらポラは、ボソリとつぶやいた。
「墓地に入った者を攻撃しろって命令みたいだね。ゴーレムかオートマタの勉強をしようかな」
そんなつぶやきが聞こえたリアーロは、まだ強くなる気なのかと、向上心が強いポラに感心するばかりだった。
落ち着いた二人は改めて目の前の景色をよく見る。
墓地の奥には大きな屋敷が立っていた。古くはあるが、とてもきれいな屋敷で、今にも老紳士の執事を引き連れた貴族が出てきそうな雰囲気がある。
屋敷の向こう側には大きな石造りの塔が見える。根本までは見えないが、きっと屋敷とつながっているタイプの塔であろうことが解った。
「良い屋敷ですね」
「そうだな。中にいるバケモノを見たらその感想も変わるだろうな」
ポラは、リアーロの言葉に次の魔物はどんなものかと想像する……。墓地の屋敷にいる魔物……。
「ゾンビですか?」
「いや、多四肢体っていう魔物だ」
ポラは聞いたことない名前に首をひねる。
「どんな魔物なんですか?」
「あー……あれはなんて説明すりゃいいんだ? 人間っぽい何かで、とにかく気持ち悪いんだ」
ポラは、覚悟を決めて「行きましょう」と言い、歩みをすすめることにした。
リアーロは、屋敷の両開きの大きな扉に手をかけ開くと、ドアの隙間に石を噛ませ閉まらないようにした。
「ここに入るときは、決まって扉をこうするんだ。やつの姿をみてパニックになってドアが開けられなかった奴がいたらしい」
ポラは、ますますどんな魔物なのか気になるばかりだった。
屋敷の中の廊下は異常に広く、普通の屋敷でないことがすぐに分かった。各部屋の入り口は大きくて、ドアがなかった。
変に広い廊下を一行は進む。ムンナも左手にクーを抱え右手に槍を持ち戦闘態勢を整えている。
リアーロは、おとなしいはずのテンテンデッカーがやる気満々なのに違和感を感じた。もしかしたらポラを助けて、戦いのアイデアを教えられたことが、嬉しかったのかもしれない。
リアーロがムンナについて考えていたら、ドアのない部屋から気配がして何者かが廊下へと出てきた。
「出たぞ…… あいつが多四肢体だ……」
目の前に現れたのは、リアーロの言った通り人間のような、なにかだった。
その魔物は男女二人を背中同士くっつけたような姿をしていた。手が四本、脚も四本、頭のような部分が二つとある。肌は人間とほぼ同じで、毛などは一切なく股間もツルンとしている。いや股間だけではなく顔までつるりとしている。
背中の部分も継ぎ目など無く、もともとこの形だったと分かるほどなめらかだった。
前側は男性のようで筋肉質なのが見える。そして後ろは女性らしいふっくらとした体つきだ。
昆虫のように4本の足で器用に歩き、こちらに近づいてくる。
「「あへ? いえはあ? いいいいおおおお!?」」
その化け物は、男女の声を同時に出したような声で、何かをわめき出した。口にも皮膚がかぶっているので、かなりくぐもった声だった。
多四肢体は、前側の男性っぽい方の足を大きく上げ、馬のように竿立をし「「ぴよるあああ!」」と声を上げた。
そんな奇妙かつ気持ちの悪い魔物を前にしてもリアーロは、いつもの様子と変わらない。
「ほら、多数の四肢がある体だから多四肢体だ、気持ち悪いだろ?」
見慣れていたリアーロが半笑いで、そう言った瞬間に体の右半分にかなりの熱を感じた。
その熱源の正体は横を通り抜けた特大の火球だった。
「うわあああああ! 気持ち悪いいいい!」
特大の火球を放ったのは、ポラだった。嫌悪感に耐えきれず魔法攻撃を行ったようだ。
火球が直撃した多四肢体は、「「ほひほおおお!」」奇妙な声を上げて燃え上がった。
「あーあ……。あれじゃ素材が……」
ポラは、しまったと思ったがすでに遅かった。一体目の多四肢体は、まっ黒焦げになった。そして、最後に胸あたりがボンと音をたてて爆発した。
「すいません。あまりにアレだったので……つい……」
初めて失敗らしい失敗をしたポラを見てリアーロはなぜだかホッとした。そんな自分が少し嫌になり、すぐに素材部位を伝えてなかった事をあやまる。
「まぁ気にすんな。先に説明してなかった俺が悪い」
ポリポリと頭を掻きながらばつが悪そうにする。
「あいつの素材は心臓なんだが、素材を取るために倒し方にコツが有る」
ポラは、次は失敗しないぞと意気込み、真剣にリアーロの話を聞く。
「手と足を切り落として、動けなくなると死ぬんだ。いや、死ぬというより動くのを諦めるって感じだな」
ポラはあることに気がつく。動けなくなると諦めるというのは、ロングポールアジッターと共通している。もしかしたらこの多四肢体もゴーレム系の非生物なのかもしれないと思った。
「わかりました」
黒焦げの脇を通り過ぎさらに奥へと進むと、もう一体の多四肢体を発見した。
今度の個体は、先程と違い女性のような方が前のようだ。
ポラは眉間にシワを寄せながらも、今度はうまく風の魔法で手足を切り飛ばした。
「よし上手い! まだ心臓が爆発してないな! 今回の講座は多四肢体の湧魔心だ。こいつの心臓はうまく取り出すと、魔石の比じゃない無い魔力を生み出す。だが注意しろ、手順を間違えると心臓が爆発して肉片まみれになるからな」
リアーロは、すぐに処理袋から道具を出す。
今回使用するのは、ナイフ、骨切鋸、麻糸、大きな空きビンだ。
目新しい道具はなく、以前にも使用したものばかりだ。
「まずは、男の面を上にする」
リアーロはそう言うと、手足が無くなって動かなくなった多四肢体を転がす。かなり重いらしく腰を落とし肩で押してひっくり返した。
「次は、口についている皮膚に穴を開ける」
まるで人の口に布でも貼り付けたようになっている場所にナイフで切込みを入れる。
ナイフで切込みを入れた途端ヒュゴっという音を立てて大きく息を吸い込んだ。
「理屈はわからないが、こうすると胸部を開けても心臓が爆発し無くなるんだ」
そして、次に胸部を開く、開き方はゴブリンと同じY字切開だ。皮膚を開くと肋骨が見える。
「次はこの肋骨を骨切鋸で切り取る」
ポラの予想通り、その中身は人間のものと全く違った。肋骨は、横に何本も骨があるのではなく、蜂の巣のような、六角形の網目をしていた。
これは強度が高まる構造で、やはりこれは、スケルトンと同じゴーレムなのだと解った。
「スケルトンが骨ゴーレムなら、これは、肉ゴーレムってところですかね?」
「ああ、フレッシュゴーレムやら言われているな」
リアーロは肋骨に鋸をひきながらそう答えた。肋骨を取り外すと、肺をかき分けて心臓を露出させる。
心臓からでている血管は長さに余裕があるので、まるごと体外に出せた。まるでメンテナンスが想定されているような作りだった。
「よし、ここからが、ややこしいぞ。一つでも手順を間違えたらドカン! だ」
ポラは少し近づき、一挙手一同を見逃すまいと集中し始めた。
「大きな血管が四本あるのが分かるか?」
ポラは、コクリとうなずく。その心臓は、人間の物とは違い大きな血管が四本あった。左側の奥に青い血管、左手前に赤い血管、右側奥に青い血管、最後に右手前に黄色い血管が付いていた。
「この左奥の青っぽい血管をまず麻糸で縛る。そして、素早く右手前の赤い血管を切る。」
手際よく左奥の血管を結ぶと、太い血管を束にして、そこを左手で掴む。そして、すぐに右手前の血管をナイフで切り離した。血管を切れば、血が飛びだしてくると思ったが、不思議と赤い血管からは何もでてこなかった。
心臓肥大し爆発の兆候がないのを確かめると次の作業に移る。
「次に左手前の赤い血管を切り中の液体を出す」
ナイフで血管を切り裂くと、中から黄色いドロッとした膿のような汁がダバダバとこぼれ出て、心臓が少し縮んだ。
「よし、次はこの右手前の黄色い血管と、縛っていた青い血管を同時に切断する」
リアーろは心臓を下から支えるように持ち替えると、血管の縛った箇所より下の部分に勢いよくナイフを振り見事に黄色と青の二本を同時に切断した。
「よし成功だ!」
リアーロが掲げた心臓は、脈を打ち続けながら周囲に、目に見えるほどの高密度な魔力を放出していた……。
「凄い魔力量ですね……」
「そうだろ、初めて取れたときはびっくりしたと同時に最高に嬉しかったよ。キモいのに頑張ったかいがあった! ってな」
リアーロは、そう言いながら大きな瓶に心臓を入れてコルクの蓋を締めた。
心臓は未だにビンの中で脈打ち続けている。
ポラは、正直言って気味が悪かったが、その放出される魔力はとても魅力的だった。ゴーレムの動力や、魔草の飼育、火炎魔法を組み込んだ強力な魔導爆弾……。少し考えただけでもかなり用途が広そうだ。
リアーロはポラの視線がビンに釘付けな事が少々気になったが、すぐにムンナのカゴに入れた。
「よし、今回の講座はこれで終了だ! 次はこの屋敷の塔の最上階にいる魔物だ。 行くぞ!」
「はい先生!」
講座を終えた二人は、クーが多四肢体の死体を分解吸収するのを待ち、屋敷とつながる塔へと歩をすすめるのだった。
◆
ダンジョン素材採取教本 第2巻
著者ポラ、監修リアーロ
目次
第11項 多四肢体の湧魔心……44
手順1 討伐方法………………45
手順2 胸部解放………………46
手順3 血管の切断順序………47
「お? ムンナに武器を買ってやったのか?」
リアーロは、ムンナのカゴの横についているものを見た。それは、ロングポールアジッターの槍脚を加工した見事な武器がだった。
「昨日素材を振り回してましたからね。だから、きちんとした武器を買ってあげたのです」
ポラはペットに新しいおもちゃを与えたように話す。その横で、うなずこうとしてお辞儀をしたムンナはとても嬉しそうだった。
「テンテンデッカーが武器を使うなんて珍しいな。こいつは少し変わったやつなのかもしれないな」
リアーロは、いままでテンテンデッカーが武器を使ったところを見たことなかったので、そう思ったようだ。
しかし実際は、自分の主人が自分の戦力を上回った場合は武器を使うのだ。いままで商人と共に街道沿いでしか行動をともにしていなかったため、他のテンテンデッカーは、素手で十分という判断であった。
墓地前で合流した二人は、軽くスケルトンを蹴散らしながらどんどん奥へと進む。
しばらく進むと入り口と同じような鉄柵の扉が現れ、そこを越えるとスケルトンは襲ってこなくなり元の場所へと帰っていった。
そんなスケルトン達の背を見送りながらポラは、ボソリとつぶやいた。
「墓地に入った者を攻撃しろって命令みたいだね。ゴーレムかオートマタの勉強をしようかな」
そんなつぶやきが聞こえたリアーロは、まだ強くなる気なのかと、向上心が強いポラに感心するばかりだった。
落ち着いた二人は改めて目の前の景色をよく見る。
墓地の奥には大きな屋敷が立っていた。古くはあるが、とてもきれいな屋敷で、今にも老紳士の執事を引き連れた貴族が出てきそうな雰囲気がある。
屋敷の向こう側には大きな石造りの塔が見える。根本までは見えないが、きっと屋敷とつながっているタイプの塔であろうことが解った。
「良い屋敷ですね」
「そうだな。中にいるバケモノを見たらその感想も変わるだろうな」
ポラは、リアーロの言葉に次の魔物はどんなものかと想像する……。墓地の屋敷にいる魔物……。
「ゾンビですか?」
「いや、多四肢体っていう魔物だ」
ポラは聞いたことない名前に首をひねる。
「どんな魔物なんですか?」
「あー……あれはなんて説明すりゃいいんだ? 人間っぽい何かで、とにかく気持ち悪いんだ」
ポラは、覚悟を決めて「行きましょう」と言い、歩みをすすめることにした。
リアーロは、屋敷の両開きの大きな扉に手をかけ開くと、ドアの隙間に石を噛ませ閉まらないようにした。
「ここに入るときは、決まって扉をこうするんだ。やつの姿をみてパニックになってドアが開けられなかった奴がいたらしい」
ポラは、ますますどんな魔物なのか気になるばかりだった。
屋敷の中の廊下は異常に広く、普通の屋敷でないことがすぐに分かった。各部屋の入り口は大きくて、ドアがなかった。
変に広い廊下を一行は進む。ムンナも左手にクーを抱え右手に槍を持ち戦闘態勢を整えている。
リアーロは、おとなしいはずのテンテンデッカーがやる気満々なのに違和感を感じた。もしかしたらポラを助けて、戦いのアイデアを教えられたことが、嬉しかったのかもしれない。
リアーロがムンナについて考えていたら、ドアのない部屋から気配がして何者かが廊下へと出てきた。
「出たぞ…… あいつが多四肢体だ……」
目の前に現れたのは、リアーロの言った通り人間のような、なにかだった。
その魔物は男女二人を背中同士くっつけたような姿をしていた。手が四本、脚も四本、頭のような部分が二つとある。肌は人間とほぼ同じで、毛などは一切なく股間もツルンとしている。いや股間だけではなく顔までつるりとしている。
背中の部分も継ぎ目など無く、もともとこの形だったと分かるほどなめらかだった。
前側は男性のようで筋肉質なのが見える。そして後ろは女性らしいふっくらとした体つきだ。
昆虫のように4本の足で器用に歩き、こちらに近づいてくる。
「「あへ? いえはあ? いいいいおおおお!?」」
その化け物は、男女の声を同時に出したような声で、何かをわめき出した。口にも皮膚がかぶっているので、かなりくぐもった声だった。
多四肢体は、前側の男性っぽい方の足を大きく上げ、馬のように竿立をし「「ぴよるあああ!」」と声を上げた。
そんな奇妙かつ気持ちの悪い魔物を前にしてもリアーロは、いつもの様子と変わらない。
「ほら、多数の四肢がある体だから多四肢体だ、気持ち悪いだろ?」
見慣れていたリアーロが半笑いで、そう言った瞬間に体の右半分にかなりの熱を感じた。
その熱源の正体は横を通り抜けた特大の火球だった。
「うわあああああ! 気持ち悪いいいい!」
特大の火球を放ったのは、ポラだった。嫌悪感に耐えきれず魔法攻撃を行ったようだ。
火球が直撃した多四肢体は、「「ほひほおおお!」」奇妙な声を上げて燃え上がった。
「あーあ……。あれじゃ素材が……」
ポラは、しまったと思ったがすでに遅かった。一体目の多四肢体は、まっ黒焦げになった。そして、最後に胸あたりがボンと音をたてて爆発した。
「すいません。あまりにアレだったので……つい……」
初めて失敗らしい失敗をしたポラを見てリアーロはなぜだかホッとした。そんな自分が少し嫌になり、すぐに素材部位を伝えてなかった事をあやまる。
「まぁ気にすんな。先に説明してなかった俺が悪い」
ポリポリと頭を掻きながらばつが悪そうにする。
「あいつの素材は心臓なんだが、素材を取るために倒し方にコツが有る」
ポラは、次は失敗しないぞと意気込み、真剣にリアーロの話を聞く。
「手と足を切り落として、動けなくなると死ぬんだ。いや、死ぬというより動くのを諦めるって感じだな」
ポラはあることに気がつく。動けなくなると諦めるというのは、ロングポールアジッターと共通している。もしかしたらこの多四肢体もゴーレム系の非生物なのかもしれないと思った。
「わかりました」
黒焦げの脇を通り過ぎさらに奥へと進むと、もう一体の多四肢体を発見した。
今度の個体は、先程と違い女性のような方が前のようだ。
ポラは眉間にシワを寄せながらも、今度はうまく風の魔法で手足を切り飛ばした。
「よし上手い! まだ心臓が爆発してないな! 今回の講座は多四肢体の湧魔心だ。こいつの心臓はうまく取り出すと、魔石の比じゃない無い魔力を生み出す。だが注意しろ、手順を間違えると心臓が爆発して肉片まみれになるからな」
リアーロは、すぐに処理袋から道具を出す。
今回使用するのは、ナイフ、骨切鋸、麻糸、大きな空きビンだ。
目新しい道具はなく、以前にも使用したものばかりだ。
「まずは、男の面を上にする」
リアーロはそう言うと、手足が無くなって動かなくなった多四肢体を転がす。かなり重いらしく腰を落とし肩で押してひっくり返した。
「次は、口についている皮膚に穴を開ける」
まるで人の口に布でも貼り付けたようになっている場所にナイフで切込みを入れる。
ナイフで切込みを入れた途端ヒュゴっという音を立てて大きく息を吸い込んだ。
「理屈はわからないが、こうすると胸部を開けても心臓が爆発し無くなるんだ」
そして、次に胸部を開く、開き方はゴブリンと同じY字切開だ。皮膚を開くと肋骨が見える。
「次はこの肋骨を骨切鋸で切り取る」
ポラの予想通り、その中身は人間のものと全く違った。肋骨は、横に何本も骨があるのではなく、蜂の巣のような、六角形の網目をしていた。
これは強度が高まる構造で、やはりこれは、スケルトンと同じゴーレムなのだと解った。
「スケルトンが骨ゴーレムなら、これは、肉ゴーレムってところですかね?」
「ああ、フレッシュゴーレムやら言われているな」
リアーロは肋骨に鋸をひきながらそう答えた。肋骨を取り外すと、肺をかき分けて心臓を露出させる。
心臓からでている血管は長さに余裕があるので、まるごと体外に出せた。まるでメンテナンスが想定されているような作りだった。
「よし、ここからが、ややこしいぞ。一つでも手順を間違えたらドカン! だ」
ポラは少し近づき、一挙手一同を見逃すまいと集中し始めた。
「大きな血管が四本あるのが分かるか?」
ポラは、コクリとうなずく。その心臓は、人間の物とは違い大きな血管が四本あった。左側の奥に青い血管、左手前に赤い血管、右側奥に青い血管、最後に右手前に黄色い血管が付いていた。
「この左奥の青っぽい血管をまず麻糸で縛る。そして、素早く右手前の赤い血管を切る。」
手際よく左奥の血管を結ぶと、太い血管を束にして、そこを左手で掴む。そして、すぐに右手前の血管をナイフで切り離した。血管を切れば、血が飛びだしてくると思ったが、不思議と赤い血管からは何もでてこなかった。
心臓肥大し爆発の兆候がないのを確かめると次の作業に移る。
「次に左手前の赤い血管を切り中の液体を出す」
ナイフで血管を切り裂くと、中から黄色いドロッとした膿のような汁がダバダバとこぼれ出て、心臓が少し縮んだ。
「よし、次はこの右手前の黄色い血管と、縛っていた青い血管を同時に切断する」
リアーろは心臓を下から支えるように持ち替えると、血管の縛った箇所より下の部分に勢いよくナイフを振り見事に黄色と青の二本を同時に切断した。
「よし成功だ!」
リアーロが掲げた心臓は、脈を打ち続けながら周囲に、目に見えるほどの高密度な魔力を放出していた……。
「凄い魔力量ですね……」
「そうだろ、初めて取れたときはびっくりしたと同時に最高に嬉しかったよ。キモいのに頑張ったかいがあった! ってな」
リアーロは、そう言いながら大きな瓶に心臓を入れてコルクの蓋を締めた。
心臓は未だにビンの中で脈打ち続けている。
ポラは、正直言って気味が悪かったが、その放出される魔力はとても魅力的だった。ゴーレムの動力や、魔草の飼育、火炎魔法を組み込んだ強力な魔導爆弾……。少し考えただけでもかなり用途が広そうだ。
リアーロはポラの視線がビンに釘付けな事が少々気になったが、すぐにムンナのカゴに入れた。
「よし、今回の講座はこれで終了だ! 次はこの屋敷の塔の最上階にいる魔物だ。 行くぞ!」
「はい先生!」
講座を終えた二人は、クーが多四肢体の死体を分解吸収するのを待ち、屋敷とつながる塔へと歩をすすめるのだった。
◆
ダンジョン素材採取教本 第2巻
著者ポラ、監修リアーロ
目次
第11項 多四肢体の湧魔心……44
手順1 討伐方法………………45
手順2 胸部解放………………46
手順3 血管の切断順序………47
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
Amor et odium
佐藤絹恵(サトウ.キヌエ)
ファンタジー
時代は中世ヨーロッパ中期
人々はキリスト教の神を信仰し
神を軸(じく)に生活を送っていた
聖書に書かれている事は
神の御言葉であり絶対
…しかし…
人々は知らない
神が既に人間に興味が無い事を
そして…悪魔と呼ばれる我々が
人間を見守っている事を知らない
近頃
人間の神の信仰が薄れ
聖職者は腐敗し
好き勝手し始めていた
結果…民が餌食の的に…
・
・
・
流石に
卑劣な人間の行いに看過出来ぬ
人間界に干渉させてもらうぞ
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる